【2026年5月現在の状況】令和6年改正建設業法(法律第49号)の主要規定は2025年12月に施行完了しました。経営業務管理責任者の要件(ルートA・B・C)の骨格に変更はありませんが、証明書類の変更(健康保険被保険者証の廃止)と、審査での実態重視化が実務に影響しています。詳細は本記事の「令和6年改正後の実務変化点」セクションをご確認ください。
令和6年改正建設業法の施行が完了した今、経管体制を総点検する
令和6年改正建設業法の主要規定が2025年12月に施行完了した。「令和2年改正の対応は済んでいる」という会社でも、令和6年改正後の許可申請で審査書類の変更に対応できていないケースが増えている。経営業務の管理責任者に関する要件——ルートA・B・C——の骨格は令和2年と変わらないが、証明書類の見直しと実態重視の審査運用変化は見落とせない。自社の経管体制を2026年版の視点で総点検する。
経営業務管理責任者とは何か——2020年改正で何が変わったか
建設業許可を取得・維持するには、「経営業務の管理責任者(経管)」の要件を満たす役員等を常勤で配置する必要がある。2020年(令和2年)10月施行の改正建設業法で、それまでの硬直的な要件が大きく柔軟化された。
2020年以前の問題点
2020年改正以前、経管になれる人物は「許可を取得しようとする業種で5年以上の経験を持つ役員等」に限られていた。このため、以下のようなケースで許可取得が困難だった。
- 土木と建築の両方で許可を取りたいが、どちらかの業種経験が5年に満たない
- 創業者が引退し、後継者がまだ経験年数を満たしていない
- M&Aで事業承継したが、新経営陣に建設業経験がない
2020年改正で導入された3つのルート(ルートA・B・C)
令和2年改正では、経管の要件が「組織としての経営管理体制」を問うものに転換され、以下の3ルートが設けられた。
ルートA:役員等としての経験(5年以上)
建設業に関し、役員等(取締役・業務執行社員・執行役等)として5年以上の経験を有する者が在籍している場合。業種の縛りがなくなり、建設業全般での役員経験があれば認められる。
| 確認書類の例 | 備考 |
|---|---|
| 法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書) | 役員就任期間の確認 |
| 建設業許可通知書・決算変更届 | 過去の建設業者であった証明 |
| 常勤確認書類(社会保険等) | 健康保険証廃止後は代替書類が必要(後述) |
ルートB:執行役員等としての経験(5年以上)
役員等ではないが、建設業の財務管理・労務管理・業務運営のいずれかに関し、5年以上の業務経験を持ち、かつ役員等を補佐する地位にある者。取締役でなくても、実質的な経営管理に携わってきた部長・執行役員クラスが該当しうる。
ルートC:補佐者設置による対応
役員等のうち建設業の財務管理・労務管理・業務運営のそれぞれについて、5年以上の経験を持つ「補佐者」を置くことで要件を満たす方法。後継者が経営経験を積んでいる最中でも、各分野の補佐者を社内で確保できれば許可を維持できる。
ポイント:補佐者は1人が複数の分野を兼任することも可能。ただし、財務・労務・業務運営の3分野すべてをカバーする必要がある。
2020年→2024年→2026年:要件変遷まとめ表
令和6年改正を含む要件変遷を時系列で整理する。
| 時期 | 改正内容 | 実務への影響 |
|---|---|---|
| 2020年10月(令和2年改正施行) | 経管要件の柔軟化。ルートA・B・C導入。業種縛りの撤廃 | 許可取得のハードルが大幅に低下。後継者問題・M&A対応が容易に |
| 2024年9月(令和6年改正・第1弾施行) | 「経営業務の管理責任者に関する規定」の改正施行 | 経管要件の審査で「施工実績」「利益管理経験」「労務管理経験」などの実質的な経営経験が重視される運用へ |
| 2024年12月 | 健康保険被保険者証の廃止(マイナ保険証移行) | 常勤確認書類として健康保険証が使えなくなった。代替書類の準備が必要 |
| 2025年12月(令和6年改正・全規定施行完了) | 許可要件の整備・処遇確保の努力義務化等が施行 | 令和6年改正のすべての主要規定が効力を持った状態になった |
令和6年改正後の実務変化点——2026年の申請で注意すべきこと
変化点1:常勤確認書類の変更(健康保険証廃止)
2024年12月に健康保険被保険者証が廃止されたため、経管の常勤確認書類として健康保険証を使う方法が利用できなくなった。2026年現在の申請では以下の代替書類を準備する。
- マイナンバーカード(健康保険証利用登録済みのもの)の写し
- 健康保険資格確認書(各健康保険組合・協会けんぽが発行)
- 社会保険料の領収書・納入告知書(会社の社会保険加入証明を兼ねる場合)
都道府県によって認める書類の細目が異なるため、申請先の手引き(最新版)を必ず確認すること。
変化点2:実態重視の審査運用
令和6年改正では「単なる在籍期間」ではなく、施工実績・利益管理経験・労務管理経験といった実質的な経営経験の内容が重視される審査運用が明確化された。経験期間の証明書類に加え、具体的な職務内容を説明できる体制を整えておくことが重要になっている。
変化点3:関連記事との併読を推奨
令和6年改正建設業法の全体像については、当サイトの以下の記事も参照されたい。
→ 令和6年改正建設業法 施行済み 東京都の建設業許可、あなたの会社は対応できていますか?
経管要件のよくある誤解と実務対応Q&A
Q:「経営業務管理責任者は廃止された」という話を聞いたが本当か?
A:正確には「廃止」ではなく「制度の柔軟化」。2020年改正で「経管を置く」という形式的な要件から「組織として経営管理体制を整えている」ことを証明する要件に転換された。経管という職名は現在も使われているが、特定の役職者1人を「経管」として届け出る旧来の形式とは異なる。
Q:後継者に建設業経験がほとんどない場合、どうすればよいか?
A:ルートCの補佐者設置が有効な選択肢。財務・労務・業務運営の各分野で5年以上の経験を持つ補佐者を社内に確保することで、後継者が経験を積む間も許可を維持できる。補佐者は必ずしも役員である必要はない。
Q:M&Aで会社を引き継いだが、前の経営陣の経験は引き継げるか?
A:引き継げない。経管の要件は「現在その会社に常勤している役員等の経験」に基づくため、前経営陣の経験を新経営陣が引き継ぐことはできない。M&A後は新経営陣が要件を満たすか、ルートCの補佐者設置で対応するかを検討する必要がある。
まとめ:2026年版の経管体制チェックリスト
令和2年改正・令和6年改正を踏まえ、自社の経管体制が現行基準に対応しているか以下のポイントで確認する。
- ルートA・B・Cのいずれかに該当する役員等・補佐者が常勤しているか
- 常勤確認書類として健康保険証を使っていた場合、代替書類(マイナ保険証等)に切り替えているか
- 申請先都道府県の最新の手引き(2024年12月以降更新版)を確認しているか
- 審査で職務内容を具体的に説明できる書類・体制が整っているか
- 後継者が要件を満たしていない場合、ルートCの補佐者設置を検討しているか
建設業許可の経管要件は、会社の規模・体制・将来計画によって最適なルートが異なる。自社の状況を専門の行政書士に相談し、令和6年改正後の基準に対応した体制を整えることを推奨する。

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