建設業は、全産業のなかで労働災害による死亡者が最も多い業種です。厚生労働省の集計(令和6年確定値)では、令和6年の建設業の死亡者は232人で、全産業の死亡者 746人の約3割を占めました。毎年7月1〜7日の全国安全週間、10月1〜7日の全国労働衛生週間は、自社の安全と健康の体制を見直すよい区切りです。この記事では、統計で建設業の労働災害の実態をつかみ、経営者が整えるべき体制と書類を具体的にお伝えします。
建設業の労働災害発生状況(厚生労働省・令和6年確定値)
厚生労働省「令和6年 労働災害発生状況」によると、建設業の死亡者は令和5年の223人から令和6年は232人(9人増)に増えました。全産業では755人から746人に減っており、主な業種のなかで建設業は増えた側にあります。令和4年の281人と比べれば減っていますが、今も毎年200人を超える人が建設の現場で亡くなっています。
建設業の死亡災害で最も多いのは、足場・屋根・はしごなどからの墜落・転落です。高い所での作業が多い建設業では、墜落を防ぐ設備と保護具、そして作業の前の確認が、そのまま死亡災害を減らす対策になります。安全管理の担当者を置きにくい中小の会社こそ、社長が自ら数字と対策を押さえておくことが大切です。
全国安全週間(7月1〜7日)前に経営者が準備すべきこと
全国安全週間は厚生労働省・中央労働災害防止協会が主唱する安全活動強化の期間で、毎年7月1〜7日に実施されます。6月は準備期間として、次の活動を計画してください。
- 安全大会の開催:全従業員(協力会社含む)を集めた安全宣言・事故事例共有
- 安全パトロールの実施:現場の危険箇所を第三者目線でチェック・記録
- ヒヤリハット報告の集計:過去1年分を集計し傾向分析・対策立案
- 安全教育の実施:フルハーネス取扱い・熱中症対応・緊急連絡体制の確認

2026年版 経営者のための安全管理体制チェックリスト
以下の5項目を6月中に確認・整備してください。労働基準監督署の臨検(立入検査)が入った際も、これらの書類・体制が整っていることが適切な安全管理の証明になります。
- 作業主任者の配置確認:足場組立・解体、型枠支保工、土止め支保工等は資格者の選任が義務(労働安全衛生法第14条)。未選任は罰則対象。
- フルハーネス型の墜落制止用器具の点検記録:点検日・点検者・点検結果を記録した台帳を整備する。ベルトや金具の傷み・変形を点検し、メーカーが示す交換の目安も確認する。
- 足場の点検・記録:強風・大雨・大雪の後や中震以上の地震の後は、作業を始める前に点検し記録を残す(事業者は労働安全衛生規則第567条、元請などの注文者は第655条)。
- 体調確認・KY(危険予知)活動記録:毎朝の健康確認と危険予知活動のシートを日付別に保管する。
- 協力会社への安全衛生指示書:下請に安全衛生に関する指示を書面で行い、受領確認をとる(元請の安全衛生管理責任を果たす証拠)。
📋 2026年版 安全管理体制チェックリスト
全国安全週間(7月1〜7日)前の6月中に全項目を整備してください
👷 人員・資格の確認
📋 記録・書類の確認
※ このチェックリストは印刷してご利用いただけます。チェックは画面上でも行えます。
9月は全国労働衛生週間の準備期間:健康面の点検も
安全週間が「けがを防ぐ」取り組みなら、毎年10月1〜7日の全国労働衛生週間は「健康を守る」取り組みです。9月1〜30日が準備期間にあたり、建設業では次の点をこの時期に見直しておくと、冬の工期の山場を前に体制が整います。
- 健康診断の受診と事後の措置:年1回の定期健康診断を全員が受けたか、所見のあった人に医師の意見を聞いて作業の配慮をしたかを確かめる
- 長時間労働の確認:時間外労働の上限(原則 月45時間・年360時間)を超えそうな人がいないか、現場ごとに勤務の記録を見る
- 熱中症の振り返り:夏の間の体調不良の記録を見直し、報告の体制と手順(労働安全衛生規則第612条の2)が守られたかを翌年に向けて点検する
- 粉じん・騒音・石綿:はつりや解体の作業でのマスク・耳栓の使い方と、石綿の事前調査の記録を確かめる
安全と健康の記録は、労働基準監督署の調査や元請の安全書類の確認で、そのまま自社の管理を示す材料になります。年に2回の週間を「書類を整える日」と決めておくと、担当者が替わっても続けやすくなります。
まとめ
| 統計・事実 | 内容 |
|---|---|
| 建設業の死亡者数(令和6年) | 232人(前年 223人・全産業 746人の約3割) |
| 死亡災害で最も多い型 | 墜落・転落 |
| 全国安全週間 | 毎年7月1〜7日(準備期間:6月) |
| 全国労働衛生週間 | 毎年10月1〜7日(準備期間:9月) |
厚生労働省の統計が示すとおり、建設業の労働災害はいまだ深刻な水準にあります。令和6年は死亡者が前年より増えました。全国安全週間と全国労働衛生週間の準備期間を区切りに、書類の整備・安全教育・現場のパトロールを集中して行い、「無災害」を目指してください。
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よくある質問
Q: 全国安全週間に特別な申請や届出は必要ですか?
全国安全週間(7月1〜7日)自体は届出不要ですが、準備期間(6月)中に労働安全衛生法に基づく安全活動を実施し記録を残すことが重要です。建設業労働災害防止協会(建災防)の会員企業は安全大会・安全パトロールの記録を保持しておくことで、万が一の事故時に適切な安全管理を示す証拠になります。
Q: フルハーネス型の墜落制止用器具の使用は2026年現在も義務ですか?
はい、原則として義務です。高さ2m以上で作業床を設けるのが難しい場所では、墜落制止用器具(安全帯の今の呼び名)を使い、その器具はフルハーネス型が原則です(2019年2月1日施行・旧規格品の経過措置は2022年1月1日で終了)。ただし、フルハーネス型では落ちたときに地面に届くおそれがある高さ(6.75m以下)では胴ベルト型(一本つり)も使えます。建設業では5mを超える所でフルハーネス型を使うよう指針で示されています。使う人には特別教育も必要です。
Q: 全国労働衛生週間には何をすればよいですか?
届出は要りません。厚生労働省と中央労働災害防止協会が毎年のスローガンと実施要綱を公表するので、それに沿って、準備期間の9月に健康診断の受診と事後の措置、長時間労働の確認、粉じんや騒音の対策を点検し、10月1〜7日の本週間に社内へ周知します。点検した記録は残しておきましょう。
Q: 小さな会社でも作業主任者を選ぶ必要がありますか?
会社の規模にかかわらず必要です。つり足場・張出し足場・高さ5m以上の足場の組立てや解体、型枠支保工、土止め支保工などの作業では、技能講習を修了した人を作業主任者に選び、その人に作業を指揮させなければなりません(労働安全衛生法第14条)。資格者がいないときは、作業の前に講習を受けさせる計画を立ててください。
出典と参考(2026年10月1日に確認)
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