大阪府は2025年大阪・関西万博に関連する工事で、建設業許可を得ずに営業行為を行った3社に対して営業停止処分を下しました。特に大阪府内で事業を展開する建設会社や工務店、リフォーム会社にとって、建設業許可の取得と適正な維持管理は事業継続の根幹に関わる問題です。本記事では、今回の無許可営業事案の詳細を振り返りながら、大阪府における建設業許可制度の重要性、無許可工事のリスク、そして適切な許可取得と運用のポイントを実務的な視点から解説します。この記事を読むことで、自社の許可状況を見直し、法令遵守の体制を整えるための具体的な知識が得られます。
大阪万博工事における無許可営業事案の概要
3社が営業停止処分を受けた背景
大阪府は、2025年大阪・関西万博の海外パビリオン建設工事に関連して、建設業法に違反する無許可営業を行った3社に対して営業停止処分を行いました。報道によると、停止の期間は30日から3日で、海外パビリオンの無許可工事をめぐる府の処分はこれで計8社になりました。処分は建設業法に基づくもので、軽微な工事を除き建設業を営むには許可が要る(第3条)という基本に反したことが理由です。
具体的には、これらの業者は建設業許可を持たずに500万円以上の工事を請け負い、施工を行っていました。建設業法では、軽微な建設工事(建築一式工事の場合は1,500万円未満、その他の工事は500万円未満)を除き、建設業を営む者は国土交通大臣または都道府県知事の許可を受ける必要があります。大阪万博という国際的なプロジェクトにおいて、このような法令違反が発覚したことは、業界全体の信頼性を損なう重大な事態といえます。
ほかの処分と法的影響
万博の海外パビリオンでは、タイ館の電気設備の工事(約4,400万円)を許可なしで請け負った群馬県高崎市の建設会社も、2025年9月に大阪府から営業停止30日の処分を受けました。この件では2026年6月に、大阪府警が経営者ら2人と会社を書類送検しています。
営業停止処分を受けた企業は、処分の期間中、新たな請負契約を結べません(処分の前に結んだ契約の工事は、原則として続けられます)。さらに、無許可工事を発注した元請業者にも監督責任が問われる可能性があり、下請業者の許可状況の確認は元請業者の重要な義務となっています。この事案は、大阪府で建設業許可を取ることが単なる形式的な手続きではなく、事業活動の法的基盤であることを改めて示しました。
建設業許可の種類と取得要件
一般建設業許可と特定建設業許可の違い
建設業許可には「一般建設業許可」と「特定建設業許可」の2種類があります。この区分は、下請契約の規模によって決まります。
一般建設業許可は、発注者から直接請け負った1件の工事で下請に出す代金の合計が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)未満の場合や、下請として工事を請け負う場合の許可です。多くの中小建設会社や専門工事業者はこの許可で事業を行っています。
一方、特定建設業許可は、発注者から直接請け負った1件の工事について、下請代金の総額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上となる場合に必要です。大型プロジェクトを元請として受注する企業は、この許可を取得することで事業範囲を大きく拡大できます。実際に、特定建設業許可を基盤として大型建設案件やメンテナンス事業に参入する企業も増えています。
大阪府で建設業許可を取得するための要件
大阪府で建設業許可を取得するためには、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります。
- 経営業務管理責任者の設置:建設業の経営経験を一定期間有する者を常勤で配置すること
- 専任技術者(2024年12月から営業所技術者)の設置:営業所ごとに、許可を受けようとする建設業に関する資格または実務経験を持つ技術者を専任で配置すること
- 財産的基礎または金銭的信用:一般建設業許可の場合は自己資本500万円以上または500万円以上の資金調達能力があること
- 誠実性:請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと
- 欠格要件に該当しないこと:暴力団員等や破産者で復権を得ていない者などの欠格事由に該当しないこと
これらの要件は厳格に審査されるため、建設業許可の申請を進める際には、事前の十分な準備と正確な書類作成が不可欠です。
無許可工事のリスクと法的責任
無許可営業に対する罰則と処分
建設業法第47条では、無許可営業に対して「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」という刑事罰が規定されています。法人の場合は、行為者だけでなく法人自体も「1億円以下の罰金」に処される可能性があります。
さらに、行政処分として営業停止処分や許可の取消処分が下されることもあります。営業停止期間中は新規契約が締結できないだけでなく、既存の取引先からの信用も失い、事業継続そのものが困難になるおそれがあります。今回の万博関連の事案でも、3社は30日から3日の営業停止処分を受けました。
発注者・元請業者が負うリスク
無許可業者に工事を任せると、任せた側にもリスクが生じます。元請の建設業者が、許可の要る金額(500万円以上。建築一式工事は1,500万円以上など)の下請契約を無許可の業者と結ぶと、元請側が建設業法第28条の指示や営業停止の処分の対象になります。無許可で請け負った業者には、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(第47条)があります。
元請業者は、下請業者が適切な許可を持っているかを確かめましょう。この確認を怠り、無許可業者を使用した場合、元請業者自身も監督責任を問われ、指示処分や営業停止処分を受ける可能性があります。大阪府内で工事を行う企業は、下請業者の選定時に必ず建設業許可の有無と許可業種を確認し、許可通知書や許可証明書のコピーを保管することが重要です。
大阪府での建設業許可取得と適切な維持管理
建設業許可申請の実務的な手順
建設業許可の申請は、大阪府知事の許可の場合、大阪府咲洲庁舎1階の窓口(建築振興課)で行います。新規の申請は窓口でだけ受け付けています。審査の標準処理期間は、受け付けてから30日(年末年始と大型連休を除く)です。書類をそろえる期間も要るため、工事受注の予定がある場合は早めに準備します。
申請に必要な主な書類は以下の通りです。
- 建設業許可申請書
- 役員の略歴書
- 営業所の写真
- 専任技術者の資格証明書または実務経験証明書
- 財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)
- 納税証明書
- 定款の写し
- 登記簿謄本
特に専任技術者の実務経験証明では、工事経歴を詳細に証明する必要があり、過去の契約書や注文書、請求書などの資料が求められます。書類に不備があると審査が長引くため、行政書士などの専門家に相談することも有効な選択肢です。
許可取得後の更新・変更届出の重要性
建設業許可の有効期間は5年間です。更新の申請は、有効期間が切れる30日前までに出します。期限内に申請していれば、審査の途中で有効期間が過ぎても、結果が出るまで許可は続きます。申請しないまま有効期間が過ぎると許可は失効し、許可の要る工事を新たに請け負えなくなります。
また、許可取得後に以下のような変更があった場合は、速やかに変更届出を提出する義務があります。
- 商号または名称の変更
- 代表者の変更
- 役員の変更
- 営業所の新設・廃止・移転
- 専任技術者の変更
- 資本金額の変更
これらの届出を怠ると、更新時に手続きが煩雑になるだけでなく、届け出ないこと自体が建設業法第50条の罰則(6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)の対象になります。大阪府では、変更届出の期限や提出書類が厳格に定められているため、社内での管理体制を整えることが不可欠です。

まとめ
大阪万博工事における無許可営業事案は、建設業許可制度の重要性を改めて業界全体に示す出来事となりました。本記事で解説した重要ポイントは以下の3点です。
- 無許可工事は刑事罰・行政処分の対象となり、事業継続に致命的な影響を及ぼすこと
- 建設業許可には一般と特定の区分があり、事業規模や受注形態に応じた適切な許可の取得が必要であること
- 許可取得後も5年ごとの更新や変更届出など、継続的な管理が法令遵守の前提であること
大阪府内で建設業を営むすべての事業者は、自社の許可状況を今一度確認し、無許可工事のリスクを回避する体制を整えることが求められます。まずは自社の建設業許可の有効期限と許可業種を確認し、不足があれば専門家に相談するところから始めましょう。
出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」(確認日 2026-09-28)・大阪府の処分の報道(産経新聞・読売新聞・日本経済新聞)
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