住宅や事業所の屋根から太陽光パネルを撤去する工事は、建て替え・屋根の葺き替え・設備の入れ替えに伴って増えています。撤去したパネルの処理を協力会社や処理業者に任せきりにしていても、法律上の処理責任は元請業者に残ります。委託契約書やマニフェスト(産業廃棄物管理票)に不備があれば、罰則の対象になるのも元請業者です。
本記事では、環境省「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第三版)」と、2026年6月に公布された太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律をもとに、太陽光パネルの撤去工事を受ける建設会社が確認すべき項目を整理しました。
撤去した太陽光パネルは誰の廃棄物か|元請業者が排出事業者

撤去工事は廃棄物処理法の「土木建築に関する工事」
環境省のガイドラインでは、太陽光発電設備の解体・撤去工事は、多くの場合、廃棄物処理法第21条の3第1項の「土木建築に関する工事」に該当するとしています。この条文では、工事が数次の請負で行われる場合、注文者から直接工事を請け負った元請業者を排出事業者とすると定められています。
つまり、撤去作業を下請の電気工事会社や解体工事会社が行っても、パネルの処理について廃棄物処理法上の責任を負うのは元請業者です。見積の段階で処分費と運搬費を工事費に含め、誰がどの処理業者に委託するのかを施工計画に書いておく必要があります。
撤去したパネルは産業廃棄物の混合物として扱う
事業活動である撤去工事から出た使用済の太陽光パネル(太陽電池モジュール)は産業廃棄物です。品目は基本的に「金属くず」「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」「廃プラスチック類」の混合物として扱われます。埋立処分をする場合は管理型最終処分場に埋め立てる必要があります。
ガイドラインは、使用済パネルからは有用な金属やガラスを回収できるため、解体・撤去業者と処理業者は埋立処分より先にリサイクルを検討する必要があるとしています。処理業者を選ぶ段階で、パネルのリサイクルに対応しているかを確認してください。
処理を委託するときに元請業者がすること

許可を持つ業者と、直接・書面で契約する
排出事業者が産業廃棄物の処理を委託するときは、必要な許可を持つ事業者に委託しなければなりません(廃棄物処理法第12条第5項)。さらに、収集運搬業者と処分業者(リサイクル業者・埋立処分業者)のそれぞれと、直接、書面で委託契約を結ぶ必要があります(同条第6項・施行令第6条の2)。収集運搬業者に処分先との契約までまとめて任せる形は認められません。
契約の前に、相手の許可証で次の3点を確認してください。許可を出した自治体(積み込む場所・運ぶ先を管轄する自治体の許可か)、許可の有効期限、許可されている品目に金属くず・ガラスくず等・廃プラスチック類が入っているかです。
委託契約書とマニフェストに「太陽電池モジュール」と書く
ガイドラインは、委託契約書と、引き渡しのときに交付する産業廃棄物管理票(マニフェスト)に太陽電池モジュールであることを明記する必要があるとしています。メーカー名と型式も書くことが望ましいとされています。品目だけを書いて「廃プラスチック類ほか」のように済ませると、処理業者が有害物質への対応を判断できません。
あわせて、ガイドラインは排出事業者の義務として、適正な処理の方法についての情報提供、処理の適正な対価の支払い、委託した処理の状況の確認と最終処分が終わるまでの必要な措置を挙げています。極端に安い処分費の見積りは、この確認の対象として注意が必要です。
有害物質(鉛・カドミウム・ヒ素・セレン)の情報を渡す
太陽光パネルには、鉛などの有害物質が含まれている可能性があります。一般社団法人太陽光発電協会の情報提供ガイドラインは、鉛・カドミウム・ヒ素・セレンの4物質を情報提供の対象としています。また令和6年4月からは、再エネ特措法の認定を新規に申請する発電事業者に、4物質の含有情報が登録された太陽電池モジュールだけを使うことを求める措置が始まりました。
撤去の前に、発注者(パネルの所有者)から型式やメーカーの情報を受け取り、処理業者に伝えてください。情報の渡し方として、ガイドラインは廃棄物データシート(WDS)の活用を推奨しています。
撤去工事で必要な資格と現場の安全対策

撤去の配線作業にも電気工事士の資格が必要
電気工事士法は、電気工作物を設置する工事だけでなく「変更する工事」も資格者が行うことを義務付けています。撤去に伴う配線の切り離しもこれにあたります。ガイドラインでは、一般家庭などの一般用電気工作物等は第一種または第二種電気工事士、工場などの自家用電気工作物は第一種電気工事士または認定電気工事従事者が作業するとしています。
基礎のコンクリートなど特定建設資材が出る一定規模以上の工事は建設リサイクル法の対象建設工事となり、分別解体等と再資源化等が必要です。建物の解体とあわせてパネルを撤去する場合は、届出と分別の計画にパネルの扱いも入れてください。
感電とガラスの破損によるけがを防ぐ
太陽光パネルは、取り外したあとも光が当たれば発電します。ガイドラインは、受光面を下にするか遮光用のシートで覆って発電を止める、厚手の絶縁ゴム手袋を着ける、ケーブルの端末をビニールテープなどで絶縁する、といった対策を示しています。
ガラスが割れたパネルは、水に濡れると含有物質が流出するおそれがあるため、ブルーシートで覆うなどの水濡れ防止策が必要です。保管場所には囲いを設け、みだりに人が触れないよう貼り紙で注意を促してください。
2026年6月公布の新法と元請業者への影響
太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律の概要
「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律」(令和8年法律第33号)は、2026年5月29日に成立し、6月5日に公布されました。施行は公布から1年6か月以内に政令で定める日です。環境省の概要資料によると、多量の事業用太陽電池を廃棄しようとする太陽光発電事業者などに、国が定める判断基準に基づくリサイクルの取組を義務付け、廃棄の実施計画を事前に届け出させる仕組みが中心です。
この計画を届け出た事業者は、原則として届出の受理から30日を経過するまで、他の者に工事や作業を行わせてパネルを排出させてはならないとされています。大規模な発電設備の撤去を受注する場合は、発注者の届出の時期が着工日に影響するため、工程表を作る前に発注者へ確認してください。多量とする重量の要件は政令で定められます。
解体工事業者等に求められる役割
同じ資料の基本方針のイメージでは、太陽電池廃棄物を排出する解体工事業者等の役割として、廃棄者(発注者)の指示等に従った適正な処分、廃棄者への情報提供、廃棄の抑制とリサイクルの取組が示されています。施行までに政令・省令や判断基準が定められるため、住宅用の小規模な撤去工事にどこまで影響するかは、今後の公表を確認する必要があります。
撤去工事の受注前チェック項目
| 確認する項目 | 根拠 | 確認する書類・相手 |
|---|---|---|
| 自社が元請業者(排出事業者)になるか | 廃棄物処理法 第21条の3 | 請負契約書・施工体制 |
| 収集運搬と処分それぞれの許可と品目 | 廃棄物処理法 第12条第5項 | 処理業者の許可証 |
| 両方の業者と直接・書面で委託契約 | 同条第6項・施行令第6条の2 | 委託契約書 |
| 太陽電池モジュール・メーカー名・型式の記載 | 環境省ガイドライン(第三版) | 委託契約書・マニフェスト |
| 4物質の含有情報 | 太陽光発電協会ガイドライン | 発注者・メーカーの資料・WDS |
| 配線作業者の資格 | 電気工事士法 | 電気工事士免状 |
| 発注者の廃棄実施計画の届出時期 | 太陽電池廃棄物再資源化等推進法 | 発注者(大規模な発電設備の場合) |
よくある質問
Q1. 撤去作業を下請に任せた場合、パネルの処分は下請の責任になりますか?
なりません。廃棄物処理法第21条の3により、工事が数次の請負で行われる場合は、注文者から直接請け負った元請業者が排出事業者です。処理業者との委託契約やマニフェストの交付は、元請業者が行う必要があります。
Q2. 住宅の屋根から外した数枚のパネルも産業廃棄物になりますか?
建設会社が工事として撤去したパネルは、事業活動に伴う廃棄物として産業廃棄物になります。枚数が少なくても、許可業者への委託と書面での契約、マニフェストの交付が必要です。扱いに迷う場合は、工事場所を管轄する都道府県または政令市の産業廃棄物担当に確認してください。
まとめ
太陽光パネルの撤去工事を受ける建設会社は、次の3つを順に確認してください。
- 責任の所在:元請業者が排出事業者になることを前提に、処分費・運搬費を見積に入れ、委託先を施工計画に書く
- 委託の手続き:収集運搬業者と処分業者の許可と品目を確認し、それぞれと書面で契約し、契約書とマニフェストに太陽電池モジュール・メーカー名・型式を書く
- 現場と今後の制度:配線作業は電気工事士が行い、感電と破損の対策をとる。大規模な撤去では発注者の廃棄実施計画の届出時期を工程に反映する
協力会社や処理業者を選ぶときは、建設業許可の業種と有効期限もあわせて確認しておくと安心です。
参考資料
- 環境省「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第三版)」令和6年
- 環境省「太陽光発電設備を廃棄処理する際の留意点について」
- 環境省「太陽光パネルリサイクル関連」
- 環境省「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律について」令和8年6月
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。
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