2026年1〜5月の期間で、塗装・防水工事業の倒産が80件に達し、2025年に次ぐ高い水準となりました(帝国データバンク)。材料費の上昇などが背景にあるとみられます。この動向は、塗装・防水工事と密接に関わる内装仕上げ工事業にも大きな影響を及ぼす可能性が高まっています。原材料コストの増加は、内装材の調達価格にも波及しており、価格転嫁ができない中小企業ほど経営が圧迫される状況が続いています。本記事では、塗装・防水工事業の倒産動向の背景を分析し、内装工事業が取るべき経営対策と、現場で求められる安全管理・コンプライアンス強化の実務ポイントを解説します。経営基盤を強化し、リスクを最小限に抑えるために、今すぐ着手すべき施策を確認しましょう。
塗装・防水工事業の倒産の高止まりと内装業界への波及
2026年1〜5月で80件の倒産が示す業界構造の課題
帝国データバンクによると、2026年1〜5月の塗装・防水工事業の倒産は80件で、前年同期(87件)よりは少ないものの、2025年に次ぐ高い水準です(2026年6月8日公表)。塗料や防水材料の値上がりが続くと、価格に転嫁しにくい施工業者ほど利益が圧迫されます。
規模の小さい会社ほど、発注元への価格転嫁が難しいことがあります。人手不足による人件費上昇も重なり、固定費の増加に耐えられない企業が倒産に至るケースが増加しています。建設業界全体で見ても、2026年上半期は資材価格の高止まりが続いており、経営体力の弱い企業から淘汰される傾向が顕著です。
内装仕上げ工事業への連鎖リスクと対策の必要性
塗装・防水工事業の経営危機は、内装仕上げ工事業にも波及するリスクが高まっています。内装工事では、壁紙・床材・建材塗装など、石油化学製品を原料とする資材を多用します。これらの調達コストは塗装・防水材料と同様に上昇傾向にあり、内装工事業の利益率にも直接影響を及ぼしています。
内装工事業が取るべき対策として、以下の3点が重要です。第一に、取引先との価格交渉を適切に行い、原材料費上昇分を適正に見積もりに反映させることです。第二に、複数の材料供給ルートを確保し、特定の仕入れ先に依存しない調達体制を構築することです。第三に、自社の財務状況を定期的に把握し、キャッシュフローの悪化兆候を早期に察知する経営管理体制を整備することです。
また、元請企業との長期的な信頼関係を構築し、適正な工事費の確保に努めることも経営基盤強化の鍵となります。安値受注を避け、品質と安全性を重視した施工体制を維持することが、持続可能な経営につながります。
内装工事現場で求められる安全管理の徹底

足場・転落防止対策の法令遵守と実務ポイント
2026年6月6日には、埼玉県川口市役所の敷地内で外階段の塗装工事中に、2人で作業していた70歳の作業員が高さ約3メートルから転落して亡くなりました(埼玉新聞 2026年6月8日)。労働安全衛生規則第518条では、高さ2m以上の箇所で作業を行う場合、作業床の設置や墜落制止用器具の使用が義務付けられています。
内装工事現場においても、天井仕上げ・照明器具取付け・壁面上部の施工など、高所作業は日常的に発生します。小規模な改修工事であっても、法令で定められた安全基準を遵守することが不可欠です。具体的には、以下の対策を徹底する必要があります。
足場設置の基本要件
- 高さ2m以上の作業では必ず作業床を設置する
- 作業床の幅は40cm以上確保し、床材の隙間は3cm以下とする
- 手すり・中さん・幕板を設置し、墜落リスクを最小化する
- 脚立や踏み台だけでの作業は、社内の決まりとして原則禁止とする
熱中症対策と夏季労務管理の実務
内装工事では、密閉された室内空間や断熱材施工時の高温環境での作業が多く、熱中症リスクが特に高い業種の一つです。2025年6月1日からは、熱中症のおそれがある作業(WBGT 28度以上または気温31度以上の環境で連続1時間以上など)について、早く見つけて対処する体制づくりが事業者に義務付けられました(労働安全衛生規則第612条の2)。WBGT値(暑さ指数)を測って作業を管理することが大切です。
夏季の内装工事現場で実施すべき熱中症対策として、以下の項目を徹底しましょう。
環境管理の実施項目
- WBGT計を用いた作業環境の定期測定(2時間ごと)
- 扇風機・スポットクーラーによる作業空間の温度管理
- 作業時間の見直し(早朝・夕方への集中)
- 水分・塩分補給用の設備設置と休憩時間の確保
作業員の健康管理
- 作業開始前の体調チェック(顔色・発汗状態の確認)
- 単独作業の禁止と相互監視体制の構築
- 新規入場者・高齢作業員への特別な配慮
- 熱中症の初期症状に関する教育の実施
気温が高い日には無理な工程を組まず、作業員の安全を最優先する判断が経営者に求められています。
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大阪万博での摘発事例から学ぶ許可制度の重要性
2025年に開かれた大阪・関西万博のタイ館の建設工事で、群馬県高崎市の建設会社が建設業許可を得ずに電気設備の工事を請け負った疑いで、2026年6月に経営者ら2人と会社が書類送検されました。この事例は、建設業許可制度の理解不足が深刻な法令違反につながることを示しています。
建設業法第3条では、建設工事を請け負う場合には、軽微な工事を除き建設業許可が必要と定められています。内装仕上げ工事業の許可区分は「内装仕上工事業」に該当し、請負金額が500万円以上(税込)の工事を行う場合は必ず許可が必要です。また、元請として下請に出す代金の総額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上となる場合は、一般建設業許可ではなく特定建設業許可が必要になります。
無許可営業が発覚した場合、建設業法第47条により3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(2025年6月から懲役は拘禁刑)が科せられます。さらに、法人の場合は1億円以下の罰金が科される可能性があります。過去の行政処分事例を見ても、許可要件を満たさない状態での営業は、企業の社会的信用を大きく損なう結果を招いています。
許可取得と更新時のチェックポイント
内装工事業が建設業許可を取得・維持するためには、以下の要件を継続的に満たす必要があります。
常勤役員等(経営業務の管理体制)の設置
- 建設業に関して5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者(2020年10月の改正から、内装工事業などの業種ごとの経験は問われません)
- または建設業に関して6年以上、経営業務の管理責任者に準ずる地位で補佐した経験を有する者 など
- 常勤の役員または個人事業主本人であることが条件
専任技術者(2024年12月から営業所技術者)の配置
- 1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(種別「仕上げ」)などの国家資格保有者
- または内装工事業で10年以上の実務経験を有する者
- 営業所ごとに専任で配置することが必須
財産的基礎の確保
- 一般建設業許可では自己資本500万円以上
- または500万円以上の資金調達能力の証明
- 更新時にも財務状況の確認が実施される
許可の有効期間は5年間であり、更新手続きは期限の30日前までに行う必要があります。更新を怠ると許可が失効し、新規許可の取得が必要になるため、余裕を持った準備が重要です。
平屋住宅需要の増加と内装工事の新たな機会

大空間・大屋根を活かした内装設計のトレンド
平屋住宅では、大屋根を生かした大空間の設計も見られます。高齢化社会の進展により、バリアフリー性能に優れた平屋は、幅広い世代から支持を得ています。
平屋住宅の内装工事では、以下の特徴を活かした施工提案が求められています。
勾配天井を活かした開放的空間の演出
- 大屋根の高さを活かした吹き抜け空間の設計
- 天井高を利用した採光計画と照明配置
- 木質感を強調した仕上げ材の選定
- 梁や構造材を見せるデザインの提案
生活動線を考慮したゾーニング
- ワンフロアの利点を活かした回遊動線の確保
- プライベート空間とパブリック空間の適切な区分
- 収納計画の充実による生活空間の最大化
- 将来的な間取り変更に対応できる可変性の確保
市街地近郊での平屋建築では、限られた敷地面積の中で快適性を実現する内装提案力が差別化のポイントとなります。建築主のライフスタイルに合わせた柔軟な設計対応力が、受注機会の拡大につながります。
よくある質問
Q1. 塗装・防水工事業者の倒産が増えている原因は何ですか?
主な原因は人件費高騰と資材価格の上昇です。特に職人不足による外注費増加、ウレタンやシーリング材などの原材料費上昇が利益を圧迫しています。加えて受注競争による低価格受注も経営を悪化させています。適正価格での受注と原価管理の徹底が重要です。
Q2. 協力業者の倒産リスクはどのように見極めればよいですか?
定期的な与信管理として、帝国データバンクなどの信用調査、決算書の確認、支払い遅延の有無チェックが基本です。現場での職人数減少、安値受注の増加、連絡の遅れなども危険信号です。複数の協力業者を確保し、依存度を分散させることでリスクを軽減できます。
Q3. 協力業者が倒産した場合の工期遅延対策を教えてください
契約時に代替業者の確保を想定した工期設定が重要です。協力業者リストを常に更新し、緊急時の連絡体制を構築しておきましょう。また工事保証保険の加入確認や、重要工事では中間検査を実施して進捗を把握することで、早期に問題を発見できます。
Q4. 内装業界への波及リスクとは具体的にどのような影響ですか?
塗装・防水工事は内装仕上げの前工程のため、業者倒産で工期全体が遅延します。代替業者探しのコスト増、品質トラブルのリスクも発生します。さらに連鎖的な資金繰り悪化で内装業者自体も経営難に陥る可能性があり、プロジェクト全体の採算悪化につながります。
Q5. 自社の工事原価管理で注意すべきポイントは何ですか?
外注費と材料費の変動を月次で把握し、見積時の原価率と実行予算を比較検証することが必須です。特に追加工事や仕様変更時の原価計算を厳格化し、適正な請求漏れを防ぎます。協力業者の値上げ要請には市況を確認し、発注者への価格転嫁交渉も検討しましょう。
まとめ

塗装・防水工事業の倒産が高い水準で続いていることは、内装工事業にも経営リスクとして波及しています。原材料費高騰への対応として、適正な価格転嫁と複数の調達ルートの確保が不可欠です。同時に、現場では足場・転落防止対策や熱中症対策など、法令に基づく安全管理の徹底が求められています。建設業許可制度の遵守は企業存続の基本であり、無許可営業は重大な法令違反となります。一方、平屋住宅需要の増加は内装工事業にとって新たなビジネスチャンスであり、大空間を活かした提案力が競争力の鍵となります。まずは自社の建設業許可要件と安全管理体制を今一度見直すことから始めましょう。
工事を頼む先や協力会社を探すときは、全国の塗装工事業の許可業者を都道府県別に調べられる塗装工事業の許可業者一覧もお使いください。
出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」・労働安全衛生法(e-Gov 法令検索)(確認日 2026-10-02)・帝国データバンク「塗装・防水工事の倒産動向(2026年1-5月)」・千葉テレビ(川口市役所の外階段での転落)・東京商工リサーチ「内装工事業の倒産増加」(確認日 2026-10-19)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。
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