建設業における人手不足は、多くの企業経営者にとって深刻な課題です。その解決策として外国人労働者の雇用を検討する建設会社・工務店が増えています。しかし、外国人を雇用する際には「在留資格」という複雑な要件をクリアしなければなりません。特定技能と技能実習の違いを理解しないまま採用を進めると、建設業許可申請時の虚偽申請リスクや経営事項審査(経審)での不利益を招くことになります。実際に2024年、建設業法違反の虚偽申請で行政書士が書類送検される事件も発生しており、不適切な外国人雇用が企業の信用失墜につながった事例があります。本記事では、建設会社が必ず押さえておくべき在留資格の基礎知識から、実務的なチェックリストまで、わかりやすく解説します。
建設業における外国人労働者の現状と在留資格の重要性
建設業での外国人雇用が増加する背景
建設業は慢性的な人手不足に直面しており、令和8年(2026年)現在、多くの企業が労働力確保に奔走しています。国土交通省のデータによれば、建設業就業者のうち外国人労働者の割合は年々増加傾向にあり、特に土木・躯体工事の現場で需要が高まっています。
この背景には、以下の要因があります。
- 国内労働人口の減少
- 高齢化による職人不足
- オリンピック関連工事の終了後の需要調整
- インフラ整備・災害復旧工事の増加
しかし、外国人を雇用することは、単に人員を増やすだけではありません。在留資格という法的要件をクリアする必要があり、この手続きを誤ると建設業許可申請に支障が生じます。
在留資格が建設業許可申請に及ぼす影響
建設業許可申請時に申告する従業員情報は、経営事項審査(経審)の評価対象になります。虚偽や不適切な在留資格状況の申告は、以下のリスクを招きます。
- 建設業許可の取消し・失効
- 入札参加資格の削除
- 企業の社会信用の喪失
- 行政処分や罰金
2024年の横浜市の事件では、建設業許可申請書類に虚偽記載した行政書士が書類送検されており、企業側も共犯扱いされるリスクがあります。外国人労働者を雇用する際は、在留資格の確認と正確な申告が極めて重要です。
特定技能と技能実習の基本的な違いを理解する

!A bustling construction scene in Tokyo, Japan featuring cranes and buildings at dusk.
*Photo by sugar jet on Pexels*
特定技能(1号・2号)の要件と特徴
特定技能は、2019年4月に創設された在留資格で、「一定の専門性・技能を有する外国人」が対象です。建設業においても、2020年より特定技能として外国人労働者を受け入れることが可能になりました。
特定技能1号の主な要件:
- 対象職種:建設業では土木施工管理、鋼構造物工事、鉄筋施工、建築大工など14職種
- 雇用期間:最長5年(更新不可)
- 給与:日本人と同等以上の報酬
- 技能水準:技能試験合格またはJITCO認定訓練修了
- 日本語水準:日本語能力試験N4相当以上
- 雇用契約書の締結が必須
特定技能2号の主な要件:
- 対象職種:建設業では限定的(現在4職種のみ)
- 雇用期間:無期限(更新制限なし)
- 技能水準:実務経験10年相当以上
- 家族帯同が可能(配偶者・子ども)
特定技能は「即戦力」を想定した制度であり、企業側の負担が比較的少ないのが特徴です。ただし、適切な雇用契約書作成と給与管理が必須となります。
技能実習の要件と特徴
技能実習は、1993年から存在する在留資格で、「発展途上国への技術移転」を名目としています。建設業では受け入れが限定されていますが、型枠工・左官・防水工などの職種で活用されています。
技能実習の主な要件:
- 実習期間:最長3年(1号1年、2号2年)
- 給与:最低賃金以上
- 技能検定試験への合格が昇級要件
- 実習計画書の作成と認可が必須
- 監理組合の介入(直接雇用と組合管理の2パターン)
- 講習期間:入国後1ヶ月の座学・安全教育が必須
技能実習は、特定技能よりも受け入れ企業の責任が重く、実習計画の厳密な管理と定期的な指導記録が求められます。また、実習生からの失踪や低賃金問題なども社会的課題となっており、企業の信用管理が重要です。
両資格の比較表:
| 項目 | 特定技能 | 技能実習 |
|——|———|———|
| 目的 | 人手不足対策 | 技術移転 |
| 期間 | 1号:5年、2号:無期限 | 最長3年 |
| 給与基準 | 日本人同等以上 | 最低賃金以上 |
| 事前試験 | あり | なし(実習計画認可制) |
| 家族帯同 | 2号のみ可 | 不可 |
| 監理組合 | 不要 | 必須(管理型の場合) |
外国人労働者雇用時の在留資格チェックリスト
採用前に確認すべき5つの項目
外国人を採用する前に、以下の5項目を必ず確認してください。虚偽申請を防ぎ、経営事項審査での加点対象とするためにも、この段階での確認が重要です。
1. 在留資格の種類と有効期限の確認
採用候補者のパスポートと在留カードを確認し、以下をチェックします。
- 在留資格欄に「特定技能」または「技能実習」と記載されているか
- 有効期限が採用予定日以降も残っているか
- 就労制限の有無(「就労不可」の記載がないか)
建設業許可申請時には、全従業員の在留資格コピーを提出する場合があります。この段階で虚偽があると、後々大きな問題になります。
2. 技能水準の確認
特定技能の場合、以下の書類で技能水準を確認します。
- 技能試験合格証書
- JITCOが認定した訓練機関の修了証書
- 特定技能評価試験の成績表
技能実習の場合は、実習計画書と連携し、配置予定職種と実習生の技能が一致しているか確認が必須です。
3. 日本語能力の確認
特定技能1号の場合、以下の証明書類を確認します。
- 日本語能力試験(JLPT)N4合格証書
- 国際交流基金日本語基礎テスト合格証書
建設現場は安全指示が日本語で行われるため、言語能力の不足は重大事故につながります。N4レベル以上であることを書面で確認することで、後々のトラブルを防ぐことができます。
4. 労働条件通知書の作成と契約
特定技能の場合、以下をまとめた書面を交付することが義務です。
- 雇用契約の期間
- 賃金額と支払い方法
- 労働時間
- 退職金・有給休暇に関する事項
- 日本語の他、本人が理解できる言語で作成
これらが建設業許可申請時に確認されるため、言語面での配慮が経審加点にもつながります。
5. 在留資格外活動許可の有無確認
外国人が複数の職場で働く場合、在留資格外活動許可が必要です。建設業での専従性が求められる場合もあるため、採用前に他の職場との兼務状況を確認します。
虚偽申請を防ぐため、「当社での専従か兼務か」「兼務の場合、他職場の状況」について書面での申告を求めることをお勧めします。
採用後の継続的な確認事項
外国人労働者の雇用後も、以下の確認を定期的に実施してください。経営事項審査での信用性評価に影響します。
在留期限の更新案内
在留資格の有効期限は1年~5年で設定されています。期限切れ間近の従業員には3ヶ月前から更新手続きの案内を行い、期限内の更新を支援します。期限切れのまま就労させると、企業側も不法就労助長罪に問われる可能性があります。
労働条件の見直し
特定技能の場合、給与が「日本人と同等以上」という要件が変わらないか毎年確認します。建設業では日給制の企業も多いため、賃金台帳と給与額を照合し、基準をクリアしているか記録に残します。
安全教育と言語対応
建設現場での事故防止は企業責任です。外国人労働者に対しても、日本語または母語で安全教育を実施し、記録に残すことが重要です。これは経営事項審査の「安全性等」加点につながる可能性もあります。
虚偽申請のリスクと行政書士選定の重要性

!Builders working on bamboo scaffolding on a colorful building exterior.
*Photo by Warren Yip on Pexels*
実際の虚偽申請事例から学ぶ
2024年、横浜市都筑区の行政書士が建設業許可申請書類に虚偽記載した疑いで書類送検されました。この事件では、以下の問題が指摘されています。
- 従業員の技能資格を架空記載
- 経営事項審査に必要な書類の改ざん
- クライアント企業との共謀の可能性
この事件により、建設業許可申請時の資格審査が厳格化されました。現在では、提出書類の真正性確認がより詳細に行われており、外国人労働者の在留資格についても、入国管理局との照合が行われています。
行政書士選定時の確認ポイント
建設業許可申請や経営事項審査は、専門知識を要するため行政書士の支援を受けるケースがほとんどです。虚偽申請を防ぐため、以下の確認が必須です。
確認項目:
- 建設業法の知識がどの程度あるか
- 外国人雇用に関する相談実績
- コンプライアンス体制(書類確認の厳密さ)
- 経営事項審査での加点戦略の提案実績
- 複数社の事例における対応(個別対応力)
特に外国人労働者の在留資格については、入国管理法と建設業法の両分野の知識が必要です。「建設業専門」と「入国管理専門」の両方に精通した行政書士を選定することが、虚偽申請リスクを最小化する最良の手段です。
経営事項審査(経審)における外国人雇用評価
経営事項審査では、「経営管理体制」「技術者配置」「労働環境」などの観点から企業が評価されます。外国人労働者の適正雇用は、以下の加点対象になる可能性があります。
加点対象となる項目:
- えるぼし認定(女性活躍推進):女性外国人労働者の雇用
- 若年労働者確保(外国人技能実習生の育成)
- 安全性等(外国人向け安全教育の実施記録)
- 社会性等(多文化共生への取組み)
逆に、虚偽申請や不適切な雇用管理が発見された場合は、経審スコア全体が大幅に低下し、入札参加資格を失うリスクも生じます。
建設現場での外国人労働者の安全管理と言語対応
言語の違いによるリスク管理
建設現場では、「高所作業」「重機操作」「足場作業」など危険性が高い業務が多数あります。2024年、山口県柳井市で足場崩落事故が発生し、複数の労働者が負傷する事例が報道されました。外国人労働者が言語障害から安全指示を正確に理解できず、事故につながるケースは増加傾向にあります。
言語対応の実装方法:
- 安全指示を「やさしい日本語」で作成し、図解化する
- 母語での安全教育動画を準備(YouTubeなどで配信)
- 工事現場に多言語標識を
よくある質問

!Black and white image of workers on a steel grid at a construction site.
*Photo by Soner Arkan on Pexels*
Q1. 特定技能と技能実習の違いは何ですか?
技能実習は発展途上国への技能移転を目的とし、最大3年間です。特定技能は人材不足分野で即戦力を受け入れる制度で、特定技能1号は最大5年間、2号は長期就労が可能です。給与や福利厚生の扱いも異なります。
Q2. 建設業で外国人を雇う場合、どの資格が必要ですか?
建設業は特定技能1号・2号の対象職種です。型枠大工や鉄筋工などは特定技能2号の対象で、より長期雇用が可能です。技能実習からの移行もできます。事前に職種要件を確認してください。
Q3. 在留資格の確認に必要な書類は何ですか?
パスポート、在留カード、在留資格認定証明書を確認します。有効期限切れがないか、許可条件に労働制限がないかを確認が重要です。健康診断結果の提出も必要な場合があります。
Q4. 特定技能の労働者を採用する際の手続きは?
登録支援機関との契約、雇用契約書作成、入国手続きが必要です。建設業では特に安全教育、給与管理、帰国時の費用負担など、法令で定められた支援義務を果たす必要があります。
Q5. 給与は日本人と同額にする必要がありますか?
特定技能・技能実習ともに、同じ仕事なら同一賃金が原則です。労働条件は労働基準法に基づき、日本人労働者と同等以上である必要があります。明細書は日本語で交付してください。

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