鳶職(とび職)の倒産が過去最多ペース110件|元請が備える5つの確認

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鉄骨の梁の下で単管を取り付ける職人

「来月の外壁工事、足場を頼んでいる鳶の会社から急に連絡が取れなくなった」。協力会社の鳶が倒れると、足場が組めず、後に続く塗装も屋根も止まります。東京商工リサーチの発表(2026年9月23日)によると、2026年1〜8月の鳶工事業の倒産は110件で、16年ぶりに100件を超え、過去最多のペースです。この記事は、鳶の会社に仕事を出している元請・工務店の経営者向けに、協力会社の倒産に備えて確かめる5項目と、代わりの会社を探す手順をまとめたものです。

目次

1. 何が起きているか|2026年1〜8月の鳶工事業の倒産110件を数字で見る

コーンと柵で囲った高架下の工事現場を見る人
コーンと柵で囲った高架下の工事現場を見る人(イメージ)

東京商工リサーチが2026年9月23日に発表した集計(負債1,000万円以上)では、鳶工事業の倒産は1〜8月で110件、前年同期より26.4%増えました。同じ期間で100件を超えたのは、リーマン・ショック後の2010年(101件)以来16年ぶりです。年間の過去最多は2010年の148件で、このままのペースなら2026年はそれを上回る見込みとされています。

原因は「売上不振」78件(70.9%)と「赤字累積」24件(21.8%)で、業績不振が9割を超えます。一方で「人手不足」による倒産は19件と前年同期(10件)の約2倍、「物価高」による倒産も9件(前年同期3件)に増えました。倒れた会社の規模は、資本金1,000万円未満が98件(89.0%)、従業員10人未満が101件(91.8%)と、小さな会社に集中しています。地域は大阪府11件、愛知県9件、神奈川県・千葉県・宮城県が各8件、東京都4件です。

背景にあるのは職人の不足です。建設躯体工事従事者の有効求人倍率は7.94倍(2026年7月)で、全業種平均の1.18倍を大きく上回ります。人を集めるために賃金を上げても、その分を請負代金に上乗せできない小さな鳶の会社が、仕事はあるのに利益が出ないまま行き詰まる、という流れです。

2. 協力会社の鳶が倒れると元請に何が起きるか|想定の例

ヘルメット姿の2人が現場で図面を確かめる
ヘルメット姿の2人が現場で図面を確かめる(イメージ)

以下は、よくある流れをもとにした想定の例です(千葉県内で住宅の外装リフォームを請け負う工務店A社・従業員12人という設定)。A社は10年来の付き合いの鳶B社に足場をほぼ全件任せていました。ある月、B社の社長から「職人が2人辞めて、来月の足場は組めない」と連絡が入り、その2週間後にB社は事業を止めました。A社では着工待ちの現場が3件止まり、塗装の協力会社にも待ってもらうことになりました。

A社が受けた影響は3つです。1つ目は工期の遅れで、施主への説明と契約上の対応が要りました。2つ目は前払いした足場代の一部が戻らなかったことです。3つ目は、急いで探した代わりの鳶が、とび・土工・コンクリート工事業の許可を持っているかどうかを確かめる時間が無かったことです。足場の組立・解体を請け負う工事は、請負代金が軽微な工事の範囲を超えれば建設業許可(とび・土工・コンクリート工事業)が要ります。許可を持たない相手に出してしまうと、元請側にも説明責任が生じます。

この例で見落としやすいのは、「兆候はあったのに、付き合いが長いから大丈夫と思っていた」という点です。倒産は突然に見えても、支払いの遅れや人の出入りに前触れが出ています。次の5項目は、そうした前触れを見逃さないための確認です。

3. 元請が協力会社の倒産に備える5つの確認

協力会社の鳶について、次の5項目を年に1回、そして支払いや人の動きに変化があったときに確かめてください。どれも相手を疑うためではなく、自社の現場を止めないための確認です。

  1. 建設業許可の業種と有効期間:とび・土工・コンクリート工事業の許可を持っているか、有効期間(5年)の期限が近くないかを確かめます。許可番号が分かれば、会社名で検索して当サイトの企業ページで許可の業種・許可日・所在地を見られます。
  2. 社会保険の加入:健康保険・厚生年金・雇用保険は建設業許可の要件です。未加入のままなら、許可の維持にも関わります。契約や更新のときに加入を示す書類をもらいます。
  3. 支払いと請求の変化:材料屋への支払いの遅れ、前払いや早期の支払いを求めてくる、請求書の金額や締めが不規則になる、といった変化は資金繰りの悪化の合図です。
  4. 職人の出入り:職長や中心の職人が辞めた、現場に来る顔が毎回違う、外国人材の受け入れ体制が急に変わった、などは「人手不足倒産」の前触れです。今回の集計でも人手不足倒産19件のうち従業員の退職が7件(前年同期3件)でした。
  5. 代わりの候補を先に持つ:1社に足場を全件任せている場合は、同じ地域で許可を持つ鳶の会社をあらかじめ2〜3社知っておきます。次の章の手順で候補を作れます。

4. 代わりの鳶を探す手順|県別のとび・土工・コンクリート工事業の一覧から候補を作る

倒産の連絡を受けてから探し始めると、許可の確認を省いてしまいがちです。平時に候補を作っておく手順は次のとおりです。当サイト「建設業許可DB」は、国の公開データをもとに有効な許可業者484,028社(2026年9月20日更新)を県別・業種別に一覧にしています。このうち、とび・土工・コンクリート工事業の許可を持つ会社は全国で185,393社(一般152,359社・特定33,034社)あり、今回の集計で倒産が多かった地域では大阪12,791社・愛知10,459社・神奈川9,435社・千葉6,852社・宮城3,775社が掲載されています(東京は13,119社)。

  1. 業種のページを開く:とび・土工・コンクリート工事業の許可業者一覧(全国)から、県を選びます。
  2. 現場のある県で絞る:例えば千葉県なら千葉県のとび・土工・コンクリート工事業の許可業者一覧を開きます。今回の集計で倒産が多かった大阪・愛知・神奈川・千葉・宮城は、代わりの候補を早めに持っておきたい地域です。
  3. 所在地と許可区分で候補を3社に絞る:現場から近い会社、一般・特定の区分、許可日を見て候補を3社ほど選びます。
  4. 企業ページで許可の内容を確かめる:許可番号・業種・所在地を見て、上の5つの確認のうち1と2を相手にも直接確かめます。
  5. 小さな現場で1度試す:いきなり大きな現場を任せず、小さな足場で段取り・安全管理・請求の正確さを見ます。

とび・土工・コンクリート工事業と解体工事業の許可の関係や、足場の会社を選ぶときの許可の見方は、「とび・土工・コンクリート工事業」と「解体工事業」を両方持つべき理由で詳しく説明しています。

5. 失敗しないための注意点|「付き合いが長い」を確認の代わりにしない

元請側でよくある失敗は3つです。1つ目は、長い付き合いを理由に許可や保険の確認を省くことです。今回倒れた110件の9割超は従業員10人未満の会社で、社長1人の判断で事業が止まります。2つ目は、代わりの会社を倒産の後に探し始めることです。急いで探すと、許可の業種を確かめないまま発注してしまいます。3つ目は、前払いや立て替えを重ねることです。相手の資金繰りを支えるつもりでも、倒産すれば戻りません。

相手の資金繰りの兆候をもう少し深く読みたい場合は、建設業の資金繰り危機を防ぐ5つの指標が参考になります。協力会社の側の事情を知っておくと、価格の相談を受けたときの判断もしやすくなります。

確認する項目確かめる先いつ
1 許可の業種と有効期間当サイトの企業ページ・国の検索システム・許可通知書契約時・年1回
2 社会保険の加入加入を示す書類(相手からもらう)契約時・更新時
3 支払いと請求の変化自社の支払台帳・材料屋からの話変化のたび
4 職人の出入り現場での顔ぶれ・職長への聞き取り現場ごと
5 代わりの候補県別のとび・土工・コンクリート工事業の一覧平時に2〜3社
元請が協力会社の鳶について確かめる5項目と確かめる先(2026年9月時点)

まとめ

  • 鳶工事業の倒産は2026年1〜8月で110件(前年同期比26.4%増)。9割超が従業員10人未満で、人手不足による倒産が前年の約2倍に増えた
  • 元請は「許可の業種と有効期間・社会保険・支払いの変化・職人の出入り・代わりの候補」の5項目を年1回と変化のあったときに確かめる
  • 代わりの鳶は、県別のとび・土工・コンクリート工事業の一覧から平時に2〜3社の候補を作り、小さな現場で1度試しておく

次のアクション

いま足場を任せている会社の許可番号を手元に出し、企業ページで業種と有効期間を確かめるところから始めてください。次に、現場のある県のとび・土工・コンクリート工事業の一覧を開き、代わりの候補を2〜3社選びます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 足場の組立だけを頼む場合も、相手に建設業許可が要りますか?
A. 請負代金が軽微な工事の範囲(建築一式工事以外は1件500万円未満)に収まる場合は、許可が無くても請け負えます。ただし軽微な工事かどうかは1件の契約ごとに決まり(正当な理由なく分けた契約は合計で判断)、規模が大きい現場では範囲を超えることが多いため、とび・土工・コンクリート工事業の許可を持つ会社に出すのが安全です。許可があれば社会保険の加入や経営の体制も一定の水準にあると判断できます。

Q2. 協力会社が倒産したとき、払った前払い金は戻りますか?
A. 戻らないことが多いと考えてください。倒産の手続きの中で他の債権者と同じ扱いになり、全額が戻る例はまれです。前払いや立て替えは最小限にし、出来高に応じた支払いに切り替えておくことが備えになります。判断に迷う場合は、取引先の状況を確かめたうえで専門家に相談してください。

出典:東京商工リサーチ「鳶工事業」が苦境、倒産が過去最多ペース(確認日 2026-10-02)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。

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この記事を書いた人

中小建設企業の経営改善・財務強化・事業承継を専門とするビジネスアドバイザー。建設業特有の下請管理・支払サイト問題・財務諸表の見方を中心に、経営基盤の強化につながる実務情報を発信。建設業の経審(経営事項審査)と公共工事受注の仕組み、労働環境改善・働き方改革対応の最前線情報にも精通。M&A・事業承継・廃業検討中の建設会社向け情報も担当。

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