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建設会社の後継者不在問題——第三者承継(M&A)を選ぶ前に確認すべき5項目

ビジネス会議(建設業M&A・事業承継イメージ)

「子どもに継ぐ気がない。社内に適任者もいない。でも廃業するには許可もあるし、従業員もいる——」そんな状況で第三者承継(M&A)を検討し始める建設会社の経営者が増えています。帝国データバンクの調査では、建設業は全業種の中でも後継者不在率が高い業種の一つです。しかしM&Aは「相手さえ見つかれば終わり」ではなく、事前に確認しておかなければ交渉が白紙になるポイントが複数あります。本記事では、M&Aを選ぶ前に経営者が確認すべき5項目を整理します。

目次

建設業のM&Aが他業種と異なる理由【2026年版】

建設業のM&Aは、飲食業・IT業と比べて許認可に関する論点が多く、デューデリジェンスの内容も複雑になります。主な特徴は以下のとおりです。

  • 建設業許可は会社に紐付くが、許可の維持には経営業務管理責任者・専任技術者という「人」の要件が必須
  • 経審評点・入札実績は買収後に承継されるが、実績が引き継がれるかは発注機関によって異なる
  • 許可番号は適切な手続きを経れば引き継げるが、手続きを怠ると失効する
  • 一人親方・個人技能者など、個人に属する技術・人脈は移転が難しい

これらの特性を把握した上で、以下の5項目を事前に確認してください。

確認項目1:買い手側に経管・専任技術者の要件を満たす人材がいるか

建設現場(建設業M&A・対象企業評価イメージ)

株式譲渡型M&Aの場合、法人格は変わらないため建設業許可は自動的に維持されます。しかし代表者(経営業務管理責任者)が交代する場合、新代表が経管要件を満たしていなければ許可を維持できません

買い手候補を評価する際は、以下を確認してください。

  • 新経営陣に建設業の経営業務管理責任者要件(業種問わず5年以上の建設業役員経験等)を満たす人材がいるか
  • 現在の専任技術者が退職する場合、買い手側に後任の専任技術者を用意できるか
  • 複数の専任技術者が必要な業種構成の場合、全業種の後任を確保できるか

→ 経管要件の詳細は「建設業の経営業務管理責任者の要件が変わった——2020年改正後の対応策」を参照してください。

確認項目2:自社の企業価値(売却価格の目安)を把握しているか

ノートPC(建設業M&A・企業価値調査イメージ)

M&Aを急ぐあまり、適切な価格より大幅に低い金額で売却してしまうケースがあります。建設業の企業価値算定では以下の要素が重視されます。

評価要素具体的な内容
財務状態純資産額・直近3年の営業利益・借入残高
許可・資格特定建設業許可の有無・保有業種数・経審評点
受注基盤継続取引のある元請・公共工事の入札資格・民間顧客リスト
人材専任技術者・施工管理技士の資格保有者数・技能者の熟練度
設備・機械重機・特殊車両等の有無と状態

仲介業者やM&Aアドバイザーに相談する前に、顧問税理士と共に簡易的な企業価値試算を行うことをお勧めします。価格の目安がないまま交渉に入ると、買い手の提示額をそのまま受け入れるリスクがあります。

確認項目3:取引先・元請との関係が引き継げるか

打合せ(建設業M&A・取引先引継ぎ協議イメージ)

建設業の売上は特定の元請・発注者との継続関係によって成り立っていることが多いです。代表者が交代した後も取引が継続されるかは、買い手が最も重視するポイントの一つです。

M&A交渉を始める前に以下を整理してください。

  • 売上上位5社との取引は、代表者個人の人脈に依存しているか、会社として継続できる体制があるか
  • 公共工事の入札参加資格は会社に紐付くため、経審評点が維持されれば引き継げる(発注機関への届出が必要な場合あり)
  • 特定の元請から「代表者交代後は取引を見直す」と通告されるリスクがある取引先がないか

確認項目4:キーパーソンとなる社員・技術者の処遇を決めているか

M&A後に社内の重要人材が相次いで退職するケースがあります。特に建設業では、施工管理技士・一級建築士等の有資格者が退職すると専任技術者の要件が崩れ、許可維持に支障が生じます。

M&A前に確認すべき事項:

  • 専任技術者・主任技術者・監理技術者として届け出ている従業員は、新経営陣のもとでも継続雇用されることに同意しているか
  • キーパーソンに対して、雇用条件の維持・退職金水準を買い手側と交渉できる余地があるか
  • 「経営者が売却したら辞める」という意向を持つ幹部がいないか事前に確認しているか

確認項目5:売却後の自身の処遇と競業避止義務を確認しているか

M&Aの契約には競業避止条項が含まれることがほとんどです。売却後に同業種の会社を設立・経営することを一定期間(通常3〜5年)禁止する条項です。

確認しておくべきポイント:

  • 競業避止の期間・地理的範囲はどこまでか(全国禁止か地域限定か)
  • 売却後に買い手企業の顧問・役員として残る場合、その期間と報酬の条件
  • 売却後に別業種や関連事業を続けたい場合、競業避止の範囲に含まれないか

競業避止条項は内容によって、売却後の活動を大きく制限します。弁護士・M&Aアドバイザーと契約書を精査した上で合意することが必要です。

M&Aのおおまかな流れと所要期間

フェーズ内容目安期間
1. 事前準備財務整理・企業価値試算・M&Aアドバイザー選定1〜3ヶ月
2. マッチング買い手候補の探索・ノンネームシート送付・秘密保持契約3〜6ヶ月
3. 交渉意向表明書→基本合意書の締結1〜3ヶ月
4. デューデリジェンス買い手側による財務・法務・許認可の調査1〜2ヶ月
5. 最終契約・クロージング株式譲渡契約・代金決済・名義変更1〜2ヶ月

開始から完了まで最短でも6ヶ月〜1年程度かかります。「急いで売りたい」という事情がある場合でも、焦った判断は価格・条件の両面で不利になります。

→ M&A後の許可承継手続きは「許可番号を引き継げる?事業承継・M&Aで建設業許可はどうなるか」で解説しています。

まとめ

  • 建設業のM&Aは経管・専任技術者の要件が許可維持の鍵になる。買い手側にこれらを満たす人材がいなければ許可が失効するリスクがあり、買い手選定の際に最初に確認すべき項目。
  • 企業価値の試算・取引先の引き継ぎ可否・キーパーソン社員の処遇の3点は、交渉開始前に整理しておくべき。これらが不明確なまま交渉に入ると、買い手側の条件提示に対して判断できない状態になる。
  • M&Aには通常6ヶ月〜1年かかる。廃業期限・健康上の理由等で急ぐ場合でも、最低限の事前準備を怠ると安値売却・競業避止リスクを抱えることになる。

今すぐできる次のアクション

  1. 直近3期分の決算書と建設業許可証を手元に用意し、顧問税理士に簡易的な企業価値試算を依頼する。売却価格の目安を把握してから相談窓口に動くことで、初期交渉が有利になります。
  2. 後継者不在の決断をしているなら、今期中に建設業専門のM&A仲介業者または中小企業庁の事業承継・引継ぎ支援センターに相談する。センターは無料で相談を受け付けており、買い手候補の探索も支援しています。

よくある質問(FAQ)

M&A後も建設業許可は引き継げる?

はい、一定の要件を満たせば引き継げます。合併の場合は存続会社が許可を継承し、事業譲渡の場合は承継申請が必要です。後継会社が経営業務管理責任者・専任技術者の要件を満たすことが条件となります。

後継者が経営業務管理責任者の要件を満たさない場合は?

許可承継前に要件を満たす人物を採用するか、経営管理体制を整備する必要があります。要件を満たす人物がいない状態では許可承継が認められないため、M&A実施前に人材確保を行うことが重要です。

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