電子帳簿保存法(電帳法)の電子取引データ保存義務化から2年以上が経過しました。「うちはすでに対応済み」と思っている建設会社でも、税務調査が本格化する中で「やったつもり未対応」のケースが顕在化しています。また、令和7年度税制改正(2025年4月)では「請求書等を帳簿に自動連携する仕組み」という新制度が追加されました。本記事では、建設会社の経理担当者・経営者が今確認すべき最新の対応状況を整理します。
義務化から2年:電帳法対応は「準備期」から「維持・点検期」へ
電子帳簿保存法の現在地(2026年6月時点)
電子取引データの保存義務化は2024年1月1日から完全施行されており、それまでの宥恕措置(猶予措置)は終了しています。現時点で電子取引データを適正に保存していない事業者は義務違反の状態です。
電帳法は大きく3つの分野で構成されています。
- ①電子帳簿等保存:会計ソフト等で作成した帳簿・書類を電子データで保存する制度
- ②スキャナ保存:紙の書類をスキャンしてPDF等で保存する制度(一定の要件を満たす必要あり)
- ③電子取引データ保存:メール添付の請求書・PDFでの領収書等をデータのまま保存する制度(全事業者に義務化)
建設業では、電子発注・電子請求が普及しており、③の電子取引データ保存は特に影響が大きい分野です。国税庁Q&Aは2025年6月に更新版が公開されており、最新の解釈・対応例が盛り込まれています。
令和7年度税制改正で何が変わったか(2025年4月施行)

新制度:「請求書等を帳簿に自動連携する仕組み」の創設
令和7年度税制改正(2025年4月施行)で、電帳法に新たな仕組みが加わりました。それが「請求書等を帳簿に自動連携する仕組みを用いた保存方式」です。
これは、インボイス(適格請求書)等の電子データを会計ソフト・ERPシステムに自動取り込みし、帳簿に連携保存する仕組みを使った場合に、通常の電子取引データ保存要件の一部を満たすと認められる制度です。
建設会社への影響は以下の通りです。
- クラウド会計ソフトやERP系ソリューションで「インボイス自動連携」機能を使っている会社は、この新仕組みの対象となる可能性があります
- 逆に言えば、受け取ったPDF請求書をフォルダ保存するだけで終わっている会社はこの仕組みの対象外であり、通常の電子取引データ保存要件(検索要件等)を満たす必要があります
- 自社の会計ソフト・保存方法がこの新仕組みに対応しているかどうかは、ソフトベンダーまたは税理士に確認してください
建設会社によくある「やったつもり未対応」3パターン
パターン1:「フォルダ保存しているからOK」——検索要件が整っていない
電子取引データを単にPCのフォルダや共有サーバーに保存するだけでは要件を満たしません。電帳法では、電子取引データを「日付・金額・取引先で検索できる状態」で保存することが求められています(検索要件)。
ファイル名をルール化せず保存している場合、または検索システムを整備していない場合は「やったつもり未対応」に該当する可能性があります。ファイル名に「日付_金額_取引先名」を含める命名規則の導入か、会計ソフト上での保存管理への移行を検討してください。
パターン2:「スキャンして保存しているからOK」——タイムスタンプや解像度が未設定
紙の書類をスキャンして保存する「スキャナ保存」は、一定の要件を満たす必要があります。特に注意が必要なのは、タイムスタンプの付与(または一定の訂正削除防止措置)と、規定の解像度(200dpi以上が目安)です。
「スキャンしてPCに保存しているから大丈夫」と思っている担当者が多いですが、タイムスタンプや訂正削除防止措置を取っていない場合は要件を満たしていません。スキャン保存を使っている会社は、スキャン手順・保存要件を今一度確認してください。
パターン3:「会計ソフトで管理しているからOK」——設定が不完全で税務調査に対応できない
会計ソフトを使っていても、電子取引データの取り込み設定が不完全な場合があります。例えば、メールで受け取ったPDF請求書を会計ソフトに取り込まず担当者のPCに保存したままになっている、Excelで作成した支払証明書をデータとして適切に管理していないなどのケースです。税務調査では「全ての電子取引データが適切に保存されているか」が確認されます。例外的な取引や、特定担当者だけが受け取っているデータがないかを確認してください。
2026年版 対応確認チェックリスト(監査対応フレーム)
電子取引データ保存(義務)
- ☑ メール・クラウドで受け取る請求書・領収書等の電子取引データを全件保存しているか
取引先・担当者・受取チャネル(メール本文・添付ファイル・Web購買システム等)を網羅的にリストアップし、取りこぼしがないか確認します。 - ☑ 日付・金額・取引先名の3要素で検索できる状態になっているか
検索要件への対応状況を確認します。ファイル名命名規則または会計ソフトの検索機能のどちらかで対応してください。 - ☑ 訂正・削除を防止する措置が取れているか
タイムスタンプ付与、またはクラウドストレージ等による訂正削除履歴保持の設定状況を確認します。
スキャナ保存(任意だが利用時は要件適合が必要)
- ☑ 紙書類をスキャンして保存している場合、解像度200dpi以上を確保しているか
- ☑ スキャン保存書類にタイムスタンプが付与されているか(または同等の訂正削除防止措置があるか)
令和7年度改正・新制度対応
- ☑ 自社の会計ソフト・ERPが「請求書等帳簿自動連携」対応かどうか確認したか
ソフトベンダーに確認し、対応している場合は設定を行います。対応していない場合は通常の電子取引データ保存要件で対応を継続します。
内部体制・教育
- ☑ 電帳法対応の担当者・手順書を整備しているか
担当者が変わっても対応できる手順書の存在を確認します。 - ☑ バックアップ体制が整っているか(データ消失リスクへの対応)
電子取引データのバックアップ保存先・頻度・確認方法を定期的に確認します。
よくある質問

Q1. 宥恕措置(猶予措置)はもう完全に終わったのですか?
はい。2024年1月1日以降、電子取引データの保存義務化に関する宥恕措置は終了しています。現時点で電子取引データを適正に保存していない事業者は義務違反の状態です。
Q2. クラウドストレージ(Googleドライブ等)にPDFを保存するだけでよいですか?
保存先はクラウドストレージでも構いませんが、「保存するだけ」では要件を満たしません。日付・金額・取引先の3要素での検索ができる状態(検索要件)と、訂正・削除の防止措置(タイムスタンプ等)が必要です。ファイル名に命名規則を設けるか、会計ソフトでの一元管理に切り替えることを検討してください。
Q3. 建設会社で特に注意すべき電子取引のパターンはありますか?
建設会社特有の注意点として、①元請・下請間の電子発注書・注文請書、②資材業者からのPDF請求書、③工事代金の電子領収書、④外注費の支払証明書などが挙げられます。これらの書類がメール添付やWebシステム経由で受け取られている場合、全件が適切に保存・管理されているかを確認してください。
Q4. 令和7年度改正の「請求書等帳簿自動連携」は、どの規模の会社に関係しますか?
クラウド会計ソフトやERP等で「インボイスの自動取り込み・連携」機能を使っている会社が主な対象です。規模は問いませんが、中小建設会社でも会計ソフトのインボイス連携機能を活用していれば対象となりえます。詳細はご利用の会計ソフトベンダーまたは税理士に確認してください。
Q5. 電帳法違反が税務調査で発覚した場合のペナルティはどうなりますか?
電子取引データを適正に保存していない場合、青色申告の承認取消し(法人・個人事業主)や重加算税の対象となる可能性があります。また、電帳法上の不記録等への罰則(10万円以下の過料)もあります。建設業の場合、税務調査と行政処分の両面でリスクがあるため、対応の徹底が重要です。
まとめ
電子帳簿保存法は義務化から2年が経過し、対応は「準備フェーズ」から「維持・点検フェーズ」に移っています。令和7年度税制改正で「請求書等帳簿自動連携」という新制度も追加されたため、自社の保存体制・会計システムが最新の要件に対応しているかの確認が必要です。
建設会社でよく見られる「やったつもり未対応」3パターン(検索要件の不備・スキャン要件の不備・設定不完全)を今一度点検し、本記事のチェックリストを活用して対応状況を確認してください。不明な点は税理士・会計士等の専門家に相談することをお勧めします。
最終情報確認:2026年6月1日 国税庁 電子帳簿保存法Q&A(令和7年6月更新版)、令和7年度税制改正パンフレット(国税庁)に基づく

コメント