「最近、付き合いのある業者が廃業した」「下請けを探しても断られることが増えた」——建設業界でこういった声が増えている背景には、統計データがある。帝国データバンクの最新調査によれば、2025年の建設業倒産件数は約2,000件規模に達し、「人手不足倒産」(113件・前年99件から増加)と「物価高倒産」(240件)が前年を上回った。本記事では、このデータが示す建設業界の構造的課題と、中小建設会社経営者が今すぐとるべき3つの経営対策を解説する。
帝国データバンク公表:2025年建設業倒産の詳細データ

帝国データバンクの各種発表資料をもとに、2025年の建設業倒産状況を整理する。
出典・参考URL:
- 帝国データバンク「建設業の倒産動向(2025年)」:https://www.tdb.co.jp/report/industry/1lm_mer_4e/
- 帝国データバンク「倒産集計2025年度報」:https://www.tdb.co.jp/report/bankruptcy/aggregation/20260408-bankruptfy2025/
- 帝国データバンク「全国企業 休廃業・解散動向調査」:https://www.tdb.co.jp/report/economic/20250919-closedown25y1-8/
- 2025年建設業倒産件数(概数):約2,000件規模
- 負債5,000万円未満の割合:57.7%(中小・零細の苦戦が顕著)
- 人手不足倒産:113件(前年99件、+14件)
- 物価高倒産:240件(資材・エネルギー高騰が継続)
- 休廃業・解散:建設業が業種別で最多水準(倒産件数を上回る)
特に注目すべきは「休廃業・解散が倒産件数を上回っている」点だ。倒産は債権者への負債が残る公的な手続きだが、休廃業・解散はひっそりと市場から消える。「消えたことさえ業界に知られないまま廃業する会社」が倒産の数倍存在するのが、2025年の建設業の実態だ。
倒産の主因3つ——人手不足・物価高・価格転嫁の遅れ

主因①:人手不足倒産の加速
建設業の2024年問題(残業規制)施行後、時間外労働の上限規制を遵守しながら工期を守ることが困難になった中小建設会社が増えた。受注できる工事量に対して人員が足りず、工期遅延→違約金・取引停止→資金繰り悪化のサイクルが発生した。2025年の人手不足倒産113件はこの流れを直接反映している。
主因②:物価高倒産——資材・エネルギー価格の高止まり
2022年以降の資材価格上昇は2025年も継続。鋼材・セメント・木材等の主要資材は2020年比で20〜50%以上高い水準が続いている。固定価格で受注した工事で採算が取れなくなり、工事完成を優先して赤字受注を続けた結果、資金が底をついて倒産するケースが多い。
主因③:元請への価格転嫁が進まない構造的問題
資材・人件費の上昇分を請負単価に転嫁するよう国は指導しているが、実態は元請からの圧力で値上げ交渉ができないケースが多い。建設業法第19条の2(見積・契約の適正化)違反に当たる場合も多いが、取引関係を壊せない下請業者は泣き寝入りする構図が続いている。
生き残る建設会社の共通点——データが示す5つのパターン

倒産・廃業が増える中でも業績を伸ばしている建設会社には、以下の共通パターンが見られる。
- ①特定専門業種に特化:電気・管・解体・リフォーム等のニッチ分野に特化し、競合が少ない領域でブランドを確立している
- ②許可業種の多角化:建設業許可の業種追加(28業種)により、受注できる工事の幅を広げている
- ③外国人技能実習生・特定技能の活用:人手不足を補うため、建設分野の特定技能1号・2号を積極的に活用している
- ④公共工事・元請比率を高める:民間工事の価格競争から脱し、経審を活用して公共工事の受注比率を高めることで利益率を改善している
- ⑤DX・ICT施工の導入:ドローン測量・BIM/CIMの導入で生産性を上げ、人員不足を技術でカバーしている
まとめ:今すぐとるべき3つの経営対策
| 経営対策 | 具体的なアクション | 優先度 |
|---|---|---|
| ①受注単価の見直し・交渉 | 現在の請負単価が資材・人件費上昇分を反映しているか確認。元請との価格交渉を文書化する | 最優先 |
| ②許可業種の追加・更新の確認 | 取得している業種で対応できない工事を逃していないか確認。業種追加申請で受注機会を拡大する | 高 |
| ③キャッシュフロー管理の強化 | 工事代金の回収サイクル・支払いサイクルを見直し、黒字倒産を防ぐための資金繰り表を作成する | 高 |
- 2025年の建設業倒産は約2,000件規模で、人手不足・物価高・価格転嫁の遅れが三重苦として経営を圧迫
- 表面に出ない休廃業・解散は倒産件数をさらに上回る——業界は今、静かな淘汰の局面にある
- 生き残るためには受注単価の適正化・許可業種の戦略的管理・キャッシュフロー強化の3点が急務
次のアクション:①直近3期の工事別原価と実際の請負単価を比較して採算が取れているか確認する ②建設業許可の業種リストを見直し、取得できていない業種がないか検討する
よくある質問
Q: 建設業で倒産が増えている主な原因は何ですか?
帝国データバンクのデータによると、主因は3つです。①建設業の2024年問題(残業規制)による人手不足の深刻化(人手不足倒産113件)、②2022年以降続く資材・エネルギー価格の高止まり(物価高倒産240件)、③元請への価格転嫁が進まない下請け構造の固定化です。この3つが複合的に中小建設会社の経営を圧迫しています。
Q: 建設業の倒産情報・許可情報はどこで調べることができますか?
倒産情報は帝国データバンク(https://www.tdb.co.jp/)や東京商工リサーチで調べることができます。取引先の建設業許可の有効性は、国土交通省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システムか、民間の建設業許可データベースサービスで検索できます。下請業者の選定時には、許可の有効期限・業種・大臣・知事許可区分を必ず確認することが重要です。

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