建設業許可の確認方法を持つ会社が事業を終了する際、廃業届の提出が必要です。しかし、単に書類を提出すれば良いわけではありません。廃業届を提出する前には、進行中の工事の処理、従業員の処遇、経営事項審査(経審)について(経審)や入札参加資格への影響など、多くの確認事項があります。また、廃業届と許可取消の違いを正しく理解していないと、思わぬトラブルに発展する可能性もあります。本記事では、建設業許可廃業届を提出する前に必ず確認すべき5つのチェックリストを解説し、適切な廃業手続きを進めるための実務知識をお伝えします。
廃業届と許可取消の根本的な違いを理解する
廃業届は自主的な手続き、許可取消は行政処分
建設業許可廃業届は、事業者が自主的に建設業を廃業する際に提出する届出書類です。一方、許可取消は建設業法に違反した場合などに行政庁から課される処分であり、両者は全く異なる性質を持ちます。
廃業届を提出した場合、建設業法上の義務違反があったわけではないため、将来的に再び建設業許可を取得することは可能です。しかし、許可取消の処分を受けた場合、建設業法第8条により、取消日から5年間は許可を受けることができません。この違いを理解せずに対応を誤ると、事業再開の可能性を失うことにもなりかねません。
廃業届の法的根拠と提出期限
建設業法第11条第5項に基づき、建設業を廃業した場合は、廃業の日から30日以内に廃業届を提出する必要があります。この期限を過ぎた場合でも受理されますが、建設業法上の義務に違反していることになるため、速やかな提出が求められます。
廃業届の提出先は、許可を受けた行政庁(国土交通大臣許可の場合は地方整備局等、都道府県知事許可の場合は各都道府県)となります。2025年4月から一部自治体で電子申請への対応が開始されており、手続きの利便性が向上しています。
廃業届提出前に確認すべき5つのチェックリスト

チェック1:進行中の工事と契約関係の整理
廃業届を提出する前に、最も重要なのが進行中の工事の処理です。建設業法第3条により、建設業許可が必要な工事(請負金額500万円以上)を継続するには、許可が有効である必要があります。
廃業届を提出すると許可は失効するため、以下の対応が必要です。
- 進行中の工事がある場合:工事完了まで廃業届の提出を延期するか、他の建設業許可業者に工事を引き継ぐ
- 請負契約の解除:発注者との合意に基づく契約解除手続き
- 下請業者への支払い:未払い金がないことの確認と精算
特に公共工事の場合、発注者への説明と承諾手続きが必要となるため、十分な準備期間を確保することが重要です。
チェック2:主任技術者配置義務と従業員の処遇
建設業法第26条に定める主任技術者配置義務は、工事が完了するまで継続します。2024年には静岡県で、資格要件を満たさない主任技術者を配置したことにより営業停止15日間の処分を受けた事例が報道されており、廃業手続き中であっても法令遵守が求められます。
廃業に伴う従業員対応では、以下の点を確認してください。
- 技術者の離職時期:工事完了まで主任技術者を確保できるか
- 雇用契約の適切な終了:労働基準法に基づく解雇予告(30日前)または解雇予告手当の支払い
- 社会保険の手続き:健康保険・厚生年金保険の資格喪失手続き
- 退職金の支払い:就業規則に基づく退職金の精算
主任技術者配置義務を果たせない状況で工事を継続すると、行政処分の対象となり、廃業届ではなく許可取消となるリスクがあります。
チェック3:経営事項審査(経審)の有効期限と影響
経営事項審査を受けている建設業者が廃業する場合、入札参加資格への影響を確認する必要があります。経審の有効期限は審査基準日から1年7カ月間ですが、廃業届を提出すると建設業許可が失効するため、経審の効力も実質的に失われます。
公共工事の入札参加資格を持っている場合は、以下の手続きが必要です。
- 発注機関への連絡:国や自治体の契約担当部署への廃業予定の事前通知
- 入札参加資格の辞退届:各発注機関が定める様式での届出
- 進行中の入札案件からの撤退:入札参加中の案件がある場合の対応
廃業届提出後も経審の有効期限内であれば入札できると誤解しているケースがありますが、建設業許可が前提となるため、廃業後は入札参加できません。
チェック4:廃業の種類による提出書類の違い
建設業許可廃業届には、廃業の理由によって複数の種類があり、提出書類が異なります。
個人事業主の廃業
- 廃業届(様式第3号)
- 個人事業の開廃業等届出書(税務署提出用)
法人の解散
- 廃業届(様式第3号)
- 登記事項証明書(解散の記載があるもの)
- 清算結了の場合は清算結了の登記事項証明書
許可業種の一部廃業
- 一部廃業届(全業種廃業ではない場合)
- 建設業許可申請の手順書の変更届との併用
建設業の譲渡・合併
- 廃業届(譲渡側・被合併側)
- 事業譲渡契約書または合併契約書の写し
- 譲受側・合併後の会社の建設業許可申請(新規または般・特新規)
特に事業承継を伴う廃業の場合は、譲受側の許可取得と廃業届のタイミング調整が重要となります。
チェック5:許可通知書・許可証明書の返納
廃業届の提出時には、許可通知書(許可証明書)の返納が求められます。これは建設業許可が失効したことを証明するための手続きです。
返納を忘れた場合でも廃業届は受理されますが、後日返納を求められることがあります。また、許可通知書を紛失している場合は、その旨を廃業届に記載するか、別途始末書の提出が必要となる場合があります。
許可通知書は営業所に掲示することが建設業法第40条で義務付けられているため、廃業直前まで掲示し、廃業届提出時に返納するという流れが適切です。
廃業を選択する前に検討すべき代替選択肢
事業承継・M&Aという選択肢
廃業を検討している建設業者の中には、後継者不足や経営難を理由とするケースが少なくありません。しかし、廃業してしまうと、長年培ってきた技術力・顧客基盤・許可資格が失われてしまいます。
近年、建設業界でも事業承継やM&Aを通じて事業を継続させる選択肢が注目されています。特に以下のような資産を持つ建設業者には、事業承継の可能性があります。
- 専任技術者や監理技術者などの有資格者:人材不足の業界において高い価値
- 経営事項審査の高評点:公共工事の入札参加資格として継承可能
- 特定建設業許可の要件許可や複数業種の許可:新規取得には時間とコストがかかる
- 安定した取引先・受注実績:継続的な収益源として評価される
事業承継を行う場合、廃業届ではなく、事業譲渡や会社合併の手続きとなります。この場合、譲受側が建設業許可を新たに取得するか、既存の許可を活用する形となります。
一人親方への転換という選択肢
法人として建設業許可を廃業しても、個人事業主として一人親方になる選択肢もあります。請負金額が500万円未満(建築一式工事は1,500万円未満)の工事であれば、建設業許可なしで営業できます。
ただし、一人親方として継続する場合でも、以下の点に注意が必要です。
- 社会保険の変更:厚生年金から国民年金への切り替え
- 労災保険の特別加入:一人親方としての労災保険加入
- 取引先との関係:元請業者が許可業者との取引を条件としている場合は受注機会が減少
廃業届を提出する前に、このような代替選択肢を十分に検討することで、事業資産を有効活用できる可能性があります。
よくある質問

Q1. 建設業の廃業届はいつまでに提出する必要がありますか?
建設業の廃業届は、廃業した日から30日以内に提出する必要があります。法人の解散や個人事業の廃止、営業所の全廃など廃業事由が発生した日を起算日として計算します。期限を過ぎると罰則の対象となる可能性があるため、速やかに手続きを進めることが重要です。
Q2. 許可取消と廃業届の違いは何ですか?
許可取消は行政処分として建設業許可を強制的に失効させるもので、違反行為などが原因です。一方、廃業届は事業者が自主的に事業を廃止する際に提出する届出です。取消を受けると5年間再取得できませんが、廃業届であればすぐに再度許可申請が可能です。履歴にも大きな差が生じます。
Q3. 廃業届を出さないとどうなりますか?
廃業届を提出せずに放置すると、建設業法違反となり、6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。また、許可行政庁から職権で許可取消処分を受ける場合もあり、その場合は5年間許可の再取得ができなくなるため、必ず期限内に届出を行うべきです。
Q4. 廃業届の提出に必要な書類は何ですか?
廃業届には、廃業届出書、法人の場合は解散や清算を証明する登記事項証明書、個人の場合は廃業を証明する書類が必要です。また、建設業許可通知書の写しや、許可証明書の原本返納を求められる場合もあります。都道府県により必要書類が異なるため、事前に確認しましょう。
Q5. 営業所の一部閉鎖の場合も廃業届が必要ですか?
営業所の一部のみを閉鎖する場合は廃業届ではなく、「建設業許可変更届」を提出します。すべての営業所を閉鎖し事業を完全に廃止する場合のみ廃業届が必要です。営業所の増減は30日以内に変更届を提出する義務がありますので、状況に応じて適切な手続きを選択してください。
📋 建設業許可廃業届 提出前チェックリスト
廃業届提出前に全項目を確認してください
📄 書類・手続きの確認
🏗️ 工事・現場の確認
※ このチェックリストは印刷してご利用いただけます。チェックは画面上でも行えます。
まとめ
建設業許可廃業届を提出する前には、進行中の工事と契約関係の整理、主任技術者配置義務と従業員の処遇、経営事項審査(経審)と入札参加資格への影響、廃業の種類による提出書類の確認、許可通知書の返納準備という5つのチェックポイントを確認する必要があります。また、廃業届と許可取消の違いを正しく理解し、廃業手続き中であっても建設業法を遵守することが重要です。さらに、廃業を決断する前に、事業承継やM&A、一人親方への転換といった代替選択肢も検討する価値があります。まずは進行中の工事状況と従業員の処遇を整理し、適切な廃業時期を見極めることから始めましょう。

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