建設業許可を受けるには、許可を受ける業種について、営業所ごとに「営業所技術者」(2024年12月までの呼び方は専任技術者)を置く必要があります。複数の営業所を持つ会社では、営業所ごとに人をそろえる必要があり、退職や異動のときの届出を忘れると許可の要件を欠くことにもなります。本記事では、営業所技術者の決まりと、営業所ごとの配置、実務で見落としやすい点を、建設業法と国土交通省の資料に沿って整理します。
営業所技術者(旧 専任技術者)の基本
許可の要件の一つ
建設業法は、許可の要件として、常勤役員等(経営業務の管理体制)、営業所技術者、誠実性、財産的基礎などを定めています(ほかに、欠格要件に当たらないことと、適切な社会保険への加入も要件です)。営業所技術者は、許可を受ける業種ごとに、営業所に専任で置く技術者です(建設業法第7条第2号・特定建設業は第15条第2号)。2024年12月の改正で、呼び方が「専任技術者」から「営業所技術者」(特定建設業は「特定営業所技術者」)に変わりました。
営業所技術者は、その営業所で結ぶ請負契約について、技術的な面から見積もりや契約が適正に行われるようにする役目を持ちます。
なれる人(一般建設業)
一般建設業の営業所技術者になれるのは、主に次のいずれかに当たる人です。
- 決められた国家資格などを持つ人(業種ごとに、1級・2級の施工管理技士、建築士、技能士などが決まっている)
- 指定学科を卒業し、その業種の実務経験がある人(大学・高等専門学校の卒業なら3年以上、高校の卒業なら5年以上)
- その業種の実務経験が10年以上の人(学歴は問わない)
特定建設業では、1級の国家資格などを持つ人か、一般建設業の要件に加えて、元請として4,500万円以上の工事で2年以上の指導監督的な実務経験がある人などが必要です。土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の7業種(指定建設業)は、1級の国家資格などが必要です。
「専任」の意味
「専任」とは、その営業所に常勤して、もっぱらその職務に就いていることをいいます。ほかの会社の技術者を兼ねたり、別の営業所の営業所技術者を兼ねたりすることはできません。
一方、同じ営業所であれば、常勤役員等(経営業務の管理責任者など)を兼ねることや、要件を満たす複数の業種の営業所技術者を一人で兼ねることはできます。営業所で見積もりや契約の仕事にも就くのが営業所技術者の役目なので、営業の仕事をしていることだけで要件を欠くわけではありません。
営業所ごとの配置の実務

営業所とは
建設業許可申請でいう営業所とは、本店や支店など、常時、建設工事の請負契約を結ぶ事務所をいいます。資材置き場や工事現場の事務所だけで、契約を結ばない場所は営業所に当たりません。
複数の営業所がある場合
- 営業所ごとに、その営業所で扱う業種の営業所技術者を置く
- 営業所技術者は、その営業所に常勤する
- 一人の人が、二つの営業所の営業所技術者を兼ねることはできない
例えば、本社と支店の両方で土木工事業の契約を結ぶなら、本社と支店にそれぞれ、土木工事業の営業所技術者を置きます。
現場の技術者との兼務の特例
営業所技術者は営業所に常勤するのが原則で、工事現場の主任技術者や監理技術者とは別の役目です。ただし、2024年12月の改正で、請負代金の額や営業所と現場の距離、連絡の体制などの条件を満たす場合に、営業所技術者が現場の技術者を兼ねられる特例ができました。使えるかどうかは、国土交通省の資料と許可行政庁の手引きで確かめてください。
営業所を増やすとき・異動のとき
許可を受けた後に営業所を新しく設けるときは、変更届を出します(営業所の新設は30日以内)。新しい営業所にも営業所技術者が必要です。別の都道府県に営業所を設けるときは、知事許可から大臣許可への許可換えの申請が要ります。
よくある失敗は、今の営業所の営業所技術者を新しい営業所へ移してしまうことです。元の営業所で後任がいなければ、その業種の要件を欠くことになります。営業所を増やすときは、次の順で進めましょう。
- 新しい営業所の営業所技術者を確保する(資格や実務経験を証明する書類をそろえる)
- 変更届(営業所の新設と営業所技術者)を作る
- 今の営業所の営業所技術者は、そのまま置く
外国人の技術者と解体工事業の登録
外国人を営業所技術者にする場合
外国人でも、要件を満たせば営業所技術者になれます。その前提として、日本で営業所技術者として働ける在留資格であることが必要です。永住者・定住者・日本人の配偶者等は、就労の制限がありません。そのほかの在留資格は、認められた活動の範囲に営業所技術者の仕事が入るかを、出入国在留管理庁に確かめてください。在留資格「特定技能」は、決められた技能の業務に就くための資格です。
外国の学校の卒業や、外国での実務経験を要件に使う場合は、国土交通大臣の認定を受ける仕組みがあります。申請の前に、許可行政庁に必要な書類を確かめましょう。
建設業許可(解体工事業)と解体工事業の登録
建設業法の改正で、2016年(平成28年)6月から解体工事業が建設業許可の業種として独立しました。これとは別に、建設リサイクル法の「解体工事業の登録」があり、こちらは500万円未満の解体工事だけを請け負う場合の制度です。解体工事業の許可と登録では、置く技術者が違います。
建設業許可(解体工事業)の場合:
- 営業所ごとに営業所技術者を置く
- 営業所技術者は、その営業所に常勤する
解体工事業の登録の場合:
- 技術管理者を置く(解体工事の施工の技術上の管理をする人)
- 500万円以上の解体工事は請け負えない(建設業許可が要る)
どちらが要るかは、請け負う工事の金額で決まります。登録だけで500万円以上の解体工事を請け負うと、無許可の営業になり罰則の対象です。
見落としやすい点

認められない例
例1:別の営業所との兼任
A県の営業所とB県の営業所で、同じ人を営業所技術者にしている場合。給与を分けて払っていても、一人が二つの営業所で専任になることはできません。
例2:ほかの会社との兼任
ほかの会社の役員や技術者として常勤している人は、専任とは認められません。
例3:退職したのに届け出ていない
営業所技術者が退職したのに届け出ず、書類の上ではそのままになっている場合。後任がいなければ許可の要件を欠いた状態です。
届出の期限と、要件を欠いたとき
営業所技術者が替わったときは、2週間以内に許可行政庁へ届け出ます(建設業法第11条)。届出をしなかったり、うその届出をしたりすると、罰則の対象です。
- 営業所技術者が退職した(後任を置いて届け出る)
- 営業所技術者が別の営業所に移った(元の営業所の後任と、移った先の届出)
- 長い休職などで常勤でなくなった(後任を置いて届け出る)
後任を置けず許可の要件を満たさなくなると、許可の取消しの対象になります(建設業法第29条)。退職の予定がわかったら、早めに後任を準備しましょう。
実務経験の証明の注意点
実務経験で営業所技術者になる場合は、その期間の経験を書類で証明します。
注意1:期間が足りているか
実務経験の年数は、その業種の工事に実際に携わった期間で数えます。同じ期間を二つの業種に重ねて数えることはできません。
注意2:経験の中身の書き方
「建設工事に従事」のような書き方では、どの業種の経験かがわかりません。「型枠の工事の施工管理」のように、業種と仕事の中身がわかるように書きます。
注意3:前の会社での経験
前の会社での経験を使う場合は、その会社に証明をもらう必要があります。裏付けに求められる書類(工事の契約書や注文書、在籍を示す書類など)は許可行政庁によって違うため、手引きで確かめてください。
よくある質問
Q1. 営業所技術者は常勤である必要がありますか?
はい。営業所技術者は、その営業所に常勤して専任であることが必要です。非常勤の人や、ほかの会社に常勤している人は認められません。同じ営業所で常勤役員等を兼ねることはできます。
Q2. 営業所がいくつもある場合、すべてに置く必要がありますか?
その業種の請負契約を結ぶ営業所には、すべてに置く必要があります。本店と支店の両方でその業種の契約を結ぶなら、両方に必要です。
Q3. 実務経験は何年必要ですか?
一般建設業では、資格が無い場合、実務経験10年(指定学科の卒業なら3年か5年)で認められ、決められた国家資格などがあれば経験の年数は問われません。特定建設業のうち指定建設業(土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の7業種)は、1級の国家資格などが必要です。詳細は許可申請時に確認してください。
Q4. 営業所技術者が退職した場合の手続きは?
後任の営業所技術者を置き、2週間以内に許可行政庁へ変更を届け出ます。後任を置けないと許可の要件を欠き、許可の取消しの対象になるため、早めに適格な人を確保することが大切です。
Q5. 営業所技術者がほかの仕事を兼ねることはできますか?
同じ営業所の常勤役員等や、要件を満たす別の業種の営業所技術者は兼ねられます。別の営業所やほかの会社の仕事を兼ねることはできません。現場の技術者との兼務は、2024年12月の改正の特例の条件を満たすときだけです。
まとめ

営業所技術者(旧 専任技術者)は、許可を受ける業種について、営業所ごとに常勤で置く技術者です。別の営業所やほかの会社との兼任はできず、替わったときは2週間以内に届け出ます。複数の営業所を持つ会社は、営業所ごとの技術者を一覧で管理し、退職や異動の前に後任を準備しておきましょう。外国人を置く場合は、在留資格と、外国での学歴や実務経験の扱いを先に確かめることが大切です。
自社や取引先の許可の業種・許可番号・有効期限は、会社名や許可番号から調べられる建設業許可業者の検索でも確かめられます。
出典と参考(2026年10月6日に確認)
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