元請け率95%を実現した勝山電気工事に学ぶ―下請けからの脱却戦略

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イメージ写真:元請け率95%を実現した勝山電気工事に学ぶ

「下請け工事ばかりで利益が残らない」「元請けとして直接受注したいが、どう動けばいいかわからない」――多くの電気工事業者が、こうした悩みを抱えています。下請け構造から脱却し、群馬県高崎市の有限会社勝山電気工事は、売上の95%を元請けの受注が占めると発表しています(2026年5月5日・PR TIMES)。この記事では、下請け脱却・元請け化を実現するための具体的なステップ、建設業許可取得や業種追加の実務、耐震化工事などの新規事業開発、専門工事組合の活用まで、実践的な戦略を詳しく解説します。同じ悩みを持つ電気工事業者の皆様にとって、明日からの行動指針となる内容です。

目次

勝山電気工事が実現した「元請け率95%」の背景

下請け構造からの脱却を決断した理由

勝山電気工事は、2026年5月5日の発表(PR TIMES)で、売上の95%を元請けの受注で占めていること、工事部員15名の規模で、今期(2025年9月〜2026年8月)の売上見込みが7億4,000万円と3年前の倍近くになったことを公表しています。発表の題名では、赤字の経営や倒産寸前の時期を経て立て直したとしています。

下請けは、値下げの圧力や支払いの遅さ、急な工程の変更を受けやすい立場です。元請けとして直接受注できれば、価格と工程を自社で決めやすくなります。

発表にある元請け化の方法

発表では、元請け化の方法を「職人自身が見積を覚え、資料の作り方を学び、図面を描く」「職人が営業もする『元請け体制』へ転換した」と説明しています。現場でお客様の要望をいちばん理解できるのは、実際に手を動かしている職人だという考えです。

元請け化を進める3つの手(一般の進め方)

ここからは勝山電気工事の発表とは別に、電気工事業者が元請けの受注を増やすときによく使われる手を整理します。

1. 建設業許可の業種追加による対応範囲の拡大

電気工事業の許可に加えて、内装仕上工事業や管工事業などの関連する業種を取ると、設備全体の改修工事を一括で受けやすくなります。業種の追加は、建設業法第3条の許可の申請で行います。

2. 公共工事入札参加資格の取得

自治体の建設工事の入札参加資格の審査を受けると、公共工事に参加できます。公共工事は支払いが確実で、実績として信用にもつながります。

3. 顧客との直接関係構築

既存の顧客への定期的な点検の提案や、省エネの診断など、顧客との接点を増やすと、直接の依頼につながりやすくなります。

下請け脱却に必要な建設業許可の実務知識

作業着の人がバインダーの書類に書き込む手元と電話
作業着の人がバインダーの書類に書き込む手元と電話(イメージ)

電気工事業者が取得すべき許可業種

電気工事業の経営戦略として元請け化を目指す場合、電気工事業(建設業法別表第一の電気工事業)の許可だけでは不十分なケースがあります。

顧客が求めるのは「電気工事だけ」ではなく、「快適で安全な施設環境」です。そのため、以下の業種追加を検討する価値があります。

  • 内装仕上工事業: 照明器具の設置に伴う天井・壁の改修工事
  • 管工事業: 空調設備工事との一体施工
  • 消防施設工事業: 火災報知設備や非常照明の設置工事
  • 電気通信工事業: LAN配線やインターホン設置など

令和7・8年度の建設工事請負等競争入札参加資格審査では、保有業種が多いほど入札機会が増加します。埼玉県や長岡市などの自治体では、2026年度から順次、新しい審査基準での受付が始まっています。

業種追加申請の実務ステップ

建設業許可の業種追加には、以下の要件を満たす必要があります。

経営業務の管理責任者: 建設業に関して5年以上の経営業務の管理責任者としての経験など(2020年10月の改正から、業種ごとの経験は問われません)が必要です。電気工事業ですでに許可を持っている場合、この要件はクリアしています。

専任技術者(2024年12月から営業所技術者): 追加する業種ごとに、有資格者または10年以上の実務経験者を営業所ごとに配置する必要があります。電気工事業であれば第一種電気工事士、内装仕上工事業であれば建築施工管理技士などが該当します。

財産的基礎: 一般建設業許可の場合、純資産額500万円以上または500万円以上の資金調達能力が求められます。すでに許可を持っている場合、直近の決算で確認されます。

申請は都道府県知事許可の場合は都道府県庁、国土交通大臣許可の場合は地方整備局に提出します。標準処理期間は約30日ですが、書類不備があると長期化するため、行政書士などの専門家への相談も有効です。

新規事業開発で収益源を多角化する戦略

耐震化工事の新規事業開発が有望な理由

執筆時点で、南海トラフ地震への備えとして住宅耐震化工事の需要が急拡大しています。愛知県では12年ぶりに被害予測が見直され、行政による耐震化補助金制度も拡充されました。

電気工事業者にとって、耐震化工事は単なる「関連工事」ではなく、主力事業になり得る分野です。具体的には以下の工事が該当します。

  • 分電盤・配電盤の耐震固定工事: 地震時の転倒・脱落防止
  • 非常用電源設備の設置: 太陽光発電システムや蓄電池の導入
  • LED照明への更新: 耐震改修と同時に省エネ化を提案

耐震化工事は建築一式工事業の許可が必要と思われがちですが、電気設備部分は電気工事業の範囲で施工可能です。建築士や工務店と連携することで、元請けとして全体を受注し、構造部分は協力会社に発注する形も実現できます。

公共施設の省エネ化需要への対応

2026年度以降、自治体の公共施設では脱炭素化に向けた省エネ改修工事が本格化します。特に照明のLED化、太陽光発電設備の設置、BEMS(ビルエネルギー管理システム)導入などは、電気工事業者の専門領域です。

公共工事入札参加資格を持っていれば、これらの案件に直接入札できます。令和8・9年度の入札参加資格審査申請は、多くの自治体で2026年夏季から受付が始まっているため、早めの準備が重要です。

専門工事組合の活用で経営基盤を強化する方法

見積書と家の模型を前に説明する作業着の人
見積書と家の模型を前に説明する作業着の人(イメージ)

専門工事組合設立のメリット

下請け脱却・元請け化を個社で実現するのが難しい場合、専門工事組合の設立や参加が有効な選択肢となります。

東北6県の建設会社7社とみずほ銀行が2025年6月に共同出資で設立した東北アライアンス建設は、地域の専門工事会社による事業協同組合づくりを主導し、資機材の共同購入や共同受注などに取り組むとしています(日刊建設工業新聞ほか)。電気工事業者にとっても、以下のメリットがあります。

  • 受注規模の拡大: 個社では対応できない大型案件を共同受注
  • 技術者の相互補完: 資格者や技能者を組合内で融通し合う
  • 資材の共同購入: スケールメリットによるコスト削減
  • 経営ノウハウの共有: 組合員間での情報交換・勉強会の開催

中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合として設立すれば、税制優遇や公的融資制度の活用も可能です。

組合参加で実現できる元請け化モデル

専門工事組合に参加することで、以下のような元請け化モデルが実現できます。

共同受注方式: 組合が元請けとして工事を受注し、組合員各社が専門分野を分担施工します。電気工事、空調工事、給排水工事などを一括で受注し、それぞれの専門業者が責任施工する形です。

技術者の紹介: 組合員の間で資格を持つ技術者を紹介し合い、自社で雇い入れることで、建設業許可の営業所技術者(旧 専任技術者)の要件を満たす道が広がります。営業所技術者は営業所に常勤する自社の技術者である必要があり、派遣の技術者は要件に当たりません。

共同営業体制: 組合として営業担当者を雇用し、組合員全体の受注活動を支援します。営業コストを分散できるため、個社負担が軽減されます。

2026年現在、全国各地で専門工事組合の設立の動きもあり、電気工事業の経営戦略として注目度が高まっています。

よくある質問

Q1. 元請け率を上げるために最初に取り組むべきことは何ですか?

自社の強みと専門性を明確化することが最優先です。得意分野を絞り込み、その領域で確実な施工実績を積み上げることで、元請けとしての信頼性を構築できます。同時に必要な許可や資格、保険などの要件を整備し、元請けとして受注できる体制を整えましょう。

Q2. 下請けから元請けに移行する際の営業手法はどうすればよいですか?

既存顧客との直接取引への転換と、新規顧客開拓の両輪が重要です。まず下請け実績を活かして施主や管理会社への直接アプローチを行い、ホームページやSNSでの情報発信も強化します。地域密着型の営業活動と、紹介・口コミを増やす仕組み作りが効果的です。

Q3. 元請け工事を受注する際に必要な管理体制とは何ですか?

工程管理、品質管理、安全管理、原価管理の4つの管理体制が不可欠です。特に協力業者の手配や工程調整、顧客対応など、下請け時代にはなかった業務が発生します。施工管理技士などの有資格者の配置と、工事管理システムの導入で効率的な体制を構築することが成功の鍵となります。

Q4. 元請け比率を高めると利益率はどの程度改善できますか?

一般的に下請け工事の粗利率が10〜15%程度に対し、元請け工事では20〜30%程度の確保が可能です。ただし初期段階では営業コストや管理コストが増加するため、段階的な移行が重要です。元請け比率50%を超えたあたりから経営の安定性と収益性が大きく向上する傾向があります。

Q5. 下請け取引先との関係を維持しながら元請け化を進める方法は?

既存取引先とは誠実なコミュニケーションを継続し、急激な取引縮小は避けることが重要です。元請け案件を優先しつつも、技術力向上や閑散期の仕事として下請け工事も選択的に受注する姿勢を示します。将来的には協力会社として対等な関係を築くことで、双方にメリットのある関係性を構築できます。

まとめ

階段状に積んだ木の積み木を指さす手
階段状に積んだ木の積み木を指さす手(イメージ)

下請け脱却・元請け化は、電気工事業者にとって経営の根幹を変える重要な戦略です。元請け化を進めるポイントは3点あります。第一に、建設業許可の業種追加により対応範囲を広げ、顧客ニーズに一括対応できる体制を整えること。第二に、耐震化工事や省エネ改修など、社会的需要の高い分野に新規参入し、収益源を多角化すること。第三に、専門工事組合の活用で経営基盤を強化し、単独では難しい大型案件にも対応できる仕組みを作ること。元請け率95%という数字は一朝一夕では実現できませんが、段階的な取り組みで確実に近づけます。まずは自社の建設業許可状況を確認し、業種追加や入札参加資格取得の可能性を検討することから始めましょう。

出典:勝山電気工事の発表(PR TIMES・2026年5月5日)・建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」(確認日 2026-10-02)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。

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この記事を書いた人

建設業界の申請実務・業界動向・サービス比較を専門とするリサーチャー兼ライター。行政書士選びのポイント・申請代行サービスの費用比較・都道府県別の審査傾向など、実際に情報収集して検証した内容を記事化。建設業の許可・経審・入札に関する公的資料を基に、現場で役立つ実践的な情報を正確に届けることを方針としている。

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