死傷者数過去最多1,803人|建設業経営者が今すぐ動くべき熱中症対策3項目【厚労省2025年統計】

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作業着でペットボトルの水を飲む男性

「熱中症対策は義務化されたと聞いたが、具体的に何をすれば法令違反にならないのか」——建設業の経営者から、こうした質問が増えている。厚生労働省が公表した確定値によれば、2025年の職場における熱中症死傷者数は1,803人と、統計を取り始めた2005年以降の過去最多になった。業種別に見ると、建設業は死傷者数・死亡者数ともに上位を占め続けている。「去年も何もなかったから大丈夫」という感覚は最も危険だ。本記事では、この統計データをもとに、建設業経営者が2026年夏に必ず実施すべき熱中症対策3項目と整備すべき書類を解説する。

職場の熱中症の死傷者数の推移を示す棒グラフ(全業種・速報値・2021〜2025年)
出典:厚生労働省「2025年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(速報値)」より作成。全業種の数。2025年の確定値は1,803人(2024年の確定値は1,257人)
目次

厚労省が公表:2025年の職場熱中症死傷者1,803人の詳細データ

厚生労働省「2025年(令和7年)職場における熱中症による死傷災害の発生状況(令和7年12月末速報値)」によれば、2025年の死傷者数は1,681人(速報値)。その後の確定値は1,803人(うち死亡者19人)で、2024年の確定値(1,257人)から約43%増え、過去最多を更新した(厚生労働省 2026年5月27日)。

出典・参考URL:

  • 2025年死傷者数:1,803人(確定値・速報値は1,681人)——統計開始以来の過去最多
  • 2024年確定値:1,257人(前年比+151人、約14%増)
  • 2025年死亡者数:19人(確定値・前年は31人)
  • 業種別:建設業と製造業で死傷者が多い状況が続いている(業種別の人数は厚生労働省の確定値の資料で確かめられる)
  • 2021〜2025年の5年間:死傷者は製造業と建設業の2業種で毎年約4割。死亡者131人は建設業52人・警備業18人の順で、この2業種で約4〜7割

この数値は「天候が悪かった年の話」ではない。2025年の夏は記録的な猛暑だったが、厚労省の死亡災害の分析では、WBGT(暑さ指数)を把握していなかった例や、異変に気づくのが遅れて搬送が遅れた例が多く見られる。国全体で死傷者が増えている中、自社で発生すれば労災・行政処分・損害賠償が一度に降りかかる。

建設業が危険な理由——業種別データと季節的ピーク

ノートパソコンで統計データを見る画面
ノートパソコンで統計データを見る画面(イメージ)

なぜ建設業で熱中症が多発するのか。統計データと現場の実態から、主な理由は4点だ。

  • 屋外作業が基本:直射日光を避けられない環境で長時間作業する。照り返しの強い路面や屋根の上では暑さの負担がさらに大きくなる
  • 重労働・高体内発熱:土木・鉄筋・解体等の重作業は体内発熱量が大きく、体温が上がりやすい
  • 水分補給が困難な現場構造:作業工程・人員体制によっては、こまめな休憩を取りにくい現場が多い
  • 多重下請構造:元請からの安全管理指示が末端の下請作業員まで届きにくい構造がある

統計的なピークは7月・8月だが、体が暑さに慣れていない梅雨の時期から発生が始まる。特に梅雨の晴れ間は「湿度が高い状態で気温が急上昇する」ため、体感温度は真夏並みになることが多い。梅雨だから安全、という油断が最初の事故につながる。

2026年夏に建設業経営者が必ず動くべき熱中症対策3項目

ヘルメットの作業員がペットボトルの水を飲む後ろ姿
ヘルメットの作業員がペットボトルの水を飲む後ろ姿(イメージ)

対策①:報告の体制づくり(法的義務)

2025年6月1日から改正労働安全衛生規則(第612条の2)により、WBGT(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の環境で、連続1時間以上か1日4時間を超えて行う作業について、熱中症の症状がある作業者や疑いのある作業者を見つけた人が、誰に・どう連絡するかを決めておく報告の体制づくりが義務になった。対象の作業かどうかを判断するため、現場で WBGT を測る(環境省の暑さ指数の予報も参考になる)ことが前提になる。WBGT の目安は、日本生気象学会の指針で 25度未満が注意、25〜28度が警戒、28〜31度が厳重警戒、31度以上が危険。測定の記録や保存の年数は規則では決められていないが、記録を残しておくと対策をしていた証拠になる。

対策②:重篤化を防ぐ手順の作成(法的義務)

熱中症の疑いがある作業者を作業から離れさせる・体を冷やす・必要に応じて医療機関へ搬送するまでの手順を、事業場ごとに作っておくことが義務になった(同条第2項)。「誰が119番するか」「救急車が来るまで誰が付き添うか」「現場の住所と最寄りの医療機関」まで決めておく。あわせて、厚労省の「職場における熱中症予防基本対策要綱」(通達)は、熱中症予防管理者の選任や、作業前の労働衛生教育も求めている(これらは規則の罰則つきの義務ではないが、監督署の指導の目安になる)。

対策③:関係する作業者への周知(法的義務)

①の体制と②の手順を、関係する作業者に周知することも義務になった(同条第1項・第2項)。現場事務所への掲示や朝礼での説明など、下請の作業者にも伝わる形にする。休業4日以上の熱中症が起きた場合は、遅滞なく所轄労働基準監督署へ労働者死傷病報告を出す(安衛則第97条・2025年1月から原則電子申請)。第612条の2 に違反すると、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になる(労働安全衛生法第22条・第119条)。

建設業経営者が確認すべき熱中症対策チェックリスト12項目

確認項目法的根拠実施状況
対象の作業か(WBGT 28度以上か気温31度以上で、連続1時間以上か1日4時間超)を判断安衛則第612条の2✓ / 未
報告の体制(見つけた人が誰に連絡するか)を決める安衛則第612条の2第1項(義務)✓ / 未
重篤化を防ぐ手順(作業からの離脱・冷却・搬送)を作る安衛則第612条の2第2項(義務)✓ / 未
体制と手順を下請を含む作業者に周知(掲示・朝礼)安衛則第612条の2(義務)✓ / 未
休業4日以上のときの労働者死傷病報告安衛則第97条(義務)✓ / 未
WBGT計の設置と測定基本対策要綱(通達)✓ / 未
WBGT に応じた休憩・作業中止の社内基準基本対策要綱(通達)✓ / 未
熱中症予防管理者の選任基本対策要綱(通達)✓ / 未
作業前の労働衛生教育(記録を残す)基本対策要綱(通達)✓ / 未
水分・塩分の備え基本対策要綱(通達)✓ / 未
日陰や冷房のある休憩場所基本対策要綱(通達)✓ / 未
暑さに慣れる期間(暑熱順化)と毎朝の体調確認基本対策要綱(通達)✓ / 未

まとめ:熱中症対策は経営リスク管理の一環

  • 2025年の職場熱中症死傷者は1,803人(確定値・過去最多)。建設業は業種別ワースト上位が続いている
  • 2025年6月から義務になった報告の体制・重篤化を防ぐ手順・作業者への周知の3つは即時対応が必要。違反は6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象
  • WBGT の測定・予防管理者・教育は通達の対策。規則の義務ではないが、記録を残しておくと調査のときに対策をしていた証拠になる

次のアクション:①上記チェックリストで自社の未実施項目を洗い出す ②WBGT計を各現場に配置し、測定記録シートの運用を今日から始める

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よくある質問

Q: 熱中症対策の義務化で建設業経営者が必ずやるべきことは何ですか?

2025年6月1日施行の改正労働安全衛生規則(第612条の2)により、WBGT 28度以上または気温31度以上の環境で連続1時間以上か1日4時間を超える作業では、①熱中症の症状や疑いのある人を見つけた人が報告する体制を整える、②作業からの離脱・体の冷却・医療機関への搬送など重篤化を防ぐ手順を作る、③それらを関係する作業者に周知する、の3つが義務になりました。違反すると6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です(労働安全衛生法第119条)。WBGT の測定や熱中症予防管理者の選任は厚労省の通達で求められる対策で、この規則の義務ではありません。

Q: 2025年の職場熱中症死傷者数が過去最多となった主な原因は何ですか?

2025年の夏は記録的な猛暑が続いたことが大きな要因です。厚労省の死亡災害の分析では、WBGT を把握していなかった例や、異変に気づくのが遅れて搬送が遅れた例が多く見られます。業種別では建設業と製造業で死傷者数の約4割を占め、屋外の重作業や多重下請構造が背景にあります。

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この記事を書いた人

中小建設企業の経営改善・財務強化・事業承継を専門とするビジネスアドバイザー。建設業特有の下請管理・支払サイト問題・財務諸表の見方を中心に、経営基盤の強化につながる実務情報を発信。建設業の経審(経営事項審査)と公共工事受注の仕組み、労働環境改善・働き方改革対応の最前線情報にも精通。M&A・事業承継・廃業検討中の建設会社向け情報も担当。

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