電子帳簿保存法の電子取引データ保存が義務化されて1年以上が経過した2026年現在も、「一応対応したが本当に要件を満たしているか不安」「担当者が退職して引き継ぎが不十分」という建設会社の声は多く聞かれます。2024年1月1日以降、電子データで受領・送付した書類はデータのまま保存することが義務になりました(猶予措置は2023年末で終了)。メールで送られてくる請求書・注文書・工事請負契約書も対象です。未対応のまま税務調査を受けると、青色申告の取消・追加課税のリスクがあります。本記事では、建設会社が最低限やるべき対応を具体的に解説します。
電子帳簿保存法の3制度と建設会社への影響
電子帳簿保存法には3つの制度があり、それぞれ義務・任意の区分が異なります。
| 制度 | 概要 | 義務/任意 |
|---|---|---|
| 電子帳簿保存 | 自社が会計ソフト等で作成した帳簿・決算書を電子データで保存する | 任意(紙保存でも可) |
| スキャナ保存 | 紙で受領した請求書・契約書等をスキャンして電子保存する | 任意(紙保存でも可) |
| 電子取引データ保存 | メール・クラウド・EDI等で受受領・送付した書類データをそのまま保存する | 2024年1月から義務 |
建設会社が今すぐ対応すべきは「電子取引データ保存」です。メールに添付されてきた請求書・注文書・見積書を印刷して紙で保管する方法は、2024年1月以降は原則として認められません。
電子取引データ保存の2つの要件

電子取引データを保存するには、国税庁が定める以下の2要件を満たす必要があります。
要件1:真実性の確保
データが改ざんされていないことを証明する仕組みが必要です。以下のいずれかで対応します。
- タイムスタンプを付与する(国税庁認定のタイムスタンプサービスを利用)
- 訂正・削除の記録が残るシステムに保存する(クラウドストレージの変更履歴機能等)
- 訂正・削除を防止する事務処理規程を備え付ける(最もコストがかからない方法)
要件2:検索要件
保存したデータを「日付・金額・取引先」の3項目で検索できる状態にする必要があります。ただし前々年の売上が5,000万円以下の事業者は検索要件が免除されます(税務調査の際に全データをダウンロードして渡せれば可)。
最も低コストな対応方法——事務処理規程の備え付け

真実性確保の中で最もコストがかからないのが、「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」の作成・備え付けです。国税庁がひな形を公開しており、自社の名称・規程名・日付を入れるだけで作成できます。
規程を備え付けることで、既存のフォルダ管理(フォルダ名に日付・取引先・金額を含める形式)での保存が認められます。高額なシステム導入は不要です。
| 対応方法 | コスト | 難易度 | 適している企業規模 |
|---|---|---|---|
| 事務処理規程の備え付け+フォルダ管理 | ほぼ無料 | 低 | 売上5,000万円以下の中小企業 |
| クラウドストレージ(変更履歴あり)の利用 | 月額数千円〜 | 低〜中 | すべての規模 |
| 電子帳簿保存対応の会計ソフト・文書管理システム | 月額1〜数万円〜 | 中 | 売上5,000万円超の中規模以上 |
建設会社で特に対象になりやすい電子取引

以下の取引は電子取引データ保存の対象になる可能性が高いため、自社の実態を確認してください。
- メール添付で受領する外注先・材料業者からの請求書
- メール・FAX(メールに添付したPDF)で送受信する工事注文書・発注書
- クラウドサービス(freee・マネーフォワード等)から発行・受領する電子請求書
- インターネットバンキングの取引明細データ
- 通販・Amazonビジネス等のオンライン購入領収書(PDF形式)
- 建設業許可申請用の財務諸表を会計ソフトから出力したデータ
一方、紙で受領した書類はスキャナ保存の対象であって電子取引データ保存の義務はありません。紙の請求書を受け取った場合は従来どおり紙のまま保管できます。
2024年1月以降の対応チェックリスト
| # | 確認項目 | 状況 |
|---|---|---|
| 1 | メール添付で受領している請求書・注文書のリストを作った | □ |
| 2 | 電子取引データ保存用のフォルダ(日付・取引先・金額を含む命名規則)を設定した | □ |
| 3 | 「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を作成・備え付けた | □ |
| 4 | 前々年売上が5,000万円超の場合、検索機能(日付・金額・取引先で絞り込み)が使える保存体制を整えた | □ |
| 5 | 担当経理担当者に電子保存ルールを周知した | □ |
| 6 | 2023年以前のデータも遡及して電子保存するか顧問税理士に確認した | □ |
まとめ
- 2024年1月から電子取引データの電子保存が完全義務化。メール添付の請求書・注文書を印刷して紙保管するだけでは要件を満たせなくなった。
- 最低コストの対応は「事務処理規程の備え付け+フォルダ管理」。国税庁のひな形を使えば社内規程を無料で作成でき、高額システム導入なしで要件を満たせる場合がある。
- 売上5,000万円以下の建設会社は検索要件が免除されるため、対応の難易度は低い。まず規程の備え付けと電子データ保存フォルダの整備から着手することを推奨する。
今すぐできる次のアクション
- 国税庁サイトから「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(ひな形)」をダウンロードし、自社名を入れて今日中に作成する。(国税庁:法令等>電子帳簿保存法関係のページに掲載)
- 顧問税理士に自社の保存状況を確認してもらう。2024年以前にメール添付で受領した書類が紙保管のままになっている場合、どこまで遡及対応が必要か確認してください。
よくある質問(FAQ)
紙の領収書は捨ててもいい?
スキャナ保存要件を満たした上で電子データ保存できれば紙の廃棄が可能です。ただし、スキャナ保存には「真実性の確保」(タイムスタンプ等)と「可視性の確保」の両要件を満たす必要があります。要件を満たさない場合は紙の原本保存が必要です。
建設業で電子帳簿保存法に対応しないとどうなる?
税務調査時に問題が発覚した場合、青色申告の取消しや加算税の対象となる可能性があります。また、2024年1月以降は電子取引データを紙に印刷して保存することが原則禁止となっており、対応が必須です。

コメント