「残業が本当に減っているのか、正直わからない」──2024年4月に建設業への時間外労働上限規制が施行されて2年以上が経過した2026年、こうした声は現場から依然として聞こえてきます。規制施行後も、全国各地の建設会社では人手不足・資材高騰・発注者への工期交渉という三重苦が続いています。本記事では2026年現在の最新動向をもとに現状を整理し、経営者が今すぐ取るべきアクションを解説します。
建設業の2024年問題とは?上限規制の内容と罰則
2024年4月1日から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています。主な内容は以下のとおりです。
- 原則上限:月45時間・年360時間
- 特別条項(臨時的な特別の事情がある場合):時間外労働は年720時間以内・月45時間を超えるのは年6回まで。さらに休日労働を含めて、月100時間未満・2〜6か月の平均80時間以内
- 災害の復旧・復興の例外:災害の復旧・復興の工事では、月100時間未満と平均80時間以内の2つは適用されません(年720時間などは適用されます)
- 罰則:違反した場合は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(労働基準法第119条・2025年6月から懲役は拘禁刑)
5年間の猶予期間が終了し、施行から2年が経過した現在も、大手・中小を問わず同一ルールのもとで罰則は継続しています。
国土交通省は、長時間労働の是正と週休2日の確保に向けて、適正な工期の考え方を「工期に関する基準」として示しています。
参照:国土交通省「工期に関する基準」
施行2年後の現実:確認できる業界動向
規制施行から2年が経過し、建設業界ではいくつかの重要な動向が確認されています。
人材確保への危機感が続く
東日本建設業保証(東建)の新体制が2026年5月に発足し、「現場人材の確保に危機感」を表明しました。時間外労働の規制強化は採用競争を激化させており、若手の入職者確保が業界共通の課題となっています。
日建連が監理技術者制度の運用緩和を要望
日本建設業連合会(日建連)は2026年5月の関西地区意見交換会において、監理技術者制度の運用緩和を国土交通省に要望しました。上限規制により技術者一人が担当できる現場数が事実上制限される中、若手育成と現場体制の維持の両立が急務とされています。(建設工業新聞 2026年5月27日)
下請への「しわ寄せ防止」キャンペーンが継続
厚生労働省などは毎年11月を「しわ寄せ」防止キャンペーン月間とし、取引先への無理な短い納期の発注などをなくすよう呼びかけています。大企業・元請が働き方改革を進める中で、下請・一人親方への無理な短納期発注や急な仕様変更といった「しわ寄せ」が発生しやすい構造は依然として解消されていません。
参照:厚生労働省「しわ寄せ防止」特設サイト
資材価格の高止まりが工期を圧迫
2026年5月には、アスファルト合材価格が過去最高水準に迫る状況が続いていました(建設通信新聞 2026年5月30日)。工事原価の上昇と工期短縮のプレッシャーが残業増につながる悪循環は、規制施行後も続いています。
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施行後の実態を示す統計データは、国交省・厚労省がそれぞれ定期的に更新・公表しています。
- 適正な工期の考え方(国交省):国土交通省「工期に関する基準」
- 建設業への監督指導件数・送検件数(厚労省):厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和7年度の監督指導結果」
- 建設業の統計一覧(国交省):国土交通省 建設業関係統計一覧
書類送検された場合、会社名が公表されます。また、労働基準法違反で送検されると、公共工事の発注機関によっては指名停止の対象になります(経営事項審査で減点されるのは、建設業法による営業停止や指示の処分です)。取引先や発注者の信用にも関わるため、「まだ大丈夫だろう」という認識は非常に危険です。
2026年に経営者が直面する「三重の課題」
施行2年後の2026年、建設業経営者は時間外労働規制に加えて、以下の課題を同時に抱えています。
- 賃上げ圧力と残業削減の両立:残業代が収入の一部となっていた技能者の手取りを維持しながら残業を削減するには、基本給の引き上げが不可欠。人手不足の中で賃上げを実現できていない中小企業は対応が遅れがちになっている
- 資材高騰・工期の圧迫:2024〜2026年の資材価格上昇により工事原価が増大。工期短縮のプレッシャーが残業増につながる悪循環が続いている
- 下請への「しわ寄せ」問題:元請が週休2日を実施しても、下請・一人親方への無理な短納期発注が常態化しているケースもある。厚労省も「しわ寄せ防止」キャンペーンを継続している
経営者向け:今すぐ確認すべき5項目チェックリスト
以下の5項目を確認してください。1つでも未対応があれば即対応が必要です。
- 36協定(時間外・休日労働協定)を締結・届出している
- 特別条項を使う場合、年6回以内・月100時間未満・2〜6か月の平均80時間以内(休日労働を含む)を遵守している
- クラウド勤怠管理で実際の残業時間を月次で把握している
- 工程会議で工期の妥当性を定期的に見直している
- 下請業者への無理な短納期発注をしていない
今すぐできる時間外削減3ステップ
以下の3ステップを順番に進めましょう。
- 勤怠データの見える化:クラウド勤怠管理ツールを導入し、部署・現場別に残業時間をグラフ化する
- 工程計画の逆算設計:竣工日から逆算して各工程の工期を設定。「最初から無理な工期」を排除する
- 発注者への工期交渉:過去の実績データを根拠に工期延長を交渉するマニュアルを作成する
まとめ:施行2年後も「対応途中」では通用しない
- 建設業への時間外労働上限規制は2024年4月施行。2026年現在で施行2年以上が経過しており、違反は是正勧告や送検・罰金の対象になる
- 業界全体では人手不足・資材高騰・しわ寄せ問題が継続しており、国交省・厚労省による調査・キャンペーンも2026年時点で継続中
- 36協定の遵守と勤怠の見える化が最低限のライン。発注者への工期交渉を含めた構造的な対応が求められる
- 最新の数は国交省・厚労省の公表資料で確かめられる
よくある質問
Q: 36協定を結んでいない会社で、残業をさせるとどうなりますか?
36協定を結んで労働基準監督署に届け出ていないと、1分でも法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働かせることはできません。超えて働かせると労働基準法違反になり、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です。
Q: 災害の復旧工事なら、上限規制は関係ありませんか?
関係あります。災害の復旧・復興の工事で外れるのは、休日労働を含めて月100時間未満、2〜6か月の平均80時間以内の2つだけです。年720時間や、月45時間を超えるのは年6回までといった決まりは、ほかの工事と同じく適用されます。
Q: 一人親方や下請の職人の労働時間も、元請が管理する必要がありますか?
上限規制が直接かかるのは、それぞれの会社が雇う労働者です。ただし、元請が無理な短い工期で発注すると、下請の会社の労働者に長時間労働をさせることになり、建設業法でも著しく短い工期での契約は禁止されています(第19条の5)。工期は下請の働き方も含めて決めましょう。
建設業許可を持つ会社を都道府県で検索する:建設業許可データベースで探す
都道府県別の建設業情報・手続きガイド:都道府県別の建設業情報・手続きガイド
出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・労働基準法(e-Gov 法令検索)・厚生労働省「しわ寄せ」防止特設サイト(確認日 2026-10-02)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。
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