「WBGT測定が義務化されたと聞いたが、何を記録すればいいのかわからない」「万一、労働基準監督署の調査が入ったとき何を見せればいいのか」という声が建設業経営者から増えている。2026年夏の施工シーズンに向けて、WBGT測定の義務内容と整備すべき安全書類を実務目線で解説する。
2026年改正の内容とWBGT測定義務化の概要

厚生労働省は改正労働安全衛生規則(令和5年施行・令和6年完全義務化)により、熱中症リスクの高い作業場所でのWBGT(湿球黒球温度)の計測と記録を義務化した。主なポイントは以下の通りだ。
- 義務化対象:屋外での土木・建築作業、および屋内でも暑熱環境となる作業場所。建設業はほぼ全現場が対象。
- WBGT基準値:WBGT28℃以上で「警戒」、31℃以上で「厳重警戒」、33℃以上で「危険」。基準値を超えた場合は作業の中止・休憩を義務付け。
- 記録の保存義務:測定記録は3年間保存。様式の規定はないが、日時・場所・WBGT値・測定者を記録することが求められる。
2026年夏に整備すべきWBGT関連の安全書類5種

書類①:WBGT測定記録表
毎日の測定結果を記録する帳票。「日付・現場名・測定時刻・WBGT値・天候・担当者名」を最低限記載する。午前(9時頃)・午後(14時頃)の2回測定が推奨されている。
書類②:作業中止基準値の社内規程
「WBGT31℃以上で重作業は中止」等、会社として定めたルールを文書化する。書面化していないと「管理体制がなかった」とみなされ、行政指導時に不利になる。
書類③:熱中症予防教育の実施記録
労働安全衛生法第59条に基づく安全教育の実施を記録する。入社時・夏季前の年2回実施が目安。受講者の署名・受講日・教育内容を記録しておく。
書類④:健康診断・健康管理記録
高温多湿の環境で作業する作業員の体調確認記録。毎朝の体温・体調確認記録を残すことで、熱中症発生時に「管理していた」証拠になる。
書類⑤:熱中症発生時の緊急対応記録
万一熱中症が発生した場合の対応記録。発生日時・症状・処置・搬送先を記録する。労働災害として報告義務がある場合(休業4日以上等)は所轄の労働基準監督署への報告も必要だ。
行政指導・是正勧告を回避するための書類保管ポイント

- 保管場所を一元化する:現場事務所に「WBGT管理ファイル」として一か所にまとめる。調査時に「どこにあるかわからない」状態は最悪の印象を与える。
- 電子記録も可:スプレッドシートや専用アプリでの記録でも可。ただしバックアップを取ること。
- 保管期間は3年:作業が終了した現場の記録も3年間は破棄しない(労働安全衛生規則第97条準用)。
是正勧告を受けた場合は「改善報告書」の提出が求められる。書類が整備されていれば改善措置の証明が容易になるため、平時からの整備が重要だ。
まとめ:2026年夏前にWBGT書類整備を完了させる
| WBGT値 | リスク区分 | 義務的対応措置 |
|---|---|---|
| 28℃未満 | 注意 | 水分補給・休憩確保・体調確認記録 |
| 28〜31℃ | 警戒 | 上記+作業時間短縮・経口補水液準備 |
| 31〜35℃ | 厳重警戒 | 上記+激しい作業の中断・ミストファン設置 |
| 35℃以上 | 危険 | 屋外重作業の原則中止・緊急搬送体制確認 |
- WBGT測定義務化で「測定記録・中止基準規程・教育記録・健康管理記録・緊急対応記録」の5書類が必須
- 記録は3年間保管義務。電子記録も可だがバックアップ必須
- 書類の一元管理が行政指導対応の最大の防御になる
次のアクション:①WBGT測定器を現場に配備する(3,000〜15,000円)②「WBGT管理ファイル」を現場事務所に作成する
よくある質問
Q: WBGTの測定器はどこで購入できますか?費用はいくらですか?
WBGT測定器はAmazonや建設資材販売店で購入できます。簡易型で3,000〜8,000円、高精度型で15,000〜30,000円程度です。熱中症指数計(黒球付き)を選ぶことで輻射熱も含めた正確な値が測定できます。
Q: WBGT義務化に対応しない場合、どのようなペナルティがありますか?
労働基準監督署の調査で是正勧告を受ける可能性があります。悪質な場合は労働安全衛生法違反として50万円以下の罰金が科される場合もあります。さらに、熱中症事故が発生した際に適切な記録がなければ会社の安全配慮義務違反として損害賠償請求のリスクが高まります。

コメント