「6月に入ると熱中症の救急搬送が急増する」——これは、現場を持つ建設会社経営者の肌感覚としてあるかもしれない。しかし実際に消防庁のデータで確認したことがある経営者は少ない。総務省消防庁の統計によれば、2025年5〜9月の熱中症による救急搬送は100,510人と調査開始以来の最多で、月別では6月が過去最多だった。真夏の前から備える必要がある。本記事では、消防庁の公開データをもとに、建設現場における「熱中症ゼロ」を目指すための初動対応マニュアルと、管理者が毎日確認すべきチェックリストを解説する。
消防庁データで見る:6月から急増する熱中症救急搬送の実態
総務省消防庁「熱中症情報(救急搬送人員の状況)」によれば、2025年(令和7年)5〜9月の熱中症による救急搬送は100,510人で、調査を始めた2008年(平成20年)以降で最も多かった。月別では6月が過去最多で、真夏の前から搬送が増えている(消防庁「令和7年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」)。
出典:消防庁「熱中症情報(救急搬送人員の状況)」https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/post3.html
参考:環境省「熱中症予防情報サイト(WBGT)」https://www.wbgt.env.go.jp/
- 搬送の合計:100,510人(2025年5〜9月・確定値・調査開始以来の最多)
- 発生場所別:住居が38.1%で最も多く、次いで道路19.7%、公衆(屋外)12.1%、道路工事現場・工場・作業所などの仕事場10.5%(10,559人)
- 年齢別:65歳以上が57.1%、18〜64歳が33.9%
「7月・8月の対策をすれば良い」という意識は危険だ。6月は「搬送が急増する始まりの月」であり、6月1日から万全の体制を整えることが経営者の義務だ。
建設現場で「熱中症発症」を見逃さないための早期サイン7つ

熱中症の救急搬送を防ぐには、発症の早期段階で気づくことが最も重要だ。軽症のうちに対応すれば、現場での応急処置と休憩で回復できる。以下の7つのサインを作業員・管理者が共有しておくことが必要だ。
- ①大量発汗・急に汗が止まる:汗が出なくなったときは重症化の前兆
- ②ふらつき・立ちくらみ:脳への血液循環が低下しているサイン
- ③顔面紅潮・皮膚の熱感:体温調節機能が限界に近づいている
- ④手足のこむら返り(筋肉のけいれん):塩分・ミネラル不足によるI度(熱けいれん)
- ⑤気分が悪い・吐き気:自律神経・消化器系への影響が出ている
- ⑥言動がおかしい・呼びかけに反応が鈍い:III度(重症)への移行サイン——即119番
- ⑦意識を失う・けいれん発作:救命対応が必要な緊急状態
①〜③の段階で声がけ・休憩・水分補給を行えば多くのケースは回復する。⑥⑦に達してからでは救命が困難になる場合がある。「気のせいかもしれない」「休めない状況だから」という判断を管理者がしてはならない。
発症確認から119番まで——建設現場の初動対応5ステップ
Step1:発症者を涼しい場所へ移動させる
直射日光・アスファルトの輻射熱から離し、日陰・冷房のある場所へ移動させる。意識がない場合は無理に移動させず、その場で応急処置を開始しながら119番する。
Step2:衣服を緩め、体を冷やす
ヘルメット・墜落制止用器具(安全帯)・上着を外し、体幹を冷やす。氷嚢・冷水で首・わきの下・脚の付け根(大動脈が通る部位)を集中的に冷却する。うちわや送風機で風を当てる。
Step3:水分・塩分を補給させる(意識がある場合のみ)
意識がある場合に限り、経口補水液・スポーツドリンク・0.1〜0.2%の食塩水を少量ずつ飲ませる。意識がない・呼吸が正常でない場合は水分摂取させず、即座に119番する。
Step4:回復しない・意識不明なら即119番
冷却・休憩後も改善しない、または意識が混濁している場合は、迷わず119番通報する。通報時は「熱中症が疑われる作業員がいる」「現在の体温・意識レベル・冷却処置の状況」を正確に伝える。
Step5:対応記録を作成する
発症時刻・症状・処置内容・搬送先病院を記録する。休業4日以上となった場合は所轄労働基準監督署への「労働者死傷病報告(様式第23号)」提出が法的義務だ。
まとめ:管理者が毎朝確認すべきチェックリスト
| 時間帯 | 管理者の確認事項 | 根拠 |
|---|---|---|
| 作業前(朝礼) | 体調確認(体温・体調申告・前日の睡眠) | 通達(推奨) |
| 作業前 | WBGT計で測定・基準値確認 | 通達(推奨) |
| 作業前 | 冷水・経口補水液の備蓄確認 | 指導推奨 |
| 作業中(適宜) | 作業員の顔色・発汗状況を目視確認 | 改正安衛則(早く見つけて報告する体制) |
| 昼休憩前 | WBGT再測定・午後の作業可否判断 | 通達(推奨) |
| 午後最初 | 水分補給の声がけ実施 | 指導推奨 |
| 終業時 | 本日のWBGT測定記録をファイルに保管 | 推奨(調査のときに対策の証拠になる) |
📋 管理者 毎朝確認チェックリスト
熱中症リスクがある日(WBGT25以上)は必ず全項目を実施してください
🌅 朝礼・作業前
☀️ 作業中・昼休憩前
🌙 終業時
※ このチェックリストは印刷してご利用いただけます。チェックは画面上でも行えます。
- 消防庁のデータでは2025年は6月の搬送が過去最多——「梅雨だから安全」という油断は禁物
- 早期サイン(ふらつき・大量発汗・気分不良)を見つけたらその場で作業を止めて応急処置。回復しなければ即119番
- 早く見つけて報告する体制・重くしないための手順・作業者への周知は、2025年6月から規則(労働安全衛生規則 第612条の2)の義務。休業4日以上は監督署への報告(労働者死傷病報告)も必要
次のアクション:①上記チェックリストを印刷して現場事務所に掲示する ②作業員全員に早期サイン7つを朝礼で共有する
よくある質問
Q: 建設現場で熱中症が疑われる作業員が出た場合、まず何をすればよいですか?
まず①直射日光・アスファルトの輻射熱から離れた涼しい場所へ移動、②衣服を緩めて首・わきの下・脚の付け根を冷やす、③意識がある場合のみ経口補水液を少量ずつ飲ませる、④冷却後も改善しない・意識が混濁している場合は即座に119番通報する、の順で対応してください。
Q: 消防庁の熱中症救急搬送データはどこで確認できますか?
総務省消防庁のウェブサイト(https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/post3.html)で、週次・年次の救急搬送人員データを無料で閲覧できます。6月から10月にかけて週次速報が公開されるため、毎週確認することで自社現場のリスク管理に活用できます。
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