建設業許可申請を進める際、書類作成を行政書士に依頼する事業者は少なくありません。しかし、2026年に入り宮城県仙台市で行政書士を含む3名が虚偽書類による建設業許可申請で逮捕される事案が発生しました。この事例は、許可取得を急ぐあまり書類の正確性を軽視した場合、依頼者である建設会社自身も刑事責任を問われる可能性があることを明確に示しています。本記事では、この逮捕事例の詳細と法的背景を解説し、宮城県内で建設業許可を取得する際に押さえるべき正しい手続きと注意点、そしてコンプライアンス体制の構築方法について、実務目線で詳しくお伝えします。
宮城県仙台市で発生した虚偽書類による建設業許可申請の逮捕事例
事案の概要と逮捕に至った経緯
2026年、宮城県仙台市太白区の行政書士とその関係者3名が、虚偽の書類を用いて建設業許可申請を行った疑いで逮捕されました。この事案では、建設会社の経営業務管理責任者や専任技術者の実務経験を証明する書類に虚偽の記載を行い、本来であれば許可要件を満たしていない状態で許可を取得していたとされています。
建設業許可申請では、経営業務管理責任者として5年以上の経営経験、または専任技術者として一定の実務経験や資格が必要です。これらの要件を満たさない場合でも、書類上で虚偽の職歴や工事実績を記載すれば、形式的には許可が下りてしまう可能性があります。しかし、行政機関による事後確認や内部告発などで虚偽が発覚した場合、建設業法違反として刑事罰の対象となります。
虚偽申請が重罪とされる法的根拠
建設業法第47条では、虚偽または不正な事実に基づいて建設業許可を受けた者に対し、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されると定められています。さらに法人の場合、両罰規定により法人そのものにも罰金刑が科される可能性があります。
また、虚偽申請が発覚した場合、許可の取り消し処分に加えて、一定期間の再申請禁止措置が取られます。この間は公共工事への入札参加資格を失い、民間工事でも元請業者からの信用を失うことになるため、事業継続に深刻な影響を及ぼします。宮城県内でも、過去に同様の事案で指名停止処分を受けた建設会社が複数存在しており、コンプライアンス違反のリスクは決して他人事ではありません。
建設業許可申請における正しい書類作成のポイント

経営業務管理責任者・専任技術者の要件確認
建設業許可申請で最も重要なのが、経営業務管理責任者と専任技術者の要件を正確に満たしているかの確認です。
経営業務管理責任者については、以下のいずれかの要件が求められます。
- 建設業に関する経営経験が5年以上ある
- 建設業に関する経営業務の補佐経験が6年以上ある
- 経営業務を執行する権限のある者として、建設業の経営業務を補佐した経験が6年以上ある
専任技術者については、以下の要件が代表的です。
- 国土交通大臣が指定する資格を保有している
- 許可を受けようとする建設業に関して10年以上の実務経験がある
- 指定学科を修了し、高卒の場合は5年以上、大卒の場合は3年以上の実務経験がある
これらの要件を証明するためには、過去の工事請負契約書、注文書、請求書、工事台帳など客観的な証拠書類が必要です。特に実務経験を証明する場合、工事の内容・期間・金額が明確に記載された書類を時系列で揃える必要があります。
実務経験証明で陥りがちな誤り
虚偽申請にまで至らなくても、実務経験証明で誤った記載をしてしまうケースは少なくありません。よくある誤りとして以下が挙げられます。
- 実際には従事していない工事を記載する
- 工事期間を実際より長く記載する
- 下請として参加した工事を元請工事として記載する
- 証明書類が残っていない工事を記憶だけで記載する
これらの誤りは、意図的でない場合でも虚偽申請と見なされる可能性があります。特に行政書士に依頼する場合、事業者側が「だいたいこれくらいの経験がある」といった曖昧な情報を伝え、行政書士がそれを元に書類を作成してしまうと、結果的に虚偽書類となるリスクがあります。
宮城県での建設業許可申請においても、県の担当部署による審査は年々厳格化しています。疑義のある書類については追加資料の提出を求められるケースも増えており、申請段階での正確性がこれまで以上に重要になっています。
行政書士に依頼する際の注意点とコンプライアンス体制の構築
信頼できる行政書士の選定基準
建設業許可申請を行政書士に依頼すること自体は、専門知識を活用できる有効な手段です。しかし、今回の宮城県での逮捕事例が示すように、行政書士の選定を誤ると事業者自身が刑事責任を問われる事態になります。
信頼できる行政書士を選ぶ際の基準として、以下の点を確認してください。
- 建設業許可申請の実績が豊富である:ホームページや面談時に、具体的な許可取得実績や対応可能な業種を確認しましょう
- 書類の根拠を明確に説明できる:「これくらいで大丈夫です」といった曖昧な説明ではなく、法令や要件に基づいた根拠を示せるか確認してください
- 追加費用や期間について透明性がある:申請が不許可になった場合の対応や、追加書類が必要になった場合の費用について事前に説明があるか確認しましょう
- 虚偽申請を勧めない姿勢:要件を満たしていない場合、正直にその旨を伝え、要件を満たすための具体的なアドバイスをしてくれる行政書士を選んでください
「早く許可を取りたい」という事業者の焦りに付け込み、虚偽書類の作成を提案する行政書士は論外です。そのような提案があった場合は、即座に契約を見直すべきです。
社内でのコンプライアンス体制の整備
建設業許可を取得した後も、コンプライアンス体制の維持は継続的に必要です。特に以下の点については社内でルールを明確にしておきましょう。
変更届の適切な提出:経営業務管理責任者や専任技術者の変更、商号や所在地の変更があった場合、宮城県に対して2週間以内または30日以内に変更届を提出する必要があります。この届出を怠ると、更新時に不利益を被る可能性があります。
決算変更届の毎年提出:建設業許可を持つ事業者は、事業年度終了後4ヶ月以内に決算変更届(事業年度報告)を提出する義務があります。これを怠ると更新申請ができなくなるため、経理担当者と連携して確実に提出する体制を整えてください。
工事台帳の正確な記録:将来的に業種追加や般・特新規申請を行う際、過去の工事実績が証明書類として必要になります。日常的に工事台帳を正確に記録し、契約書・請求書などの証拠書類を保管する習慣をつけておくことが重要です。
宮城県内の建設会社においても、これらのコンプライアンス体制を整備している企業とそうでない企業では、行政処分のリスクや公共工事入札での評価に明確な差が出ています。
よくある質問

Q1. 建設業許可申請で虚偽の書類を提出するとどんな罪になりますか?
虚偽の書類による建設業許可申請は、建設業法違反として3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。法人の場合は1億円以下の罰金となり、許可の取消しや再申請の制限も受けます。逮捕・起訴されれば前科もつくため、絶対に虚偽申請は避けるべきです。
Q2. 実務経験証明書の虚偽記載が発覚するケースはどんな時ですか?
行政の事後調査、同業者からの通報、社会保険記録との照合時に発覚することが多いです。特に証明者の会社に直接確認が入った場合や、在籍期間と社会保険加入記録の不一致が判明した際に虚偽が露見します。許可取得後の立入検査でも過去の書類が精査されることがあります。
Q3. 経営業務管理責任者の要件を満たせない場合はどうすればよいですか?
令和2年の法改正により、経営業務管理責任者の要件が緩和されました。経験年数が不足する場合は、補佐経験者との組み合わせや、建設業に関する財務管理・労務管理等の経験での代替も可能です。虚偽申請ではなく、行政書士等の専門家に相談し、適法な方法を検討しましょう。
Q4. 他社で働いていた時の実務経験を証明するにはどんな書類が必要ですか?
前職での実務経験証明には、在籍していた会社からの実務経験証明書が基本となります。加えて、雇用保険被保険者証、源泉徴収票、社会保険資格取得確認通知書などで在籍期間を客観的に証明します。前職の会社が廃業している場合は、工事請負契約書や注文書等での代替も検討できます。
Q5. 建設業許可を急いで取得したい場合、書類を多少加工しても問題ないですか?
絶対に問題があります。たとえ急いでいても書類の加工や虚偽記載は犯罪行為です。発覚すれば刑事罰、許可取消、会社の信用失墜など取り返しのつかない損害を受けます。要件を満たせない場合は、知事許可での段階的取得や、要件を満たすまでの準備期間を設けるなど、適法な方法を選択してください。
まとめ
宮城県仙台市で発生した虚偽書類による建設業許可申請の逮捕事例は、許可取得における正確性とコンプライアンスの重要性を改めて示しています。本記事のポイントを3点に整理します。
- 虚偽書類による建設業許可申請は建設業法違反であり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される重罪です。依頼者である建設会社も刑事責任を問われる可能性があるため、書類の正確性は最優先事項です。
- 経営業務管理責任者や専任技術者の要件は、客観的な証拠書類に基づいて正確に証明する必要があります。実務経験の証明では、工事請負契約書や工事台帳など時系列で整理された書類が不可欠です。
- 行政書士に依頼する場合は、実績・説明の明確性・コンプライアンス意識を基準に慎重に選定し、許可取得後も変更届や決算変更届を確実に提出する社内体制を整備してください。
宮城県で建設業許可の取得や更新を検討している事業者の方は、まず自社の要件充足状況を正確に把握することから始めましょう。焦って虚偽申請に手を染めるのではなく、正しい手続きで確実に許可を取得することが、長期的な事業の発展につながります。

コメント