後継者への会社譲渡を考えているが、「建設業許可はどうなるのか」「許可番号を引き継げるのか」と悩む経営者は多くいます。かつては事業譲渡や合併をすると許可が消滅し、新規申請からやり直す必要がありました。しかし2020年(令和2年)10月の建設業法改正で、所定の認可手続きを経ることで許可を承継できるようになりました。本記事では、事業承継・M&Aの各パターンで建設業許可がどう扱われるかを具体的に解説します。
2020年改正前と改正後——2026年現在の状況
令和2年10月改正前は、事業譲渡・合併・分割のいずれの場合も許可は承継されず、新会社・承継者が新規申請を行う必要がありました。
| 改正前(2020年9月以前) | 改正後(2020年10月以降) | |
|---|---|---|
| 事業譲渡・合併・分割 | 許可は消滅→新規申請が必要 | 効力が生じる前に認可を受ければ承継できる |
| 相続(個人事業主) | 許可は消滅→新規申請が必要 | 死亡後30日以内に認可申請で承継可能 |
| 許可番号 | 承継不可(新番号になる) | 承継する側が許可を持っていなければ、元の番号を引き継げる |
| 株式譲渡(M&A) | 法人格不変のため許可維持 | 同左(変更なし) |
改正によって、長年取引先に浸透してきた許可番号を引き継げるようになったこと(承継する側がまだ許可を持っていない場合)は、承継後の取引継続性という観点で大きなメリットです。
パターン別:許可の承継方法
パターン1:事業譲渡(第三者への売却)
建設業の事業を第三者(個人・法人)に譲渡する場合、譲渡の効力が生じる日より前に、許可行政庁の認可を受けておく必要があります(建設業法第17条の2)。申請は譲渡人と譲受人が共同で行います。審査に日数がかかるため、許可行政庁の多くは予定日の数か月前からの事前相談を求めています。
- 必要書類:事業譲渡契約書・譲受人の許可申請書類一式(経営業務管理責任者・専任技術者(2024年12月から営業所技術者)の証明書類など)
- 審査期間:標準30〜45日程度(都道府県によって異なる)
- 注意点:認可が下りる前に事業譲渡を実行した場合は承継が認められないため、スケジュール管理が重要
- 承継した許可の有効期間:承継の日の翌日から新たに5年になる
パターン2:合併(吸収合併・新設合併)
建設業許可を持つ会社が吸収合併または新設合併を行う場合も、合併の効力が生じる日より前に認可を受けておく必要があります。存続会社または新設会社が承継した許可を引き継ぐかたちになります。
- 吸収合併の場合:存続会社が消滅会社の許可を引き継ぐ
- 新設合併の場合:新設会社が合併当事者の許可を引き継ぐ
- 存続会社・新設会社がすでに同業種の許可を持っている場合、許可番号の扱いは所轄窓口への事前確認が必要
パターン3:会社分割(吸収分割・新設分割)
建設事業部門を別会社に切り出す場合も、分割の効力が生じる日より前に認可を受けておく必要があります。分割によって建設業の許可を持つ事業が移転する場合に限り、承継認可の手続き対象になります。
パターン4:相続(個人事業主が死亡)
個人事業主として建設業許可を持つ経営者が死亡した場合、相続人は死亡後30日以内に認可申請を行うことで許可を引き継げます。30日以内に認可を申請すれば、申請から認可(または不認可の知らせ)までの間、許可は相続人が受けたものとみなされます(建設業法第17条の3)。
30日を過ぎると許可を引き継げないため、相続開始を知った時点で即座に行政書士に相談することが求められます。
建設会社・工務店の方へ
ホームページの制作費は0円。かかるのは1万円だけです
1万円(税込・1回だけ)に、12か月のサーバーと .com ドメインの取得・初年度の費用を含みます。
制作費0円で申し込む ›株式譲渡(M&A)の場合——許可はそのまま引き継がれる
第三者に株式を売却して会社を譲渡する「株式譲渡型M&A」の場合は、法人格(会社そのもの)は変わらないため、建設業許可は自動的に維持されます。承継認可の手続きは不要です。
ただし以下の変更届が必要になります。
| 変更内容 | 届出 | 期限 |
|---|---|---|
| 代表取締役の変更 | 変更届出書 | 変更後30日以内(建設業法第11条第1項) |
| 役員の変更(就任・退任) | 同上 | 変更後30日以内 |
| 主な株主の変更(議決権の5%以上を持つ株主など) | 毎事業年度の決算変更届で届け出る | 事業年度が終わってから4か月以内 |
| 経営業務の管理責任者(常勤役員等)の変更 | 変更届出書と要件を証明する書類 | 変更後2週間以内(建設業法施行規則 第7条の2第2項) |
M&Aで最も問題になるのが「経営業務管理責任者」の要件です。新経営陣が建設業の経営経験5年以上の要件を満たしているか、M&A前に必ず確認してください。満たさない場合は許可要件を欠くことになります。
承継を受ける側が事前に確認すべき5項目
事業を譲り受ける側・M&Aで買収する側は、以下を必ず事前にデューデリジェンスしてください。
- 営業所技術者(2024年12月13日までの呼び名は専任技術者)の在籍確認:対象会社の営業所技術者が承継後も継続して在籍するか。退職するなら後任確保の目処が立っているか。
- 経営業務管理責任者の要件確認:新経営陣が建設業の経営管理経験5年以上の要件を満たしているか。
- 決算変更届の未提出がないか:過去分の未提出がある場合、承継後に更新申請で問題が発生する。
- 許可の業種と有効期限の確認:どの業種の許可を、一般・特定のどちらで持っているか。株式譲渡では許可の期限はそのままなので、残りが短ければ承継の直後に更新の申請が要る(事業譲渡などの認可で承継した許可は、承継の日の翌日から新たに5年)。
- 処分歴・指示処分の有無:過去に営業停止処分や指示処分を受けている場合、入札参加への影響がある。
→ 財産的基礎の要件については「一般建設業から特定建設業に格上げするための財産的基礎の確認手順」も参考にしてください。
まとめ
- 2020年10月の法改正で、事業譲渡・合併・分割・相続でも所定の認可申請で許可番号ごと承継できるようになった。ただし承継認可には「事前申請」の原則があり、スケジュール管理が最重要。
- 株式譲渡型M&Aは法人格が変わらないため許可は自動維持されるが、役員・経営業務管理責任者の変更届と要件確認が必要。新経営陣が経営業務管理責任者要件を満たさない場合に許可要件を欠くリスクがある。
- 承継を受ける側は営業所技術者・経営業務管理責任者の要件・決算変更届の未提出の3点を必ずデューデリジェンスする。見落とすと承継直後に許可維持ができなくなるリスクがある。
今すぐできる次のアクション
- 事業承継を検討しているなら、後継者が経営業務管理責任者要件を満たすかを今すぐ確認する。要件が満たせない場合は、5年間の建設業経営経験を積む期間計画が必要です。
- M&Aで会社を譲り受ける予定であれば、建設業専門の行政書士を交えたデューデリジェンスを実施する。営業所技術者の退職リスクと決算変更届の提出状況は最優先で確認してください。
各都道府県の申請窓口・手続き詳細については、都道府県別建設業情報ガイドからお住まいの地域を選択してください。
よくある質問(FAQ)
許可番号は合併後も同じ番号を使える?
合併の効力が生じる前に認可を受ければ、消滅する会社の許可を存続会社が引き継げます。存続会社がまだ許可を持っていなければ元の許可番号を引き継げますが、両方が許可を持っている場合にどちらの番号が残るかは、許可行政庁に事前に確かめてください。承継した許可の有効期間は、承継の日の翌日から新たに5年です。
許可の引継ぎに必要な書類と時期は?
主な書類は、認可の申請書、合併契約書の写し、承継する側の許可の要件(経営業務の管理責任者・営業所技術者・財産的基礎など)を証明する書類です。合併の登記を待たず、効力が生じる日より前に認可を受ける必要があります。審査の日数は許可行政庁によって違うため、予定日の数か月前には事前相談をしておきましょう。
株式を売って会社を譲るとき、建設業許可の手続きは要りますか?
会社(法人)そのものは変わらないため、許可はそのまま続き、承継の認可は要りません。ただし、役員や代表者が替われば30日以内、経営業務の管理責任者(常勤役員等)や営業所技術者が替われば2週間以内に変更の届出が要ります。新しい経営陣で許可の要件を満たせるかは、株式を譲る前に確かめてください。
個人事業主が亡くなったとき、家族は許可を引き継げますか?
引き継げます。亡くなった日から30日以内に相続人が認可を申請すれば、許可を承継できます(建設業法第17条の3)。申請してから認可か不認可の知らせが届くまでは、相続人が許可を受けているものとみなされます。30日を過ぎると引き継げないため、早めに行政書士や許可行政庁に相談しましょう。
出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」(確認日 2026-09-28)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。
都道府県から建設業許可業者を探す
全国の建設業許可取得業者を都道府県・業種から検索できます。
自社の施工事例は、検索で見つけてもらうにはどう載せればいい? → 作成から更新まで頼めるWordPress作成代行センター
建設会社・工務店の方へ
ホームページの制作費は0円。かかるのは1万円だけです
1万円(税込・1回だけ)に、12か月のサーバーと .com ドメインの取得・初年度の費用を含みます。
制作費0円で申し込む ›