建設会社・工務店の経営者の皆様は、人手不足への対応と賃上げ、現場の省力化を同時に進めなければならない状況にあるのではないでしょうか。国の助成金・補助金には、こうした取り組みにかかる費用の一部を支える制度があります。本記事では、建設会社が使いやすい5つの制度を、所管の役所が公表している令和8年度(2026年度)の案内をもとに整理し、特に中小企業省力化投資補助金とキャリアアップ助成金の金額・要件・手続きの順番を解説します。金額や締切は年度や公募の回ごとに変わるため、申請の前には必ず公表元の最新の案内で確かめてください。
2026年度に建設会社が使える5つの制度|何に使えるのか一目で分かる
建設会社が使いやすい国の制度は、経済産業省(中小企業庁)の補助金と、厚生労働省の助成金に分かれます。補助金は公募の期間に申請して審査で採択される仕組み、助成金は要件を満たせば原則として支給される仕組みが基本です。ただし助成金も予算の範囲で交付するため、期限より早く受付を締め切ることがあります。
| 制度 | 所管 | 何に使えるか | 金額の目安(令和8年度) |
|---|---|---|---|
| 中小企業省力化投資補助金(一般型) | 中小企業庁・中小企業基盤整備機構 | 人手不足を補う機械・システムの導入 | 上限750万円〜8,000万円(従業員数による)・補助率1/2(小規模事業者は2/3) |
| キャリアアップ助成金 | 厚生労働省 | 有期雇用の人の正社員化・処遇の改善 | 正社員化(有期→正規)1人40万円・重点支援対象者は80万円(中小企業) |
| 業務改善助成金 | 厚生労働省 | 事業場内最低賃金の引き上げと設備投資 | 最大600万円・助成率4/5または3/4 |
| 働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース・建設業) | 厚生労働省 | 時間外労働の削減・週休2日の推進 | 成果目標ごとの上限額(例:4週の所定休日を1日以上増やすと25万〜100万円)・補助率3/4 |
| 人材開発支援助成金(建設労働者認定訓練コース・建設労働者技能実習コースほか) | 厚生労働省 | 従業員の訓練・技能の実習 | 訓練の経費と訓練中の賃金の一部(コースによる) |
建設業許可の有無と助成金の関係
ここで紹介する制度の多くは、建設業許可を持っていることを要件にしていません。一方で、建設業許可は5年ごとの更新が必要で、更新を忘れると許可が切れ、許可の要る規模の工事を請け負えなくなります。助成金の取り組みで正社員を増やしたり設備を入れたりする時期と、許可の更新や決算変更届の時期を一つの予定表で管理しておくと、手続きの重なりを避けられます。
中小企業省力化投資補助金|人手不足を補う設備投資の補助
中小企業省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業が、IoTやロボットなどのデジタル技術を使った省力化の設備・システムを導入する費用の一部を補助する制度です。事務局は独立行政法人中小企業基盤整備機構で、自社の業務に合わせた設備を対象にする「一般型」と、事務局に登録された製品から選ぶ「カタログ注文型」があります。
一般型の補助上限額と補助率
| 従業員数 | 補助上限額 | 大幅な賃上げの特例に当たる場合 |
|---|---|---|
| 5人以下 | 750万円 | 1,000万円 |
| 6〜20人 | 1,500万円 | 2,000万円 |
| 21〜50人 | 3,000万円 | 4,000万円 |
| 51〜100人 | 5,000万円 | 6,500万円 |
| 101人以上 | 8,000万円 | 1億円 |
補助率は、中小企業が1/2(最低賃金の引き上げの特例に当たる場合は2/3)、小規模企業者・小規模事業者と再生事業者が2/3です。建設業の小規模事業者は、常時使用する従業員が20人以下の事業者です。
例えば、従業員30人の建設会社が1,200万円の省力化の設備を入れる場合、上限は3,000万円の区分に当たり、補助率1/2なら補助額は600万円、自社の負担は600万円です。
申請の流れと注意点
ステップ1:GビズIDプライムの取得
- 電子申請に必要なアカウントです。発行まで時間がかかることがあるため、公募が始まる前に取っておきます。
ステップ2:公募要領で要件を確かめる
- 労働生産性や賃上げの計画などの要件と、計画を達成できなかったときの補助金の返還の決まりを、その回の公募要領で確かめます。
- 一般型の第8回の応募申請の受付は2026年10月16日(金)17:00に締め切られました。第9回は11月上旬に公募開始、12月上旬に申請受付開始、12月下旬に申請締切の予定で、詳細は後日発表されます(中小企業省力化投資補助金 一般型の公式ページ・確認日 2026-10-19)。
ステップ3:事業計画を作って電子申請
- 導入する設備で、どの作業の時間が何時間減るのかを数字で書きます。
- 見積書は複数の業者から取り、価格の妥当性を説明できるようにします。
ステップ4:採択・交付決定の後に発注
- 交付決定の前に発注・契約した設備は補助の対象になりません。
- 導入の後に実績を報告し、補助金を受け取ります。その後も一定の期間、効果の報告が求められます。
計画で伝わりにくい点と対策
「施工管理が楽になる」という書き方だけでは、省力化の効果が審査する側に伝わりません。「書類作成の時間が1人あたり月10時間減り、その時間を現場の段取りに回す」のように、減る時間とその使い道を数字で示します。設備を入れた後の賃上げの計画も、公募要領の要件に沿って書きます。
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制作費0円で申し込む ›キャリアアップ助成金|正社員化と処遇改善の6コース
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者といった非正規雇用の人の正社員化や処遇の改善に取り組んだ事業主に支給される、厚生労働省の制度です。人手不足に悩む建設会社にとって、いま働いている人の定着につなげやすい制度です。
令和8年度の6つのコース
- 正社員化コース:有期雇用労働者などを正社員に転換した場合
- 障害者正社員化コース:障害のある有期雇用労働者などを正規雇用などに転換した場合
- 賃金規定等改定コース:有期雇用労働者などの基本給の賃金規定を3%以上増額改定した場合
- 賃金規定等共通化コース:正社員と共通の賃金規定を新たに定めて適用した場合
- 賞与・退職金制度導入コース:有期雇用労働者などに賞与・退職金の制度を導入した場合
- 短時間労働者労働時間延長支援コース:短時間労働者の労働時間を延ばした場合
正社員化コースの支給額(中小企業・1人あたり)
| 転換の区分 | 重点支援対象者 | それ以外 |
|---|---|---|
| 有期→正規 | 80万円 | 40万円 |
| 無期→正規 | 40万円 | 20万円 |
大企業は、有期→正規で60万円(重点支援対象者)・30万円、無期→正規で30万円・15万円です。
重点支援対象者は、雇入れから3年以上の有期雇用労働者、雇入れから3年未満で過去5年間に正規雇用だった期間が1年以下かつ過去1年間に正規雇用されていない有期雇用労働者、派遣労働者などです。正社員転換の制度を新たに定めて転換した場合は1事業所あたり20万円(大企業は15万円)、勤務地限定・職務限定・短時間正社員の制度を新たに定めた場合は40万円(大企業は30万円)が加算されます。新規学卒者で雇入れから1年未満の人は対象外です。
処遇改善のコースの支給額(中小企業)
- 賃金規定等改定コース:1人あたり4万円(3%以上4%未満)〜7万円(6%以上)
- 賃金規定等共通化コース:1事業所あたり60万円
- 賞与・退職金制度導入コース:1事業所あたり40万円(同時に導入すると16.8万円を加算)
- 短時間労働者労働時間延長支援コース:短時間で働く人の労働時間を延ばして社会保険を適用した場合に助成(額は取り組みと企業の規模で違うため、厚生労働省の今年度の案内で確かめる)
申請の流れ
1. キャリアアップ計画の作成・提出
- 各コースの取り組みを実施する日の前日までに、キャリアアップ計画を労働局・ハローワークへ提出します。
2. 就業規則の整備と転換
- 転換の制度が無い場合は、就業規則などに正社員への転換の制度を定め、その制度に沿って転換します。
3. 転換後6か月分の賃金の支払い
- 正社員化コースでは、転換後6か月の賃金を、転換前6か月と比べて3%以上増やす必要があります。
4. 支給申請
- 取り組みの後6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内に申請します。
支給額の計算例
例:中小企業の工務店が、次の3人を正社員に転換し、あわせて正社員転換の制度を新たに定めた場合の目安です(想定の例)。
| 取り組み | 対象者 | 支給額 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 有期→正規(雇入れから3年以上の職人=重点支援対象者) | 2名 | 80万円 | 160万円 |
| 有期→正規(それ以外) | 1名 | 40万円 | 40万円 |
| 正社員転換の制度を新たに規定(加算) | 1事業所 | 20万円 | 20万円 |
| 合計の目安 | – | – | 220万円 |
1年度あたりの人数の上限などの決まりがあるため、実際の支給額は厚生労働省の支給要領で確かめてください。
キャリアアップ助成金で失敗しやすい点
- キャリアアップ計画の提出が遅れる:転換などを実施した日より後に計画を出すと、その取り組みは対象になりません。
- 就業規則に転換の制度が無い:就業規則などに定めた制度に沿わない転換は対象外です。
- 賃金が3%以上増えていない:転換の前後6か月の賃金を比べ、3%以上の増額が必要です。
- 支給申請の期限を過ぎる:6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内に申請します。
業務改善助成金・働き方改革推進支援助成金・人材開発支援助成金
業務改善助成金は、事業場内最低賃金を50円以上引き上げ、生産性の向上に役立つ設備投資などを行った中小企業に、費用の一部を助成する制度です。令和8年度は最大600万円で、申請は9月1日から、地域別最低賃金の発効日の前日または11月30日のいずれか早い日までです。
働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース・建設業)は、時間外労働の削減や週休2日の推進などの成果目標を選び、研修・就業規則の整備・機器の導入などに取り組んだ建設業の中小企業に、経費の一部を助成します。令和8年度の交付申請の期限は2026年11月30日で、予算によってはそれより早く締め切られます。
人材開発支援助成金は、従業員に職務に関係する訓練を受けさせたときの経費や訓練中の賃金の一部を助成する制度で、建設業向けに建設労働者認定訓練コースと建設労働者技能実習コースがあります。
申請の前に整えておく社内の準備
助成金の多くは、社内の決まりと記録がそろっていることが前提です。キャリアアップ助成金なら、正社員への転換の制度を就業規則などに定め、キャリアアップ計画を転換の前日までに労働局へ出しておきます。賃金台帳と出勤簿は、転換の前後の賃金や働いた時間を確かめる書類として求められます。取り組みを始める前に、就業規則・賃金台帳・出勤簿・計画の提出日をそろえておくと、申請のときに慌てずに済みます。
よくある質問
Q1. 省力化投資補助金の対象になる機械・設備にはどのようなものがありますか?
人手不足の解消に効果のある、IoTやロボットなどのデジタル技術を使った設備やシステムが対象です。一般型は自社の業務に合わせた設備、カタログ注文型は事務局に登録された製品から選びます。補助率は中小企業が1/2(特例に当たれば2/3)、小規模事業者が2/3です。対象になるかは、その回の公募要領で確かめてください。
Q2. キャリアアップ助成金を受け取るための正社員化の要件は何ですか?
就業規則などに定めた転換の制度に沿って有期雇用労働者などを正社員に転換し、転換後6か月分の賃金を支払うことが基本です。転換後の賃金は、転換前6か月より3%以上増やす必要があります。キャリアアップ計画は転換の前日までに提出します。中小企業の支給額は、有期から正規への転換で1人40万円(重点支援対象者は80万円)です。
Q3. 2026年の建設業向け助成金の申請期限はいつまでですか?
制度によって異なります。省力化投資補助金は公募の回ごとに締切があり、一般型の第8回は2026年10月16日に締め切られ、第9回は11月上旬に公募開始・12月下旬に申請締切の予定です。キャリアアップ助成金は、取り組みの後6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内です。業務改善助成金は地域別最低賃金の発効日の前日(遅くとも11月30日)まで、働き方改革推進支援助成金(建設業)は11月30日までです。
Q4. 建設会社が助成金申請時に準備すべき主な書類は何ですか?
制度によって異なりますが、決算書、雇用契約書、賃金台帳、出勤簿、就業規則、設備の見積書やカタログ、事業計画書などが必要になることが多いです。事前に要件を確認し、書類不備を避けるため行政書士や社会保険労務士のサポートを使うのも有効です。
Q5. 建設業で複数の助成金を同時申請できますか?併給は可能ですか?
同じ経費に二つの補助を受けることはできません。省力化投資補助金(設備の費用)とキャリアアップ助成金(正社員化)は対象が違うため、両方を使える場合があります。業務改善助成金と省力化投資補助金のように、どちらも設備の費用を対象にする制度は、同じ設備で重ねて受けられません。詳しくは各制度の要領で確かめてください。
出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金」・厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年4月8日)」・中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助金(一般型)」・厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」・厚生労働省「令和8年度 働き方改革推進支援助成金 業種別課題対応コース(建設業)のご案内」・厚生労働省「人材開発支援助成金」(確認日 2026-10-01)
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