太陽光発電設備や蓄電池の工事を請け負う建設会社・工務店が最初に確認すべきなのは、配線の技術よりも先に「その工事を自社で施工してよい体制になっているか」です。太陽光・蓄電池の工事には、建設業法の許可、電気工事業法の登録または届出、電気工事士法の資格という3つの法律がそれぞれ別に関わります。1つを満たしていても、残りが欠けていれば法令違反になります。
本記事では、2026年時点の国土交通省・経済産業省・消防庁の公表資料をもとに、太陽光・蓄電池工事で必要になる許可・登録・資格を、経営者が社内で確認できる順番に整理しました。
太陽光・蓄電池工事は建設業法でどの業種になるか|2026年時点の区分
太陽光発電設備の設置は「電気工事」、屋根一体型は「屋根工事」
国土交通省の建設業許可事務ガイドライン(業種区分の考え方)では、太陽光発電設備の設置工事は『電気工事』に該当し、太陽光発電パネルを屋根に設置する場合は屋根等の止水処理を行う工事が含まれるとされています。一方で、屋根一体型の太陽光パネル設置工事は『屋根工事』に該当します。
同じ「屋根に太陽光パネルを載せる工事」でも、架台で載せるのか、屋根材そのものがパネルになっているのかで業種が変わります。見積書や契約書に工事の内容を書き分けておくと、許可業種との整合を後から説明しやすくなります。
1件500万円(税込)以上なら電気工事業の許可が必要
建設業法では、建築一式工事以外の工事で1件の請負代金が500万円(消費税を含む)未満の工事は「軽微な建設工事」とされ、許可がなくても請け負えます。500万円以上になると、その業種の許可が必要です。住宅用の小規模な設備でも、蓄電池や周辺の電気工事をまとめて受けると500万円を超えることがあるため、契約単位の金額で判断してください。
電気工事業の許可では、営業所ごとに専任の営業所技術者(2024年12月の改正建設業法の施行により「専任技術者」から呼び方が変わりました)を置く必要があります。国土交通省の資格一覧では、電気工事業の一般建設業許可で営業所技術者になれる主な国家資格は次のとおりです。
- 1級・2級電気工事施工管理技士(実務経験の追加要件なし)
- 第一種電気工事士(実務経験の追加要件なし)
- 第二種電気工事士(免状交付後、電気工事の実務経験3年以上)
- 電気主任技術者(第一種・第二種・第三種。免状交付後、実務経験5年以上)
国家資格がない場合は、電気工事に関する10年以上の実務経験、または指定学科の卒業と実務経験の組み合わせでも要件を満たせます。なお電気工事業は指定建設業のため、特定建設業の許可を受ける場合は1級電気工事施工管理技士などの国家資格者が必要で、実務経験だけでは要件を満たせません。
建設業許可とは別に必要な「電気工事業」の登録・届出

建設業許可がない会社は「登録電気工事業者」の登録が必要
電気工事業法(電気工事業の業務の適正化に関する法律)第3条により、電気工事業を営む者は、営業所が1つの都道府県内だけなら都道府県知事、2つ以上の都道府県にあるなら経済産業大臣の登録を受けなければなりません。登録の有効期間は5年で、続けるには更新が必要です。建設業許可が不要な500万円未満の工事だけを請け負う会社でも、自社で電気工事を施工するならこの登録が必要です。
建設業許可業者は「みなし登録電気工事業者」の届出を忘れない
建設業許可を受けている会社は、電気工事業法第34条により登録の手続きは不要ですが、電気工事業を開始したときは遅滞なく届け出る必要があります。届け出た会社は「みなし登録電気工事業者」として扱われます。自家用電気工作物(工場・ビルなど)の電気工事だけを営む場合は、届出ではなく通知となり「みなし通知電気工事業者」と呼ばれます。
経済産業省の逐条解説では、この特例の対象は建設業許可の業種を問わないとされています。つまり、建築一式工事や屋根工事の許可だけを持つ工務店が、自社で太陽光発電設備の電気工事を施工し始める場合も、この届出が必要です。電気工事業の許可を持っているから届出は不要、という扱いではない点に注意してください。
営業所ごとに主任電気工事士を置く
登録電気工事業者(みなし登録電気工事業者を含む)は、電気工事業法第19条により、一般用電気工作物等の電気工事を行う営業所ごとに主任電気工事士を置く必要があります。主任電気工事士になれるのは、第一種電気工事士、または第二種電気工事士の免状交付後に電気工事の実務経験が3年以上ある人です。主任電気工事士が退職などで欠けた場合は、そのことを知った日から2週間以内に後任を選任しなければなりません。
電気工事を下請に出すときの注意
同じ逐条解説では、電気工事の請負契約そのものは電気工事業者でなくても結べる一方、その電気工事を施工できるのは電気工事業者だけと説明されています。また第22条により、電気工事業者が請け負った電気工事を下請に出す場合は、その電気工事に係る電気工事業者に請け負わせなければなりません。協力会社に電気工事を任せるときは、相手の登録または届出の状況を契約前に確認してください。
作業する人に必要な電気工事士の資格
住宅用の太陽光発電設備は第一種または第二種電気工事士
会社としての許可・登録とは別に、実際に作業する人にも資格が必要です。電気工事士法第3条では、一般用電気工作物等に係る電気工事の作業は第一種または第二種電気工事士でなければ従事できないとされています。一般家庭や商店の屋内配線、住宅用の小出力の太陽電池発電設備はこの一般用電気工作物にあたります。
工場やビルなどの自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備)の電気工事は第一種電気工事士の作業範囲です。現場ごとに「どの電気工作物の工事か」を工事台帳に書き、配置する職人の資格と合っているかを確認できるようにしておくと、協力会社を含めた体制の説明がしやすくなります。
10kW以上50kW未満の太陽光は「小規模事業用電気工作物」
経済産業省の産業保安監督部によると、発電設備単独で設置される出力10kW以上50kW未満の太陽電池発電設備は、電気事業法上「小規模事業用電気工作物」に分類されます。令和5年(2023年)3月20日から、設置者には技術基準適合維持義務に加えて、使用開始前の基礎情報の届出と使用前自己確認結果の届出が義務になりました。
届出の義務を負うのは設置者(発注者)ですが、実務では施工会社が書類の作成を支援することが多い工事です。見積の段階で「出力が10kW以上になるか」を確認し、発注者に届出が必要なことを伝えておくと、引き渡し直前のトラブルを防げます。
蓄電池の消防の届出と受注前の確認項目
容量20kWhを超える蓄電池設備は届出の対象
蓄電池設備は、市町村の火災予防条例で位置・構造・管理の基準と設置の届出が定められています。消防庁は令和5年5月31日付けの通知(消防予第332号)で火災予防条例(例)の改正内容を示し、規制対象の単位をアンペアアワー・セルからキロワット時に改めたうえで、蓄電池容量20kWh以下の蓄電池設備は届出を要しないこととしました。
実際の基準は設置場所の市町村の条例で決まります。産業用や複数台を接続する大容量の蓄電池を扱う場合は、設計の段階で所轄の消防本部に届出の要否を確認してください。
受注前に社内で確認する項目の一覧
ここまでの内容を、太陽光・蓄電池工事を受注する前に社内で確認する項目としてまとめます。
| 確認する項目 | 根拠 | 確認する相手・書類 |
|---|---|---|
| 工事が電気工事か屋根工事か | 建設業許可事務ガイドライン | 見積書・契約書の工事内容 |
| 1件500万円(税込)以上か | 建設業法(軽微な工事) | 契約金額・自社の許可業種 |
| 営業所技術者の資格 | 建設業法(営業所技術者) | 資格者証・実務経験の証明 |
| 電気工事業の登録または開始届出 | 電気工事業法 第3条・第34条 | 都道府県または産業保安監督部 |
| 主任電気工事士の配置 | 電気工事業法 第19条 | 営業所ごとの配置表 |
| 作業者の電気工事士免状 | 電気工事士法 第3条 | 免状の写し・工事台帳 |
| 出力10kW以上50kW未満か | 電気事業法(小規模事業用電気工作物) | 設計図・発注者への説明 |
| 蓄電池容量が20kWhを超えるか | 市町村の火災予防条例 | 所轄の消防本部 |
よくある質問
Q1. 電気工事業の建設業許可を持っていれば、電気工事業法の手続きは不要ですか?
不要ではありません。建設業許可を受けた会社は電気工事業法の登録は不要ですが、電気工事業を開始したときは遅滞なく開始の届出をする必要があり、届け出るとみなし登録電気工事業者として扱われます。営業所ごとの主任電気工事士の配置も必要です。
Q2. 太陽光パネルの取付けを屋根工事の会社に任せる場合、電気の配線も任せてよいですか?
配線など電気工事にあたる作業は、電気工事業者(登録またはみなし登録)が電気工事士の資格者によって施工する必要があります。屋根工事の会社がその届出や資格者を備えているかを契約前に確認し、備えていない場合は電気工事部分を電気工事業者に分けて発注してください。
まとめ
太陽光・蓄電池工事を請け負う建設会社は、次の3つの順番で体制を確認してください。
- 会社の許可:工事が電気工事か屋根工事かを分け、500万円(税込)以上なら該当業種の許可と営業所技術者を確認する
- 電気工事業の登録・届出:建設業許可がなければ登録、許可があれば開始の届出を行い、営業所ごとに主任電気工事士を置く
- 現場の資格と発注者側の手続き:作業者の電気工事士免状、出力10kW以上50kW未満の届出、蓄電池容量20kWh超の消防への届出を確認する
協力会社に電気工事を任せる場合は、相手の建設業許可の業種と有効期限もあわせて確認しておくと安心です。
参考資料
- 国土交通省「業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方」
- 国土交通省「許可の要件」
- 国土交通省「営業所技術者等となり得る国家資格」
- 経済産業省「電気工事業の業務の適正化に関する法律の逐条解説」
- 経済産業省「電気工事業法 用語の定義」
- 中部近畿産業保安監督部「小規模事業用電気工作物」
- 消防庁「改正火災予防条例(例)の運用等について(通知)」令和5年5月31日
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。
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