防水工事の単価上昇時代へ──資材高騰で経営を圧迫する建設会社の対策

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笠をかぶって屋根を塗装する作業員

防水工事業者の経営環境が急速に悪化しています。資材高騰が直撃し、防水工事単価の値上げが避けられない中、受注機会は減少傾向にあります。建設業の倒産は高い水準が続いており、防水工事を含む専門工事業者にとって厳しい状況です。本記事では、資材高騰対策と工種多角化による受注拡大、そして建設業許可・法令遵守による倒産リスク管理の三つの柱から、防水工事業者が今取るべき経営対策を解説します。防水工事だけでは生き残れない時代に、どう事業を再構築するのか、具体的な戦略をお伝えします。

目次

資材高騰が防水工事業者の経営を圧迫する現状

防水工事単価の上昇と受注減少の悪循環

防水工事の原材料であるウレタン防水材、シート防水材、アスファルト防水材などは、国際的な化学品価格の高騰に直結しています。資材の値動きは、建設物価調査会などが公表する建設資材の価格指数で確かめ、見積もりの根拠に使いましょう。

防水工事業者は、原価上昇分を単価に反映させるべきですが、実際には受注を失うことへの恐怖から値上げに踏み切れないジレンマに陥っています。その結果、以下のような負のスパイラルが発生しています。

  • 原材料費の上昇 → 利益率の低下
  • 競争相手との価格競争 → 単価据え置きのため赤字案件化
  • 受注減少 → 従業員給与・福利厚生費の圧縮
  • 人材流出 → 施工品質の低下と企業イメージ悪化

この悪循環が続くと、資金繰りが持たなくなります。防水工事は外壁工事や屋根工事と異なり、施主の関心が低く、競争入札の対象になりやすい工種であることも、値上げが困難な理由となっています。

資材高騰対策の第一歩:取引先との関係構築

単価の値上げが難しい環境では、資材調達コストそのものを削減することが重要です。資材高騰対策として、以下の施策が効果的です。

資材メーカーとの直接取引

中間流通業者を経由するのではなく、資材メーカーとの直接契約に切り替えることで、仲介マージン分のコスト削減が可能になります。年間の発注量が安定している防水工事業者であれば、メーカー側も直接取引に応じやすくなります。

長期発注契約による単価固定

3年~5年の長期発注契約を資材業者と結ぶことで、価格変動リスクを最小化できます。短期の相場変動に左右されず、予測可能な原価構造が実現します。

複数資材の一括調達

ウレタン防水、シート防水、防水工事に関連する補助材(プライマー、シーラー材など)を同一業者から一括購入することで、ボリュームディスカウントを引き出せます。

効果は取引の量や条件で変わるので、取り組む前後の仕入単価を記録して確かめましょう。

工種多角化による受注機会の拡大戦略

屋上に水色の防水材をヘラで広げる職人の手元
屋上に水色の防水材をヘラで広げる職人の手元(イメージ)

防水工事と親和性の高い工種への進出

資材高騰対策だけでは、経営の安定化には不十分です。防水工事単価が上昇する中で、限定された仕事量の中で利益を確保することは困難です。そこで必要となるのが工種多角化です。

防水工事業者が参入しやすい関連工種は以下の通りです。

塗装工事

防水工事と塗装工事は、施工対象(屋根、外壁、基礎など)が重複することが多く、両工種に対応できる技術者がいれば、同一顧客から複数工種の受注が実現します。ただし、塗装工事は防水工事とは別の許可業種です。1件 500万円以上(税込)の塗装工事を請け負うには、塗装工事業の許可が要ります。

外壁補修工事

外壁のひび割れやシーリング補修は、防水工事と並行して発注されることが多い工種です。防水工事の現場調査時に外壁の補修ニーズを発見し、追加受注に繋げるクロスセリングが可能になります。

屋根工事

屋根防水工事を得意とする業者であれば、屋根瓦の葺き替え、屋根板金工事など、関連する屋根工事への進出が自然な流れです。屋根工事も別の許可業種(屋根工事業)なので、500万円以上の工事を請け負う前に許可を取りましょう。

リフォーム営業の強化

一棟単位のリフォーム工事では、防水工事と他工種が組み合わされるため、防水工事だけで参入するよりも、複数工種で応札することで競争力が高まります。

具体例:住宅から鉄骨造まで対応する防水・塗装業者の戦略

実際に成功している防水工事業者の事例として、住宅だけでなく鉄骨造の商業施設まで対応する業者があります。この業者は、防水工事の基本技術を持ちながら、塗装工事(鋼構造塗装)の技術を習得することで、以下のような大型案件を受注しています。

  • 商業施設の屋上防水工事 + 外壁鋼板塗装
  • 工場建屋の屋根防水 + 躯体鋼構造塗装
  • 住宅団地の全棟防水リニューアル + 外壁塗装

複数の工種をまとめて請け負えることは、発注者にとっての手間の削減になり、競争力につながります。

建設業許可・法令遵守による倒産リスク管理

建設業許可の不正取得事件と法令遵守の重要性

常勤していない人を常勤として申請書類に書き、建設業許可を不正に取得した業者が摘発される事例があります。

建設業法では、許可申請時に以下の要件を満たすことが義務付けられています。

  • 経営業務の管理責任者等(常勤役員等)の配置
  • 専任技術者(2024年12月から営業所技術者)(防水工事業なら、1級・2級建築施工管理技士(仕上げ)や防水施工技能士などの資格、または防水工事の実務経験10年など)の配置
  • 請負契約に関して不正・不誠実な行為をするおそれがないこと(誠実性)
  • 財産的基礎(一般建設業なら自己資本500万円以上など)と、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入

これらの要件を偽って申請した場合、建設業許可の取り消し(建設業法第29条・取り消された後5年は許可を受けられない)と、6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(第50条)の対象になります。公共工事では、発注者ごとの要領による指名停止も受けます。

倒産リスク管理としての法令遵守

資材高騰で経営が苦しくなると、次のような法令違反に陥りやすくなります。

過度な価格ダンピング

赤字受注によって生じた現金流出を補うため、別案件で過度なダンピングを行い、下請業者のしわ寄せが発生。下請代金の支払いの遅れが常態化し、建設業法(第24条の3・第24条の6)の違反へ発展。

安全管理の手抜き

人員削減により現場監督が不足し、労働安全衛生法に基づく防水工事の安全対策(特に屋上・高所作業)が不十分に。労災事故が発生した場合、企業の刑事責任と経営破綻が同時進行。

許可要件の維持不足

経営難により、専任技術者が離職してもポストを埋められず、許可要件を満たさないまま営業を継続。許可要件を欠くと許可は取り消されます(第29条)。取り消しの前に契約した工事は続けられますが(第29条の3)、注文者に2週間以内に通知が要り、新しい受注はできなくなります。

これらのリスクを防ぐため、倒産リスク管理の観点から法令遵守体制の強化が不可欠です。

実務的な法令遵守チェックリスト

防水工事業者が毎年確認すべき法令遵守項目は以下の通りです。

  • 建設業許可の有効期間確認(5年ごとの更新)
  • 専任技術者の資格・常勤性の確認(退職予定者の後任確保計画)
  • 下請代金支払状況の記録(建設業法第24条の3)
  • 労災保険・雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入状況(健康保険などの加入は許可の要件)
  • 安全衛生教育の実施記録(毎年度実施)
  • 欠格要件に当たっていないか(役員などが罰金以上の刑を受けていないか・第8条)

これらを組織的に管理することで、経営危機が生じた際の法的リスクを最小限に留めることができます。

防水工事業者が今から実行すべき三つの経営施策

タブレットのグラフを前に向かい合って話す2人
タブレットのグラフを前に向かい合って話す2人(イメージ)

施策1:単価見直しと顧客コミュニケーション

資材高騰対策として、以下の方法で単価の引き上げに取り組むべきです。

既存顧客への事前説明

新規案件受注前に、資材費上昇分を単価に反映させることを説明し、顧客の理解を得ておく。「この秋から防水工事の材料費が●%上昇し、施工単価が見直されます」という事前案内が効果的です。

設計段階からのコスト提案

低価格の防水工法と高耐久の防水工法を提示し、ライフサイクルコストで顧客にメリットを説明する。単なる単価引き上げではなく、価値提供に基づく単価改定を実現します。

施策2:工種多角化の人材育成計画

防水工事技術者を塗装工事や外壁補修に対応できる人材へ育成するプロセスを構築します。

  • 年間2~3名の育成目標設定
  • 塗装技能講習の受講予算化(10~20万円程度)
  • 配置転換時の給与・処遇の明確化

これにより、3年後には複数工種に対応できる職人組織が実現し、受注機会が確実に増加します。

施策3:法令遵守体制の整備と経営健全化

建設業許可要件の維持と下請代金管理を優先課題とします。

  • 年1回の法令遵守監査を実施
  • 下請代金支払期限の厳守(注文者から支払いを受けた日から1か月以内・第24条の3、特定建設業者は引渡しの申出から50日以内・第24条の6)
  • 許可更新時期の3か月前から更新準備を開始

これら三つの施策を同時並行で進めることで、資材高騰時代でも安定経営が可能になります。

よくある質問

Q1. 防水工事の資材費が上昇している理由は何ですか?

アスファルト・ウレタン・シリコンなどの防水材料は石油製品が原料であり、国際的な原油価格上昇の影響を直接受けます。また、運送コストの増加や供給チェーンの混乱も単価上昇の要因となっています。定期的に相場情報を確認することが重要です。

Q2. 防水工事の単価上昇をどう見積書に反映させるべき?

従来の見積方式では対応困難なため、資材費変動条項の導入が有効です。2024年12月からは、価格の変動による請負代金の変更の方法を、契約書に書くことが求められています(建設業法第19条第1項第8号)。発注時と施工時の単価差の扱いをあらかじめ決めておくことで、急激な価格変動にも対応できます。

Q3. 防水工事費を抑える方法はありますか?

複数の資材メーカーの相見積、一括購入による数量割引、施工スケジュール最適化による工期短縮が有効です。また、適正工法の選択(例:低コスト工法への切り替え)も検討する価値があります。ただし品質低下は避けることが重要です。

Q4. 既存客との契約単価をどう調整すればいい?

急激な値上げは信頼を損なうため、段階的な引き上げが現実的です。資材費の上昇状況を客観的データで説明し、透明性を確保しましょう。長期取引先には値上げ幅を抑えるなど、関係性に配慮した対応が顧客維持につながります。

Q5. 防水工事の利益率を維持する経営戦略は?

原価管理の徹底、効率的な施工体制構築、職人の生産性向上が不可欠です。同時に、付加価値の高い防水工事(長期保証付きなど)の提案を強化し、単なる価格競争から脱却することで、持続可能な収益体質を実現できます。

まとめ

川沿いの街を見下ろすマンション屋上の防水面
川沿いの街を見下ろすマンション屋上の防水面(イメージ)

防水工事業者の経営が資材高騰の影響を受ける中で、生き残りの戦略は明確です。第一に、資材調達コストの削減と単価の適切な見直しにより、原価構造を改善することです。第二に、塗装工事や外壁補修など親和性の高い工種への進出により、受注機会を拡大し、限定された市場での過度な価格競争を回避することです。第三に、建設業許可・法令遵守体制を整備することで、経営危機に陥った際の法的リスクを最小限に留め、長期的な企業存続を確保することです。倒産が高い水準にある今のうちに、まずは自社の防水工事単価の現状分析と資材調達先の見直しから始めましょう。

出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」・労働安全衛生法(e-Gov 法令検索)(確認日 2026-10-02)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。

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この記事を書いた人

建設業許可(一般・特定)の新規取得・更新・業種追加から変更届・廃業届まで幅広い申請実務に精通した許可申請の専門家。国土交通省の法改正情報を継続的に追跡し、都道府県ごとの審査基準の違いや落とし穴を解説。経営事項審査(経審)・入札参加資格・財産的基礎要件の確認方法など、中小建設会社が直面する許可維持の課題に対応した情報を提供している。

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