専任技術者が急に退職した——建設業許可を持つ中小建設会社の経営者にとって、これほど頭を抱える事態はありません。専任技術者は許可要件の根幹であり、後任を確保できなければ許可が維持できなくなります。にもかかわらず、14日以内に変更届を提出する義務もあり、猶予がほとんどありません。本記事では、専任技術者の退職が発覚した直後から経営者が取るべき3つの対処法を具体的に解説します。
専任技術者が退職すると何が起きるか【2026年版】
建設業法第7条では、許可を維持するために専任技術者を常時設置することが義務付けられています。専任技術者が退職した場合、退職日から14日以内に変更届(様式第22号の2)を許可行政庁に提出しなければなりません(建設業法第11条)。
| 状況 | 法的な結果 |
|---|---|
| 退職後14日以内に後任を選任・届出できた | 許可維持 |
| 後任がおらず変更届のみ提出した | 許可要件を欠く状態になる(行政から指導・処分の対象になる場合がある) |
| 変更届を提出せず工事を継続した | 建設業法違反(営業停止・許可取消のリスク) |
| 許可が取消になった場合 | 500万円以上の工事が受注できなくなる・5年間は再取得できない |
許可が取消になった後の5年間の欠格期間は、事業継続に致命的なダメージを与えます。退職が判明した時点で即日対処を開始することが求められます。
対処法1:社内の別の技術者で要件を満たせないか確認する

最初にやるべきことは、社内に専任技術者の要件を満たす別の人材がいないかを緊急確認することです。許可申請時に提出した専任技術者以外にも要件を満たす人間がいる場合があります。
確認すべき資格・実務経験の要件
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 国家資格の保有者 | 施工管理技士(1級・2級)、建築士、技術士等。資格証のコピーを収集して確認する |
| 実務経験年数 | 許可業種の工事に10年以上(指定学科卒業の場合は3〜5年)の実務経験があるか |
| 恒常的な雇用関係 | 直用の正社員・常勤役員であること。アルバイト・他社との兼務は不可 |
| 他の業種の専任技術者との兼任 | 同一営業所内の別業種の専任技術者との兼任は可能な場合がある |
「資格を持っているが専任技術者として届け出ていなかった社員」が社内にいるケースは実務でよくあります。全社員の資格証と職歴を今すぐ洗い出してください。
兼任・営業所の統合も検討する
複数の営業所を持つ会社の場合、他の営業所の専任技術者を本店営業所に異動させ、営業所を統合する方法も有効です。営業所の廃止届を提出し、専任技術者を集約するアプローチを行政書士と相談してください。
対処法2:採用または出向受け入れで外部から確保する

社内に要件を満たす人材がいない場合は、外部から採用または出向受け入れによって専任技術者を確保します。
採用のポイント
- 施工管理技士(1・2級)の有資格者を優先して募集する
- 採用後は即日常勤確認書類(健康保険被保険者証等)を準備できる状態にする
- 退職から14日以内の変更届提出に間に合わない場合は、速やかに許可行政庁に相談する
出向受け入れの活用
グループ会社・関連会社・取引先からの出向受け入れも認められています。ただし出向元との雇用関係が完全に解除されていることが条件になる場合があり、「出向元にも常勤する」兼任は原則認められません。出向契約書・出勤状況を証明できる資料の準備が必要です。
14日以内に採用が難しい場合
14日以内の採用・出向手続き完了が困難な場合は、速やかに許可行政庁の窓口に状況を相談してください。許可要件を欠く状態であっても、変更届の提出と誠実な対応を行っている事業者に対しては、指導にとどまるケースもあります。ただしこれは保証されたものではなく、あくまで窓口との事前相談によります。
対処法3:一部業種の廃業届を出して残りの許可を守る

複数の業種許可を持っている会社の場合、退職した専任技術者が担当していた業種のみを廃業届(一部廃業)で整理し、後任のいる業種の許可を確実に維持する方法があります。
| 状況 | 推奨対処 |
|---|---|
| 退職した技術者が担当していた業種が売上の大半 | 対処法1・2を優先して専任技術者の後任確保を急ぐ |
| 退職した技術者が担当していた業種が売上のごく一部 | 当該業種の廃業届を出し、他業種の許可を確実に維持する |
| 全業種の専任技術者が1人に依存していた | 対処法1・2を最優先。一時的に工事受注を停止することも検討する |
一部廃業した業種は、後日また業種追加申請で取得し直すことができます。許可全体を失うよりも、廃業届で業種を一時縮小して残りの許可を守る判断が経営上合理的なケースもあります。
退職が判明した直後の緊急アクションリスト
退職の事実が確定した日から動き始めてください。
- Day1〜2:社内の資格保有者・実務経験者を全員洗い出す(対処法1)
- Day1〜3:建設業専門の行政書士に緊急相談する(状況整理・方針決定)
- Day3〜7:後任候補が社内にいなければ採用・出向の手続きを開始する(対処法2)
- Day7〜10:許可行政庁の窓口に状況を事前相談する(誠実な対応の記録を残す)
- Day14まで:変更届(様式第22号の2)を必ず提出する
- 後任確保後:専任技術者変更届を提出して許可要件を回復する
→ 許可の更新期限が迫っている場合は特に緊急性が高まります。「建設業許可の更新期限を1日でも過ぎたらどうなるか」も合わせて確認してください。
まとめ
- 専任技術者の退職後14日以内に変更届の提出が必要。後任が決まらなくても届出だけは期限内に行い、行政への誠実な対応を記録に残すことが重要。
- 対処の優先順位は「社内確認→外部採用・出向→一部廃業」の順。社内に資格保有者がいれば最も早く解決できる。確認を怠っていたケースが多いため、退職前に定期的に技術者台帳を整理しておくことが最善策。
- 専任技術者を1人に依存する体制は経営リスク。後継者や複数の技術者を育てておくことが中長期の安定につながる。
今すぐできる次のアクション
- 今日中に全社員の資格証コピーを集める。施工管理技士・建築士・技術士の有資格者が社内に何人いるか把握していない経営者は多いです。
- 専任技術者が1人しかいない業種を確認する。リスクの高い業種を把握し、採用計画・資格取得支援の方針を今期中に立てておいてください。
各都道府県の申請窓口・手続き詳細については、都道府県別建設業情報ガイドからお住まいの地域を選択してください。
よくある質問(FAQ)
専任技術者が退職したらすぐに許可取消になる?
退職後14日以内に後任者の変更届を提出すれば、一定期間猶予が認められます。ただし「相当の期間(通常3ヶ月程度)」内に後任者が選定できない場合は許可取消の対象となります。退職が判明した時点で速やかに行動することが重要です。
後任の専任技術者が見つかるまでの猶予期間は?
明確な法定期間はありませんが、実務上「相当の期間(通常3ヶ月程度)」とされています。都道府県によって判断が異なるため、変更届提出後に審査窓口に状況を説明し、対応方針を確認することをお勧めします。

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