建設業許可の確認方法の複数業種同時取得を検討している建設会社にとって、申請書類の正確な作成は事業の根幹を左右する重要課題です。しかし実際には、福岡県で発生した虚偽申請による送検事例のように、不正な記載によって刑事責任を問われるケースが後を絶ちません。複数業種を同時に申請する場合、提出書類が膨大になり、専任技術者や経営業務の管理責任者の要件確認が複雑化するため、虚偽記載のリスクが高まります。本記事では、実際の違反事例を分析しながら、建設業許可申請の手順における虚偽記載がなぜ発覚するのか、そして複数業種同時取得を目指す際にどのようなチェック体制を構築すべきかを実務的に解説します。コンプライアンスを守りながら確実に許可を取得するための具体的なポイントを押さえていきましょう。
福岡県の送検事例から見る虚偽申請の実態と発覚メカニズム
虚偽申請はどのような形で行われたのか
福岡県で発生した建設業許可の虚偽申請事例では、申請書類に実態とは異なる経営業務の管理責任者や専任技術者を記載したことが建設業法違反として送検されました。この事例で特に注目すべき点は、名義を貸した70代男性2人も書類送検されたという事実です。申請書類の虚偽記載では、申請した法人だけでなく、名義を貸した個人も刑事責任を問われます。
複数業種の建設業許可を同時取得しようとする場合、各業種ごとに専任技術者の要件を満たす必要があります。このとき、実際には在籍していない技術者や、常勤性のない人物を書類上だけ配置するという不正が発生しやすくなります。急いで複数業種を取得したいという焦りや、要件を満たす人材が社内にいないという事情が、虚偽記載という違法行為につながるのです。
なぜ虚偽申請は発覚するのか?5つの発覚ルート
建設業許可申請における虚偽記載は、以下の5つのルートから発覚します。
1. 社会保険加入状況の照会
建設業許可申請では、専任技術者や経営業務の管理責任者が常勤であることを証明するため、健康保険・厚生年金保険の加入状況が確認されます。年金事務所との情報照会により、実際には在籍していない人物や、他社で常勤として勤務している人物の記載が発覚します。
2. 入札参加資格審査での照合
入札参加資格を申請する際、建設業許可の内容と実態が照合されます。複数業種で許可を取得していても、実際の施工実績や配置技術者との整合性がない場合、自治体の入札担当部署から疑義が生じ、許可行政庁への通報につながります。
3. 現場での立入検査
国土交通省や都道府県の建設業担当部署は、工事現場への立入検査を実施します。この際、許可申請書類に記載された専任技術者が実際に配置されているか、主任技術者や監理技術者との兼務状況が適切かなどが確認され、虚偽が判明します。
4. 内部告発・通報
退職した従業員や取引先からの通報も、虚偽申請発覚の大きな要因です。特に名義貸しをしていた個人が報酬トラブルなどで告発するケースや、同業他社からの通報により調査が開始されることがあります。
5. 許可更新時・業種追加時の整合性チェック
建設業許可は5年ごとの更新が必要です。更新時や業種追加時には、過去の申請内容との整合性が詳細にチェックされます。前回申請時の専任技術者の実務経験年数と、今回の申請内容に矛盾がある場合、過去に遡って虚偽が発覚します。
複数業種同時取得時に虚偽記載が起きやすい3つのポイント

専任技術者の実務経験証明における虚偽リスク
複数業種の建設業許可を同時取得する際、最も虚偽記載が発生しやすいのが専任技術者の実務経験証明です。例えば、とび・土工工事業と解体工事業の許可要件を同時に取得する場合、それぞれの業種で10年以上の実務経験を持つ技術者が必要になる場合があります(資格保有者を除く)。
このとき、実際には8年しか経験がない技術者の経験年数を水増ししたり、別の業種の経験を該当業種の経験として記載したりする虚偽が発生します。実務経験の証明には、工事請負契約書や注文書、請求書などの客観的証拠書類の提出が求められますが、これらを偽造または改ざんする行為は建設業法違反に該当し、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。
経営業務の管理責任者における常勤性の偽装
複数業種を同時に申請する場合でも、経営業務の管理責任者は1名で足りますが、その常勤性の証明が不十分なケースが見られます。特に法人成りしたばかりの会社や、個人事業から法人に移行した場合、代表取締役が実際には別の会社で常勤しているにもかかわらず、書類上だけ自社の経営業務の管理責任者として記載するケースがあります。
常勤性は、健康保険・厚生年金保険の被保険者証や住民票によって確認されますが、書類だけを整えても、実態として週の大半を他社で勤務している場合は虚偽申請とみなされます。2026年現在、建設業許可業者数は47万社を超えており、競争が激化する中で複数業種の許可を急いで取得したいという焦りが、このような違反につながっています。
営業所の実態がない「バーチャルオフィス問題」
複数業種の建設業許可を同時取得する場合、すべての業種について適切な営業所を確保する必要があります。しかし、コスト削減のためにバーチャルオフィスや私書箱を営業所として申請するケースが見られます。
建設業法上の営業所は、請負契約の見積もり・入札・契約締結などの実体的な業務を行う場所である必要があり、単なる登記上の住所では認められません。複数業種を扱う場合でも、1つの実態ある営業所で対応可能ですが、その営業所に専任技術者が常勤していることが確認できなければ、許可は取り消されます。
申請書類作成時の実務チェックリストとコンプライアンス体制
複数業種同時取得のための書類作成チェックリスト
申請書類の虚偽記載を防ぎ、複数業種の建設業許可を確実に同時取得するためには、以下のチェックリストを活用することが有効です。
専任技術者の確認項目
- 各業種ごとに必要な資格または実務経験年数を正確に確認したか
- 実務経験証明書の裏付けとなる契約書・請求書等の原本を確認したか
- 専任技術者の健康保険証・年金手帳で常勤性を確認したか
- 他社での兼務や、他の営業所との兼務がないことを確認したか
- 実務経験の期間に空白期間や重複期間がないか確認したか
経営業務の管理責任者の確認項目
- 5年以上の経営業務管理経験を証明する書類(登記事項証明書・確定申告書等)を確認したか
- 常勤性を証明する健康保険証等の書類を確認したか
- 個人事業主時代の経験を含める場合、確定申告書で事業内容を確認したか
営業所の確認項目
- 営業所の写真(外観・内観・看板)を撮影したか
- 賃貸借契約書で使用目的が「事業用」となっているか確認したか
- 電話・机・書棚等、実際に営業活動を行える設備があるか確認したか
行政書士等の専門家に依頼する場合の注意点
複数業種の建設業許可を同時取得する場合、申請書類が膨大になるため、行政書士などの専門家に依頼するケースが一般的です。しかし、専門家に依頼したとしても、最終的な責任は申請者である建設会社にあります。
福岡県の送検事例では、名義を貸した個人も刑事責任を問われたように、「専門家に任せていたから知らなかった」という言い訳は通用しません。専門家に依頼する場合でも、以下の点を必ず自社で確認しましょう。
- 提出する書類のすべてにコピーを取り、内容を経営者自身が確認する
- 専任技術者や経営業務の管理責任者として記載される人物に、申請内容を事前に説明し同意を得る
- 実務経験や経営経験の年数計算を、自社でも独自に検証する
- 虚偽記載を依頼したり、書類の偽造を求めたりすることは絶対にしない
2026年現在、入札参加資格においても建設業許可の業種が重視されており、虚偽申請によって許可が取り消されれば、5年間は再取得できないだけでなく、入札参加資格も失われます。目先の利益のために虚偽申請を行うことは、企業の存続を危うくする重大なリスクです。
内部統制としてのコンプライアンス体制構築
複数業種の建設業許可を適切に維持管理するためには、申請時だけでなく、許可取得後も継続的なコンプライアンス体制を構築することが重要です。
具体的には、以下のような体制を整備しましょう。
- 専任技術者や経営業務の管理責任者の異動・退職があった場合の変更届提出ルールの明確化
- 年1回の決算変更届提出を確実に行うための社内スケジュール管理
- 工事経歴書や財務諸表など、変更届に必要な書類を日常的に整理する仕組みづくり
- 新規業種を追加取得する際の社内稟議フローの確立
- 建設業法や関連法令の改正情報を定期的にチェックする担当者の配置
これらの体制を整備することで、虚偽申請のリスクを未然に防ぎ、長期的に安定した事業運営が可能になります。
よくある質問

Q1. 建設業許可の虚偽申請は本当にバレるのですか?
はい、高確率でバレます。許可行政庁は定期的な立入検査、取引先への聞き取り、社会保険の加入状況との照合などで確認します。また、内部告発や元従業員からの通報も多く、発覚後は許可取消しや刑事罰の対象となります。
Q2. 経営業務管理責任者の経験年数を水増しするとどうなりますか?
経験年数の虚偽記載は建設業法違反となり、懲役刑や罰金刑が科される可能性があります。許可取消し後5年間は再申請できず、会社の信用失墜により取引停止や損害賠償請求を受けるリスクもあります。必ず事実に基づいた申請が必要です。
Q3. 専任技術者の資格証明書を偽造した場合の罰則は?
資格証明書の偽造は私文書偽造罪にも該当し、建設業法違反と併せて重い刑事罰が科されます。福岡の事例では実刑判決も出ています。技術者の実在性や資格の真正性は必ず確認され、偽造は確実に発覚します。
Q4. 財務諸表の数字を改ざんして申請するリスクは?
財務諸表の改ざんは税務署の申告内容や金融機関の情報と照合されるため発覚しやすく、建設業許可取消しだけでなく、融資詐欺として刑事告訴される可能性もあります。財産的基礎要件は正確な数字で申請し、不足なら知事許可を検討すべきです。
Q5. 虚偽申請で送検された場合、会社にどんな影響がありますか?
許可取消しにより工事受注が不可能になり、既存契約も解除されます。元請や取引先からの損害賠償請求、銀行融資の停止、公共工事入札参加資格の喪失など、経営存続に関わる深刻な影響が生じます。代表者の刑事責任も問われます。
まとめ
建設業許可における虚偽申請は、社会保険加入状況の照会、入札参加資格審査での照合、現場での立入検査、内部告発、許可更新時の整合性チェックという5つのルートから必ず発覚します。複数業種を同時取得する際には、専任技術者の実務経験証明、経営業務の管理責任者の常勤性、営業所の実態という3つのポイントで虚偽記載が発生しやすいため、詳細なチェックリストに基づいた書類作成が不可欠です。専門家に依頼する場合でも最終責任は申請者にあることを認識し、内部統制としてのコンプライアンス体制を構築することで、長期的に安定した許可維持が可能になります。まずは自社の現在の申請書類と実態に相違がないか、専任技術者の常勤性を証明する書類を今一度確認することから始めましょう。

コメント