空き家再生でリフォーム工事を請け負うときは、「どの建設業許可が必要か」「業種追加申請の流れは」を先に確かめておく必要があります。実は、一口に「空き家再生」と言っても、実施する工事内容によって必要な許可業種が異なり、許可申請の要件も大きく変わります。また、許可を受けた後も、働き方改革(時間外労働の上限規制など)への対応が求められます。本記事では、空き家再生でよくある工事の組み合わせをもとに、建設業許可の基本要件から業種追加申請、リスク回避のポイントまでを解説します。
富山県の空き家再生事業と建設業許可の現状
空き家再生が加速する中での許可申請ニーズ
空き家再生の事業では、構造補強、内装リフォーム、設備交換など複数種類の工事が必要となるため、単一の建設業許可では対応できないケースが多くあります。
例えば、築50年超の戸建て住宅をリノベーションする場合、以下の工事が発生します。
- 大工工事(間仕切り壁の撤去・新設)
- 管工事(給排水管の更新、ガス管敷設)
- 電気工事(配線・配管の全面更新)
- 左官工事(しっくい・モルタルの壁塗り)・タイル・れんが・ブロック工事(タイル張り)
- 塗装工事(外壁塗装)
建築一式工事の許可(建築工事業)だけでは、専門工事を単独で500万円以上請け負うことはできません。専門工事を単独で請け負うなら、その業種の許可が要ります(500万円未満の軽微な工事は許可なしで可)。
新規参入時に見落としやすい許可区分
建設業許可は29業種に細分化されており、工事内容によって許可業種が厳密に定められています。富山県知事許可と国土交通大臣許可の2種類があり、営業所の配置によってどちらの許可を取得すべきかが決まります。
営業所が1つの都道府県内のみの場合は知事許可、複数都道府県に営業所を置く場合は大臣許可の申請が必要です。空き家再生事業で初めて建設業許可を取る企業は、営業所を富山県内だけに置くなら富山県知事許可になります(建設業法 第3条第1項)。工事の場所は県外でもかまいません。
注意点として、下請け工事のみで営業する場合でも、請負金額が税込500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上・延べ面積150㎡未満の木造住宅は金額にかかわらず不要)の工事を受注する予定があれば、必ず建設業許可が必要です。「小規模な補修工事だけだから許可不要」という判断は、後々の無許可営業による営業停止処分につながる重大なリスクとなります。
建設業許可申請の5つの要件と実務チェックポイント
許可取得に必須の5要件を完全クリアする
建設業許可を申請する際は、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります。1つでも欠ける場合、許可取得は不可能です。
1. 経営業務の管理体制(旧・経営業務の管理責任者)と社会保険
2020年10月から、「経営業務の管理責任者」は「経営業務の管理を適正に行う能力(経営業務の管理体制)」に変わりました。建設業の役員などとしての経験が5年以上ある常勤の役員(個人なら本人)を置くのが基本の形で、ほかに補佐する人を組み合わせる形もあります。経験は、登記簿や確定申告書、工事の契約書・注文書などで証明します。あわせて、健康保険・厚生年金・雇用保険への加入も許可の要件です(2020年10月から)。
2. 営業所技術者等(旧 専任技術者)の配置
各営業所に必ず1名以上の営業所技術者等(常勤)を配置しなければなりません。必要な資格や実務経験は業種ごとに異なります。例えば、大工工事業の許可を取得する場合、以下のいずれかを満たす者が必要です。
- 一級建築士・1級建築施工管理技士(2級は種別が躯体か仕上げ)
- 二級建築士・木造建築士
- 建築大工技能士1級(2級は合格後に3年以上の実務経験)
- 大工工事の実務経験10年以上(指定学科の卒業者は3年か5年に短縮)
空き家再生事業では複数の業種追加を予定している企業が多いため、各業種ごとに要件を満たす人材配置が課題になります。人材確保が困難な場合、人材開発支援助成金の活用を検討する価値があります。
3. 誠実性
法人・役員・個人事業主・支配人などが、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないことが要件です(建設業法第7条第3号)。一定の刑に処せられたことなどは、次の欠格要件で見られます。
4. 財産的基礎
一般建設業では、自己資本が500万円以上あるか、500万円以上の資金を調達する能力(金融機関の預金残高証明書など)があることなどが要件です(特定建設業はより厳しい基準)。
5. 欠格要件に該当しないこと
建設業法第8条で定められた欠格要件(破産者で復権を得ない者、不正の手段で許可を受けたなどの理由で許可を取り消されて5年を経過しない者、一定の刑に処せられて5年を経過しない者、暴力団員など)に該当していないことです。
業種追加申請での注意点―既存許可との重複を避ける
既に建設業許可を保有している場合、新たに異なる業種の許可を取得することを「業種追加申請」と呼びます。空き家再生事業への参入では、たとえば以下のような業種追加の組み合わせが考えられます(例)。
| 既存許可業種 | 追加申請すべき業種 | 理由 |
|---|---|---|
| 建築工事業 | 大工工事、電気工事、管工事 | 構造改修と設備更新に対応 |
| 大工工事 | 建築工事業、左官工事 | 規模拡大と仕上げ工事の内製化 |
| 管工事 | 建築工事業、電気工事 | 総合改修への対応 |
業種追加の際の重要なポイントは、追加する業種ごとに、その業種の営業所技術者の要件を満たす人が必要ということです。同じ営業所の同じ人が、資格や経験があれば複数の業種を兼ねることはできますが、例えば大工工事業の技術者が電気工事の資格や経験を持っていなければ、電気工事の技術者を別に置く必要があります。これが新規参入企業にとって大きな人材確保の課題となっており、特に若手技術者の育成が急務になっています。
働き方改革への対応と許可の更新
許可の更新と働き方改革で守ること
建設業許可は5年ごとの更新が必要で、有効期間が満了する日の30日前までに申請します。更新で見られるのは許可の要件(経営業務の管理体制・社会保険・営業所技術者など)で、週休2日や残業時間は更新の審査項目ではありません。ただし、次の項目は労働基準法などで守る必要があります。
- 休日:週1日以上(または4週4日以上)が労働基準法の最低限。週休2日は公共工事などで進められている目標
- 時間外労働の上限:2024年4月から建設業にも適用。原則 月45時間・年360時間(特別な事情があっても年720時間など)
- 有給休暇の取得促進:年5日以上の取得実績があるか
- 安全衛生管理体制:常時50人以上の事業場では産業医の選任、雇い入れ時の安全衛生教育など
特に小規模企業では、人員配置の制約から週休2日制の導入が難しいという声もあります。ただし、時間外労働の上限を超えると労働基準法違反として罰則(6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)の対象になります。
具体的な対応手順と管理体制の構築
時間外労働の上限を守るため、以下の対応を段階的に進めることが有効です。
ステップ1:現状把握(当月実施)
- 直近12か月の勤務表、有給休暇取得状況を集計
- 時間外労働時間の集計と分析
ステップ2:改善計画の策定(1〜2か月以内)
- 目標達成時期を明記した改善計画書の作成
- 経営陣の意思決定を文書化
ステップ3:試行運用(3〜4か月)
- シフト制への移行、工程管理の見直し
- 下請業者への発注時期調整
ステップ4:記録の保管(毎月)
- 改善後の勤務表、給与台帳、安全会議議事録を完備
特に空き家再生事業は改修工事が中心のため、工期が長く、夜間作業が避けられないケースが多いという特性があります。そうした中でも、工事計画段階での工数見積もり精度を上げ、人員配置を最適化することで、週休2日制に近づけることができます。
許可業者が営業停止処分を避けるためのリスク回避戦略
無許可営業になりやすい誤解
よくあるのは、「修繕工事だから許可は要らない」という誤解です。修繕でも、1件の請負代金が税込500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上など)なら許可が必要です。工事を分けて契約しても、正当な理由がなければ合計の金額で判断されます(建設業法施行令第1条の2第2項)。
次のような誤解に注意してください。
- 基準を知らない新規参入企業:工事金額の算定基準を誤解している
- 下請け企業との認識ズレ:「自社は下請けだから許可不要」という誤解(下請でも500万円以上なら許可が必要)
- 業務の部分委託時の混乱:許可が必要な工事を無許可の業者に下請に出すと、元請も指示や営業停止の処分の対象になる(建設業法第28条)
営業停止処分を受けると、その期間中は新しい請負契約を結べません(処分の前に結んだ契約の工事は続けられます・建設業法第29条の3)。結果として、取引先との信用失墜、従業員の雇用維持困難、損害賠償請求などの深刻な経営危機に陥ります。
許可業者として最小限実施すべき4つのチェック項目
営業停止のリスクを回避するため、以下の4点を定期的に確認する体制を構築してください。
1. 受注時の工事内容確認
- 工事内容の詳細を発注者から書面で受け取る
- 金額算定の根拠を確認し、許可対象工事か否か判定する表を社内で作成・運用
2. 外注(下請け)業者の許可確認
- 500万円以上の工事を外注する場合、下請業者の許可通知書の写しや許可番号を必ず保管
- 許可の有効期限を事前に確認
3. 請負契約書の適切な作成
- 工事内容、金額、工期、契約不適合責任など建設業法第19条の事項を漏れなく書く
- 印紙税法(契約書の収入印紙)などの法令遵守
4. 定期的な法令遵守研修
- 経営層・営業担当・現場責任者向けに年1回以上の研修を実施
- 建設業法の基本要件、無許可営業の罰則などを周知
業界団体などが開く研修があれば、活用するのも一つの方法です。
よくある質問
Q1. 富山県で空き家再生事業を始めるには、どの建設業許可が必須ですか?
空き家再生は工事内容により異なります。解体工事が主体なら解体工事業、建築工事なら建築工事業、電気や配管など専門工事が主体なら該当業種の許可が必要です。主たる工事に付いてくる他の業種の工事(附帯工事)は、主たる工事の許可で請け負えます(建設業法第4条)。
Q2. 許可を持たない状態での空き家改修工事は違法ですか?
税込500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上など)の工事は許可が必須です。無許可で施工すると建設業法違反となり、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処せられます。許可が要る工事なら、契約の前に許可を取りましょう。
Q3. 建設業許可取得までの期間は?富山県で短縮できますか?
許可までの日数は富山県のページに書かれていないので、申請の前に窓口で確かめてください。書類の不備で差し戻されると長くかかるので、県の手引きで事前に確かめましょう。申請書は、主たる営業所のある地区を受け持つ土木センターの企画管理課業務班に出します(担当は富山県土木部建設技術企画課・電子申請の案内もあります)。
Q4. 経営経験がない新規参入でも建設業許可は取得できますか?
可能です。ただし常勤役員等(経営業務の管理責任者等)と営業所技術者等の配置が条件です。経営業務の管理体制には建設業の役員などの経験5年以上の人など、営業所技術者には資格か実務経験(原則10年)の人が必要です。人材確保が新規参入の最大課題となります。
Q5. 空き家再生で補助金を受けながら建設業許可を取得する流れは?
富山県の空き家再生補助金と許可取得は別手続きです。許可が要る金額の工事なら、契約の前に許可を受けておく必要があります。補助金条件に許可要件を記載している場合が多いため、事前に補助金担当部署に確認が重要です。
まとめ

富山県で空き家再生事業に参入する際の建設業許可申請は、単に手続きを進めるだけでは不十分です。常勤役員等(経営業務の管理責任者等)・営業所技術者等の配置、財務基盤の確保という基本5要件を完全にクリアした上で、複数業種の追加申請に対応する人材戦略が必須となります。さらに2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されているため、事業立上げと同時に労務管理体制の整備も進める必要があります。
出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」(確認日 2026-09-28)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。
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