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一人親方との請負契約——「偽装請負」と判断されないための実務チェックリスト

書類にサインするビジネスパーソン(業種追加申請イメージ)

一人親方と元請・一次下請の間で「実態は雇用なのに請負契約を結んでいる」という状況が発覚すると、労働基準法違反・建設業法違反として行政指導の対象となる。近年、厚生労働省や国土交通省による現場立入調査で偽装請負を指摘されるケースが増加しており、「昔からこうやっていた」では通用しない状況になっている。一人親方との適正な請負契約を維持するために、判断基準と実務チェックポイントを整理しておく必要がある。

目次

偽装請負とは何か——法的定義と建設業への影響

偽装請負とは、契約書上は「請負」または「業務委託」となっているにもかかわらず、実態として発注者が受注者(一人親方等)に対して直接指揮命令を行っている状態を指す。

法的根拠は昭和61年労働省告示第37号「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(いわゆる「37号告示」)だ。この告示では、「請負」と認められるための要件として「請負業者が自ら作業者を指揮する」「機材・材料を請負業者が調達する」等が定められている。

建設業界特有のリスクとして、以下の2点がある。

  • 労働基準法上のリスク:一人親方が「労働者」と認定された場合、未払い賃金・残業代の支払い義務が発生する
  • 建設業法上のリスク:無許可業者(一人親方)への不適切な発注として、元請の監理責任が問われる

一人親方を「労働者」と判断する5つの基準

一人親方と元請の労働者性判断——請負と雇用の境界チェックイメージ

労働基準法上の「労働者」かどうかは、契約書の名称ではなく実態で判断される。以下の5項目が判断基準として使われる。

判断基準請負(適正)偽装請負(問題)
①指揮命令本人または請負会社の指示で動く元請・一次下請の社員が直接作業指示を出している
②時間管理始業・終業・休憩を自分で決める元請指定の時間で拘束されている
③道具・材料一人親方が自分で調達・用意する元請から支給されている
④報酬の性質仕事の完成・出来高で報酬が決まる日当・時給形式で支払われている
⑤専属性複数の発注者と契約できる実態上1社にしか働けない状況

1〜2項目が「問題」に該当する場合でも偽装請負と判断されることがある。複数項目が重なると、行政調査で問題視される可能性が高い。

よくある偽装請負のパターンと具体事例

パターン1:「応援」名目での日当払い

契約書を交わさず「応援に来てもらう」という形で一人親方を使い、日当で支払うケース。請負の実態がなく、実態は労働者派遣または雇用契約と判断されやすい。特に繁忙期の人手不足を補うための慣習的な「応援体制」はリスクが高い。

パターン2:元請社員が一人親方に直接作業指示

一次下請に再下請として一人親方を使わせているにもかかわらず、元請の現場監督が一人親方に直接「今日はここをやって」と指示するケース。形式上は再下請負であっても、指揮命令関係が元請にあれば偽装請負と判断される。

パターン3:元請支給の道具・制服で作業

一人親方に元請の制服を着せたり、元請所有の重機や工具を使わせたりするケース。道具・材料の調達が請負業者側にないことは、独立した請負業者ではないと見なされる根拠の一つになる。

偽装請負防止チェックリスト——契約前に確認すべき12項目

偽装請負防止チェックリスト——一人親方との契約書確認イメージ

一人親方との契約締結前・現場着工前に以下の12項目を確認する。すべて「OK」でなければ契約内容または現場運営の見直しが必要だ。

契約書の整備(締結前確認)

  • ☐ 書面による請負契約書を締結しているか(口頭契約・発注書のみは不可)
  • ☐ 契約書に「工事の内容・工期・請負代金額」が明記されているか
  • ☐ 報酬は出来高払いまたは固定額か(日当・時給形式になっていないか)
  • ☐ 一人親方の建設業許可番号または職人の場合は職種を記載しているか

現場運営(着工後の確認)

  • ☐ 一人親方への作業指示は一次下請の担当者が行っているか(元請社員が直接指示していないか)
  • ☐ 始業・終業・休憩時間を一人親方が自分の判断で決められる状態か
  • ☐ 作業に使う道具・材料は一人親方が自分で調達しているか
  • ☐ 元請の制服・ユニフォームを一人親方に着用させていないか

社会保険・労災(雇用リスクの確認)

  • ☐ 一人親方が一人親方労災保険(特別加入)に加入しているか証明書を確認したか
  • ☐ 実態として特定の1社にしか働けない状況になっていないか
  • ☐ 月の稼働日数・時間が雇用に近い状態(週5日フル稼働等)になっていないか
  • ☐ 再下請負通知書を取得して施工体制台帳に記録しているか

関連:施工体制台帳と再下請負通知書——元請が作成・保管すべき書類と記載ミスのリスク

偽装請負が発覚した場合のリスク——処分の種類と実態

偽装請負発覚リスク——建設業法・労働者派遣法違反の処分イメージ

偽装請負が行政調査で発覚した場合、複数の法律に基づく処分が同時に科される可能性がある。

根拠法処分内容主な対象
労働基準法是正勧告・未払い賃金の遡及払い命令労働者と認定された一人親方を使った会社
労働者派遣法是正指導・許可取消(派遣業者の場合)実態が派遣と認定された発注元
建設業法指示処分・営業停止無許可業者に不適切発注した元請・一次下請
社会保険関連法保険料の遡及徴収労働者性が認定された場合の使用者

特に注意が必要なのは建設業許可更新への影響だ。建設業法に基づく指示処分歴は、許可更新申請書への記載義務があり、審査に影響する。「民事上の問題だから大丈夫」という認識は通用しない。

関連記事

📋 偽装請負防止チェックリスト(12項目)

一人親方との契約前に全項目を確認してください

📝 契約書面の確認

🔍 指揮命令・実態の確認

✅ 証明書・書類の確認

※ このチェックリストは印刷してご利用いただけます。チェックは画面上でも行えます。

まとめ

  • 偽装請負の判断は「契約書の名称」ではなく「実態の指揮命令関係・報酬形式・道具の調達者」で決まる。日当払い・元請からの直接作業指示は特にリスクが高い
  • 一人親方との契約では、書面による請負契約書の整備・出来高払いの明記・一人親方労災の加入確認が最低限必要な3点セットだ
  • 偽装請負が発覚した場合、労働基準法・建設業法の双方から処分を受ける可能性があり、建設業許可の更新にも影響する

次のアクション

  1. 現在使用中の一人親方全員について、上記12項目チェックリストを実施する。特に「元請社員が直接作業指示を出しているか」と「報酬が日当形式になっていないか」を優先確認する
  2. 口頭または発注書のみで対応している一人親方との契約を、工事内容・工期・請負代金額が明記された書面契約に切り替える
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