建設業を営む際、「建設業許可申請」と「経営事項審査(経審)」の2つの制度について、どちらが必要でどう進めるべきか混同されている経営者・施工管理者は多いのではないでしょうか。実は両者は異なる目的の制度で、申請のタイミング・必要な書類・審査基準もまったく違います。本記事では、建設業許可と経営事項審査の違いを徹底的に整理し、一般建設業と[特定建設業許可の違い](https://kensetu-mirai.com/wp/license-general-vs-special/)と特定建設業の判定基準、実務的な申請フローを解説します。この記事を読むことで、自社に必要な許可・審査を正確に判断し、適切な書類作成と申請時期を計画できるようになります。
建設業許可と経営事項審査は別物|2つの制度の役割と違い
建設業許可申請とは|許可を取得する理由と要件
建設業許可申請は、建設業法に基づき、建設工事の請負人として営業するための基本的な許可です。一定金額以上の建設工事を受注する際に必ず必要となります。
建設業許可が必要な場合:
- 一般建設業:直前3年で年間500万円以上の建設工事を受注している
- 特定建設業:下請負人に対して1件4,000万円以上(土木工事は6,000万円以上)の建設工事を発注している
許可申請の際は、経営管理責任者や技術者の資格、財務状況(資産要件)、誠実性など複数の要件をクリアする必要があります。許可の有効期間は5年で、更新時に再度申請が必要です。
経営事項審査(経審)とは|許可と並行して必要な実績評価
経営事項審査は、建設業許可を取得した企業が公共工事の入札に参加する際に必須となる審査です。建設業許可とは異なり、経営状況・技術力・経営規模などを数値化し、客観的に評価する制度です。
経営事項審査が必要な場合:
- 公共工事(国庫債務負担行為を含む)の入札に参加する場合
- 多くの場合、許可取得後1年以内に経審を受けることが推奨されます
経審は毎年実施され、決算期から4か月以内に受審することが望ましいとされています。経審の有効期間は1年3か月(審査を受けた日から)で、建設業許可の更新周期とは異なります。
申請順序が重要|許可取得が先、経審はその後
実務上の最大ポイントは、建設業許可を先に取得してから、その後に経営事項審査を受けるという順序です。許可なしで経審を受けることはできません。許可申請から許可取得まで通常30日程度かかるため、公共工事の入札時期を見据えた早めの申請計画が重要です。
一般建設業と特定建設業|判定基準と許可申請の違い

!Two individuals reviewing and signing official documents in an indoor setting.
*Photo by Ron Lach on Pexels*
一般建設業の特徴と申請要件
一般建設業は、自ら施工するか、1社の下請負人に発注する形式での工事に対する許可です。複数の下請負人への発注や、大規模な外注構成では該当しません。
一般建設業の申請要件(主なもの):
- 経営管理責任者:建設業で5年以上の経営経験
- 技術者:該当業種で10年以上の実務経験、または一定の資格保有
- 資産要件:自己資本200万円以上
- 誠実性:許可申請時に法令違反がないこと
一般建設業で許可を取得した場合、下請負への発注金額に制限がなくなるわけではなく、「下請負構成比が極端に高い」「4,000万円以上の外注が常態化」といった状況では、特定建設業への変更申請を検討する必要があります。
特定建設業の厳しい要件と判定基準
特定建設業は、大規模な下請負発注をともなう工事を専業とする企業向けの許可です。施工規模が大きく、複数下請けで構成される工事を常に請け負う企業が対象です。
特定建設業の申請要件(厳格化):
- 経営管理責任者:建設業で5年以上の経営経験+該当業種で5年以上
- 技術者(特定建設業):該当業種で10年以上の実務経験+一級資格保有(資格必須)
- 資産要件:自己資本4,000万円以上、流動資産が流動負債の7割以上
- 下請負金額:1件当たり4,000万円以上(土木工事は6,000万円以上)の外注が発生する工事を対象
特定建設業は許可申請時の書類が多く、技術者の資格要件も厳しいため、申請準備に3か月程度かかることが一般的です。
判定フロー|自社がどちらに該当するか確認する方法
自社の許可区分を判定する際は、以下の3つのポイントで判断します。
- 年間売上高が500万円以上か:未満なら許可不要、以上なら許可申請対象
- 下請負発注が常態化しているか:一般建設業で対応可能か、特定建設業が必要か
- 1件の外注工事が4,000万円以上になるか:発生頻度が高い場合は特定建設業推奨
多くの工務店・リフォーム会社は一般建設業で対応でき、建築工事業や土木工事業の大規模企業が特定建設業に該当します。
建設業許可申請から経営事項審査までの実務フロー
ステップ1:許可申請前の準備(1~2か月)
許可申請前に、以下の確認と準備を完了させる必要があります。
準備項目:
- 経営管理責任者の選定:5年以上の建設業経営経験を証明できる書類の収集
- 技術者の配置:資格証(一級・二級建設機械施工技士等)の取得状況確認
- 財務書類:過去3年の決算書、資産要件の確認
- 誠実性の確認:法令違反やトラブル履歴がないか確認
特に経営管理責任者の経歴書類は、許可申請で最も審査が厳しいポイントです。給与明細・税務申告書・業務日誌など、5年間の継続勤務を証明する複数資料の提出が求められます。
ステップ2:許可申請手続き(申請~許可取得まで30日程度)
許可申請は都道府県知事または地方整備局に提出します。
提出書類(主なもの):
- 許可申請書
- 経営管理責任者の証明書類
- 技術者の資格証・実務経歴書
- 商業登記簿謄本、定款
- 預金残高証明書(資産要件の証明)
- 誠実性に関する誓約書
申請から許可取得まで通常30日程度かかりますが、書類不備があると補正期間が延長されます。許可証交付後は、許可番号が記載された「建設業許可証」を受け取り、営業開始となります。
ステップ3:許可取得後の経営事項審査申請(許可取得後1年以内)
公共工事の入札参加を予定している場合、許可取得から遅くとも1年以内に経営事項審査を申請します。
経営事項審査の申請フロー:
- 決算期後、財務諸表の確定:決算報告書、損益計算書等の整備
- 経営状況分析:専門の分析機関に依頼(必須)
- 経営事項審査申請書の作成:1,000項目以上の情報入力が必要な場合も
- 経営規模等評価申請書の提出
- 経営状況分析結果と合わせて審査機関に提出
経営事項審査では、財務情報をデータベースに登録される関係上、高い正確性が求められます。間違った数値入力は入札参加時のトラブルに直結するため、税理士など専門家のサポートを受けることが一般的です。
解体工事業の特別な許可要件と申請フロー

!A professional individual signs legal documents at a desk in an office setting.
*Photo by Mikhail Nilov on Pexels*
解体工事業許可が独立した理由
令和3年の建設業法改正により、解体工事業の許可は建築工事業から独立した許可区分となりました。これまで建築工事業の許可で対応していた企業も、解体工事を専業とする場合は別途解体工事業の許可申請が必要です。
解体工事業許可が必要な場合:
- 建築物の解体工事を請け負う(木造・RC造・鉄骨造を問わず)
- 床面積合計80㎡以上の解体工事が対象(小規模工事は除外)
解体工事業の許可申請要件
解体工事業の申請要件は、建築工事業と基本的に同じですが、技術者要件が特徴的です。
技術者の条件(解体工事業):
- 解体工事業に従事した10年以上の実務経験、または
- 一級建築施工管理技士・二級建築施工管理技士(解体工事施工技術検定合格者)の保有
解体工事業は安全リスクが高いため、技術者の経験年数や資格要件が厳しく設定されています。特に新規参入企業の場合、適切な技術者の配置が申請時の課題となります。
助成金・補助金を活用した解体工事業の経営強化
解体工事業を営む企業向けに、人材確保や施工機器導入の助成金制度が拡充されています。
活用できる支援制度:
- 人材確保等支援助成金(建設労働者確保育成助成金):新規採用と訓練に対する助成
- ものづくり補助金:最新の解体機械・積算システム導入に対する補助
- 地域別の中小企業支援事業:解体工事業の法人化や許可申請費用の一部補助(自治体により異なる)
許可申請と並行して助成金の申請を検討することで、許可取得後の事業展開を加速できます。特に人材不足が課題の解体工事業では、人材確保等支援助成金の活用が経営効率化に直結します。
一般建設業から特定建設業への変更申請と経営事項審査への影響
変更申請が必要になる判定基準
一般建設業の許可を取得した後、経営規模が拡大し下請発注が増加した場合、特定建設業への変更申請を検討する必要があります。
変更申請の判定基準:
- 1件当たり4,000万円以上(土木工事は6,000万円以上)の下請工事が月1件以上の頻度で発生
- 年間売上の50%以上が下請発注で構成される
- 複数の下請負人で構成される大規模工事を常時受注している
変更申請を先送りすると、公共工事の入札資格のない特定業種に該当する工事を受注できない事態が生じます。早期の変更申請が最適です。
特定建設業への変更が経営事項審査に与える影響
特定建設業に変更した場合、経営事項審査の評価項目が変わります。
特定建設業での経営事項審査の特徴:
- 経営規模の評価基準が上がる:自己資本4,000万円以上が前提
- 下請負人管理の適切性が審査項目に加わる
- 技術者配置の充実度が成績評価に反映
既に一般建設業で経営事項審査を受けている場合、変更申請後の経営事項審査は新たに受審し直す必要があります。申請時期を調整して、決算期を機に変更と経審を同時進行することで、書類作成の効率化が図れます。
建設業許可申請と経営事項審査の書類作成時の注意点

!A close-up of a businessman signing official documents at a wooden desk.
*Photo by Matheus Lara on Pexels*
よくある書類作成ミスと補正期間の延長リスク
許可申請書類で最も多いミスは、経営管理責任者の経歴証明です。給与明細の年月ズレ、勤務先の商号変更の記載漏れ、実務経歴書の工事内容の曖昧さなどが指摘されます。
書類作成時の確認ポイント:
- 経営管理責任者の給与明細:開始月と終了月が連続しているか
- 実務経歴書:工事の規模・期間・自分の役職が明確に記載されているか
- 技術者の資格証:有効期限内か、許可申請時点で失効していないか
経営事項審査の書類では、売上高
よくある質問
Q1. 建設業許可と経営事項審査は両方必要ですか?
建設業許可は事業開始の基本要件で、経営事項審査は許可取得後に公共工事受注を目指す際に必須となります。民間工事のみなら許可だけで可能ですが、公共工事入札には経営事項審査の経営事項通知書が必要不可欠です。
Q2. 経営事項審査の有効期限は何年ですか?
経営事項審査は有効期限が3年間です。公共工事入札に参加し続けるには、有効期限切れ前に更新申請が必要です。切れた状態では公共工事の入札参加資格が失われるため注意が必要です。
Q3. 建設業許可申請にはどのくらい費用がかかりますか?
建設業許可申請の手数料は約9万円です。ただし申請には経営管理責任者や専任技術者の要件を満たす人材確保が必要で、人件費や書類作成費が別途発生します。合計で数十万円の費用を見積もるべきです。
Q4. 建設業許可の申請から取得までの期間は?
建設業許可申請から取得までは通常4~6週間程度かかります。知事許可と大臣許可で異なり、必要書類の完備状況によっても変動します。余裕をもって2ヶ月前から準備開始することが推奨されます。
Q5. 経営事項審査の評点はどのように活用されますか?
経営事項審査の評点(経営規模評価点など)は、公共工事入札時に発注者が業者選定の判断基準として活用します。評点が高いほど大型工事への入札参加対象となりやすく、受注機会が広がります。定期的な経営強化が重要です。

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