人件費や資材価格の高騰、DX化への対応など、建設業の経営環境は年々厳しさを増しています。そんな中、中小建設会社にとって事業継続と成長のカギを握るのが、助成金・補助金の活用です。しかし「どんな制度があるのかわからない」「申請方法が複雑で手が出せない」という声も少なくありません。本記事では、執筆時点で建設会社が申請できる助成金・補助金制度を分野別に整理し、申請時期・要件・必要書類まで具体的に解説します。この記事を読めば、自社が活用すべき制度が明確になり、今すぐ準備を始められるようになります。
建設業が活用できる主要な助成金・補助金【2026年最新版】
建設業向け補助金の全体像と選び方
建設業向けの補助金・助成金は、大きく分けて国の制度と自治体独自の制度の2種類があります。
国の制度は全国で統一された要件で申請できる一方、自治体独自の制度は地域の実情に応じた支援内容となっているため、所在地によって利用できる制度が異なります。
2026年時点で建設会社が活用しやすい主な制度は以下の通りです。
- ものづくり補助金:ICT建機導入、施工管理システム導入など設備投資に活用
- デジタル化・AI導入補助金(旧 IT導入補助金):会計ソフト、工程管理ツール等のソフトウェア導入
- 中小企業新事業進出補助金(事業再構築補助金の後継):新しい市場への進出に伴う設備投資。事業再構築補助金は新しい募集を終えています
- 小規模事業者持続化補助金:広告宣伝、ホームページ制作など販路開拓
- 自治体の耐震改修補助金:耐震診断・改修工事に対する補助
- 自治体のDX推進補助金:地域によってICT機器導入を独自支援
制度の要件と申請方法を理解するには、まず自社の経営課題を明確にし、その課題解決に使える制度を絞り込むことが重要です。
申請可能時期と公募スケジュールの確認方法
補助金・助成金には通年募集型と期間限定募集型があります。
通年募集型は年度内いつでも申請可能ですが、期間限定募集型は公募期間を逃すと翌年まで待つ必要があります。2026年度の主要な補助金の公募スケジュールは以下の通りです。
ものづくり補助金は例年、春・夏・秋の年3回程度の公募が実施されています。最新の公募の時期は公式サイトで確かめてください。
デジタル化・AI導入補助金は4月から12月頃まで複数回に分けて公募が行われるため、比較的申請機会が多い制度です。
自治体独自の補助金は、年度初め(4月〜6月)に受付開始となるケースが多く、予算上限に達し次第締め切られる先着順の場合もあります。
公募情報は、中小企業庁の「ミラサポplus」や各自治体のホームページで最新情報を確認できます。
ICT導入・DX化で活用できる補助金制度
建設産業DX加速化事業(大分県の事例)
建設業のDX化を推進するため、自治体レベルで独自の支援制度を設けている地域があります。
大分県では「大分県建設産業DX加速化事業」として、県内に主な営業所がある建設業者などが、ICT建機や測量・設計に使うICT機器を導入する際の補助を実施しています(令和8年度の2次募集は予定の申込数に達したと県が案内しています)。この制度は、中小建設会社の生産性向上と人手不足対策を目的としています。
補助対象となる主な設備・システムは以下の通りです。
- ICT建設機械(バックホウ、ブルドーザー等)
- ドローン等の測量機器
- 3次元設計ソフトウェア
- 施工管理アプリケーション
- クラウド型工程管理システム
補助率は対象経費の2分の1以内、補助上限額は最大150万円(賃上げ枠は補助率3分の2以内)となっており、高額なICT建機の導入障壁を大きく下げることができます。
申請には事業計画書、見積書、会社概要などの提出が必要です。採択後は実績報告と効果検証が求められるため、導入後の活用計画まで明確にしておくことが採択のポイントとなります。
ものづくり補助金とデジタル化・AI導入補助金の使い分け
建設業におけるICT導入では、ものづくり補助金とデジタル化・AI導入補助金のどちらを選ぶかが重要です。
ものづくり補助金は、革新的なサービス開発や生産プロセスの改善に必要な設備投資が対象です。ICT建機やドローン、3Dスキャナーなどのハードウェアを含む大規模投資に適しています。補助上限は枠と従業員数で750万〜2,500万円程度(公募要領で確認)となり、補助率は中小企業で2分の1が基本です。
デジタル化・AI導入補助金は、パッケージソフトウェアやクラウドサービスの導入が対象です。会計ソフト、勤怠管理システム、顧客管理システムなど、既存のITツール導入に活用できます。補助上限は数十万円から450万円程度、補助率は2分の1から4分の3です。
使い分けの基本は、ハードウェアを含む場合はものづくり補助金、ソフトウェアのみの場合はデジタル化・AI導入補助金です。ただし、ものづくり補助金は事業計画の革新性が求められるため、単なるシステム更新では採択されにくい点に注意が必要です。
許可取得・創業時に活用できる補助金
解体工事業の許可取得と同時活用できる制度
解体工事業を新たに始める、または既存事業から拡大する際、許可取得と設備投資を同時に行うケースがあります。このタイミングで活用できるのが創業支援補助金です。
大分県杵築市では「令和8年度杵築市創業支援事業補助金」として、市内で新たに創業する人に対し、設備や広告、店舗の改装などの初期費用の一部を補助しています(令和8年度は補助率3分の2・上限180万円・申請は7月29日まで)。
この制度は、解体工事業の許可を取って市内で創業するときなどに、重機購入費や事務所開設費用、広告費などに活用できます。補助対象経費には以下が含まれます。
- 設備費(重機、車両等)
- 備品購入費(工具、安全装備等)
- 広報費(ホームページ制作、チラシ作成)
- 店舗・事務所改装費
申請要件として、創業前の事業計画書提出、市の創業支援セミナー受講などが求められる場合があります。また、補助金交付後も一定期間の事業継続義務があるため、計画的な事業運営が前提となります。
中小企業向け創業補助金の申請要件
申請で最も重要なのが、補助対象者の要件確認です。
創業補助金の一般的な申請要件は以下の通りです。
- 個人事業主または中小企業基本法上の中小企業者であること
- 補助事業期間内に創業または第二創業を行うこと
- 事業税の滞納がないこと
- 反社会的勢力との関係がないこと
- 指定の創業支援セミナー等を受講していること(自治体により異なる)
必要書類は一般的に以下が求められます。
- 補助金交付申請書
- 事業計画書(事業内容、市場分析、収支計画)
- 経費明細書・見積書
- 登記簿謄本(法人の場合)
- 納税証明書
- 許認可証の写し(建設業許可、解体工事業登録等)
申請書類の作成では、事業の新規性・独自性と実現可能性を明確に示すことが採択のポイントです。特に建設業の場合、地域の需要動向や競合分析を数字で示すと説得力が高まります。
耐震改修・リフォーム工事で使える補助金
自治体の耐震改修補助金制度
建設会社の受注の拡大に直結するのが、住宅の耐震改修の補助金です。
多くの市町村では、昭和56年5月31日以前に着工された木造住宅を対象に、耐震診断・耐震改修の計画・改修工事の費用の一部を補助しています。姫路市にも住宅の耐震化の補助制度があります。補助の対象・補助率・上限・受付の時期は年度ごとに変わるため、姫路市の公式ページで確かめてください。
建設会社にとっては、こうした制度を顧客に案内することで、受注の機会が広がります。補助金は予算の範囲で受付を終えることがあるため、顧客には早めの相談を勧めるのが効果的です。
工事業者として顧客に案内すべき補助金情報
建設会社・リフォーム会社は、自社が受け取る補助金だけでなく、顧客が活用できる補助金を把握しておくことが営業上の強みとなります。
2026年時点で一般住宅向けに提供されている主な補助金は以下の通りです。
- 住宅省エネ2026キャンペーン:断熱改修、高効率給湯器導入など(名前と条件は年度ごとに変わる)
- みらいエコ住宅2026事業(子育てグリーン住宅支援事業の後継・国土交通省と環境省):省エネ性能の高い住宅の新築・購入・リフォーム
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業:性能向上リフォーム
- 各自治体の住宅リフォーム補助金:地域ごとに要件・金額が異なる
これらの補助金情報を顧客に的確に案内できる建設会社は、競合他社との差別化が図れます。具体的には、見積提示時に「この工事内容なら○○補助金が使えます」と併記することで、成約率が向上します。
また、補助金申請の代行サポートを付加サービスとして提供することで、顧客満足度を高めることも可能です。
経営課題別の補助金活用戦略
原材料費高騰対策としての補助金活用
外構工事業界では、中東情勢やナフサ不足の影響により、約78%の施工店が中東情勢の影響を感じています(外構・エクステリアの紹介サービスを運営するソーラーパートナーズが加盟施工店208社に聞いた調査(2026年5月・同月29日発表))。この経営課題に対応するため、補助金を戦略的に活用する動きが広がっています。
原材料費高騰に対応する補助金活用の方向性は以下の2つです。
1. 生産性向上による利益率改善
ICT の導入や DX の補助金を活用し、施工効率を高めることで、材料費上昇分を工期短縮や人件費削減でカバーする戦略です。ものづくり補助金やデジタル化・AI導入補助金を使い、施工管理システムや自動化機器を導入することで、1件あたりの工数を削減できます。
2. 新工法・新材料への転換
中小企業新事業進出補助金(事業再構築補助金の後継)などを活用し、価格高騰の影響を受けにくい新工法や代替材料を使った施工体制への転換を図る戦略です。例えば、従来の資材に依存しない工法開発や、リサイクル材の活用などが該当します。
補助金は単なる資金調達手段ではなく、経営課題解決のための投資原資として位置づけることが重要です。
人手不足対応のための設備投資補助金
建設業界全体で深刻化する人手不足に対し、省人化設備の導入が急務となっています。
人手不足対応に活用できる補助金には以下があります。
- ものづくり補助金:ICT建機、自動測量機器など
- デジタル化・AI導入補助金:勤怠管理、現場管理の効率化ツール
- 業務改善助成金:最低賃金引上げと生産性向上設備の同時実施
- キャリアアップ助成金:有期雇用の社員の正社員化
取引先や下請の会社が建設業許可を持っているかは、全国の建設業許可業者を業種や地域から調べられる建設業許可データベースの企業検索で確かめられます。
よくある質問

Q1. 建設業で使える助成金と補助金の違いは何ですか?
助成金は要件を満たせばほぼ確実に受給でき、主に雇用関係が対象です。補助金は審査があり予算上限があるため採択率が変動します。建設業では人材開発支援助成金などの助成金と、ものづくり補助金やデジタル化・AI導入補助金などの補助金を併用できる場合もあります。
Q2. 建設会社が申請しやすい助成金を教えてください
キャリアアップ助成金と人材開発支援助成金が代表的です。キャリアアップ助成金は有期雇用労働者の正社員化で最大80万円、人材開発支援助成金は技能講習や資格取得の経費助成で、建設業特有の技能向上に活用できます。いずれも計画届の事前提出が必須です。
Q3. 補助金申請に必要な書類は何ですか?
事業計画書、経費明細書、会社概要・決算書が基本です。建設業では建設業許可証、経営事項審査結果通知書も求められることがあります。電子申請が主流のため、GビズIDの取得が必須です。書類不備は不採択の原因となるため、申請前の確認が重要です。
Q4. 助成金の申請時期はいつですか?期限はありますか?
助成金は通年申請可能なものが多いですが、人材開発支援助成金は訓練を始める日の1か月前までに計画届を出し、キャリアアップ助成金は正社員に転換する日の前日までにキャリアアップ計画を出します。キャリアアップ助成金の支給申請は、転換後6か月分の賃金を支払った後です。年度予算の都合で受付終了する場合もあるため、早めの計画策定と申請準備をお勧めします。
Q5. 工務店でもデジタル化・AI導入補助金は使えますか?
使えます。工務店でも会計ソフト、顧客管理システム、CADソフト、工程管理ツールなどが対象です。2026年度は補助率2分の1から4分の3、上限450万円の枠があります。IT導入支援事業者が登録したソフトウェアのみ対象で、事前のベンダー確認が必要です。
出典:厚生労働省「事業主の方のための雇用関係助成金」(確認日 2026-09-28)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。
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