建設業許可を保持する会社では、経営業務管理責任者が常に配置されていることが法律で定められています。しかし、退職や病気、人事異動などで責任者が交代する際に「変更届をいつ出すべきか」「どう書くのか」といった疑問を抱える経営層や事務担当者は少なくありません。変更届を遅延させたり、誤った記載をしたまま営業を続けると、営業停止処分のリスクに直結します。本記事では、変更届が必要な5つのケースと、実務的な申請タイミング、正しい書き方を詳しく解説します。令和8年(2026年)現在の最新ルールに対応した内容をまとめていますので、社内の書類作成時に参考にしてください。
経営業務管理責任者の変更届とは
許可要件としての経営業務管理責任者
建設業法第15条第1項第2号により、建設業許可を受けた企業は「経営業務管理責任者」を専任で配置することが法律で義務付けられています。この責任者は、営業所ごとに配置が必要な「営業所管理者」とは異なり、会社全体の経営業務の管理を統括する立場です。
経営業務管理責任者には以下の要件があります。
- 建設業に従事した経験が5年以上(一定の資格者は3年以上)
- 専任性の確保(その会社に常勤する必要がある)
- 経営業務管理責任者講習の受講(令和5年4月1日以降、新規配置時に必須)
現在の建設業許可申請手続きは、令和8年(2026年)時点で「手続きの集約化」により、申請書類の様式が統一されています。変更届も同じく統一様式で対応する必要があります。
変更届を提出しないと営業停止になるリスク
変更届を提出せずに営業を続けた場合、以下のリスクが発生します。
| リスク内容 | 影響 |
|—|—|
| 建設業許可の取り消し | 建設工事の請負ができなくなる |
| 営業停止処分 | 1~6カ月の営業停止命令 |
| 無許可営業の扱い | 建設業法違反で罰金・懲役の可能性 |
| 入札資格の喪失 | 公共工事への参加が不可能に |
| 損害賠償請求 | 発注者からの損害賠償の対象に |
過去の事例では、経営業務管理責任者の変更手続きを3ヶ月以上放置していた企業が、自治体の確認調査で発覚し、警告を受けるケースが複数報告されています。
経営業務管理責任者の変更届が必要な5つのケース

!A bustling construction scene in Tokyo, Japan featuring cranes and buildings at dusk.
*Photo by sugar jet on Pexels*
ケース1:責任者が退職する場合
最も一般的なケースです。経営業務管理責任者が定年退職や自己都合で退職する場合、退職日から速やかに変更届を提出する必要があります。
申請タイミング: 退職日から30日以内(建設業法施行規則第18条)
退職日が2026年7月31日の場合、変更届の提出期限は2026年8月30日です。後任者が決定していない場合でも、現在の責任者の退職日をもって変更届を提出し、新しい責任者の就任予定日を記入します。
ケース2:責任者が病気や怪我で長期休業する場合
責任者が業務に従事できなくなる状況(入院、要介護状態など)では、専任性が失われるため変更届が必要です。医学的に「復帰が困難」と判断される場合は、新規配置と同じ扱いになります。
申請タイミング: 休業が確定した時点で速やかに
休業期間が3ヶ月以上と予想される場合は、すぐに変更届を提出してください。復帰の見込みがない場合は、退職扱いで対応します。
ケース3:責任者が他社への出向・転籍する場合
建設業許可を保有する複数の企業グループでは、管理職が各社を兼務するケースが発生します。兼務は認められないため、新しい配置先へ専任で従事することになると変更届が必要です。
申請タイミング: 出向・転籍日から30日以内
A社の経営業務管理責任者がB社の同じ職位に移る場合、A社では変更届(責任者の変更)、B社では新任届(新規配置)を同時に進める必要があります。
ケース4:責任者の役職が変わり専任性を失う場合
責任者が以下のような役職変更を受けた場合、「経営業務の管理に専従していない」と判断され、変更届が必要になります。
- 建設業とは無関係な事業部門の責任者に転属
- 複数の営業所を掛け持つ配置(営業所管理者との兼務)
- 営業現場への常時配置
申請タイミング: 役職変更日から30日以内
ケース5:責任者の住所が建設業許可申請時から変わった場合
経営業務管理責任者の個人住所が変更された場合(引越し、法人成など)も変更届の対象です。これは許可要件の「現在の身分」を正確に把握するためです。
申請タイミング: 住所変更から30日以内
実務では見過ごされやすいケースですが、自治体の確認調査で発覚することがあります。
経営業務管理責任者の変更届の書き方と必要書類
変更届の基本的な記入方法
変更届は都道府県知事(または建設業指定登録機関)が指定する様式を使用します。令和5年4月1日以降、統一様式(建設業許可申請手続きの集約化対応)が使用されています。
記入のポイント:
- 許可番号の記入
– 建設業許可証に記載されている「許可番号」を正確に転記
– 新規許可の場合は申請後に交付される番号を記入
- 現在の経営業務管理責任者の情報
– 氏名、生年月日、個人番号(マイナンバー)
– 退職日または変更日を正確に記入
– 退職理由を具体的に記載(退職、死亡、転出など)
- 新しい経営業務管理責任者の情報
– 氏名、生年月日、個人番号(マイナンバー)
– 建設業従事年数(資格があれば資格名)
– 就任予定日(確定していない場合は「予定日未定」と記入可能)
- 経営業務管理責任者講習の受講状況
– 令和5年4月1日以降の新規配置の場合、講習受講証明書の提出が必須
– 受講済みの場合は講習の年月日、講習実施機関、証明書番号を記入
変更届に必要な添付書類
| 書類名 | 提出理由 | 備考 |
|—|—|—|
| 経営業務管理責任者講習受講証明書 | 新規配置の場合の必須書類 | 登録機関または都道府県が発行 |
| 誓約書 | 配置責任者の身分を確認 | 建設業許可申請と同じ様式 |
| 住民票または戸籍謄本 | 住所変更が生じた場合 | 3ヶ月以内のもの |
| 資格者証の写し | 一級建築士など資格所有者の場合 | 有効期限内のもの |
| 許可申請書(既許可申請時のもの)の写し | 初回申請時の参考資料 | 自社で保有していない場合は申請可 |
申請先と提出方法
変更届の提出先は以下の通りです。
県知事許可の場合: 建設業許可を取得した都道府県庁の建設業課(または指定登録機関)
大臣許可の場合: 営業所がある地域ごとに、対応する地方整備局または業界団体の指定登録機関
令和8年(2026年)現在、オンライン申請システム(COCOA)や各自治体の電子申請システムでの提出が推奨されています。書面での提出も可能ですが、オンライン申請の方が処理期間が短縮される傾向にあります。
変更届の記入例と実務の注意点

!Builders working on bamboo scaffolding on a colorful building exterior.
*Photo by Warren Yip on Pexels*
具体的な記入例
ケース:営業停止処分を回避するため、責任者退職時の変更届
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【現在の経営業務管理責任者】
氏名:山田太郎
生年月日:昭和45年3月15日
個人番号:XXXXXXXXXX
退職日:令和8年7月31日
退職理由:定年退職
【新しい経営業務管理責任者】
氏名:鈴木花子
生年月日:昭和50年6月20日
個人番号:XXXXXXXXXX
建設業従事年数:12年(一級建築士資格保有)
就任予定日:令和8年8月1日
経営業務管理責任者講習受講日:令和8年6月10日
講習実施機関:△△建設業協会
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実務上の注意点5つ
- 30日以内厳守の原則
– 変更日から30日を超えると「遅延申請」として扱われる可能性
– カレンダーで明確に期限を管理する仕組みが必須
- 講習受講証明書の事前準備
– 新規配置の場合、講習は変更届申請の前に修了しておく必要がある
– 講習申し込みから受講まで2~4週間かかることが多いため、早めの手配が重要
- 個人番号(マイナンバー)の正確性
– 番号誤りがあると申請が受理されない
– マイナンバーカードで確認してから記入する
- 複数営業所がある場合の手続き
– 経営業務管理責任者は会社全体に1名配置が原則
– 営業所管理者との混同を避ける(営業所管理者の変更は別の書類)
- 並行して「営業所管理者」の配置も確認
– 責任者交代時に、各営業所の管理者配置に漏れがないか並行確認する
– 管理者の交代があればあわせて処理する
よくある質問と対応方法
Q1:後任者の就任日が未定の場合、変更届は提出できるか?
A1: はい、提出可能です。現在の責任者の退職日を正確に記入し、新任者の就任予定日を「予定日未定」または「調整中」と記入してください。ただし、後任者決定から30日以内に改めて確定情報を追記する必要があります。
Q2:責任者の死亡の場合は異なる手続きが必要か?
A2: はい、変更届の「退職理由」欄に「死亡」と明記し、死亡診断書の写しを添付します。相続人や遺族からの申告が必要になる場合もあるため、自治体に事前確認してください。
Q3:オンライン申請で提出した場合、受領確認書は発行されるか?
A3: はい、オンライン申請の場合はシステム内で「受領番号」が発行され、メールで確認書が送付されます。処理期間は通常5営業日程度です。
Q4:講習を受講していない人を新たに配置することは可能か?
A4: いいえ、令和5年4月1日以降の新規配置は講習受講が必須です。講習を受講してから変更届を申請してください。
よくある質問

!Black and white image of workers on a steel grid at a construction site.
*Photo by Soner Arkan on Pexels*
Q1. 経営業務管理責任者が退職した場合、いつまでに変更届を提出する必要がありますか?
退職が決定した時点で速やかに変更届を提出してください。実務上は退職日から14日以内の提出が目安です。新任者が決まっていない場合でも、退職予定日が決まり次第届け出ることをお勧めします。
Q2. 経営業務管理責任者を新たに配置する場合の必要書類は何ですか?
変更届のほか、新任者の建設業経理士資格証写しや経営業務の管理経験を証明する書類が必要です。また、登記簿謄本や誓約書など、許可申請時と同様の添付書類を求められる場合もあります。
Q3. 経営業務管理責任者が死亡した場合、どのような手続きが必要ですか?
死亡診断書と変更届を提出してください。死亡が判明した時点で速やかに手続きしましょう。後任者がいない場合は、許可要件を満たす人員の配置が必須です。配置できない場合は許可取消のリスクもあります。
Q4. 変更届の提出先は都道府県と市区町村のどちらですか?
許可を得た自治体に提出します。知事許可の場合は都道府県、大臣許可でも対応する都道府県へ提出してください。複数許可を持つ場合は、各許可を得た自治体すべてへの提出が必要です。
Q5. 経営業務管理責任者の名義変更だけで住所変更がない場合、届け出は必要ですか?
必ず変更届を提出してください。名義変更のみでも許可内容の重要な変更にあたります。同時に他の変更がある場合は、一度にまとめて届け出ると効率的です。
まとめ
経営業務管理責任者の変更届は、単なる事務手続きではなく、建設業許可を継続するための必須手続きです。30日以内の提出期限、必要書類の準備、正確な記入が三点セットで求められます。
本記事でお伝えした5つの変更ケース(退職・病気・出向・役職変更・住所変更)に該当する場合は、迷わず変更届を速やかに提出してください。特に令和8年(2026年)現在の集約化対応の統一様式では、項目数が増えているため、記入漏れを避けるため様式をよく確認してから作成することが重要です。
営業停止処分を避け、許可要件を満たした安定した企業運営のために、まずは自社の経営業務管理責任者の身分と配置状況を今一度確認することから始めましょう。

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