見積りの単価の根拠を聞かれたとき、資材の値上がりを発注者に説明するとき、「建設物価で確かめました」という言葉を耳にすることがあります。月刊「建設物価」は、建設工事で使う資材や工事費の値段を毎月まとめた本で、国や自治体も積算の材料にしています。一方で、名前は知っていても、何が載っていて、自社の経営にどう使えるのかは分かりにくいものです。本記事では、月刊「建設物価」の中身、国や自治体での使われ方、よく並べて語られる月刊「積算資料」との違い、工務店・建設会社の経営者が使うときのポイントをまとめます。
月刊「建設物価」とは
月刊「建設物価」は、一般財団法人 建設物価調査会が出している総合物価版です。建設工事で使う資機材の価格、工事費、建設機械などの賃貸料金を、全国の各都市で毎月調べて載せています。価格の表のほかに、特集の記事や建設資材の統計も載ります。
本のほかに、Web で見られる「Web建設物価」もあります。標準版は月刊の情報を網羅し、2002年4月号からのバックナンバーを見られます。過去の号と比べられるので、資材の値動きを時期をさかのぼって確かめたいときに役立ちます。
なお、本や Web版は有料です。この記事では、誌面に載っている単価の数字は扱いません。
国や自治体も積算の材料にしている
月刊「建設物価」は、民間の会社だけでなく、国や自治体の工事費の積算でも使われています。
- 国の例:関東地方整備局は、市販の物価資料に載る材料単価と建設機械の賃料のうち、土木工事の積算でよく使う品目を積算のシステムに入れるため、建設物価調査会から情報の提供を受けています(2026年4月2日の随意契約)
- 自治体の例:相模原市は、建築工事の積算の単価を、建設物価調査会の「月刊建設物価」「建築コスト情報」と、経済調査会の「月刊積算資料」「建築施工単価」などの価格をもとに決めています
ただし、公共工事の単価は、国や自治体が自分の調査などと組み合わせて決めるものです。「公共工事の単価=本に載っている値」ではない点に注意してください。
月刊「積算資料」との違い
物価の本としてよく名前が挙がるのが、月刊「建設物価」と月刊「積算資料」の2冊です。出している団体が違います。
| 本 | 出している団体 | 主な中身 |
|---|---|---|
| 月刊「建設物価」 | 一般財団法人 建設物価調査会 | 資機材の価格・工事費・賃貸料金など(全国の各都市・毎月) |
| 月刊「積算資料」 | 一般財団法人 経済調査会 | 建設資材の価格・工事費など(毎月) |
相模原市の例のように、自治体によっては両方を単価の根拠にしています。自社でどちらを使うかは、取引の多い発注者がどちらを参考にしているか、使いたい品目と地域が載っているかで選ぶとよいでしょう。どちらが正しいというものではありません。
経営者の使い方3つ
1. 見積りの単価の根拠にする
見積りの単価を聞かれたときに、「この品目は物価資料の何月号の値をもとにした」と説明できると、発注者や施主の納得を得やすくなります。使った号と品目を見積書の控えに残しておくと、後で説明が要るときに困りません。
2. 資材の値動きを見る
同じ品目の値を、前の見積りを出した号と今の号で比べると、どれだけ動いたかが分かります。工事費全体の動きは、国土交通省が毎月無料で公表している建設工事費デフレーターでも確かめられます。物価の本は個々の品目の値、デフレーターは工事費全体の流れ、と分けて使います。
3. 発注者や施主との話し合いの材料にする
資材の値上がりで代金や工期の見直しが要るときに、比べた号と品目、値の差を資料として示します。2024年12月13日に施行された改正建設業法では、資材の高騰などのおそれがあるときは、契約を結ぶまでに注文者へその旨と根拠を通知することになりました(第20条の2第2項)。物価資料は、この「根拠」を示す材料の一つになります。
使うときの注意
- 地域と時点をそろえる:同じ品目でも地域と号で値が違います。比べるときは、地域と号をそろえて書きます
- 誌面をそのまま配らない:本や Web版は有料の資料です。発注者や施主に示すときは、購読の決まりの範囲で、自社で確かめた値と出どころを書きます
- 実際の仕入れの値と並べる:本の値は調べた時点の市場の値です。仕入れ先の見積書や請求書の値とあわせて示すと、説得力が増します
社内で使うときの残し方
物価の本の値を見積りに使ったときは、どの号の、どの品目・地域の値を使ったかを、見積書の控えや社内の記録に書いておきます。担当者が変わっても根拠をたどれ、発注者や施主から聞かれたときにもすぐに答えられます。あわせて、仕入れ先から実際に届いた見積書の値も並べておくと、本の値と実際の値の差がどのくらいあるかが分かり、次の見積りの精度を上げる材料になります。記録は表計算のソフトで、品目ごとに1行ずつ並べておけば十分です。毎月同じ品目を追うと、値上がりの時期や幅もつかみやすくなります。記録を続けることが何より大切です。
よくある質問
Q1. 月刊「建設物価」は誰でも買えますか?
建設物価調査会が販売しており、会社でも個人でも購入できます。Web で見られる「Web建設物価」もあります。価格や購読の方法は、建設物価調査会の案内で確かめてください。
Q2. 月刊「建設物価」と月刊「積算資料」は、どちらを使えばよいですか?
どちらが正しいというものではありません。自治体によっては両方を単価の根拠にしています。取引の多い発注者が参考にしている本や、使いたい品目と地域が載っている本を選ぶとよいでしょう。
Q3. 本を持っていなくても、値上がりの根拠は示せますか?
示せます。国土交通省の公共工事設計労務単価(人件費の基準)と建設工事費デフレーター(工事費全体の値動き)、日本銀行の企業物価指数は無料で公表されています。個々の資材の値は、仕入れ先の見積書や請求書の推移も根拠になります。
まとめ
月刊「建設物価」は、建設物価調査会が全国の各都市で資材や工事費の値段を毎月調べてまとめた本で、国や自治体も積算の材料にしています。経済調査会の月刊「積算資料」とあわせて、自治体の単価の根拠になることもあります。経営者にとっては、①見積りの単価の根拠、②資材の値動きの確認、③発注者や施主との話し合いの材料、の3つの使い方があります。使うときは地域と号をそろえ、自社で確かめた値と出どころを示すようにしましょう。
見積りの相手や協力会社を探すときは、全国の建設業許可業者を業種や地域から調べられる建設業許可データベースの企業検索もお使いください。
出典:建設物価調査会「月刊 建設物価」・建設物価調査会「Web建設物価」・関東地方整備局 随意契約結果書(2026年4月2日)・経済調査会・相模原市(確認日 2026-10-02)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。本の内容や価格は変わることがあるため、最新の内容は発行元で確認してください。
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