建設業許可の取得や更新を検討している東京都内の建設会社にとって、ここ数年の制度の見直しは見逃せません。2023年7月の建設業法施行規則の改正で、営業所に置く技術者(旧 専任技術者)になれる人の幅が広がり、2024年12月の改正では名前が「営業所技術者等」に変わって、条件つきで現場の技術者を兼ねられるようになりました。一方で、無許可工事への罰則や週休2日の推進など、コンプライアンス面での要求は厳しさを増しています。この記事では、建設業許可申請にかかわる最近の改正と、東京都で申請する際に押さえておくべきポイントを解説します。よく混同される「2028年度までの経過措置」が何のことかや、許可取消のリスク要因、無許可工事の罰則まで、実務に直結する情報をお届けしますので、ぜひ最後までご確認ください。
営業所技術者(旧 専任技術者)の要件はどう変わったか
要件が広がった2つの見直し
営業所技術者(2024年12月までの名前は専任技術者)になるには、これまでどおり一定の資格か実務経験が必要です。そのうえで、2023年7月1日施行の建設業法施行規則の改正により、技術検定の第一次検定に合格した人の扱いが変わりました。1級の第一次検定に合格した人は合格後3年、2級の第一次検定に合格した人は合格後5年の実務経験で、指定学科の卒業でなくても営業所の技術者になれるようになりました(対象の業種は検定の種類で決まり、一部の業種は対象外です)。
あわせて、2024年度から施工管理技術検定の受検資格も見直されました。第一次検定は、1級は19歳以上、2級は17歳以上(どちらも受検する年度の末の時点)であれば、実務経験なしで受けられます。若手の技術者が早い時期に第一次検定に合格し、実務経験を積んで営業所の技術者を目指せる環境が整いました。東京都内の建設会社にとっては、社内の技術者育成計画を見直すよい機会です。
ただし、要件の見直しは「営業所の技術者になれる人が増えた」というだけで、許可取得後の維持管理や法令遵守の重要性は変わりません。申請に使う様式や添付書類は、東京都の最新の手引きで確かめてください。
「2028年度までの経過措置」は技術検定の受検資格の話
「専任技術者の経過措置は2028年度末まで」という説明を見かけることがありますが、これは誤りです。2028年度(令和10年度)までとされているのは、施工管理技術検定の第二次検定の受検資格の経過措置で、2024年度の見直しの前の受検資格でも第二次検定を受けられる期間のことです。
営業所技術者として届け出ている人が、2028年度末までに新しい基準を満たしたり、代わりの技術者を確保したりしなければならない、という決まりはありません。すでに許可を持っている会社が、この期限のために手続きをする必要もありません。
東京都内の会社が見ておくべきなのは、第二次検定を目指している社員が、見直しの前と後のどちらの受検資格で受けるのが有利かという点です。見直しの前の受検資格で受けられるのは2028年度までなので、該当する社員がいれば受検の計画を早めに立てておきましょう。
建設業許可取消の原因とリスク管理
建設業許可取消原因として多い事例
建設業許可の取消は、企業の存続に関わる重大な事態です。許可が取り消されると、許可の要る工事を請け負えなくなり、経営に大きな影響が出ます。
建設業許可取消の主な原因として、以下のようなケースが挙げられます。
- 専任技術者の不在または要件未達:専任技術者が退職したにもかかわらず、2週間以内に変更届を提出しなかった場合
- 営業所の実態がない:登録した営業所が実際には機能していない、または移転したのに届出をしていない場合
- 欠格要件への該当:役員が建設業法違反で刑を受けた場合や、暴力団員等がその事業を支配していると判明した場合
- 虚偽申請:常勤役員等(経営業務の管理責任者など)や営業所技術者(旧 専任技術者)の経験を偽って申請していたことが発覚した場合
東京都では、建設業許可業者に対する監督が厳格に行われており、定期的な調査や通報に基づく確認が実施されています。不正の手段で許可を受けたことなどで許可を取り消されると、5年間は許可を受けられず、事業継続が困難になるため、日常的なリスク管理が重要です。
許可維持のための実務チェックリスト
建設業許可を適切に維持するためには、定期的なセルフチェックが欠かせません。以下のチェックリストを活用して、自社の状況を確認しましょう。
毎月確認すべき項目
- 専任技術者が実際に営業所に常勤しているか
- 営業所に必要な許可証・標識が適切に掲示されているか
- 工事請負契約書に建設業許可番号が記載されているか
変更があった際に即座に対応すべき項目
- 営業所技術者(旧 専任技術者)・常勤役員等(経営業務の管理責任者など)の変更(2週間以内に変更届が必要)
- 商号・営業所の所在地変更(30日以内に変更届が必要)
- 役員の変更(30日以内に変更届が必要)
年1回必ず実施すべき項目
- 決算変更届(事業年度終了後4ヶ月以内)の提出
- 社会保険加入状況の確認と証明書類の整備
- 財務状況の確認(資本金や純資産が許可要件を満たしているか)
東京都の建設業許可は、適切な維持管理によって企業の信頼性を高める重要な資産です。日々の業務の中で確認を怠らないことが、許可取消リスクを回避する最善の方法です。
無許可工事の罰則と公共工事の週休2日制度
無許可工事罰則の実態と最新事例
建設業許可を取得せずに工事を行う「無許可工事」は、建設業法違反として厳しく罰せられます。2026年6月には、大阪・関西万博のタイパビリオンの工事を無許可で請け負った疑いで、建設業者が書類送検されました(日本経済新聞ほか)。この事件では、500万円以上の建設工事を無許可で請け負ったとして、法人と個人の両方が刑事責任を問われています。
無許可工事の罰則は以下の通りです
- 拘禁刑3年以下または罰金300万円以下(個人)
- 罰金1億円以下(法人)
- 建設業許可の取得制限(建設業法違反などで罰金刑を受けると、5年間は許可を受けられない)
元請が許可のない業者と許可の要る金額の下請契約を結ぶと、元請も監督処分の対象になることがあります(建設業法第28条)。下請業者の選定時には必ず建設業許可の有無と業種を確認することが必須です。
なお、軽微な工事(建築一式工事で1,500万円未満〔延べ150平方メートル未満の木造住宅を含む〕、その他の工事で500万円未満)だけなら、続けて請け負っても許可は要りません。1つの工事を分けて契約した場合は、合計の額で判断されます。「この程度なら大丈夫」という安易な判断が、企業の存続を脅かす事態を招くリスクを忘れてはいけません。
週休2日公共工事の義務化と建設業への影響
公共工事における働き方改革が急速に進んでおり、改正品確法に基づき公共工事で週休2日を確保する取り組みが進められています。2026年現在、東京都発注の公共工事でも週休2日を前提とした工期設定が標準化されつつあり、受注企業には労務管理の大幅な見直しが求められています。
週休2日制度の導入は、単に休日を増やすだけではなく、以下のような経営課題に直結します。
- 工期の長期化:同じ工事量でも作業日数が減るため、工期を長めに設定する必要がある
- 人件費の見直し:月給制への移行や日給月給制の見直しが必要
- 生産性向上の取り組み:ICT施工や工程管理の効率化が不可欠
- 下請企業への波及:元請だけでなく、下請企業も含めた労務管理体制の構築が必要
東京都では、週休2日を達成した工事に対して労務費補正や評価点の加算などのインセンティブを設けています。今後、公共工事を受注し続けるためには、週休2日に対応できる施工体制の確立が必須条件となります。
民間工事においても、働き方改革関連法の適用により、時間外労働の上限規制が建設業にも本格適用されています。建設業許可の維持と並行して、労働環境の整備に取り組むことが、優秀な技術者の確保と企業の持続的成長につながります。
よくある質問

Q1. 専任技術者の要件はどう変わりましたか?
2024年12月13日に施行された改正建設業法で、「専任技術者」は「営業所技術者等」という名前に変わりました。資格や実務経験などの要件そのものは変わっていません。大きく変わったのは、一定の条件を満たせば、営業所技術者等がその営業所で契約した工事の現場の技術者を兼ねられるようになった点です。東京都での扱いは、東京都の最新の手引きで確かめてください。
Q2. 既に許可を持っている会社にも関係しますか?
名前が変わっただけで要件は同じなので、許可を取り直す必要はありません。関係するのは、営業所技術者等に現場を兼ねさせるときです。そのときは下の Q3 の条件をすべて満たしているかを、工事ごとに確かめます。
Q3. 営業所技術者等が現場を兼ねられる条件を教えてください
主な条件は、請負代金が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)であること、兼ねられる現場は1か所であること、その営業所で契約した工事であること、営業所と現場を1日で巡回でき移動がおおむね2時間以内であること、下請は3次までであること、連絡員を置くこと、現場の様子を確かめる情報通信機器を置くことです。なお、営業所技術者等は営業所ごとに置く決まりで、複数の営業所を掛け持つことはできません。
Q4. 現場を兼ねるときに用意するものはありますか?
人員の配置を示す計画書を作って保存することが求められます。あわせて、現場の様子を確かめる機器と連絡員を用意します。計画書の参考様式と細かな運用は、国土交通省の「監理技術者制度運用マニュアル」で確かめてください。
Q5. 小さな会社にとって何が変わりますか?
2024年12月の改正は、許可を取るための要件を変えるものではありません。変わるのは許可を取った後の人の配置です。技術者の少ない会社でも、小さめの工事なら営業所の技術者が現場を兼ねられるため、配置に余裕が出ます。条件を1つでも外れると兼ねられないので、工事ごとに確かめてから使いましょう。
まとめ
東京都で建設業許可を申請・維持する会社にとって、営業所技術者(旧 専任技術者)になれる人の幅が広がった一方で、無許可工事への罰則や週休2日の推進など、コンプライアンスと労務管理の重要性が増しています。要点を3つにまとめます。第一に、2023年7月の改正で技術検定の第一次検定の合格者も実務経験を積めば営業所の技術者になれるようになり、2024年12月からは条件つきで現場の技術者を兼ねられます(「2028年度まで」は技術検定の受検資格の経過措置で、営業所の技術者の期限ではありません)。第二に、建設業許可取消の原因として技術者の不在や届出遅延が多いため、変更事項の迅速な手続きが不可欠です。第三に、無許可工事の罰則は個人・法人ともに重く、下請業者の選定時にも許可確認を徹底しなければなりません。東京都で建設業を営む企業は、これらの制度を正確に理解し、自社の許可要件や労務管理体制を見直すことが求められています。まずは自社の営業所技術者の資格状況と変更届の提出状況を確認することから始めましょう。
出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」(確認日 2026-09-28)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。
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