台風や集中豪雨で工事が遅れたとき、「不可抗力だから追加費用は払わない」と元請に言われた経験のある下請業者は少なくありません。建設業法は、天災その他の不可抗力による工期の変更と損害の負担の決め方を、請負契約の書面に必ず書くよう求めています(第19条第1項第7号)。そして国の「建設工事標準下請契約約款」は、下請が注意を尽くしていた損害は元請が負担する形を示しています。この記事では、条文と約款に沿って、工事が遅れたときの責任の分け方と、もめないための契約書と書面の残し方を解説します。
例:台風で工事が3週間止まったとき、費用はどう分かれるか
【説明のための例(実在の会社・出来事ではありません)】
たとえば(想定の例)、解体工事の下請会社の現場が、台風の接近で3週間止まったとします。止まっている間も、仮設の養生を延ばす費用や、重機を置いておく費用がかかります。
- 元請の言い分:「台風は不可抗力だから、追加費用は払えない」
- 下請の弱み:契約書に不可抗力の定めが無く、工期の延長を書面で求めてもいなかった
- 起きやすい結果:費用の根拠を示せず、話し合いが長引き、下請が多くを負担して終わる
この事例から得られる教訓は、「不可抗力条項の契約書への明記」と「書面による工期変更申請」の2点です。
建設業法と標準下請契約約款が定める不可抗力の扱い
建設業法第19条第1項は、請負契約の書面に書くことを16項目で決めています。その第7号が「天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め」です。中身は当事者が決めますが、国の中央建設業審議会が作った「建設工事標準下請契約約款」が、目安として次の形を示しています。
- 工期の延長(約款 第19条):下請は、天候の不良など自分の責めによらない理由で工期内に終わらないときは、遅れずに理由を書いた書面で工期の延長を求めることができる
- 工事の中止と増加費用(約款 第18条):天災その他の不可抗力で工事ができないときは元請が工事を中止させ、必要なら協議して工期や代金を変える。現場を保つ費用や、作業員・機械を待たせておく費用などの増加費用は元請が負担する(額は協議して決める)
- 不可抗力による損害(約款 第26条):出来形・現場の仮設物・搬入済みの材料・機械器具(元請が確認したもの)が損害を受けたときは、下請が善良な管理者の注意を怠った部分を除き、元請が負担する。片付けの費用も元請の負担
- 押し付けの禁止:元請が取引上の地位を利用して、原価に満たない代金で契約を結ぶことは禁じられている(建設業法第19条の3)
書面を交わす前に、相手の会社の許可の業種と有効期限は、都道府県別・業種別の建設会社の一覧から会社ページを開いて確かめておけます(載っている情報は、会社ページの「データの更新日」の時点のものです)。
建設会社・工務店の方へ
ホームページの制作費は0円。かかるのは1万円だけです
1万円(税込・1回だけ)に、12か月のサーバーと .com ドメインの取得・初年度の費用を含みます。
制作費0円で申し込む ›下請け契約書に書くべき不可抗力条項の文言例
次回の契約書更新または新規契約書作成時に、以下の条項を必ず盛り込んでください。
- 不可抗力の定義条項:「台風・暴風雨・集中豪雨・洪水・地震その他天変地異により、甲乙双方の責に帰すことができない損害が生じた場合を不可抗力とする」
- 費用負担条項:「不可抗力により生じた追加費用(養生延長・資材保管・重機待機等)については、甲乙協議のうえ分担する。乙(下請)が一方的に全額負担することを義務づけない」
- 工期変更条項:「不可抗力による工事中断が発生した場合、乙は書面により甲に工期延長を申請でき、甲は合理的な理由なくこれを拒否できない」
台風前に元請・下請で行う書面手続きのポイント
不可抗力トラブルの多くは「書面が残っていない」ことが原因です。台風接近が確実になった時点で、以下の書面手続きを迅速に行ってください。
- 工事中断通知(下請→元請):気象警報発令日時・中断開始日時・想定再開日を記載。メール・書面で送付し、送達確認を取る
- 工期延長申請書:停止期間の根拠(警報発令証明・現場写真)を添付して提出
- 追加費用明細書:発生した追加費用を項目別に記載し、証拠書類(重機待機の見積書等)を添付
- 協議結果の書面化:口頭での合意内容は必ず書面に残す。メールでも可。「言った・言わない」のトラブルを防ぐ
「不可抗力」と「下請の責任」の分かれ目
台風の被害でも、すべてが不可抗力になるわけではありません。約款 第26条は「下請負人が善良な管理者の注意を怠ったことに基づく部分」を除いています。台風が来ると分かっていたのに対策をしていなかった分は、下請の負担になりえます。
| 場面 | 考え方の目安 |
|---|---|
| 予報が出てから、養生シートを外し資材を固定していたのに、足場の一部が壊れた | 注意を尽くしていた損害=不可抗力として元請の負担になりやすい |
| 予報が出ていたのに、シートを張ったまま・資材を置いたままで飛ばされた | 注意を怠った部分=下請の負担になりやすい |
| 元請が工事を止め、重機と作業員を待たせた | 中止に伴う増加費用=元請の負担(額は協議) |
| 大雨で遅れ、工期内に終わらない | 下請が書面で工期の延長を求める。遅れの理由と日数を示す |
だからこそ、台風の前に何をしたかの記録(予報を確認した時刻・シートを外した写真・資材を固定した写真)が、下請が「注意を尽くしていた」ことを示す一番の材料になります。
元請が知っておきたい「工期の決め方」の決まり
- 著しく短い工期の禁止(建設業法第19条の5):注文者は、通常必要な期間に比べて著しく短い工期で契約してはならない。台風で遅れた分を取り戻すために、無理な工期を下請に押し付けることも同じ考え方で問題になる
- 契約の前の情報の通知(建設業法第20条の2):注文者は、地盤の沈下など工期や代金に影響する事象が起きるおそれがあると知っているときは、契約の前に建設業者へ知らせる。建設業者も、資材の高騰などのおそれがあるときは契約の前に注文者へ知らせ、起きたときは工期や代金の変更の協議を申し出ることができる
- 変更は書面で(建設業法第19条第2項):工期や代金を変えたときは、その内容を書面にして互いに交わす。口約束のままにしない
まとめ:台風・大雨の工期遅延で経営者が守るべき3点
- 契約書に不可抗力条項を必ず記載する:条項がなければ交渉で不利になる。次の契約書更新から必ず追加する
- 台風接近時は即座に書面で通知する:通知のタイミングと内容が、費用分担交渉の根拠になる
- 追加費用は詳細に記録する:証拠書類なしの追加費用請求は認められない。発生した費用を都度記録する
次のアクション: 現在使用している下請け契約書の不可抗力条項を今すぐ確認し、記載がない場合は行政書士等に相談して改訂してください。
よくある質問
Q: 不可抗力条項がない契約書でも台風による工期延長を主張できる?
建設業法第19条第1項第7号は、不可抗力による工期の変更と損害の負担を契約書に書くよう求めています。書かれていなくても、国の建設工事標準下請契約約款 第19条は、天候の不良など下請の責めによらない理由で工期内に終わらないときに、書面で工期の延長を求められる形を示しており、これを根拠に協議を求めることができます。遅れの理由と日数を書いた書面を、遅れずに出しておくことが大切です。
Q: 台風対策で発生した追加費用は誰が負担するのが原則?
国の建設工事標準下請契約約款では、工事を中止したときに現場を保つ費用や作業員・機械を待たせる費用などの増加費用は元請が負担し(第18条)、出来形・仮設物・搬入済みの材料・機械器具の損害は、下請が善良な管理者の注意を怠った部分を除き元請が負担する(第26条)形になっています。実際の負担は契約の定めで決まるため、契約書に不可抗力の定め(建設業法第19条第1項第7号)を書いておくことが大切です。
出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」(確認日 2026-10-02)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。
あわせて読みたい
- 台風・大雨前の足場点検チェックリスト|強風と浸水それぞれの実務手順
- 台風・大雨で現場が被害を受けたときの保険請求7ステップ|期限・書類・査定交渉
- 公共工事の資材高騰分を発注者に請求する手順|元請が使うスライド条項の申請5段階
都道府県から建設業許可業者を探す
全国の建設業許可取得業者を都道府県・業種から検索できます。
自社の施工事例は、検索で見つけてもらうにはどう載せればいい? → 作成から更新まで頼めるWordPress作成代行センター
建設会社・工務店の方へ
ホームページの制作費は0円。かかるのは1万円だけです
1万円(税込・1回だけ)に、12か月のサーバーと .com ドメインの取得・初年度の費用を含みます。
制作費0円で申し込む ›