国土交通省が2026年夏(7月下旬〜8月中旬を目安)に試行する「建設業の夏季休工」。熱中症対策・担い手不足解消を目的とした制度だが、「工期はどうなる」「発注者との契約を変更しなければいけないのか」「資金繰りへの影響は?」と頭を抱えている経営者は多い。本記事では想定の例をもとに、経営者が今すぐ動くべき準備リストを解説する。
想定の例:夏季休工で工期が3週間延びるときの対応
次の2つは、夏季休工への備えの差を示すために作った想定の例です。実在の会社の事例ではありません。
【想定1】建設会社が、猛暑の時期(7月下旬〜8月中旬の目安)に現場を止めると決め、発注者への事前の説明、工程の変更、下請業者への通知を順に進めて、工期を3週間延ばすことで合意する。工程表や気温の記録など、交渉の根拠になる資料を先にそろえておくと、発注者の理解を得やすくなります。
【想定2】準備が間に合わず、暑さの中で施工を続けた会社では、作業員が体調を崩して人手が欠け、結果として予定より長く工期が遅れることがあります。
この2社の違いは「事前準備」の有無だ。
2026年 夏季休工試行の背景と制度概要
国土交通省が夏季休工を試行する主な背景は2つある。
- 熱中症対策:建設業における熱中症死傷者数は全産業の中で最多水準を占め続けている。業種別の死亡者数でも建設業が最も多い状態が続いている(厚生労働省)。2025年6月の熱中症対策の義務化(報告の体制と対応の手順を決めて周知する・労働安全衛生規則 第612条の2)だけでなく、施工停止を含めた抜本対策が求められていた。
- 担い手確保・働き方改革:長時間労働・高温環境での作業が若年層の入職を妨げる要因になっている。夏季休工により「建設業でもちゃんと休める」イメージの醸成を目指す。
国土交通省は2025年12月、直轄の土木工事で夏季休工の試行に着手すると示しました。対象は2025年度の補正予算で発注する、工期が比較的長い工事の予定です。発注の段階で猛暑の時期(7月下旬〜8月中旬が目安)に現場の施工を入れない工期にするほか、受注者の判断で休工できる工事も試します。すべての工事に一律で当てるものではなく、民間工事は対象ではありません。ただ、元請や発注者が同じ考え方を取り入れる場合に備えておくと安心です。
工程・契約・資金繰りへの影響と2026年の判断ポイント

①工程への影響
3〜4週間の施工停止は工期を直接圧迫する。事前に余裕工程を設定するか、夏季休工前後の生産性向上(夜間施工・ICT施工)で対応することが現実的だ。工期を変えるときは、契約の内容を書面にする決まり(建設業法第19条)に沿って、変更の内容を書面で取り交わします。
②契約への影響
既存契約で夏季休工が考慮されていない場合、工期変更の合意を取り直す必要がある。変更契約書を締結し、工程表も更新する。口頭合意だけでは後々のトラブルになるため、必ず書面化する。
③資金繰りへの影響
施工停止期間中も固定費(事務所賃料・リース料・正社員の給与)は発生する。売上の入金が遅れる一方で支出は続くため、7〜8月の資金繰り表を事前に作成して必要なキャッシュ残高を確認しておくことが重要だ。一時的な資金不足が見込まれる場合は、政策金融公庫等への融資相談を6月中に行うことを推奨する。
経営者の夏季休工準備リスト(今すぐできる8項目)
- □ 手持ちの現場工程表を全て確認し、7〜8月の工期影響を把握する
- □ 発注者・元請に夏季休工の意向を事前通知する(遅くとも4〜6週前)
- □ 工期変更が必要な現場の変更契約書を準備する
- □ 下請業者へ夏季休工期間を書面で通知する
- □ 休工期間中の現場安全管理(施錠・仮囲い・パトロール)を確認する
- □ 7〜8月の資金繰り表を作成して手元資金の過不足を確認する
- □ 不足する場合は政策金融公庫等へ6月中に融資相談をする
- □ 作業員への夏季休工期間の給与・待遇方針を確定し周知する
休工の期間を社員にとってどんな日にするかも、先に決めておきます。会社の休日にするなら就業規則の休日の定めを、年次有給休暇の計画的付与(計画年休)に充てるなら労使協定を用意します。計画年休に回せるのは、一人ひとりの有給のうち5日を超える分だけです。休日にも計画年休にもせず会社の判断で休ませる場合は、平均賃金の6割以上の休業手当(労働基準法第26条)が要ることがあります。日給の職人は休工の分だけ収入が減るため、前もって説明し、休工の前後の現場で仕事を確保しておくと、人が離れるのを防げます。発注者から休工の指示があった工事では、工期の変更と、休工中の現場の管理(仮設物の点検や、盗難・飛散の対策)にかかる費用の扱いを、契約の変更として書面で決めておきましょう。
まとめ:夏季休工は「準備した会社が得をする」制度
| 対応時期 | 経営者が行うこと | 関係先 |
|---|---|---|
| 5〜6月(今すぐ) | 元請への夏季休工意向の打診・工期延長の事前相談 | 元請・発注者 |
| 6月中旬 | 下請業者・協力業者への休工スケジュール通知 | 下請・一人親方 |
| 7月上旬 | 工期延長に伴う変更契約書・変更注文書の締結 | 元請・契約担当 |
| 休工前週 | 現場の養生・セキュリティ確認・設備安全確保 | 現場所長 |
| 休工中 | 資金繰り計画の見直し(売上減少分の手当て) | 税理士・金融機関 |
| 再開前日 | 作業員・下請への再集合確認・朝礼計画 | 現場管理者 |
- 国交省は2026年夏、直轄の土木工事の一部で夏季休工を試行。民間工事は対象外だが、元請や発注者の方針で休工が広がる場合に備える
- 工程・契約・資金繰りへの影響を事前に把握し、発注者・下請業者と書面で合意する
- 準備が遅れた会社が熱中症・工期遅延・資金不足のトリプルリスクに直面する
次のアクション:①6月中に手持ち現場の工程表を確認する ②発注者への事前通知文書を作成する
よくある質問
Q: 夏季休工期間中も現場の安全管理は必要ですか?
はい、必要です。施工停止中であっても、現場の仮囲い・施錠・看板設置など基本的な安全管理は続ける必要があります(工事現場の危害の防止=建築基準法 第90条・建設工事公衆災害防止対策要綱)。特に台風シーズンと重なる7〜8月は、足場や資材の飛散防止のための点検・補強も休工前に完了させておく必要があります。
Q: 発注者から工期延長を拒否された場合はどうすればいいですか?
建設業法第19条の5では、通常必要な期間に比べて著しく短い工期で請負契約を結ぶことが禁じられており、一方的な工期圧縮は違法になる場合があります。中央建設業審議会の「工期に関する基準」を根拠に、必要な工期を書面で示して交渉することが有効です。また元請・発注者への相談窓口として国土交通省の「駆け込みホットライン」に相談することもできます。
出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」(確認日 2026-10-02)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。
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