神奈川県で解体工事業を営む経営者の皆様の中には、後継者不在や高齢化により事業承継を検討されている方も多いのではないでしょうか。解体工事業許可は建設業許可の中でも特殊な位置づけにあり、事業承継やM&Aを進める際には許可の引継ぎ手続きが大きな課題となります。特に令和5年のインボイス制度導入以降、一人親方との取引関係が変化する中で、事業の継続性と許可の維持を両立させることが求められています。本記事では、神奈川県で解体工事業の事業承継を成功させるための許可取得・譲渡の実務ポイントと、インボイス制度への対応策、さらに一人親方対策まで具体的に解説します。
この記事は、神奈川県の解体工事業の会社が事業を引き継ぐときの実務に絞っています。業種を問わない承継の全体の流れは「建設会社の事業承継で失敗しない5つのステップ|後継者決定から建設業許可変更まで」、許可番号を引き継ぐ手続きは「許可番号を引き継げる?事業承継・M&Aで建設業許可はどうなるか」、埼玉県の解体工事業の承継は「埼玉県で解体工事業許可を取得する際の事業承継・M&A戦略|廃業vs継承の判断基準」で解説しています。
解体工事業許可と事業承継の基礎知識
解体工事業の許可制度の特徴
解体工事業は平成26年の建設業法改正で新しい業種になりました(平成28年6月施行・経過措置は令和元年5月末まで)。それ以前は「とび・土工工事業」の許可で解体工事を行うことができましたが、現在は500万円以上(税込)の解体工事を請け負うには、解体工事業の建設業許可が必要です。建設リサイクル法に基づく解体工事業登録は、500万円未満の解体工事を請け負う、許可の無い業者のためのものです。
神奈川県建設業において解体工事業を営む事業者は、県知事許可(営業所が神奈川県内だけにある場合)または国土交通大臣許可(営業所が2つ以上の都道府県にある場合)のいずれかを取得しています。許可取得には経営業務管理責任者や専任技術者(2024年12月から営業所技術者)などの人的要件、財産的基礎要件を満たす必要があり、これらの要件は事業承継時にも引き継がれなければなりません。
事業承継における許可の取扱い
建設業許可は法人または個人事業主に対して与えられるものであり、許可そのものを直接譲渡することはできません。そのため、事業承継の形態によって許可の取扱いが大きく異なります。
株式譲渡による承継の場合、法人格が継続するため許可番号はそのまま維持されます。ただし、代表者や経営業務管理責任者の変更届出が必要です。一方、事業譲渡の場合は、効力が生じる前に認可を受ければ許可を引き継げます(建設業法第17条の2)。個人事業主の事業を後継者が引き継ぐ場合も、事前の認可(事業譲渡)や、死亡の後30日以内に申請する相続の認可(第17条の3)で許可を引き継ぐ仕組みがあります。
神奈川県での事業承継・M&A実務のポイント

事業承継の選択肢と許可維持の戦略
神奈川県で解体工事業の事業承継を進める際には、以下の3つの選択肢があります。
親族内承継では、後継者が経営業務管理責任者や営業所技術者(2024年12月13日までの呼び名は専任技術者)の要件を満たしているかを早期に確認することが重要です。要件を満たしていない場合は、現経営者のもとで実務経験を積ませる期間が必要となります。経営業務管理責任者には原則5年以上の経営経験が求められますが、令和2年の建設業法改正により、経営業務管理責任者を補佐する者を置くことで要件が緩和されています。
従業員承継(MBO)の場合、従業員が株式や事業を買い取る資金調達が課題となります。日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金など、公的融資制度を活用できる可能性があります。また、従業員がすでに営業所技術者として実務経験を積んでいれば、技術者要件はクリアしやすいという利点があります。
第三者承継(M&A)では、建設業界に特化したM&A仲介業者を活用することで、許可要件を満たす譲受企業とのマッチングが可能です。解体工事業のM&Aの価格は、許可の有無や取引先との関係性、保有設備の状態により評価は大きく変動します。
許可承継時の具体的手続きと注意点
株式譲渡による事業承継の場合、神奈川県に対して「建設業許可申請書の変更届出書」を提出します。代表者変更は30日以内、経営業務管理責任者や営業所技術者の変更は2週間以内に届出が必要です。届出が遅れると罰則(建設業法第50条)や監督処分の対象になるため、承継のスケジュールに組み込んでおく必要があります。
事業譲渡の場合も、譲渡の効力が生じる前に許可行政庁の認可を受ければ、譲受側が許可を引き継げます(建設業法第17条の2)。認可を受けないと新規の許可を取り直すことになり、空白期間が工事契約に支障をきたします。この問題を回避するため、事前に譲受側で許可を取得してから事業譲渡を実行するなどの対応策を検討します。
個人事業主から法人への転換(法人成り)も、同じ認可で引き継げます。個人事業主としての経営の経験は、法人の経営業務の管理責任者等の経験にも数えられます。
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インボイス制度が解体工事業に与える影響
令和5年10月にインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入されて以降、解体工事業における一人親方との取引関係に大きな変化が生じています。免税事業者である一人親方から仕入れを行う場合、経過措置により仕入税額控除の一部が認められています(令和8年9月までは80%・令和8年10月からは70%・令和10年10月からは50%・令和12年10月からは30%=令和8年度税制改正の後の割合・国税庁)。令和13年10月以降は控除ができなくなります。
これにより、元請業者は一人親方に対してインボイス発行事業者(課税事業者)への転換を求めるか、消費税分の値引きを要請するケースが増加しています。一人親方側は、課税事業者になると消費税の納税義務が発生し、実質的な収入減となる負担を抱えています。
事業承継における一人親方の位置づけ
解体工事業の事業価値を評価する際、協力業者である一人親方のネットワークは重要な資産となります。しかし、インボイス制度の影響で一人親方との取引関係が不安定になると、事業承継後の施工体制に影響が出る可能性があります。
事業承継を検討する際には、以下の対策を事前に実施しておくことが重要です。
- 主要な一人親方の雇用化:技術力が高く、長期的な協力関係にある一人親方を直接雇用することで、施工体制を安定させます
- 法人化支援:複数の一人親方をまとめて協力会社として法人化を支援し、課税事業者として取引を継続する体制を構築します
- 価格交渉の透明化:インボイス制度による負担増を考慮した適正な外注費設定を行い、協力業者との信頼関係を維持します
事業承継を見据えた人材採用・育成戦略
後継者不在の課題に対しては、早期からの人材採用・育成が不可欠です。建設業界全体で人手不足が深刻化する中、解体工事業でも若手人材の確保が事業継続の鍵となります。
近年、高卒採用において「体験型インターンシップ」や「現場見学会」を実施する企業が増加しています。従来の座学中心の説明会ではなく、実際の解体現場で重機操作体験や安全管理の実習を行うことで、仕事の魅力を直接伝える手法です。こうした取り組みにより、採用後の早期離職率が低下し、将来の営業所技術者候補を育成できます。
また、解体工事施工技士などの資格取得支援制度を整備し、従業員のキャリアパスを明確にすることで、事業承継時の技術者要件を満たす人材を計画的に育成できます。
神奈川県で解体工事業の許可を持つ会社は、神奈川県の解体工事業の許可業者一覧で会社名や所在地から確かめられます。
よくある質問

Q1. 解体工事業の事業承継で許可はどうなりますか?
建設業許可は法人または個人事業主に与えられるため、許可そのものを直接譲渡することはできません。株式譲渡なら法人格が継続するため許可番号はそのまま維持され、代表者などの変更届で対応します。事業譲渡や合併・分割の場合は、効力が生じる前に許可行政庁の認可を受ければ許可を引き継げます(建設業法第17条の2)。認可を受けないと新規の許可を取り直すことになるため、認可の手続きを効力が生じる前に済ませる計画が必要です。
Q2. 事業承継前に技術管理者の要件確認は必要ですか?
必須です。建設業許可(解体工事業)で営む会社は、営業所技術者(解体工事施工技士・施工管理技士・とび技能士など、または実務経験10年以上)を置く要件を承継後も満たす必要があります。許可を持たず建設リサイクル法の解体工事業登録で営む場合は、技術管理者(実務経験8年以上〔学歴で短くなる〕か解体工事施工技士などの資格者)が要ります。承継先に要件を満たす人がいなければ、技術者に残ってもらうか新たに確保します。
Q3. 神奈川県での解体工事業登録の承継手続きの流れは?
建設リサイクル法の解体工事業登録では、株式譲渡の場合は代表者変更等の変更届を30日以内に提出します。事業譲渡では譲受企業が新規登録申請を行い、登録票交付後に営業開始となります。登録の窓口は神奈川県の案内で確かめてください。
Q4. 解体工事の契約引継ぎで注意すべき点は何ですか?
建設リサイクル法の解体工事業登録の場合は、既存契約は原則として新登録業者への自動移行ができません。顧客への事前説明と契約変更の同意取得が必要です。また建設リサイクル法の届出事項変更や、元請業者への通知も必須です。登録空白期間が生じると契約違反となる恐れがあるため、スケジュール管理が重要です。
Q5. 事業承継時に解体工事業の財産的基礎要件は変わりますか?
財産的基礎は建設業許可の要件で、解体工事業の登録にはありません。許可を引き継ぐ場合は、譲受企業が許可の財産的基礎(自己資本500万円以上または資金調達能力)を満たす必要があります。直前決算の貸借対照表や金融機関の預金残高証明書等で確認されます。承継を機に財務体質を整備し、基準を満たす状態で手続きを進めることが事業の安定継続に不可欠です。
まとめ
解体工事業の事業承継を成功させるためには、許可要件の維持、インボイス制度への対応、協力業者ネットワークの引継ぎという3つの要素を同時に管理する必要があります。株式譲渡であれば許可番号は維持されますが、事業譲渡や個人事業からの承継では、認可の手続きを効力が生じる前に済ませるスケジュール管理が不可欠です。また、一人親方対策として雇用化や法人化支援を進めることで、事業価値を高め、円滑な承継を実現できます。さらに、若手人材の採用・育成を通じて将来の後継者候補を育てることも重要な戦略となります。事業承継は数年単位の準備期間が必要ですので、まずは自社の許可要件と協力業者の状況を整理することから始めましょう。
出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」(確認日 2026-09-28)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。
工事を頼む先や協力会社を探すときは、神奈川県の建設業許可業者を業種別に調べられる神奈川県の建設会社一覧もお使いください。
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