「とび・土工工事業の許可を持っているから解体工事もできる」——そう思い込んでいる中小建設会社の経営者が今でも少なくありません。しかし2016年の建設業法改正で解体工事業が独立した業種として新設され、経過措置期間も2019年5月末に終了しています。現在、解体工事業の許可を持たずにいると受注上の制限が生じるだけでなく、元請会社から「許可業者として認められない」と見なされるリスクがあります。本記事では、なぜ両方の業種を持つ必要があるのかを実務的な観点から解説します。
2016年改正で「解体工事業」が独立——何が変わったか
平成28年(2016年)6月1日施行の建設業法改正により、それまで「とび・土工・コンクリート工事業」の一部として扱われていた解体工事が、独立した29番目の業種「解体工事業」として分離されました。
この改正の背景には、解体工事にともなうアスベスト飛散問題や廃棄物処理の問題があり、専門的な技術・管理能力を持つ業者に限定して工事を行わせる必要があったためです。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2016年6月1日 | 解体工事業が独立業種として新設(建設業法改正施行) |
| 2016年6月〜2019年5月 | 経過措置期間:とび・土工の許可で引き続き解体工事が可能 |
| 2019年6月1日以降 | 経過措置終了:解体工事業の許可が必要 |
経過措置終了から6年以上が経過していますが、「まだ大丈夫」と誤解したまま許可を取得していない会社が存在します。
「とび・土工工事業」だけでは何ができないか

とび・土工工事業の許可しか持っていない場合、解体工事については以下の制限が生じます。
| 工事の種別 | とび・土工のみの場合 | 解体工事業も持つ場合 |
|---|---|---|
| 解体工事(請負金額500万円未満) | △ 可能(建設業許可不要の範囲) | ○ 可能 |
| 解体工事(請負金額500万円以上) | × 受注不可 | ○ 可能 |
| 解体工事の元請(下請総額4,500万円以上) | × 受注不可 | ○ 特定建設業許可があれば可能 |
| 経審における解体工事業の評点取得 | × 不可 | ○ 可能 |
500万円未満の軽微な解体工事はとび・土工の許可で施工できる場合がありますが、元請会社が許可証の確認をする場面では「解体工事業の許可がない業者」として扱われます。実務上、元請から指名除外されるケースが増えています。
両方持つことで広がる受注範囲と経審上のメリット

受注できる工事の幅が広がる
解体工事業の許可を取得することで、以下の受注が可能になります。
- 請負金額500万円以上の解体工事(一般建設業許可)
- 発注者から直接請け負い、下請総額4,500万円以上の工事(特定建設業許可)
- 官公庁・大手ゼネコンの指名入札における「解体工事業」としての登録
経営事項審査(経審)での評点アップ
公共工事の入札参加には経審が必要です。解体工事業の許可を持つことで、解体工事業の業種別評点(Y点)が単独で取得できます。解体工事の実績がある会社であれば、評点が上昇し入札競争力が高まります。
「許可業者として完全に認められる」信頼性
元請会社や発注者が許可証を確認する際、解体工事業の欄がある許可通知書を提示できることは、専門業者としての信頼性の証明になります。許可証に記載のない業種の工事を受注しようとすると、担当者から「本当に施工できるのか」という疑問を持たれます。
解体工事業の許可取得に必要な要件

解体工事業を追加取得する際に確認が必要な主な要件は以下のとおりです。
専任技術者の要件
| 種別 | 対象資格・要件 |
|---|---|
| 国家資格(一般) | 1級・2級土木施工管理技士(土木)、技術士(建設部門)など |
| 国家資格(特定) | 1級土木施工管理技士、技術士(建設部門)など |
| 実務経験(一般) | 解体工事業に関する10年以上の実務経験 |
| 実務経験(特定) | 指定学科卒業後の解体工事業実務経験(学歴により3〜5年)+財産的基礎要件 |
とび・土工工事業の実務経験は、解体工事の実務経験として読み替えられる場合があります。2016年改正以前の実務経験は、都道府県によって確認方法が異なるため、所轄窓口への事前確認が必要です。
財産的基礎・その他要件
一般建設業の場合は自己資本500万円以上(または500万円以上の資金調達能力)、特定建設業の場合は4,000万円以上の純資産等が必要です。既存の許可を持つ会社であれば、財産的基礎はすでに満たしていることが多いです。
業種追加申請の手順と審査期間の目安
解体工事業を追加する場合は、業種追加申請(許可換え申請ではなく、既存許可への業種追加)という手続きになります。
- 専任技術者の確認:社内に要件を満たす技術者がいるか確認する。資格証のコピーを用意する。
- 申請書類の作成:様式第1号(許可申請書)・様式第8号(専任技術者証明書)・財務諸表等一式を作成する。
- 申請書提出:都道府県の建設業担当窓口へ持参または郵送(都道府県によって異なる)する。
- 審査・許可通知書受領:標準審査期間は30〜45日程度(都道府県により異なる)。
→ 業種追加申請に必要な書類の詳細は「業種追加申請で必要な書類と審査期間の実態」で解説しています。
まとめ
- 2019年6月以降、解体工事業は独立した許可が必要。とび・土工工事業のみでは500万円以上の解体工事を請け負えず、元請から敬遠されるリスクがある。
- 解体工事業を追加することで受注範囲が広がり、経審の評点向上にもつながる。解体工事の実績がある会社には取得するメリットが大きい。
- 申請要件は専任技術者の確保が最大のポイント。とび・土工の実務経験が流用できる場合があるため、早期に所轄窓口か行政書士に確認することを推奨する。
今すぐできる次のアクション
- 自社の許可業種一覧を確認する。許可通知書または建設業者・宅建業者等企業情報検索システムで「解体工事業」の記載があるか確認してください。
- 社内に解体工事業の専任技術者要件を満たす技術者がいるか確認する。1級土木施工管理技士がいれば条件を満たしている可能性が高いです。いなければ資格取得支援か採用計画を検討してください。
各都道府県の申請窓口・手続き詳細については、都道府県別建設業情報ガイドからお住まいの地域を選択してください。
よくある質問(FAQ)
2020年以前から「とび・土工」を持っていれば解体工事はできる?
2020年の経過措置(3年間)が終了した2023年3月31日をもって、旧「とび・土工・コンクリート工事業」許可では解体工事を行えなくなりました。現在は独立した「解体工事業」許可または「とび・土工・コンクリート工事業」許可の取得が必要です。
既存の「とび・土工・コンクリート工事業」許可は2026年以降も有効?
「とび・土工・コンクリート工事業」許可は2026年現在も有効です。ただし解体工事を行う場合は別途「解体工事業」許可が必要です。解体工事業は29業種の1つとして独立しており、専任技術者の資格要件も異なります。

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