塗装工事業で事業を拡大していくうえで、公共工事への参入は大きなビジネスチャンスとなります。しかし、公共工事入札に参加するには塗装工事業許可の取得が不可欠であり、その申請手順や要件を正しく理解しておく必要があります。2024年度のデータでは建設業許可の確認方法業者数が47万9383業者に達し、競争環境はますます激化しています。この記事では、塗装工事業許可の取得から公共工事入札への参加、さらには総合評価落札方式への対応まで、実務で必要となるステップを体系的に解説します。これから許可取得を目指す事業者の方、すでに許可を持ち公共工事参入を検討している方に向けて、具体的な手順と実践的なポイントをお伝えします。
塗装工事業許可取得の基本ステップ
建設業許可が必要となる要件と塗装工事の範囲
塗装工事業許可は、建設業法に基づき、一定規模以上の塗装工事を請け負う場合に必要となる許可です。具体的には、1件の請負代金が500万円以上(税込)の工事を受注する場合、建設業許可の取得が義務付けられています。
塗装工事業が対象とする工事の範囲は、建築物や工作物に対する塗装・塗り替え工事全般を含みます。具体的には以下のような工事が該当します。
- 建築物の内外装塗装工事
- 鉄骨・鉄筋構造物の防錆塗装工事
- 道路標示塗装工事
- 橋梁・水圧鉄管などのインフラ塗装工事
公共工事入札への参加を目指す場合、この許可取得が最初の必須ステップとなります。許可を取得することで、大型案件の受注機会が広がり、企業の信用力向上にもつながります。
塗装工事業許可申請手順と必要要件
建設業許可申請の手順手順は、大きく分けて5つのステップで構成されます。
ステップ1:経営業務管理責任者の確保
常勤役員のうち1名が、建設業の経営経験を5年以上(または6年以上の補佐経験)有していることが必要です。塗装工事業での経営経験が理想的ですが、他業種での経験も一定の条件下で認められます。
ステップ2:専任技術者の配置
営業所ごとに、塗装工事に関する専任技術者を常勤で配置する必要があります。技術者の要件は以下のいずれかを満たすことです。
- 1級塗装技能士または2級塗装技能士の資格保有者
- 大学・高専の指定学科卒業後、3年以上の実務経験(高卒は5年以上)
- 10年以上の塗装工事実務経験
ステップ3:財産的基礎の証明
一般建設業と[特定建設業許可の要件の違い](https://kensetu-mirai.com/wp/license-general-vs-special/)許可の場合、自己資本が500万円以上あること、または500万円以上の資金調達能力があることを証明する必要があります。
ステップ4:欠格要件の非該当確認
申請者が建設業法で定める欠格要件に該当しないことを確認します。暴力団関係者や過去に許可取消処分を受けた者などは申請できません。
ステップ5:申請書類の作成・提出
必要書類を整え、都道府県知事または国土交通大臣に申請します。知事許可の場合は営業所が1つの都道府県内にある場合、大臣許可は2つ以上の都道府県に営業所がある場合に該当します。審査期間は通常30日~90日程度です。
公共工事入札参加資格の取得プロセス

入札参加資格審査の申請タイミングと提出先
塗装工事業許可を取得した後、公共工事入札に参加するには、各発注機関が実施する「入札参加資格審査」を受ける必要があります。この審査は通常2年に1度の周期で実施されます。
令和7・8年度(2025-2026年度)の入札参加資格審査は、多くの自治体で2024年内に申請受付が開始されており、新規参加や業種追加を希望する事業者は定められた期間内に申請を行う必要があります。
主な発注機関は以下の通りです。
- 国(国土交通省、防衛省など各省庁)
- 都道府県・政令指定都市
- 市区町村
- 独立行政法人(NEXCO、UR都市機構など)
それぞれの機関で申請様式や必要書類が異なるため、参加を希望する発注機関のウェブサイトで最新情報を確認することが重要です。
経営事項審査(経審)の受審と評点アップのポイント
公共工事入札参加資格を得るには、経営事項審査(経審)について(経審)の受審が必須です。経審は建設業者の経営状況や施工能力を客観的に評価し、点数化する制度です。
経審の評価項目は以下の5つに分類されます。
- X1(完成工事高):直近2年または3年の平均完成工事高
- X2(自己資本額・利払前税引前償却前利益):財務状況
- Y(技術力):技術職員数、技術者資格の保有状況
- Z(その他審査項目):労働福祉の状況、営業年数、防災活動実績など
- W(社会性等):建設業法遵守状況、CPD(継続教育)実績など
塗装工事業者が評点を上げるために重視すべきポイントは以下の通りです。
- 技術職員の確保と資格取得支援:1級塗装技能士などの有資格者を増やすことでY評点が向上します
- 完成工事高の安定化:年度ごとの売上を安定させ、平均完成工事高を増やします
- 財務体質の改善:自己資本比率を高め、利益率を向上させることでX2評点が上がります
- ISO認証取得や建設業DXへの取り組み:品質管理体制の構築がZ評点に反映されます
総合評価落札方式への対応と施工実績の活かし方
総合評価落札方式の仕組みと評価基準
公共工事の入札では、価格だけでなく技術力や施工実績を総合的に評価する「総合評価落札方式」が主流となっています。2026年現在、特に重要なインフラ工事ではこの方式が標準的に採用されています。
実例として、新潟県が発注した「胎内第一発電所 水圧鉄管(内面)塗装工事」では、総合評価落札方式により業者選定が行われました。この事例では、単なる入札価格だけでなく、以下のような技術的要素が評価対象となりました。
- 同種・類似工事の施工実績
- 配置予定技術者の経験と資格
- 施工計画の妥当性・安全対策
- 工期短縮提案や品質向上策
- 地域貢献実績
評価方式には「加算方式」と「除算方式」があり、加算方式では技術評価点を価格評価点に加算して総合評価点を算出します。除算方式では入札価格を技術評価点で除して評価します。
施工実績評価を高めるための実践的アプローチ
総合評価落札方式で高評価を得るには、日常的な施工実績の蓄積と適切な記録管理が不可欠です。
施工実績の記録と整理
公共工事や民間工事を問わず、すべての塗装工事について以下の情報を記録・保管します。
- 工事名称、発注者、施工場所、工期
- 請負金額、施工面積、使用材料
- 特殊技術の適用(無足場工法、環境配慮型塗料使用など)
- 工事写真(施工前・中・後)
- 品質管理記録、検査結果
技術提案力の強化
入札時の技術提案では、単なる標準的な施工方法ではなく、以下のような独自性・優位性を示すことが重要です。
- 工期短縮の具体的方法(施工手順の工夫、人員配置計画)
- 品質向上策(使用材料の選定根拠、検査体制の充実)
- 安全管理の徹底(リスクアセスメント、安全教育計画)
- 環境配慮(VOC削減、廃棄物削減、騒音対策)
配置技術者の育成
総合評価では配置予定技術者の経験が重視されます。1級塗装技能士や1級建築施工管理技士などの資格取得を計画的に支援し、同種工事の経験を積ませることが長期的な競争力強化につながります。
建設業DXとサイバーセキュリティ対策の重要性

塗装工事業者に求められるDX化の実践
建設業DXは、2026年現在、中小規模の塗装工事業者にとっても避けて通れない経営課題となっています。デジタル技術の活用により、業務効率化と競争力強化の両方を実現できます。
塗装工事業者が優先的に取り組むべきDX施策は以下の通りです。
施工管理のデジタル化
- タブレット端末による現場写真管理と報告書作成
- クラウド型工程管理システムの導入
- ドローンを活用した高所部位の調査・診断
情報共有の効率化
- 社内コミュニケーションツール(チャット、Web会議)の活用
- 図面・仕様書の電子化とクラウド共有
- 顧客管理システム(CRM)による営業活動の可視化
見積・積算業務の効率化
- 積算ソフトウェアの導入による見積時間の短縮
- 過去データの活用による精度向上
これらのDX化により、経営事項審査のZ評点やW評点での加点が期待できるほか、実務レベルでの生産性向上が実現します。
中小塗装業者が備えるべきサイバー攻撃対策
建設業界でのサイバー攻撃が増加しており、中小規模の塗装工事業者も例外ではありません。2024年以降、建設業界を狙ったランサムウェア攻撃や情報漏洩事件が複数報告されており、セキュリティ対策の重要性が高まっています。
塗装工事業者が最低限実施すべきサイバーセキュリティ対策は以下の通りです。
基本的な防御策
- ウイルス対策ソフトの導入と定期更新
- OSやソフトウェアの最新状態維持(セキュリティパッチ適用)
- 強固なパスワード設定とパスワード管理ツールの活用
- 多要素認証(二段階認証)の導入
データ保護とバックアップ
- 重要データの定期的なバックアップ(クラウドと物理媒体の併用)
- 顧客情報や図面データの暗号化
- アクセス権限の適切な管理
従業員教育
- フィッシングメールへの注意喚起
- USBメモリなど外部媒体の取り扱いルール
- 情報セキュリティ研修の定期実施
公共工事入札では、情報セキュリティ対策の実施状況が評価項目に含まれるケースも増えています。適切な対策を講じることは、リスク回避だけでなく、入札での競争力強化にもつながります。
よくある質問
Q1. 塗装工事の建設業許可を取得するための要件は何ですか?
塗装工事の建設業許可取得には、①経営業務管理責任者(5年以上の経営経験)、②専任技術者(1級・2級塗装技能士等の資格または実務経験10年以上)、③財産的基礎(一般建設業で500万円以上)、④欠格要件に該当しないこと、の4要件を満たす必要があります。
Q2. 塗装工事で入札参加資格審査申請に必要な書類は?
主な必要書類は、建設業許可証明書、経営事項審査結果通知書、納税証明書、登記事項証明書、財務諸表(貸借対照表・損益計算書)、工事経歴書、技術者名簿などです。自治体により追加書類が求められる場合があるため、事前に確認が必要です。
Q3. 経営事項審査(経審)で塗装工事の評価点を上げる方法は?
評価点向上には、①1級塗装技能士等の有資格者を増やす、②完成工事高を増加させる、③自己資本比率や利益率などの財務指標を改善する、④ISO認証や建設業経理士の配置などの加点項目を取得する、⑤労働福祉の取組を強化することが有効です。
Q4. 塗装工事業の専任技術者として認められる資格は?
専任技術者として認められる主な資格は、1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(仕上げ)、1級塗装技能士、2級塗装技能士などです。資格がない場合は、塗装工事の実務経験10年以上(指定学科卒業者は短縮可能)で認定されます。
Q5. 入札参加資格の有効期間と更新手続きのタイミングは?
入札参加資格の有効期間は、国や多くの自治体で2年間です。更新申請は有効期間満了の2〜3ヶ月前から受付開始されます。また経営事項審査は毎年受審が必要で、審査基準日から1年7ヶ月の有効期限があるため、計画的な更新が重要です。
まとめ

塗装工事業許可の取得から公共工事入札参加まで、以下の3つのポイントを押さえることが成功への鍵となります。第一に、建設業許可申請手順を正確に理解し、経営業務管理責任者と専任技術者の要件を満たす体制を整えること。第二に、経営事項審査での評点向上を意識し、技術者育成・財務改善・施工実績の蓄積を計画的に進めること。第三に、総合評価落札方式に対応できる技術提案力を磨き、建設業DXとサイバーセキュリティ対策を並行して推進すること。2026年現在、建設業許可業者数は47万社を超え競争は激化していますが、適切な準備と継続的な改善により、公共工事市場での確固たる地位を築くことができます。まずは自社の現状を把握し、許可取得または業種追加申請の準備から始めましょう。

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