岩手県で解体工事業の許可に新規参入したい、または既存事業を拡大したいと考えている建設会社や工務店の経営者の方へ。解体工事を請け負うための手続きには、建設業許可の「解体工事業」と、建設リサイクル法の「解体工事業の登録」の2つがあります。名称は似ていますが、根拠の法律、請け負える工事の金額、必要な技術者が異なります。「どちらが必要なのか」を理解していないと、手続きに無駄な時間をかけたり、事業開始後に法令違反になるリスクを抱えたりしかねません。本記事では、岩手県で解体工事を営むための実務的なポイントと、2つの制度の違いを解説します。
岩手県における解体工事業許可と建設業許可の根本的な違い
許可の申請先と法的根拠の相違
解体工事を営むための制度は、次の2つです。
- 建設業許可(解体工事業):建設業法に基づく許可です。1件の請負代金が500万円以上(税込)の解体工事を請け負うには、この許可が必要です。岩手県内だけに営業所がある場合は岩手県知事、2つ以上の都道府県に営業所がある場合は国土交通大臣の許可になります。解体工事業は2016年6月に新しく設けられた業種です。
- 解体工事業の登録:建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)第21条に基づく登録です。建設業許可のうち土木工事業・建築工事業・解体工事業のいずれも持たない業者が、500万円未満の解体工事を営むときに必要です。登録は、工事を行う区域の都道府県ごとに受けます(岩手県内で工事をするなら岩手県知事の登録)。
つまり、建設業許可の土木工事業・建築工事業・解体工事業のどれかを持っていれば、解体工事業の登録は要りません(建設リサイクル法第21条)。どちらも持たずに解体工事を営むと、無登録の営業として罰則(1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金・同法第48条)の対象になります。
対象となる工事内容の違い
2つの制度の違いは、請け負える工事の金額です。
ここで重要なのは、軽微な工事 の考え方です。建設業許可では、一定額未満の工事(500万円未満。建築一式工事は1,500万円未満か、延べ面積150㎡未満の木造住宅)は軽微な工事として許可不要です。ただし、許可が要らない金額の解体工事でも、建設業許可(土木・建築・解体)を持たない業者は、解体工事業の登録が必要です。
また、建物の大きさで決まるのは「許可」ではなく「届出」です。床面積の合計が80㎡以上の建物の解体は、建設リサイクル法の対象建設工事として、発注者(施主)が工事に着手する7日前までに都道府県知事へ届け出ます(同法第10条)。受注した業者には、分別解体と再資源化の義務がかかります。見積額が少額でも、床面積80㎡以上なら届出と分別解体が必要です。
解体工事業許可取得に必要な要件と申請フロー

岩手県における許可取得の基本要件
建設業許可(解体工事業)と解体工事業の登録では、求められる要件が異なります。
1. 建設業許可(解体工事業)の主な要件
- 経営業務の管理を適正に行う能力(建設業の経営経験のある常勤の役員などを置く)
- 営業所ごとに営業所技術者(2024年12月までの呼び名は専任技術者)を置く。解体工事業では、1級・2級土木施工管理技士、1級・2級建築施工管理技士(建築・躯体)、技術士、とび技能士、登録解体工事試験の合格者などの資格か、10年以上の実務経験(学歴により短縮)が要ります(合格した年度によっては追加の講習や実務経験が必要)
- 財産的基礎(一般建設業は自己資本500万円以上か、500万円以上の資金を調達できること)
- 誠実性と、欠格要件に当たらないこと
2. 解体工事業の登録の主な要件
- 解体工事の現場で施工を管理する「技術管理者」を選任する。技術管理者には、建設機械施工管理技士・土木施工管理技士・建築施工管理技士(建築・躯体)・建築士・とび技能士などの資格か、一定年数の解体工事の実務経験(学歴により2年〜8年)が要ります
- 登録の拒否事由(登録の取消しから2年以内など)に当たらないこと
- 建設業許可と違い、財産的基礎の要件はありません
3. 廃棄物の扱い
- 産業廃棄物処理業の許可は、解体工事の許可や登録の要件ではありません。解体で出た廃棄物は元請業者が排出事業者となり(廃棄物処理法 第21条の3)、元請が自ら運ぶなら収集運搬業の許可は要りません。運搬や処理を他社に委託するときは許可業者と書面で契約し、マニフェストを交付します(廃棄物処理法)。
どちらの制度も有効期間は5年で、続けるには期間が満了する前に更新の手続きが必要です。
申請から許可取得までの標準的なフロー
申請の大まかな流れは以下の通りです。
- 事前相談・窓口確認
– 岩手県の担当窓口に、許可と登録のどちらが必要か、最新の様式と手数料を確認します。
- 必要書類の準備
– 許可なら、経営経験と技術者の資格・実務経験を示す書類、財務諸表、登記事項証明書など。登録なら、技術管理者の資格か実務経験を示す書類などが必要です。
- 申請書提出
– 窓口へ申請書一式を提出します。
- 審査期間
– 岩手県による審査が実施されます。この期間中に補正指示が入ることもあります。標準的な処理期間は県の案内で確かめます。
- 許可・登録 (審査完了後)
– 許可通知書や登録の通知が届きます。
書類の準備には時間がかかるため、事業開始のスケジュールに余裕を持たせることが重要です。
軽微な工事と労務費基準~実務上の注意点
建設業許可における「軽微な工事」との違いを理解する
建設業許可では、1件の請負代金が500万円以上(税込)の解体工事を請け負う場合に許可が必須です。これは建物の大きさではなく、金額で決まります。
一方、建設リサイクル法で建物の大きさが問題になるのは、次の届出の場面です。
- 床面積の合計が80平方メートル以上 の建築物の解体:着手の7日前までに届出(発注者が行う)
- 請負代金が500万円以上 の建築物以外のもの(工作物)の解体:同じく届出の対象
たとえば、工事金額が200万円で床面積が100平方メートルの住宅の解体なら、建設業許可は要りませんが、解体工事業の登録(または土木・建築・解体の建設業許可)と、発注者の届出が必要です。工事金額が500万円以上なら、床面積にかかわらず建設業許可(解体工事業など)が必要です。
岩手県内の小規模住宅解体工事が多い事業者は、特にこの点を誤解しやすいため、案件ごとに慎重に判定する必要があります。
労務費基準への対応と現場運用のポイント
建設業では、改正建設業法(2024年6月公布)により、中央建設業審議会が労務費の基準を作成・勧告する仕組みができ、2025年12月から、基準を大きく下回る見積りや契約を禁じる規定が施行されています。解体工事業においても、この動向は無視できません。
労務費の基準は、工事の種類ごとに、適正な労務費の目安を示すものです。許可の要件ではありませんが、元請・下請関係における公正な請負代金の形成を促すためのものです。
解体工事業においても、特に以下の点に留意が必要です:
- 下請業者の技能工への支払い :労務費の基準に沿った適切な支払いを行うことで、技能工の確保が容易になり、現場の安全管理も向上します。
- 発注元との単価交渉 :下請として解体工事を請け負う場合、労務費の基準を根拠に単価交渉を行うことで、適正な請負代金を確保しやすくなります。
- 帳簿・記録の整備 :見積りの内訳に労務費を示し、記録を残しておくと、取引先への説明が容易になります。
岩手県内の工務店やリフォーム会社が解体事業に新規参入する際は、許可や登録とあわせて、この労務費への対応が経営課題になることが多いです。
岩手県内での許可取得と事業開始のステップ
事前準備で確認すべき実務上のポイント
解体工事を始める前に、以下の点を確認することが重要です:
- 既に持っている許可との関係
– 建設業許可の土木工事業・建築工事業・解体工事業のどれかを持っていれば、解体工事業の登録は要りません。これら以外の業種(内装仕上工事業など)だけなら、500万円未満の解体でも登録が必要です。
- 廃棄物の運搬と処理の方法
– 元請として自ら運ぶなら収集運搬業の許可は要らず、下請や他社に運ばせるなら許可業者との書面の契約とマニフェストを用意します。
- 技術者の配置可能性
– 許可なら営業所技術者、登録なら技術管理者になれる資格者や実務経験者が社内にいるか確認します。いない場合は、資格取得または採用が課題になります。
- 工事を行う区域
– 登録は工事を行う都道府県ごとに必要です。隣の県でも解体工事をするなら、その県の登録も受けます。
これらの準備ができていない状態で申請すると、補正指示や不許可のリスクが高まります。
申請後の運用管理と更新手続き
許可や登録を受けた後は、以下の運用管理が継続的に必要です:
- 5年ごとの更新 :建設業許可も解体工事業の登録も、有効期間は5年です。更新の手続きを忘れると効力を失い、事業を継続できなくなります。
- 技術者の継続配置 :営業所技術者や技術管理者がいなくなった場合は、速やかに別の適格者を置き、変更の届出をします。
- 標識と帳簿 :解体工事業者は、営業所と現場に標識を掲げ、営業所ごとに帳簿を備えて保存します(建設リサイクル法第33条・第34条)。
- 法令遵守体制の維持 :建設リサイクル法および廃棄物処理法の改正動向を注視し、体制の見直しを行います。
これらの運用管理は、許可取得と同じくらい重要です。法令違反が判明すると、登録の取消しや事業の停止、建設業許可の監督処分のリスクが生じます。
岩手県で解体工事業の許可を持つ会社は、岩手県の解体工事業の許可業者一覧で会社名や所在地から確かめられます。
よくある質問
Q1. 解体工事業の許可と建設業許可は何が違いますか?
「解体工事業の許可」は建設業許可の業種の1つで、500万円以上の解体工事を請け負うのに必要です。これとは別に、建設リサイクル法の「解体工事業の登録」があり、建設業許可(土木・建築・解体)を持たない業者が500万円未満の解体工事をするときに必要です。
Q2. 解体工事業の許可申請に必要な資格は何ですか?
建設業許可(解体工事業)の営業所技術者には、1級・2級土木施工管理技士、1級・2級建築施工管理技士(建築・躯体)、技術士、とび技能士、登録解体工事試験の合格などの資格か、10年以上の実務経験が必要です。あわせて、経営業務の管理を適正に行う体制(建設業の経営経験のある常勤の役員など)が求められます。
Q3. 解体工事業の許可取得までどのくらい時間がかかりますか?
審査の標準的な期間は、岩手県の案内で確かめてください。書類不備がある場合は補正の時間が加わります。書類の準備を早めに始め、事前に県の窓口に相談することをお勧めします。
Q4. 解体工事業の許可申請に必要な主な書類は何ですか?
建設業許可では、申請書、誓約書、経営経験を示す書類、営業所技術者の資格証や実務経験証明書、財務諸表、登記事項証明書などが必要です。解体工事業の登録では、技術管理者の資格か実務経験を示す書類などが必要です。詳細は岩手県の窓口で確認してください。
Q5. 既に建設業許可を持っていても解体工事業の許可が必要ですか?
持っている業種によります。土木工事業・建築工事業・解体工事業のどれかを持っていれば、500万円未満の解体に登録は要りません。500万円以上の解体工事を請け負うには、原則として解体工事業の許可が必要です(土木一式・建築一式の工事の一部として行う解体は除く)。それ以外の業種だけなら、500万円未満の解体でも登録が必要です。
まとめ

岩手県で解体工事を営むには、建設業許可(解体工事業)と建設リサイクル法の解体工事業の登録の違いを正確に理解することが第一歩です。500万円以上の解体工事には建設業許可が、許可(土木・建築・解体)を持たずに500万円未満の解体工事をするには登録が必要です。床面積80㎡以上の建物の解体は、金額にかかわらず届出と分別解体の対象です。どちらも有効期間は5年で、技術者の配置や標識・帳簿など継続的な運用管理が欠かせません。まずは岩手県の窓口に問い合わせ、自社の事業に合った手続きを確認することから始めましょう。
出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」(確認日 2026-09-28)
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