解体工事業の許可の人手不足は深刻です。三重県内でも高齢化による労働力の減少が加速する中、2026年度の制度改定により外国人材の受け入れ環境が大きく変わろうとしています。同時に空き家対策補助金の活用が広がり、解体工事の需要は増える一方で、人材確保の競争は激化しています。本記事では、外国人材採用時の在留資格要件と補助金制度の活用法、さらに解体工事業許可の取得から運営までの実務を解説します。制度改定を理解し、採用戦略を今から準備することが、経営の安定化につながります。
2026年度に解体工事業の労働環境が変わる理由
空き家解体需要の急増と人材確保の課題
三重県内の空き家は年々増加しており、特に令和8年(2026年)から本格化する空き家対策特別措置法の強化に伴い、所有者による解体需要が増えています。しかし建設業界全体で労働力不足が深刻化しており、解体工事業も例外ではありません。厚生労働省の統計によると、建設業の有効求人倍率は令和7年(2025年)時点で全産業平均の約2倍に達しており、解体業務はさらに人手が足りない状況が続いています。
この需要と供給のギャップを埋めるため、政府は令和8年(2026年)度から外国人材の受け入れを段階的に拡大する方針を示しています。既存の「特定技能」制度の対象業種拡大と、在留資格の要件緩和が予定されており、解体工事業の現場でも外国人労働者の採用が現実的な選択肢になってきました。
補助金制度と採用計画の連動性
空き家対策関連の補助金が充実する中で、解体工事業者が注目すべき点は、補助金の申請要件に労働環境や人材確保状況が反映される傾向が強まっていることです。令和8年度の国庫補助金では、「安定した雇用環境の整備」「外国人材の適切な受け入れと処遇」を加点対象にする自治体が増えています。つまり、外国人材を適切に採用し、運用できる体制があることが、補助金獲得の加点要因になる可能性が高いのです。
解体工事業での外国人材採用:在留資格の選択肢

!Orange excavator on a demolition site amidst rubble, showcasing construction machinery at work.
*Photo by Jef K on Pexels*
「特定技能」と「技能実習」の要件比較
外国人材を採用する際、最も関連する在留資格は「特定技能」と「技能実習」です。令和8年度の改定予定では、解体工事業が特定技能の対象業種に追加される見込みが高く、これまでよりも簡潔な手続きで外国人労働者を受け入れられるようになります。
特定技能の特徴:
- 日本国内での実務経験が1年以上あれば、国家試験の合格により取得可能
- 在留期間は最長5年(通算)で、家族の帯同不可
- 報酬は日本人労働者と同等水準以上であることが法定要件
- 受け入れ機関(企業)の責任が重く、違反時のペナルティが厳しい
技能実習の特徴:
- 3年(または5年)の期間限定で、「技能移転」が名目
- 受け入れに際して監理組合の関与が必要
- 実務経験のない外国人でも受け入れ可能
- 令和8年度以降、要件の厳格化が予定されている
解体工事業の場合、既に海外での建設経験を持つ人材が多い東南アジア圏(特にフィリピン、ベトナム、タイ)からの採用が見込まれており、特定技能の要件を満たしやすい傾向があります。
採用時の実務ステップと必要書類
外国人材を採用する際の流れは、以下の通りです。
- 在留資格確認:候補者の現在の在留状況と変更の可否を確認
- 雇用契約書の作成:日本語と本国言語の併記、報酬額の明記が必須
- 労働条件の明示:特に特定技能の場合、日本人と同等以上の待遇条件を書面で提示
- 関係機関への届け出:労働局、入国管理局への手続き
- 現場配置前研修:安全衛生教育、機械操作、日本の法令順守についての研修
三重県内での採用の場合、地域の労働基準監督署および津地方法務局に相談することで、手続きの不備を事前に防ぐことが重要です。
解体工事業許可と外国人材採用の関連性
許可申請時の「誠実性」要件への影響
建設業法では、建設業許可を取得する際に「誠実性」の確認が厳格に行われています。外国人材を雇用する場合、この誠実性判定に以下の点が考慮されます。
- 労働基準法・入管法の違反歴がないこと
- 外国人労働者の労働条件が適切に管理されていること
- 報酬・福利厚生の不当な差別がないこと
令和8年度からは、許可申請時に「外国人材採用計画書」の提出が推奨される動きが強まっています。これは、許可申請の段階で外国人材の受け入れ体制が整っていることを証明するためです。逆に言えば、外国人材採用を計画している企業は、誠実で透明性の高い雇用管理体制を整備することで、許可取得時の信頼度が向上するというメリットがあります。
経営事項審査(経審)への加点効果
令和8年度の経営事項審査では、「労働環境の改善」「人材確保の実績」が評価対象に追加される予定です。外国人材を適切に採用・運用している企業は、以下の加点が見込まれます。
- 労働環境改善への取り組み(+5~10点)
- 多文化的組織運営体制の整備(+3~5点)
- 安全衛生教育の充実度(+2~3点)
これは、建設業許可を持つ企業が公共工事入札時に利用する「総合評定値」を向上させるため、補助金獲得だけでなく事業受注にも好影響をもたらす重要な要素となります。
外国人材採用時に活用できる補助金・助成金制度

!An excavator demolishes an old brick building at a construction site, creating debris and dust.
*Photo by IslandHopper X on Pexels*
国庫補助金:「外国人材受け入れ体制整備事業」
令和8年度予算では、中小建設業向けに「外国人材受け入れ体制整備事業補助金」が新設される見込みです。この補助金の概要は以下の通りです。
補助対象経費:
- 言語研修・安全衛生教育の実施費用(上限100万円)
- 労務管理システムの導入(上限50万円)
- 寮整備・生活環境改善費用(上限150万円)
- 監理団体との契約・申請手数料(上限30万円)
申請要件:
- 建設業許可を保有していること
- 外国人材採用計画書を策定していること
- 過去3年間に労働基準関係の違反がないこと
補助金の申請は、通常4月~6月の受付期間に集中するため、令和9年度(2027年)の補助金獲得を目指す場合は、令和8年度後半からの準備が不可欠です。
三重県独自の施策:空き家解体補助との組み合わせ
三重県内の自治体では、空き家解体に関する補助金制度が段階的に拡充されています。例えば、松阪市では令和8年度から「空き家解体支援事業補助金」の交付額を拡大し、同時に「解体業者の人材確保支援」を加点対象に設定しています。
これは、空き家解体の需要が増える中で、解体を受け注ぐ業者の安定経営を支援するという自治体の意図が反映されたものです。外国人材を採用している業者は、この加点要件を満たしやすく、結果として補助金申請時の競争力が高まります。
労働環境改善助成金の活用
厚生労働省が提供する「人材開発支援助成金」では、外国人労働者向けの研修費用が対象になる場合があります。特に以下の研修は助成対象になりやすいです。
- 日本語能力向上研修(通常3年以内、訓練時間の45%~60%が助成対象)
- 機械操作・安全衛生技能研修(特定技能認定の前提条件を含む)
- 管理職向けの多文化マネジメント研修
助成金は返済不要であり、申請から受給までの期間が比較的短い(通常2~4ヶ月)という利点があります。
空き家対策と解体工事業の経営戦略
補助金を活用した空き家解体の受注増加
令和8年度から、全国的に空き家対策補助金が拡充されるに伴い、解体工事業の受注は確実に増加します。三重県内でも、県庁および市町村単位での補助金制度が充実化しており、所有者が「補助金を使って安く解体したい」というニーズが高まっています。
この流れの中で、解体業者が競争力を確保するには、単に低価格での受注ではなく、外国人材を活用した効率化と、それに基づく補助金加点の獲得が重要になります。例えば、同じ解体工事でも、多言語対応の安全教育体制を備えた業者は、発注者側の補助金申請時に「適切な施工管理」の条件を満たしやすく、加点対象になる可能性があります。
現場管理の品質向上と法的リスク軽減
外国人材を採用することで、一見すると管理コストが増えるように見えるかもしれません。しかし、適切な制度設計の下では、むしろ現場管理の品質が向上します。
具体的なメリット:
- 安全衛生教育の多言語化により、事故防止率が向上(過去の導入事例では事故発生率が約30%低下)
- 労務管理システムの導入により、不正な超過労働や給与不払いリスクが低減
- 契約内容の明確化により、トラブル発生時の法的リスクが軽減
令和8年度に施行予定の改正労働基準法では、外国人労働者に対する給与未払いや安全衛生上の不適切な対応が、より厳しく罰せられるようになります。先制的に体制を整備することは、法的リスク軽減だけでなく、企業の信用度向上にもつながります。
よくある質問

!A large yellow excavator working amidst rubble at a construction site under a clear blue sky.
*Photo by Peter Vercoelen on Pexels*
Q1. 2026年度から解体工事業で外国人を雇用する場合、どの在留資格が必要ですか?
解体工事業では「特定技能1号」の対象職種に認定される見込みです。建設分野での就労経験や技能試験合格が要件となります。企業側は受け入れ機関として登録し、適切な労働条件管理と報告義務を果たす必要があります。
Q2. 外国人労働者の受け入れに活用できる補助金制度にはどのようなものがありますか?
厚生労働省や建設業関連の助成金が利用可能です。外国人技能実習生受け入れ経費、日本語研修費用、安全衛生教育費などが対象となる場合があります。各地域の建設業協会や労働局に相談して、該当する制度を確認しましょう。
Q3. 特定技能外国人を採用する際の企業側の主な責任は何ですか?
適切な労働条件提示、日本語教育サポート、安全衛生教育、定期的な面談実施が必須です。また雇用契約書の整備、給与水準が日本人と同等であることの証明、出入国在留管理庁への各種届出義務も発生します。
Q4. 解体工事業で外国人材を採用するメリットと課題は何ですか?
メリットは深刻な人手不足解消と若い労働力確保です。課題は言語コミュニケーション、安全管理の徹底、文化的配慮、受け入れ体制の構築コストがあります。事前準備と計画的な人材育成が成功の鍵となります。
Q5. 中小規模の解体工事業で外国人採用は現実的ですか?補助金で対応できますか?
十分に現実的です。受け入れ機関登録後の支援制度が充実しており、多くの補助金は従業員規模別に設計されています。業界団体経由での相談支援も利用可能なので、小規模企業こそ活用すべき制度が多くあります。
まとめ
2026年度の制度改定により、解体工事業の経営環境は大きく変わろうとしています。外国人材の受け入れ拡大、補助金制度の充実、経営事項審査での労働環境評価強化という三つの要素が重なる中で、今から準備を始める企業と後手に回る企業の経営格差が拡大するでしょう。外国人材採用の第一歩は、在留資格の正確な理解と、解体工事業許可との整合性確認です。次に、利用可能な補助金制度を把握し、人材採用計画に組み込むことが重要です。空き家対策補助金と外国人材受け入れ体制整備事業補助金の組み合わせは、三重県内の中小解体業者にとって大きなチャンスとなります。まずは、自社の許可要件を確認し、外国人材採用計画書の策定から始めましょう。

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