建設業を営む際、「建設業許可申請」と「経営事項審査(経審)」の2つの制度について、どちらが必要でどう進めるべきか混同されている経営者・施工管理者は多いのではないでしょうか。実は両者は異なる目的の制度で、申請のタイミング・必要な書類・審査基準もまったく違います。本記事では、建設業許可と経営事項審査の違いを徹底的に整理し、一般建設業と特定建設業の判定基準、実務的な申請フローを解説します。この記事を読むことで、自社に必要な許可・審査を正確に判断し、適切な書類作成と申請時期を計画できるようになります。
建設業許可と経営事項審査は別物|2つの制度の役割と違い
建設業許可申請とは|許可を取得する理由と要件
建設業許可申請は、建設業法に基づき、建設工事の請負人として営業するための基本的な許可です。一定金額以上の建設工事を受注する際に必ず必要となります。
建設業許可が必要な場合:
- 一般建設業:1件の請負代金が税込み500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上で、かつ延べ面積150㎡未満の木造住宅にあたらないもの)の工事を請け負う。年間の売上や受注の合計では決まりません
- 特定建設業:元請として1件の工事で下請に出す代金の合計が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)になる
許可申請の際は、常勤役員等や技術者の資格、財務状況(資産要件)、誠実性など複数の要件をクリアする必要があります。許可の有効期間は5年で、更新時に再度申請が必要です。
経営事項審査(経審)とは|許可と並行して必要な実績評価
経営事項審査は、建設業許可を取得した企業が公共工事の入札に参加する際に必須となる審査です。建設業許可とは異なり、経営状況・技術力・経営規模などを数値化し、客観的に評価する制度です。
経営事項審査が必要な場合:
- 公共工事(国庫債務負担行為を含む)の入札に参加する場合
経審は毎年実施され、決算期から4か月以内に受審することが望ましいとされています。経審の結果の有効期間は、審査基準日(決算日)から1年7か月で、建設業許可の更新周期とは異なります。
申請順序が重要|許可取得が先、経審はその後
実務上の最大ポイントは、建設業許可を先に取得してから、その後に経営事項審査を受けるという順序です。許可なしで経審を受けることはできません。許可申請から許可取得までには審査の期間がかかる(期間は申請先の窓口で確かめる)ため、公共工事の入札時期を見据えた早めの申請計画が重要です。
一般建設業と特定建設業|判定基準と許可申請の違い

一般建設業の特徴と申請要件
一般建設業は、元請として下請に出す総額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)未満の工事なら、下請の社数にかかわらず足ります。
一般建設業の申請要件(主なもの):
- 常勤役員等:建設業で5年以上の経営経験
- 技術者:該当業種で10年以上の実務経験、または一定の資格保有
- 資産要件:自己資本500万円以上、または500万円以上の資金を調達できる力(預金の残高証明などで示す)
- 誠実性:請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと
元請として1件の工事で下請に出す総額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上になるなら、1件でも特定建設業の許可が必要です(建設業法第3条第1項第2号)。
特定建設業の厳しい要件と判定基準
特定建設業は、元請として1件の工事で下請に出す総額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上になるときに要る許可です。
特定建設業の申請要件(厳格化):
- 常勤役員等:一般建設業と同じ(建設業の経営の経験など)
- 特定営業所技術者:1級の国家資格など、または一般の営業所技術者の要件に加えて、元請として4,500万円以上の工事で2年以上の指導監督的な実務経験(指定建設業の7業種は1級の資格などが必要)
- 資産要件:資本金2,000万円以上・自己資本4,000万円以上・流動比率75%以上・欠損の額が資本金の20%以内
- 下請負金額:1件の元請工事で下請代金の合計が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)になる工事を対象
特定建設業は技術者の資格や財産的基礎の要件が厳しいため、早めに準備します。
判定フロー|自社がどちらに該当するか確認する方法
自社の許可区分を判定する際は、以下の2つのポイントで判断します。
- 1件の請負代金が税込み500万円以上の工事を請け負うか:軽微な工事(500万円未満、建築一式工事は1,500万円未満か延べ面積150㎡未満の木造住宅)だけなら許可不要、それを超える工事を請け負うなら許可申請対象
- 1件の元請工事で下請代金の合計が5,000万円以上になるか:1件でも当たれば特定建設業の許可が必要(建設業法第3条第1項第2号)
多くの工務店・リフォーム会社は一般建設業で対応でき、建築工事業や土木工事業の大規模企業が特定建設業に該当します。
建設業許可申請から経営事項審査までの実務フロー
ステップ1:許可申請前の準備(1~2か月)
許可申請前に、以下の確認と準備を完了させる必要があります。
準備項目:
- 常勤役員等の選定:5年以上の建設業経営経験を証明できる書類の収集
- 技術者の配置:資格証(解体工事施工技士・施工管理技士等)の取得状況確認
- 財務書類:過去3年の決算書、資産要件の確認
- 誠実性の確認:請負契約で不正や不誠実な行為をするおそれがないか確認
特に常勤役員等の経歴書類は、許可申請で最も審査が厳しいポイントです。給与明細・税務申告書・業務日誌など、5年間の継続勤務を証明する複数資料の提出が求められます。
ステップ2:許可申請手続き
許可申請は都道府県知事または地方整備局に提出します。
提出書類(主なもの):
- 許可申請書
- 常勤役員等の証明書類
- 技術者の資格証・実務経歴書
- 商業登記簿謄本、定款
- 預金残高証明書(資産要件の証明)
- 誠実性に関する誓約書
申請から許可取得までの審査の期間は、申請先の窓口で確かめてください。書類不備があると補正の分だけ長くなります。許可が出ると許可番号が書かれた許可通知書が届き、営業を始められます。
ステップ3:許可取得後の経営事項審査申請
公共工事の入札参加を予定している場合、入札参加資格の申請の時期に間に合うよう、決算の後に経営事項審査を申請します。
経営事項審査の申請フロー:
- 決算期後、財務諸表の確定:決算報告書、損益計算書等の整備
- 経営状況分析:専門の分析機関に依頼(必須)
- 経営事項審査申請書の作成
- 経営規模等評価申請書の提出
- 経営状況分析結果と合わせて審査機関に提出
経営事項審査では、財務情報をデータベースに登録される関係上、高い正確性が求められます。間違った数値入力は入札参加時のトラブルに直結するため、税理士など専門家のサポートを受けることが一般的です。
解体工事業の特別な許可要件と申請フロー

解体工事業許可が独立した理由
2014年(平成26年)の建設業法の改正で、解体工事業の許可は「とび・土工・コンクリート工事」から分かれた独立の業種になり、2016年(平成28年)6月1日に施行されました。それまでとび・土工工事業の許可で解体工事を請け負っていた企業も、経過措置が2019年5月末で終わったため、500万円以上の解体工事を請け負うには解体工事業の許可が必要です。
解体工事業許可が必要な場合:
- 1件の請負代金が税込み500万円以上の解体工事を請け負う(木造・RC造・鉄骨造を問わず)
- 500万円未満の解体工事だけを請け負う場合も、建設リサイクル法の解体工事業者の登録が要る(床面積の合計が80㎡以上の建物の解体は、発注者が工事の前に届け出る)
解体工事業の許可申請要件
解体工事業の申請要件は、建築工事業と基本的に同じですが、技術者要件が特徴的です。
技術者の条件(解体工事業):
- 解体工事業に従事した10年以上の実務経験、または
- 1級・2級の土木施工管理技士(2級は種別が土木)や建築施工管理技士(2級は種別が建築か躯体)、技術士、とび技能士、解体工事施工技士(登録解体工事試験の合格者)などの資格の保有(平成27年度までに合格した施工管理技士などは、解体工事の実務経験1年以上か登録解体工事講習の受講も必要)
解体工事業は安全リスクが高いため、技術者の経験年数や資格要件が厳しく設定されています。特に新規参入企業の場合、適切な技術者の配置が申請時の課題となります。
助成金・補助金を活用した解体工事業の経営強化
解体工事業を営む企業向けに、人材確保や施工機器導入の助成金制度が拡充されています。
活用できる支援制度:
- 人材確保等支援助成金・人材開発支援助成金の建設分野のコース:建設の事業主の採用や職場づくり、訓練に対する助成(今のコース名は厚生労働省「建設事業主等に対する助成金」で確かめてください)
- ものづくり補助金:設備の導入に対する補助(革新的な取り組みが要件で、機械の導入だけでは対象外になりうる)
許可申請と並行して助成金の申請を検討することで、許可取得後の事業展開を加速できます。特に人材不足が課題の解体工事業では、人材確保等支援助成金の活用が経営効率化に直結します。
一般建設業から特定建設業への変更申請と経営事項審査への影響
変更申請が必要になる判定基準
一般建設業の許可を取得した後、経営規模が拡大し下請発注が増加した場合、特定建設業への変更申請を検討する必要があります。
変更申請の判定基準:
- 元請として受ける1件の工事で、下請に出す代金の合計が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)になる見込みがある(件数や売上の割合の基準はなく、1件でも当たれば特定建設業の許可が要る)
特定建設業の許可が無いまま、この金額の下請契約を結ぶことはできません。該当する工事を受ける前に、許可を取っておきましょう。
特定建設業への変更が経営事項審査に与える影響
特定建設業に変えても、経営事項審査の評価の項目は変わりません。
特定建設業での経営事項審査の特徴:
- 経審の点の作りは一般建設業と同じ(自己資本4,000万円以上などは特定建設業の許可の基準で、経審の前提ではない)
- 元請として下請に出す額が大きくなるため、下請代金の支払いや施工体制台帳など、特定建設業者の義務を守る体制が要る
- 経審の Z(技術力)は、許可の区分にかかわらず技術職員の数と資格、元請の完成工事高で評価される
特定建設業に変えたことを理由に、経営事項審査を受け直す決まりはありません。毎年の決算の後に受ける経審で、そのときの許可の内容が反映されます。
建設業許可申請と経営事項審査の書類作成時の注意点

よくある書類作成ミスと補正期間の延長リスク
許可申請書類で最も多いミスは、常勤役員等の経歴証明です。給与明細の年月ズレ、勤務先の商号変更の記載漏れ、実務経歴書の工事内容の曖昧さなどが指摘されます。
書類作成時の確認ポイント:
- 常勤役員等の給与明細:開始月と終了月が連続しているか
- 実務経歴書:工事の規模・期間・自分の役職が明確に記載されているか
- 技術者の資格証:有効期限内か、許可申請時点で失効していないか
経営事項審査の書類では、売上高(完成工事高)などの数字が決算書や工事経歴書と合っているかを確かめましょう。
よくある質問
Q1. 建設業許可と経営事項審査は両方必要ですか?
建設業許可は事業開始の基本要件で、経営事項審査は許可取得後に公共工事受注を目指す際に必須となります。民間工事のみなら許可だけで可能ですが、公共工事入札には経営事項審査の結果(経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書)が必要不可欠です。
Q2. 経営事項審査の有効期限は何年ですか?
経営事項審査の結果の有効期間は、審査基準日(決算日)から1年7か月です。公共工事の入札に参加し続けるには、毎年の決算の後に受け直します。切れた状態では公共工事の入札参加資格が失われるため注意が必要です。
Q3. 建設業許可申請にはどのくらい費用がかかりますか?
新規の知事許可は手数料9万円、大臣許可は登録免許税15万円です。ただし申請には常勤役員等や営業所技術者等の要件を満たす人材確保が必要で、人件費や書類作成費が別途発生します。合計で数十万円の費用を見積もるべきです。
Q4. 建設業許可の申請から取得までの期間は?
建設業許可申請から取得までの審査の期間は、知事許可と大臣許可で異なり、必要書類の完備状況によっても変わります。期間は申請先の窓口で確かめてください。余裕をもって2ヶ月前から準備開始することが推奨されます。
Q5. 経営事項審査の評点はどのように活用されますか?
経営事項審査の評点(経営規模評価点など)は、公共工事入札時に発注者が業者選定の判断基準として活用します。評点が高いほど大型工事への入札参加対象となりやすく、受注機会が広がります。定期的な経営強化が重要です。
自社や取引先の許可の業種・許可番号・有効期限は、会社名や許可番号から調べられる建設業許可業者の検索でも確かめられます。
出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」(確認日 2026-09-28)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。
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