「見積もりを出しても利益が残らない」「工事のたびに資材単価が変わって予算が立てられない」——こうした悩みを抱える中小建設会社の経営者は、2024年以降さらに増えています。セメント・鉄筋・木材という建設業の三大基礎資材はいずれも高止まりを続けており、「いつ落ち着くのか」という見通しなしには資金計画も立てられないのが実情です。本記事では2026年現在の資材別価格動向と、今後の見通し・経営者が取るべき具体的対策を整理します。
セメント・鉄筋・木材——2026年の価格はどこまで上がったか
国土交通省・建設工事施工統計および日本銀行の企業物価指数(2026年公表値)によると、主要資材は軒並み2021年比で大幅な高騰が続いています。
セメント・生コン
生コンクリートの価格は、2020年から2026年にかけて全国平均で約20〜30%上昇しています。エネルギーコスト(石炭・重油)の高騰がセメント製造コストに直接影響しており、燃料費が落ち着いても流通コストや労務費の上昇分がそのまま価格に転嫁されているため、下落に転じる局面が見えていません。
鉄筋・形鋼(鋼材)
異形棒鋼(D13〜D25)を代表とする鉄筋は、2022年後半に一度ピークを迎えたのち2023年に若干調整しましたが、2024年以降は再び上昇基調にあります。中国の鋼材余剰問題でアジア市場が荒れたことに加え、国内高炉各社がインフラ需要増を見越して在庫を絞っているため、需給は逼迫した状態が続いています。2026年現在も2021年比で40%超の高水準で推移しています。
木材(製材品・合板)
2021〜2022年の「ウッドショック」でピークを記録した木材価格は、2023年以降に輸入材が増加して一時緩和しましたが、2025年以降は円安進行による輸入コスト上昇で再び高止まりしています。国産材の供給量は増加傾向にあるものの、加工・物流の人手不足が流通コストを押し上げており、住宅・木造建築向け製材の仕入れ価格は依然として2021年比で20%前後の高水準です。
建設資材が高騰し続ける5つの根本要因【2026年現在】
「なぜこれほど長く続くのか」を理解するには、単なる需給問題ではなく、複数の構造的要因が重なっていることを把握する必要があります。
- 円安の長期化:輸入資材(木材・銅・石油系製品)のコストが為替で直撃。2024〜2026年の円安水準(135〜155円/ドル)は、輸入建材の価格を構造的に押し上げています。
- エネルギーコスト高止まり:中東情勢の不安定化と天然ガス・石炭の高値継続が、セメント製造・鉄鋼製造・輸送コストのすべてに影響しています。
- ナフサ(石化原料)不足:塩ビ管・断熱材・塗料などの石油化学系建材は、ナフサ(原油精製の副産物)の不足と価格高騰により高止まりが続いています。
- 労務費・物流費の上昇:建設業の人手不足は深刻で、現場作業員・運転手の賃金が上昇。材料費以上に労務費が収益を圧迫しているケースも増えています。
- 国内インフラ需要の増加:能登半島地震の復興工事・北陸新幹線延伸・大阪万博後の再開発需要が重なり、国内建設需要は2026年も旺盛な状態が続いています。需要が高い限り、資材価格は下がりにくい構造です。
2026年後半〜2027年の見通し——いつ落ち着くのか
資材価格が「急速に下落する」シナリオは、2026年現在においては想定しにくい状況です。各資材の見通しを整理します。
セメント・生コン:2026年後半も横ばい〜緩やかな上昇
セメントメーカー各社はエネルギーコストの回収を継続しており、価格を引き下げる余力は乏しい状況です。インフラ工事需要が続く限り、生コン単価の大幅な下落は見込めません。2026年内に2021年水準に戻ることはほぼないと専門家は見ています。さらに2026年5月以降、骨材(砂利・砕石)を運搬する船の重油不足による生コン生産停止リスクが顕在化しており、「価格の問題」から「供給の問題」へと質的に変化しています(日経ビジネス 2026/4/3)。
鉄鋼・鉄筋:中国市場の動向次第で変動リスク大
中国の鋼材過剰生産問題が落ち着けば、アジア市場全体の価格が下落する可能性があります。一方で日本国内では2027年以降も都市部の再開発・物流施設建設が続く見通しで、需要面での下支えが強い状況です。国内電炉メーカーの電力コスト問題も残っており、2026~2027年は「乱高下のリスクがある横ばい」と見るのが現実的です。なお、JFEスチールは2026年5月の広報でイラン情勢による月100億円規模の追加コスト負担を公表し、2026年7月から鋼管価格を+10%値上げすることを発表しています(出典:ITmedia 2026/5/28)。この動向は国内鋼材価格全体の底上げにつながるため、単純な「横ばい」予測には上振れリスクが加わっています。
木材:国産材活用で2027年以降に緩和の余地
林野庁の「国産材供給倍増計画」が2025~2027年にかけて本格化しており、国産材の流通量は増加傾向にあります。円安が修正された場合、輸入材価格の低下と重なって2027年以降に価格が緩和される可能性があります。ただし、円安が続く限りは輸入材の高止まりが続くため、2026年中の大幅下落は期待しにくい状況です。
2026年5月——中東情勢が「第2波」をもたらした
2026年2~3月、イランと周辺国との軍事的緊張が急激に高まり、世界の石油輸送の絀20%が通過するホルムズ海峡での輸送リスクが顕在化しました(業界では「ホルムズインフレ」と呼ばれています)。この「第2波」は、2024~2025年に形成されていた「価格の落ち着き始め」という期待を一変させ、建設業界は再び価格上昇と供給リスクの二重の問題に直面しています。
- JFEスチール(2026年5月公表):イランへの制裁強化と中東からの原料調達コスト増加により、月100億円規模の追加コスト負担が発生。2026年7月から鋼管価格を+10%値上げすることを発表(出典:ITmedia 2026/5/28)
- 住宅建材・全メーカー(2026年5月):ナフサ不足の影響を受け、防水シート・塗料・断熱材など住宅建材全般で前年比+15%の一斉値上げを発表
- 建築資材卸(株)高木(神奈川)(2026年5月公表):ナフサ不足による仕入れコスト急騰を直接原因として破産申請。建材卸として業界初のナフサ起因破産事例(出典:東京商工リサーチ 2026/5/28)
この「第2波」が意味するのは、「いつ落ち着くか」という問いへの答えが変わったということです。以前は「エネルギーコスト・円安・人件費が落ち着けば」という前提でしたが、2026年以降はイランとの和解交渉・ホルムズ海峡の安全確保という地政学的問題の解決が前提条件になりました。経営計画は「中東情勢が続く限り高止まりが続く」という前提で再設定することが必要です。
資材高騰下で利益を守る経営者の具体的対策3選
「いつまで続くかわからない」からこそ、待ちの姿勢では利益が守れません。以下の3つの対策は、規模を問わず今すぐ実行できるものです。
- 見積もり有効期限の短縮と資材費変動条項の明示:見積書の有効期限を従来の30〜60日から14日以内に短縮し、「資材価格が〇%以上変動した場合は協議のうえ見直しを行う」旨の条項を必ず明記します。国土交通省が推奨する「スライド条項」(公共工事向け)の考え方を民間工事にも取り入れることが重要です。
- 資材の先行発注・複数業者確保による調達リスク分散:着工から2〜3ヶ月先の資材を先行発注する「フォワードバイイング」を取り入れることで、価格高騰時の調達コストを抑えられます。また、主要資材の仕入先を1社に集中させず、複数の代替業者を確保しておくことで交渉力が高まります。
- 代替資材・省資材工法の採用で原価を構造的に下げる:鉄筋の使用量を最適化する構造計算ソフトの活用や、断熱材のグラスウールから高性能国産材への切り替えなど、「使う量を減らす」または「代替品を採用する」工法改善が、長期的には最も有効な対策です。
まとめ——建設資材高騰と上手く付き合うための3原則
| 資材 | 2026年の状況 | 2027年の見通し | 経営者が取るべき対応 |
|---|---|---|---|
| セメント・生コン | 2021年比+20〜30%で高止まり | 横ばい〜微増 | 見積有効期限短縮・変動条項明示 |
| 鉄筋・形鋼 | 2021年比+40%超・乱高下リスク | 中国市場次第で変動大 | 複数仕入先確保・先行発注活用 |
| 木材・合板 | 円安継続で高止まり | 国産材増加で緩和余地あり | 国産材切り替え・省材工法検討 |
| 石油系建材(塩ビ管等) | ナフサ高騰で高水準 | 原油次第で変動 | 代替材検討・早期発注 |
- セメント・鉄筋・木材はいずれも2026年内に大幅下落する見通しは薄く、「高騰が続く前提」で経営計画を立てることが必要です。
- 対策の核心は「契約条件の見直し(変動条項)」「調達先の多様化」「代替材・省材工法の採用」の3点です。
- 見通しの悪い時期こそ、建設業許可情報を活用した信頼できる下請業者・調達先の確保が経営安定の鍵になります。
よくある質問
Q: 建設資材の高騰はいつ収まる見込みか?
2026年5月現在、「ホルムズインフレ」と呼ばれる中東情勢の急変により、従来の見通しは根本的な見直しが必要な状況です。セメント・鉄筋は「横ばい~微増」どころか2026年5月以降に追加値上げ(JFE鉄鋼:7月から鋼管+10%、住宅建材:+15%一斉値上げ)が発表されており、落ち着きの兆しは見えません。本格的な価格下落はイラン情勢の解決・ホルムズ海峡の安全確保という地政学的問題の解決が前提条件になりました。経営計画は「中東情勢が続く限り高止まりが続く」という前提で再設定することを強くお勧めします。
Q: 資材高騰分を発注者に価格転嫁できない場合はどう対処すればよいか?
既契約で変動条項がない場合は、まず発注者との協議を申し入れることが第一歩です。国土交通省の「建設工事における資材価格高騰への対応」ガイドラインでは、民間工事においても「著しい価格変動が生じた場合の請負代金の変更協議」を当事者に促しています。協議が難航する場合は、建設業法第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)の観点からも、業界団体への相談や弁護士・行政書士への早期相談が有効です。

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