台風や集中豪雨で工事が遅延した場合、「不可抗力だから追加費用は払わない」と元請に言われた経験のある下請業者は少なくありません。しかし建設業法では、不可抗力による損失負担のルールが定められており、一方的に下請が費用を負担する必要はありません。2026年現在の建設業法に基づいて、工事遅延時の責任分担と、トラブルを防ぐ契約書の書き方を解説します。
事例:台風で工期3週間遅延——元請と下請はどう費用負担したか
【仮名事例:静岡県・解体工事業者 A社(従業員12名)の場合】
2025年9月、台風14号接近により静岡県の現場が3週間停止。工期遅延による追加費用(仮設養生の延長・重機の待機費用)が計170万円発生しました。
- 元請の主張:「台風は不可抗力だから追加費用は払えない。下請の責任で対処してほしい」
- A社の問題点:契約書に不可抗力条項の記載がなく、工期変更の書面申請もしていなかった
- 結果:約80万円を自己負担。残りは元請との交渉で折半となったが、書面がなかったため交渉は長期化した
この事例から得られる教訓は、「不可抗力条項の契約書への明記」と「書面による工期変更申請」の2点です。

建設業法上の不可抗力規定——第19条の3と2026年現在の解釈
建設業法第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)の関連通達と、国土交通省「建設工事標準下請契約約款(2024年改正)」では、以下のように定められています。
- 不可抗力の定義:台風・洪水・地震等、当事者の責めに帰すことができない事由により損害が生じた場合
- 費用負担の原則:不可抗力による損失は発注者(元請)と下請で協議して分担する。下請が一方的に全額負担する契約条項は無効(建設業法第19条の4・不当な経済的不利益の禁止)
- 工期変更の権利:不可抗力による遅延は、下請業者に工期延長の申請権がある(標準下請契約約款第17条)

下請け契約書に書くべき不可抗力条項の文言例
次回の契約書更新または新規契約書作成時に、以下の条項を必ず盛り込んでください。
- 不可抗力の定義条項:「台風・暴風雨・集中豪雨・洪水・地震その他天変地異により、甲乙双方の責に帰すことができない損害が生じた場合を不可抗力とする」
- 費用負担条項:「不可抗力により生じた追加費用(養生延長・資材保管・重機待機等)については、甲乙協議のうえ分担する。乙(下請)が一方的に全額負担することを義務づけない」
- 工期変更条項:「不可抗力による工事中断が発生した場合、乙は書面により甲に工期延長を申請でき、甲は合理的な理由なくこれを拒否できない」

台風前に元請・下請で行う書面手続きのポイント
不可抗力トラブルの多くは「書面が残っていない」ことが原因です。台風接近が確実になった時点で、以下の書面手続きを迅速に行ってください。
- 工事中断通知(下請→元請):気象警報発令日時・中断開始日時・想定再開日を記載。メール・書面で送付し、送達確認を取る
- 工期延長申請書:停止期間の根拠(警報発令証明・現場写真)を添付して提出
- 追加費用明細書:発生した追加費用を項目別に記載し、証拠書類(重機待機の見積書等)を添付
- 協議結果の書面化:口頭での合意内容は必ず書面に残す。メールでも可。「言った・言わない」のトラブルを防ぐ
まとめ:台風・大雨の工期遅延で経営者が守るべき3点
- 契約書に不可抗力条項を必ず記載する:条項がなければ交渉で不利になる。次の契約書更新から必ず追加する
- 台風接近時は即座に書面で通知する:通知のタイミングと内容が、費用分担交渉の根拠になる
- 追加費用は詳細に記録する:証拠書類なしの追加費用請求は認められない。発生した費用を都度記録する
次のアクション: 現在使用している下請け契約書の不可抗力条項を今すぐ確認し、記載がない場合は行政書士等に相談して改訂してください。
よくある質問
Q: 不可抗力条項がない契約書でも台風による工期延長を主張できる?
建設業法第19条の3および国土交通省の標準下請契約約款を根拠に、不可抗力条項の記載がない場合でも工期延長と費用負担の協議を求めることは可能です。ただし書面による申請記録がない場合は交渉が長期化します。
Q: 台風対策で発生した追加費用は誰が負担するのが原則?
不可抗力による追加費用は元請と下請が協議して分担するのが原則です。下請が全額負担することを強制する条項は建設業法第19条の4(不当な経済的不利益の禁止)に抵触する可能性があります。

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