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建設業許可の『専任技術者』とは?営業所ごとの配置要件と実務上の注意点

Two individuals reviewing and signing official documents in an indoor setting.

建設業許可を申請する際、「専任技術者」の配置は許可要件の中でも最も厳しい基準の一つです。特に複数の営業所を持つ建設会社では、各営業所ごとに専任技術者を配置する必要があり、この要件を理解していないと許可申請が不許可になったり、許可取得後の運営で違反状態になったりします。本記事では、建設業許可における専任技術者の定義から営業所ごとの配置要件、そして実務上の見落としやすい注意点まで、具体的な事例を交えて解説します。これを読めば、許可申請の段階で正確な要件判断ができるようになります。

目次

建設業許可における「専任技術者」の基本要件

専任技術者の定義と法的位置づけ

建設業法では、建設業許可を取得するための要件として「経営業務の管理責任者」「専任技術者」「誠実性」「財産的基礎」の4つを定めています。このうち専任技術者は、営業所ごとに配置が義務付けられる人物です。

建設業法施行規則によると、専任技術者とは「営業所ごとに配置され、その営業所で行われる建設工事に関して、技術上の管理業務を行う者」と定義されています。重要なのは「営業所ごと」という表現で、これは複数営業所がある場合、各営業所に異なる専任技術者を配置する必要があることを意味しています。

専任技術者として認められるための要件は、大きく分けて以下の3パターンです:

  • 大卒以上で該当業種の実務経験3年以上
  • 高卒(または同等)で該当業種の実務経験5年以上
  • 該当業種の実務経験10年以上(学歴不問)

これらのいずれかに該当し、かつ該当する業種の専門知識を有していることが証明できる場合に、専任技術者として認定されます。

「専任」の意味を正しく理解する

実務上、最も問い合わせが多いのが「専任」の定義です。建設業許可における専任技術者の「専任」とは、当該営業所において技術上の管理業務に従事することを職務とする者という意味です。つまり、その営業所に常勤で勤務し、技術管理業務を専門に行う必要があります。

兼任は原則として認められません。例えば、本社の営業所と支店の営業所に同一人物が専任技術者として登録することはできません。また、営業所での技術管理業務に加えて、営業職や事務職を兼任することも不可です。ただし、例外的に認められるケースがあります。

小規模な企業で、営業所が1つの場合、その営業所の専任技術者が経営業務の管理責任者を兼ねることは可能です。しかし、複数営業所がある場合は、各営業所の専任技術者は異なる人物である必要があります。令和6年(2024年)から令和8年(2026年)にかけて、この基準は厳格化され、許可申請時の審査も一層厳しくなっています。

営業所ごとの専任技術者配置義務の実務的ポイント

申請に必要な書類一式

!Detailed view of a hand writing a signature on an official document with a ballpoint pen.

*Photo by Tima Miroshnichenko on Pexels*

複数営業所がある場合の配置ルール

建設業許可申請では、営業所の定義が非常に重要です。営業所とは、建設工事の見積もり、契約の締結、技術上の管理業務などを継続的に行う事務所をいいます。単なる資材置き場や作業所ではなく、契約管理や技術管理の機能を持つ拠点である必要があります。

複数の営業所がある場合、以下のルールが適用されます:

  • 各営業所に異なる専任技術者を配置する必要があります
  • 専任技術者は常勤で当該営業所に勤務する必要があります
  • 兼任は認められません(経営者が複数営業所を持つ場合でも同じです)

建設業法施行規則第3条では、「営業所ごとに、専任の技術者を配置しなければならない」と明記されています。これは許可業種ごとではなく、営業所ごとという点が重要です。

実例を示すと、A社が東京本社と大阪支店で建設業許可を取得する場合、東京本社に配置する専任技術者(例:田中太郎)と大阪支店に配置する専任技術者(例:山田花子)は異なる人物である必要があります。同じ人物を両営業所の専任技術者として登録することはできません。

営業所変更時の手続きと注意点

既に建設業許可を取得している企業が新たに営業所を増設する場合、「営業所変更届」を提出する必要があります。この際、新しい営業所には必ず新たな専任技術者を配置しなければなりません。

実務上のよくある失敗例として、既存営業所の専任技術者を新営業所に異動させるケースがあります。これは許可申請者の側では「異動」だと考えるかもしれませんが、許可当局側からは「既存営業所から専任技術者が不在になった」と判断され、既存営業所の許可要件を欠くことになります。その結果、許可が取消される可能性があります。

営業所を増設する際は、以下の手順を踏んでください:

  • 新営業所用の新たな専任技術者の確保(経歴書、資格証の取得)
  • 営業所変更届の作成(新営業所の所在地、設備、専任技術者の情報)
  • 既存営業所の専任技術者はそのまま配置を継続する

この手順を忘れると、許可状況に関する届出漏れや要件欠缺として指摘されます。

外国人技能者と解体工事業登録における専任技術者

外国人を専任技術者として配置する場合の在留資格要件

建設業界の人材不足に対応するため、外国人技能者の採用が増加しています。外国人を専任技術者として配置することは可能ですが、いくつかの条件があります。

最も重要な条件は「在留資格」です。建設業許可申請において専任技術者として認定されるためには、その者が日本国内で合法的に就労できる身分が必要です。以下の在留資格を持つ外国人であれば、原則として専任技術者として配置できます:

  • 技能ビザ(特定技能第1号・第2号)
  • 高度専門職ビザ
  • 永住者
  • 定住者
  • 日本人の配偶者等

特に令和3年(2021年)以降、特定技能ビザの対象職種が建設分野に広がったことにより、外国人技能者の配置がしやすくなっています。ただし、特定技能ビザで許可された職種の範囲内での業務に限定されるため、注意が必要です。

申請時には、以下の書類が追加で必要になります:

  • パスポートのコピー
  • 在留カード
  • 実務経歴書(母国での実務経験を含む)
  • 学位証明書(翻訳付き)

外国人の実務経歴を認定する際、母国での経歴が日本の基準に相当するかどうかの判断は許可申請時に厳しく審査されます。翻訳の質や経歴の証明力が不十分だと、不許可になる可能性があります。

解体工事業登録と専任技術者の違い

建設業許可と混同されやすいものに「解体工事業の許可登録」があります。建設業法の改正により、令和3年(2021年)4月から解体工事業は建設業許可の対象業種に追加されました。しかし、一定の条件下では従来の「解体工事業登録」制度も存在します。

この2つの制度では、専任技術者の要件が異なります。

建設業許可(解体工事業)の場合:

  • 営業所ごとに専任技術者の配置が必須
  • 専任技術者は常勤で当該営業所に勤務する必要がある
  • 経歴の審査が厳格(実務経歴書の詳細な記載が必要)

解体工事業登録の場合:

  • 専任技術者の配置が不要な場合がある(登録基準による)
  • 要件が建設業許可より緩い

解体工事業で事業を行う企業は、自社が建設業許可を取得すべきか、それとも解体工事業登録で足りるのかを正確に判断する必要があります。この判断を誤ると、違法に建設業を営んでいる状態になり、罰則の対象になります。

実務上の見落としやすい注意点と違反事例

申請書類の確認と整理

!High-angle view of a contract document with pens and a case on a wooden table.

*Photo by RDNE Stock project on Pexels*

兼任制限のNG事例と許可取消のリスク

実務上、許可取消になるケースの多くは「専任技術者の兼任」に関連しています。以下は許可当局が指摘する典型的なNG事例です:

事例1:営業職との兼任

一人の社員が営業所の専任技術者であると同時に、営業職として営業活動に従事している場合。許可当局は、この人物が「技術上の管理業務に専従していない」と判断し、専任技術者要件の欠缺として指摘します。

事例2:複数営業所の兼任

A県の営業所とB県の営業所に同一人物が専任技術者として登録されている場合。いくら給与を分けて支払っていても、同一人物が複数営業所に専任することはできません。

事例3:退職者の扱い

専任技術者が退職した際、その旨を許可申請先に届け出さずに、実質的には別の人物が業務をしているが書面上は変わっていないケース。これは意図しない違反ですが、許可取消の原因になります。

令和6年~令和8年(2024年~2026年)にかけて、許可申請当局による現地調査や書面審査が厳格化されており、こうした実態と書面の不一致が指摘される頻度が高まっています。

人員異動時の届出忘れ

建設業許可取得後、専任技術者が退職したり、別の営業所に異動したりする場合、必ず届け出が必要です。この届出を忘れると、許可は有効でも要件を欠いた状態が続き、後日の立入検査で指摘される可能性があります。

実務的には、以下のタイミングで届出が必要になります:

  • 専任技術者が退職した場合(同時に後任者の配置)
  • 専任技術者が別の営業所に異動する場合(元営業所では後任者の配置、異動先でも新たに配置)
  • 専任技術者が休職・育休に入る場合(代替者の配置)

これらの届出を提出しないまま営業活動を続けると、「虚偽の申請」として許可取消や営業停止の処分を受ける可能性があります。

経歴書作成時の落とし穴

専任技術者として認定されるには、実務経歴書に「3年以上(または5年、10年)の実務経験」を証明する必要があります。この経歴書の作成時に、よくある失敗は以下の通りです:

失敗例1:経歴の空白期間

学校卒業から初職までの期間が空いている場合、その理由を明確にしておかないと、実務経験期間として認められない可能性があります。

失敗例2:職務内容の不明確な記載

「建設工事に従事」という曖昧な記載では、具体的にどのような技術管理業務を行ったのかが不明確です。「型枠工事の技術管理」「鉄筋工事の現場監理」など、具体的な内容を記載する必要があります。

失敗例3:複数の会社での経験を合算する場合の証明不足

異なる会社での経験期間を合算する場合、各会社での経歴書と併せて、給与支払い証明書や雇用契約書のコピーが必要です。これが不足していると、実務経験として認められません。

経歴書の作成は、申請の可否を左右する重要な書類です。許可申請する前に、申請先の許可当局に相談し、経歴書の記載が基準を満たしているか確認することをお勧めします。

よくある質問

Q1. 専任技術者は必ず常勤である必要がありますか?

はい、建設業許可を取得するには専任技術者は常勤職員であることが必須です。非常勤や兼務での配置は認められません。ただし、同じ営業所内での他職務との兼務は可能な場合もあるため、許可行政庁に確認することをお勧めします。

Q2. 複数の営業所がある場合、全ての営業所に配置が必要ですか?

はい、建設業許可を取得している業種ごとに、各営業所に専任技術者の配置が必須です。本店と支店の両方に必要になります。配置できない営業所については、その営業所での当該業種の営業停止扱いとなります。

Q3. 専任技術者の資格要件として必要な実務経験年数は?

指定建設業(鉄骨・電気など)は10年以上の実務経験が必要です。一般建設業は5年以上となります。ただし、特定資格(一級建築士など)保有者は経験年数要件が免除される場合があります。詳細は許可申請時に確認してください。

Q4. 専任技術者が退職した場合、どのような手続きが必要ですか?

専任技術者の交代は必ず許可行政庁に報告し、変更届を提出してください。新しい技術者を配置できない期間が発生した場合、その業種の営業は継続できません。速やかに適格者を確保し、変更届を提出することが重要です。

Q5. 専任技術者が兼業する場合の制限はありますか?

同一営業所内での兼務は可能ですが、異なる営業所や他企業での兼務は認められません。また、経営上の重要な職務(取締役など)との兼務も実質的な専任性が問われるため、事前に許可行政庁に相談することをお勧めします。

まとめ

建設業許可申請の期限確認

!A close-up of a businessman signing official documents at a wooden desk.

*Photo by Matheus Lara on Pexels*

建設業許可における専任技術者は、営業所ごとに異なる人物の配置が必須であり、兼任や異動時の手続き漏れは許可取消のリスクに直結します。複数営業所を持つ企業では特に、各営業所ごとに常勤かつ適格な専任技術者を確保し、人員異動の際は必ず届出を提出することが重要です。外国人技能者の配置を考える場合は、在留資格の確認と申請書類の充実が合格の鍵になります。

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この記事を書いた人

建設業許可(一般・特定)の新規取得・更新・業種追加から変更届・廃業届まで幅広い申請実務に精通した許可申請の専門家。国土交通省の法改正情報を継続的に追跡し、都道府県ごとの審査基準の違いや落とし穴を解説。経営事項審査(経審)・入札参加資格・財産的基礎要件の確認方法など、中小建設会社が直面する許可維持の課題に対応した情報を提供している。

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