「熱中症予防計画書を作成するよう言われたが、様式が決まっているのか、どこに提出すればいいのかわからない」という中小建設会社の経営者は少なくない。毎年夏前に作成が必要なこの書類を、2026年版の記載例・チェックリスト付きで解説する。初めて作成する方でも本記事の手順に沿えば対応できる。
Q1:熱中症予防計画書とは?2026年現在の作成義務の範囲
「熱中症予防計画書」という名前の書類は法令にはない。ただし2025年6月1日から、労働安全衛生規則第612条の2により、熱中症のおそれのある作業(WBGT28度以上か気温31度以上の環境で、連続1時間以上か1日4時間を超える作業)を行う事業者には、①熱中症の自覚症状がある人や疑われる人を見つけた人が報告する体制を作って周知すること、②重症化を防ぐ手順(作業から離す・体を冷やす・医師の診察や救急搬送など)を作業場ごとに作って周知することが義務付けられた。違反には罰則がある(労働安全衛生法第119条・6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)。計画書は、この2つを含めて、厚生労働省の「職場における熱中症予防基本対策要綱」(令和3年4月)の対策をまとめる書類と考えるとよい。
作成が求められる主な対象は以下の通りだ。
- WBGT28度以上か気温31度以上の場所で、連続1時間以上か1日4時間を超えて作業させる事業者(屋外・屋内を問わない・2025年6月からの義務の対象)
- WBGT基準値を超えるおそれのある作業場所を有する事業者(要綱の対策の対象)
- 元請として下請業者を含む複数の作業員が働く現場の統括安全衛生責任者(下請を含めた連絡と調整)
建設業のほぼ全ての事業者が対象だ。会社規模(従業員数)に関係なく、現場での作業がある限り、少なくとも義務の2つ(報告の体制・重症化を防ぐ手順)は用意が必要だと考えておくべきだ。計画書の形にまとめておけば、周知と見直しがしやすい。
Q2:何を記載すればいい?2026年版記載例で確認
熱中症予防計画書の様式に法的な決まりはない。2025年6月からの義務の2つ(報告の体制・重症化を防ぐ手順)を必ず入れ、そのうえで厚生労働省の要綱の対策を並べるとよい。
入れる項目(2026年版)
- ①作成日・現場名・会社名・代表者名
- ②WBGT基準値に基づく作業管理(いつ・何度で作業を制限するか)
- ③水分・塩分補給の方法と頻度(例:30分に1回、冷水・スポーツドリンクを用意)
- ④休憩場所の確保(日陰・冷房付き休憩スペースの設置)
- ⑤【義務】熱中症の自覚症状がある人・疑われる人を見つけたときの報告先と連絡の体制(報告を受ける人の氏名・連絡先)
- ⑥【義務】重症化を防ぐ手順(作業から離す・体を冷やす・医師の診察や救急搬送・緊急連絡先と近くの医療機関)
- ⑦健康管理(作業前の体調確認、高リスク作業員の把握)
- ⑧熱中症予防教育の実施計画(いつ・誰が・何を教育するか)
特に「②作業管理のWBGT基準値」は具体的な数値を書くことが重要だ。「暑いときは休む」では行政指導時に不十分とみなされる可能性がある。
Q3:提出先と提出タイミングは?
熱中症予防計画書を役所へ出す決まりはない。ただし、義務の2つ(報告の体制・重症化を防ぐ手順)は作業する人に周知しなければならない(掲示・文書の配布・メールなど)。また、以下の場面では提示が求められる場合がある。
- 労働基準監督署の調査時:是正勧告や事故調査の際に「計画書はあるか」と確認される。
- 元請への提出:元請から「熱中症対策計画を提出してほしい」と求められる場合がある。
- 安全衛生委員会への報告:50人以上の事業場では安全衛生委員会への提案資料として活用する。
作成タイミングは「夏季(5月〜9月)の作業開始前」が最適だ。遅くとも暑くなる前(5月中)に完成させ、現場に掲示することが望ましい。
作った計画書を夏の間に回す手順
厚生労働省は例年、5月1日から9月30日まで「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を行い、4月を準備期間、7月を重点取組期間としている。計画書もこの流れに合わせ、4月に作って5月から使い、梅雨明けで急に暑くなる7月の前に一度見直すと無理がない。
環境省と気象庁は、暑さ指数が33以上になると予測される地点があるときに「熱中症警戒アラート」を、都道府県内のすべての地点で翌日の最高の暑さ指数が35以上と予測されるときは前日の午後2時に「熱中症特別警戒アラート」を発表する。令和8年度の運用は4月22日から10月21日まで。アラートの日の動き方も、計画書に書いておく。
- アラートの日に作業を短くする・止める基準と、それを決める人
- 新しく入った人や休み明けの人など、暑さに体が慣れていない人の作業を軽くする期間(要綱の「暑熱順化」)
- 下請の作業員への伝え方(朝礼での読み合わせ・現場事務所への掲示)
夏が終わったら、体調を崩した人の数と、そのときの暑さ指数・作業の内容を記録しておく。翌年の計画書の基準値や休憩の回数を決めるときの根拠になる。
計画書作成完了チェックリスト(8項目)
- □ 作成日・現場名・会社名・代表者名を記載した
- □ WBGT基準値に基づく作業中止条件を数値で記載した
- □ 水分・塩分補給の頻度と方法を具体的に記載した
- □ 休憩場所(日陰・冷房設備)の確保方法を記載した
- □ 【義務】報告の体制と、重症化を防ぐ手順を記載した
- □ 夏季前の安全教育の実施日・内容を記載した
- □ 計画書を現場事務所に掲示した
- □ 【義務】下請業者を含む全作業員に周知した
まとめ:2026年夏前に計画書を完成させる
| 記載項目 | 必須/推奨 | 記入例 |
|---|---|---|
| 作業場所・期間 | 必須 | ○○市△△ビル新築工事 / 2026年6〜9月 |
| WBGT測定の方法・頻度 | 必須 | 午前8時・11時・午後2時に現場で測定 |
| 給水・休憩の計画 | 必須 | 1時間に15分休憩・塩飴・経口補水液を常備 |
| 報告の体制(義務) | 必須 | 報告を受ける人(現場所長など)の氏名・連絡先 |
| 重症化を防ぐ手順(義務) | 必須 | 作業から離す・体を冷やす・救急要請の流れ・近隣病院リスト |
| 服装・装備基準 | 推奨 | 空調服の支給基準・着用義務化日程 |
| 下請業者への周知方法 | 推奨 | 朝礼での読み合わせ・書面配布日程 |
- 2025年6月から、報告の体制と重症化を防ぐ手順の作成・周知が義務(罰則あり)。計画書の様式は自由なので、この2つを含めた8項目で作る
- 役所への提出の決まりはないが、作業員への周知は義務。労基署調査・元請提出に備えて保管する
- 暑くなる前(5月中)に完成させ、現場掲示・全作業員への周知を行う
次のアクション:①本記事の8項目を参考に今日から計画書を作成する ②完成後は現場の見やすい場所に掲示する
よくある質問
Q: 熱中症予防計画書の様式は決まっていますか?
法的に決まった様式はありません。ただし2025年6月から、熱中症のおそれのある作業では、報告の体制と重症化を防ぐ手順を作って周知することが労働安全衛生規則で義務付けられています。この2つに、厚生労働省の「職場における熱中症予防基本対策要綱」の作業管理(WBGT基準値)・水分補給・休憩場所などを加えて作成します。様式自由なので、会社独自のフォーマットで作成して構いません。
Q: 熱中症予防計画書は毎年作り直す必要がありますか?
基本的には毎年夏季前に見直し・更新することが推奨されます。前年の現場状況や法改正の内容を反映させることで、実態に即した計画書になります。同一現場で年をまたぐ長期工事の場合でも、夏季前(5〜6月)に最新内容に改訂することが望ましいです。
Q: 下請の会社の作業員にも周知が要りますか?
はい。報告の体制と重症化を防ぐ手順の義務は、作業をさせる事業者ごとにかかります。下請の会社も自社の作業員について用意して周知する必要があります。元請は現場全体の連絡と調整の中で、報告の窓口や救急の流れをそろえておくと、いざというときに混乱しません。
出典と参考(2026年10月1日に確認)
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