「資材が高くて利益が出ない」「見積もりを出しても赤字になる」——2026年現在、建設資材の高止まりが続く中で、経営が苦しくなっている中小建設会社は少なくありません。一方で、同じ環境下でも安定した利益を出している会社が存在します。その違いはどこにあるのか。本記事では、資材高騰に強い建設会社に共通する在庫管理・調達戦略・代替資材活用・契約の見直しポイントを具体的に解説します。

高騰に強い会社が実践する在庫管理のポイント
資材高騰に強い会社の多くは、「在庫をゼロに近づける」という方針ではなく、「必要な資材を適切なタイミングで必要量ストックする」という戦略的な在庫管理を行っています。
具体的には、以下の3点が共通点として挙げられます。
- 先行発注の仕組みを持っている:価格上昇が予測される資材(鉄筋・形鋼・生コン骨材等)は、施工予定の2〜3ヶ月前に仕入れ単価を確定させる先行発注を定例化しています。相場が上がる前に単価を固定することで、原価管理が安定します。2026年5月以降は「価格リスク(高騰)」に加えて「入手不能リスク(塩ビ管・断熱材の入荷遅延が現実化している)」という新次元の問題が加わっており、先行発注は価格ロックだけでなくリスクヘッジとしても不可欠な戦略になっています(出典:西日本新聞 2026/5/24)。
- 案件別の資材消費量を把握している:過去の施工データから「この工種でこの面積なら生コンは〇m³」という基準値を持っている会社は、不要な過剰発注・不足による追加発注ロスを最小化できています。
- 資材費のリアルタイム把握ができる:見積もり時の単価と実際の購入単価の差異を月次で把握している会社は、価格変動の兆候を早期に察知し、次の案件の見積もりに素早く反映できます。
調達ルートの多元化——仕入れ先依存リスクを下げる方法
特定の資材商社・地場業者1社に依存している会社は、その業者が価格を引き上げたときに交渉力を持てません。高騰に強い会社は、調達先を複数持ち、定期的に価格比較を行っています。

調達ルートの多元化で実践すべき具体的な行動は次の3点です。
- 主仕入れ先+サブ仕入れ先の2系統を確保する:通常は主仕入れ先から調達しつつ、サブ仕入れ先との取引関係も維持しておきます。急な価格引き上げや欠品の際にサブへの切り替えが可能になります。
- 年1回は相見積もりで単価を検証する:毎年4〜6月を目安に主要資材の相見積もりを取り、現在の仕入れ単価が市場実態に見合っているか確認します。長年の取引関係があっても、定期的な価格確認は仕入れ先との健全な関係維持につながります。
- 建設業許可を持つ下請業者の調達ルートを活用する:専門工種を担当する許可業者(型枠・鉄筋・左官等)は、独自の資材調達ルートを持っている場合があります。元請として連携業者の調達状況を把握しておくことで、資材不足時の柔軟な対応が可能になります。建設業許可業者の検索ページから、連携先の許可状況を確認できます。
代替資材の採用で原価を守る実践方法
特定の資材が高騰・入手困難になった場合、代替資材への切り替えを検討できる会社は、コスト増を吸収する柔軟性があります。ただし、代替資材の採用には発注者・設計者との協議・承認が必要なケースがほとんどです。
実際に建設現場で活用されている代替・省材事例を以下に示します。
- 鉄筋の代替:高強度鉄筋(SD490)への変更:通常のSD345・SD390より強度が高いため、使用量を削減できる場合があります。設計変更承認が必要ですが、材料費節減効果が期待できます。
- 型枠の代替:合板型枠からシステム型枠へ:初期投資は高いが、繰り返し転用できるシステム型枠(鋼製・アルミ製)は、複数案件をこなす会社にとって長期的な資材費削減につながります。
- セメントの代替:高炉スラグ・フライアッシュ混合セメント:一般的なポルトランドセメントより安価な場合があります。適用可能な工事種別と強度基準を確認の上、設計者と協議して採用を検討します。
- 木材の代替:エンジニアリングウッド(CLT・LVL):無垢材より安定供給で価格変動が小さい場合があります。特に非住宅木造建築の増加に伴い、採用実績が広がっています。
価格変動リスクを契約・財務でコントロールする
高騰に強い会社は、資材コストの上昇を受注後の契約条件や財務管理でコントロールする仕組みを持っています。

エスカレーション条項の標準化
資材価格が契約時点から一定割合(目安:5〜10%)以上変動した場合に、発注者との協議を行うことを契約書に盛り込む「エスカレーション条項」は、高騰に強い会社が自社契約書のひな形に標準搭載しています。公共工事では、工事請負契約書の「スライド条項」で、物価や賃金の変動に応じて請負代金を変えられる仕組みがあります。民間工事では、同じ考え方を自社の契約書に書いておく必要があります。条項の文案は、自社の顧問弁護士または行政書士と協議して整備することを推奨します。
2024年12月の改正建設業法で「価格の変動」の扱いが変わった
2024年12月13日に施行された改正建設業法で、資材の値上がりへの対応が契約のルールに組み込まれました。エスカレーション条項を整えるときは、次の3つを押さえておきましょう。
- 契約書に「変え方」を書く:請負契約書に、資材の価格などが変わったときに請負代金や工事の内容をどのように変えるか、その方法を書くことになりました(建設業法第19条)。
- 契約の前に「おそれ」を知らせる:受注する側は、資材の値上がりや入手の遅れのおそれがあると知っているときは、契約を結ぶ前に注文者へその情報を知らせなければなりません(第20条の2)。
- 起きたら協議を申し出る:知らせたおそれが実際に起きたときは、受注者は請負代金や工期の変更の協議を申し出ることができ、注文者は誠実に協議に応じるよう努めなければなりません(公共工事の発注者は応じる義務があります)。
エスカレーション条項は、この決まりに沿って「どの指標で・どれだけ変わったら・どう分けるか」を先に書いておくものと考えると、発注者にも説明しやすくなります。
原価管理の精度を上げる財務体制
案件ごとの粗利率を着工前・中間・竣工後の3時点で確認する体制を持つ会社は、資材コストの超過を早期に察知して手を打てます。工事原価管理ソフト(建設業向け会計・原価システム)を活用し、見積もり原価と実際の購入価格の差異をリアルタイムで把握できる体制を整えることが、2026年以降の建設業経営の必須要件になりつつあります。
まとめ:高騰に強い経営体制をつくる3ステップ
- 在庫・調達の仕組みを整備する:先行発注の仕組みと複数調達先を確保し、価格変動に対する交渉力を持つ
- 代替資材の選択肢をリスト化する:主要資材ごとに代替品・代替工法を事前調査し、高騰時に素早く切り替えられる準備を整える
- 契約にエスカレーション条項を標準化する:新規受注案件から条項を盛り込み、価格変動リスクを発注者と適切に分担する
許可業者として下請業者との連携を強化し、調達・施工の両面で資材高騰への対応力を高めることが、持続的な経営の鍵です。建設業許可業者の検索ページから、連携先・下請業者の許可状況を確認できます。また、都道府県別の建設業情報・手続きガイドでは地域ごとの建設業動向も確認できます。
よくある質問
Q. 資材高騰の影響が大きい業種はどこですか?
A. コンクリート・鉄筋を多用する土木工事業・鉄筋工事業は特に影響が大きいとされています。木材を多用する大工工事業・木工事業も2021〜2022年のウッドショックの影響を受けてきました。2026年現在は生コン・鋼材の高止まりが続いており、躯体(く体)工事全般で原価管理の重要性が増しています。
Q. エスカレーション条項は発注者(施主)に受け入れてもらえますか?
A. 民間工事では発注者の同意が必要です。ポイントは「変動の基準となる指標(例:国交省の建設工事費デフレーター)」と「協議の上限・下限」を明文化することです。「資材価格が10%以上変動した場合は協議する」という条件を事前提示すれば、発注者も理解を示しやすくなります。国土交通省のスライド条項に関するガイドラインを参考に説明資料を作成すると交渉がスムーズです。
Q. 見積りのときに値上がりのおそれを知らせないと、どうなりますか?
A. 改正建設業法の協議の申し出は、契約の前に知らせたおそれが実際に起きたときのための決まりです。知らせていないと、契約の後に値上がりしても、この決まりを根拠に協議を求めにくくなります。見積書に「対象の資材・根拠にした資料(業界紙や価格の指標)・想定する影響」を書き添えて渡し、写しを残しておきましょう。
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