建設業界において、談合による排除措置命令のニュースが後を絶ちません。特に2026年に入ってから、公正取引委員会による厳しい取り締まりが強化されており、商業施設内装工事に携わる事業者も決して無関係ではありません。「うちは大手ではないから大丈夫」「地域の小規模工事だから問題ない」と考えていると、ある日突然立入調査を受け、事業存続の危機に陥る可能性があります。この記事では、実際の排除措置命令事例を詳しく分析し、商業施設内装工事を手がける建設会社・工務店・リフォーム会社が今すぐ実践すべきコンプライアンス対策を具体的に解説します。談合リスクから会社を守り、健全な経営を維持するための実務知識をぜひご確認ください。
公取委が排除措置命令を出した談合事例の実態
香川県で29社に排除措置命令が出された事例
2025年、公正取引委員会は香川県内の建設業者29社に対して排除措置命令を出しました。この事例は、地方自治体が発注する公共工事において、事前に受注予定者を決定し、形だけの入札を行っていたというものです。対象となった工事には建築工事のほか、設備工事や内装工事も含まれており、商業施設内装工事を手がける事業者にとっても他人事ではありません。
排除措置命令を受けた企業は、独占禁止法違反として社名が公表され、一定期間の指名停止処分を受けることになります。さらに課徴金の納付命令が出されるケースもあり、中小企業にとっては経営を揺るがす大きな打撃となります。実際、この事例では複数の企業が事業規模の縮小を余儀なくされ、従業員の解雇や事業承継・M&Aを検討せざるを得ない状況に追い込まれました。
談合と認定される具体的な行為とは
公正取引委員会が談合と認定する行為には、明確な基準があります。最も典型的なのは「入札参加業者間での事前の受注調整」です。具体的には、複数の業者が集まって「今回はA社、次回はB社」といった受注予定者を決める行為、入札前に他社の見積金額を共有する行為、意図的に高い金額で入札して特定業者を落札させる行為などが該当します。
商業施設内装工事では、元請けとなるゼネコンや商業施設の運営会社から複数の内装業者に見積依頼が出されることがよくあります。この際、同業者同士で「今回は競合しないようにしよう」「見積金額を揃えよう」といった会話をするだけでも、談合の疑いをかけられるリスクがあります。飲食の場での何気ない会話、業界団体の集まりでの雑談なども、後に証拠として扱われる可能性があるため注意が必要です。
内装工事業者が直面するコンプライアンスリスク

Two workers discussing plans on a sandy construction site, wearing safety gear.
*Photo by Mikael Blomkvist on Pexels*
業界慣習と法令遵守の境界線
建設業界には長年の業界慣習が存在します。「地域で仕事を回し合う」「協力会社同士で仕事を融通し合う」といった慣習は、一見すると業界の健全な助け合いに見えますが、法的には独占禁止法に抵触する可能性があります。
特に商業施設内装工事では、商業施設の開業時期が決まっているため、工期が厳しく設定されることが多く、複数の業者が協力して工事を進めることが一般的です。この際、「今回の店舗はA社が担当、隣の区画はB社が担当」という役割分担が自然に行われることがありますが、これが元請け業者や発注者の意向ではなく、内装業者同士で事前に調整したものである場合、受注調整と見なされるリスクがあります。
リサイクル法対応とコンプライアンスの関連性
建設リサイクル法対応も、コンプライアンスの重要な要素です。2026年6月に実施された香川県の一斉パトロールでは、多くの現場で助言・勧告・口頭指導が行われました。商業施設内装工事では、解体工事や改修工事に伴って大量の廃材が発生します。
建設リサイクル法では、一定規模以上の工事について分別解体と再資源化が義務付けられており、違反すると罰則の対象となります。内装工事で発生する石膏ボード、木材、金属類などを適切に分別せず、不法投棄や不適切な処理を行えば、法令違反となり、建設業許可の取り消しや営業停止処分を受ける可能性があります。コンプライアンス対策は談合対策だけでなく、廃棄物処理を含めた総合的な法令遵守体制の構築が必要です。
今すぐ実践すべきコンプライアンス対策
社内体制の整備と従業員教育
コンプライアンス対策の第一歩は、社内体制の整備です。まず、コンプライアンス責任者を明確に定め、定期的な社内研修を実施する必要があります。従業員が10名未満の小規模事業者であっても、代表者自らが責任者となり、最低でも年2回は独占禁止法や建設業法に関する勉強会を開催すべきです。
具体的な研修内容としては、談合と認定される行為の具体例、業界団体の集まりや同業者との会話で避けるべき話題、メールやSNSでのやり取りで注意すべき表現などを、実例を交えて共有します。特に営業担当者や現場責任者には、見積依頼を受けた際の対応方法、他社との情報交換の際のルールを明確に伝えることが重要です。
また、内部通報制度の整備も効果的です。従業員が不正行為を発見した際に、報復を恐れずに報告できる仕組みを作ることで、問題の早期発見と是正が可能になります。中小企業の場合、外部の専門機関を通報窓口とすることで、社内での報告しづらさを解消できます。
入札・見積対応の記録管理の徹底
商業施設内装工事の見積依頼を受けた際の対応記録を、必ず書面やデータで残すことが重要です。誰から依頼を受けたか、どのような条件で見積を作成したか、他社との接触や情報交換があったかなどを記録し、最低5年間は保管します。
見積作成においては、自社の原価計算に基づいて独自に積算を行い、他社の見積金額を参考にしないことが原則です。元請け業者から「他社の見積が〇〇円なので、それを参考に」といった情報提供があった場合でも、あくまで自社の基準で積算を行い、その旨を記録に残します。
また、業界団体の会合や同業者との会食の際には、仕事の話題、特に受注予定や見積金額に関する話題を避けることを社内ルールとして徹底します。やむを得ず同業者と接触する場合は、日時・場所・参加者・話題内容を記録し、不適切な内容がなかったことを証明できるようにしておくことが重要です。
経営課題への対応とリスク管理の統合
コンプライアンスリスクは、資金繰り・経営課題と密接に関連しています。2026年に入り、建設業の倒産リスク拡大が報道される中、受注確保への焦りから不適切な受注調整に手を染めてしまうケースが後を絶ちません。
健全な経営を維持するためには、適正利益を確保できる受注体制の構築が不可欠です。商業施設内装工事では、デザイン性や施工品質での差別化、短工期対応力の強化、BIM・DX活用による業務効率化など、価格競争以外での競争力を高める取り組みが求められます。
また、高齢化する経営者にとって、事業承継・M&Aは避けられない課題です。2026年には、設備工事業界で「着手金・中間金・成功報酬0円」という新しいM&A支援サービスも登場しており、後継者問題を抱える事業者にとって選択肢が広がっています。コンプライアンス違反のない健全な経営状態を維持することが、将来の事業承継やM&Aの際にも有利に働きます。買い手企業は必ずコンプライアンス体制を精査するため、日頃からの法令遵守が企業価値の向上につながります。
よくある質問

A group of construction workers in safety gear actively working on a high-rise building site.
*Photo by wal_ 172619 on Pexels*
Q1. 商業施設内装工事で談合と判断される具体的な行為は?
受注予定者の事前調整、見積金額の事前協議、入札参加者間での受注割り振り、応札の有無や金額の相談などが該当します。メールやLINEでの連絡記録も証拠となるため、競合他社との不適切なコミュニケーションは厳に慎む必要があります。
Q2. 公取委の排除措置命令を受けるとどんな影響がある?
課徴金納付命令による経済的損失に加え、社名公表による信用失墜、指名停止措置による官公庁工事からの排除、取引先との契約解除リスクが生じます。さらに刑事告発される可能性もあり、会社存続に関わる重大な影響を受けることになります。
Q3. 談合防止のために社内で実施すべき具体的な対策は?
コンプライアンス研修の定期実施、競合他社との接触ルールの明文化、入札関連情報の管理体制整備、内部通報窓口の設置が必要です。特に営業担当者には業界団体の懇親会等でも受注案件の話題を避けるよう徹底教育することが重要です。
Q4. 業界団体の会合に参加する際の注意点は?
個別案件の受注予定や見積金額、入札参加意向などの情報交換は絶対に避けてください。会合の議事録を残し、不適切な話題が出た場合は明確に拒否し退席することが重要です。懇親会の場でも同様の注意が必要です。
Q5. リニューアル工事の相見積もりで価格情報を聞かれたら?
他社の見積金額や自社の価格戦略を同業他社に開示することは談合の端緒となります。発注者からの質問には答えても、競合他社との価格情報共有は断固拒否してください。社内ルールとして明文化し全社員に周知徹底することが不可欠です。
まとめ
商業施設内装工事におけるコンプライアンス対策は、企業の存続を左右する重要課題です。本記事で解説した重要ポイントは以下の3点です。第一に、談合は大手だけの問題ではなく、中小の内装工事業者も摘発対象となり得ること。公取委の取り締まりは年々厳格化しており、業界慣習だからという言い訳は通用しません。第二に、コンプライアンス対策は社内体制の整備と従業員教育から始まること。責任者を明確にし、定期的な研修と記録管理の徹底が不可欠です。第三に、健全な経営とコンプライアンス遵守は表裏一体であること。適正利益を確保できる受注体制を構築し、資金繰り・経営課題への対応と法令遵守を統合的に進めることが、長期的な企業価値向上につながります。談合リスクから会社を守るために、まずは社内のコンプライアンス責任者を決定し、従業員への周知徹底から始めましょう。

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