建設業許可取り消しのリスク|虚偽書類提出で懲役判決—実例から学ぶ申請時の注意点

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木の机で書類に署名するスーツ姿の男性

建設業許可申請は、企業の経営基盤を左右する重大な手続きです。しかし、申請書類に虚偽記載があれば、許可取り消しだけでなく刑事責任まで問われることをご存知でしょうか。福岡県では、常勤していない人の名前を書いた虚偽の書類で許可を申請した建設会社の役員ら2人に、懲役1年・執行猶予3年の有罪判決が出たと報道されました(HUNTER 2026年9月9日)。このケースは決して特殊な事例ではなく、多くの建設会社が陥りやすい落とし穴なのです。本記事では、建設業許可申請の虚偽書類提出がもたらす法的リスクと、実務段階で気をつけるべき注意点を、具体的な事例を交えて解説します。申請時の正確な理解が、会社の信用と事業継続を守る最大の防線となります。

目次

実例:福岡県の虚偽書類提出事件から見る許可取り消しの現実

事件の概要—常勤要件の誤解が招いた刑事責任

TNCテレビ西日本(2026年4月30日)などの報道によると、福岡県大任町の建設会社の役員らは、2023年6月に県へ建設業の許可を申請する際、常勤していない男性2人の名前を書いた虚偽の書類を出しました。裁判では、役員ら2人にそれぞれ懲役1年・執行猶予3年の有罪判決が言い渡されました(HUNTER 2026年9月9日)。会社は福岡県から一般建設業の許可を取り消されています(NetIB-News)。

この事件が示すのは、「常勤」という要件をめぐる企業側の根本的な誤解です。多くの建設会社では、組織図上に名前が記載されていれば「常勤職員」と解釈するなど、行政が定める厳密な基準との乖離が生じています。しかし建設業法では、常勤要件を客観的かつ厳密に判定し、その要件を満たさないまま許可申請を行うことは、単なる申請ミスではなく違法行為とされるのです。

「常勤要件」の正確な定義を理解する重要性

建設業許可の申請には、技術者や営業所責任者など特定の職務について「常勤」であることが求められます。建設業法施行規則で定める常勤の定義は、以下の基準をすべて満たす必要があります。

  • 勤務日数:毎週、勤務日数が5日以上
  • 勤務時間:営業所の営業時間と同一の時間帯での就業
  • 事業所との関係:雇用契約書に基づく継続的な雇用
  • 給与支払い:月給制または日給月給制で支給

これらのいずれか一つでも欠けていれば、常勤要件を満たしていません。福岡県の事件では、常勤していない人を常勤の技術者などとして書いたことが、許可の取り消しと刑事の裁判につながりました。

建設業許可申請における虚偽書類提出の法的リスク

箱に収めた書類を整える手元
箱に収めた書類を整える手元(イメージ)Photo by cottonbro studio on Pexels

許可取り消し以上に重い刑事責任が科される

建設業許可申請で虚偽書類を提出した場合、行政処分としての許可取り消しと刑事上の責任が同時に発生します。福岡県の事件では、懲役1年・執行猶予3年の有罪判決が出ています(執行猶予がつくため実刑ではありませんが、前科になります)。

建設業法では、偽りその他不正の手段で許可を受けた者は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(第47条)、虚偽の記載をした申請書を出した者は6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(第50条)とされています。会社も両罰規定(第53条)で罰金に問われます。

許可が取り消されると、その企業は建設工事の受注ができなくなるため、事業継続は事実上不可能です。同時に刑事責任を問われることで、従業員の雇用維持や信用回復は極めて難しくなります。

許可取り消し後の再申請における高い障壁

許可取り消しとなった企業が再度建設業許可を取得しようとする場合、極めて厳しい審査が待ち受けます。不正の手段で許可を受けて取り消された会社は、取り消しの日から5年間は許可を受けられません(建設業法第8条)。さらに代表者や役員が刑事有罪判決を受けた場合、その者は建設業許可の申請に際して「欠格要件」に該当する可能性があり、許可申請すら受け付けられない場合があります。

実際の運用では、虚偽申請による取り消しを受けた企業は、市場から信用を失い、下請けとしての地位も喪失します。経営の再起は極めて困難なのが実情です。

建設業許可申請時に陥りやすい誤り—常勤要件の実務的チェックポイント

よくある誤解①:役員や幹部社員だから常勤に含まれる

建設業許可の常勤要件では、「役職」や「職位」は判断基準ではありません。重要なのは「実際の勤務実績」です。代表取締役であっても週2日しか出社していない場合、その者は常勤要件を満たしません。

特に複数の企業を経営する経営者や、他の事業と兼務している者の場合、申請時点では常勤と見なされても、後の調査で非常勤と判定される場合があります。申請時の自己判断ではなく、申請前に行政庁の事前相談で判定を確認することが重要です。

よくある誤解②:雇用契約書の形式が整っていれば常勤と見なされる

雇用契約書に「常勤職員」と記載されていても、実際の給与支払いが時給制や歩合給の場合、常勤要件を満たしません。建設業法では「月給制または日給月給制」という給与形式が明示されており、この条件を外れると常勤性が否定されます。

雇用契約書があっても、給与の支払いや出勤の記録が常勤の実態と合わなければ、常勤とは認められません。書類をそろえる前に、実態から確かめてください。

よくある誤解③:営業所に配置している職員は全員常勤扱い

営業所に物理的に配置されている職員すべてが「常勤」と自動的に判定されるわけではありません。営業所の営業時間が午前9時から午後6時までの場合、その全時間帯に従事することが常勤の条件です。例えば「午前中だけの契約」「特定の業務のみ従事」といった限定勤務は、常勤要件を満たしません。

指名停止との違いを理解し、許可取り消しを回避する

かんぬきを掛けた古い板戸
かんぬきを掛けた古い板戸(イメージ)Photo by Boris Dahm on Pexels

許可取り消しと指名停止—経営への影響の違い

建設業許可申請に関わる行政処分として「許可取り消し」と「指名停止」があります。これらは全く異なる処分であり、経営への影響も大きく異なります。

許可取り消しは、建設業許可そのものを失う処分です。許可が取り消されると、その企業は建設工事を請け負うことができません。これは実質的に事業の継続不可を意味します。

一方、指名停止は、公共工事の入札参加資格を一定期間失う処分です。許可自体は維持されるため、民間工事の受注は可能です。しかし公共工事という大きな受注機会を失うため、企業規模によっては経営への打撃は深刻です。たとえば指名停止が2か月続くと、建設業の許可はそのままでも、その間はその発注者の公共工事を受注できず、経営計画を見直す必要が出てきます(想定の例)。

虚偽書類提出による指名停止の実例と期間

一般競争入札や条件付一般競争入札の参加企業が提出した書類に虚偽記載があった場合、その企業は指名停止処分を受けます。処分期間は通常2ヶ月から6ヶ月程度ですが、虚偽内容の重大性によっては1年以上の長期停止となる場合もあります。

指名停止中の企業は公共工事の受注機会を完全に失うため、その期間の経営は民間工事受注のみに依存することになります。複数年にわたる公共工事の受注計画がある場合、指名停止の発生は企業の経営計画全体を狂わせる要因となるのです。

建設業許可申請の正確性を確保するための実務対策

申請前の行政庁への事前相談の活用

虚偽書類提出の最大の防止策は、申請前に行政庁の建設業担当部門に事前相談することです。申請予定の常勤職員について、その者が常勤要件を満たすかどうかを事前に確認する制度があります。

事前相談では、実際の雇用契約書、給与支払い台帳、勤務実績表などを提示して、行政側の判定を受けることができます。この段階で「常勤要件を満たさない」との指摘を受ければ、申請前に是正措置を講じることが可能です。迷う点があれば、申請の前に許可行政庁の窓口で相談してください。

社内の人事・給与体制の整備が最優先

常勤要件を確実に満たすためには、申請対象者について以下の実務面での整備が不可欠です。

  • 雇用契約書:「常勤職員」「月給制」「営業所での勤務」といった要件を明記
  • 給与支払い台帳:月給制での支給実績を毎月記録
  • 勤務管理簿:出勤日数、勤務時間を客観的に記録
  • 保険加入:厚生年金保険、健康保険への加入を確認

これらの書類が申請時に整備されていないと、後の調査で虚偽と判定される可能性が高まります。申請予定の1ヶ月前から、これらの書類整備に着手することが重要です。

許可更新時の常勤要件の継続確認

建設業許可は5年ごとの更新手続きが必要です。更新申請時には、許可取得時と同じく常勤要件の確認がなされます。5年の間に人事異動や給与体制の変更があった場合、常勤要件を満たさなくなる可能性があります。

特に役員の高齢化による退職や、経営危機に伴う給与体系の変更などは、常勤要件の喪失につながりやすいのです。許可更新時点で常勤職員が不足している場合、事前に新たな常勤職員を確保し、申請可能な状態を整えておく必要があります。

経営事項審査と虚偽書類—信用格付への連動リスク

机で書類の束にペンを当てて中身を確かめる男性
机で書類の束にペンを当てて中身を確かめる男性(イメージ)

虚偽書類と経営事項審査スコアの関連性

建設業許可取得企業の多くは、経営事項審査(経営規模等評価)を受審して、公共工事の入札参加資格を取得しています。経営事項審査のスコアは、企業の技術力、資本金、利益などを客観的に評価する制度です。

虚偽書類提出による指名停止や許可取り消しがあった場合、これらの処分履歴は経営事項審査の際に必ず行政庁間で共有されます。その結果として、経営事項審査の評点が減点されたり、更新申請時に審査が厳格化される可能性があります。実質的に公共工事への参加機会が大きく制限される形になるのです。

2026年における経営事項審査の厳格化傾向

公共工事発注機関の間では、虚偽書類提出や法令違反を行った企業に対する評価がより厳格化する傾向が強まっています。建設業許可申請時の誠実性は、その企業の経営基盤全体の信用を左右する要因となっているのです。

申請の前に常勤を確かめる手順

虚偽の申請を防ぐには、申請書に書く人が本当に常勤しているかを、申請の前に書類で確かめます。

  1. 申請書に書く常勤の役員と営業所技術者を一覧にする
  2. 一人ずつ、健康保険の加入の記録と、ほかの会社の役員や技術者を兼ねていないかを確かめる
  3. 住所と営業所の距離・通勤の手段を確かめ、毎日通える人かを確かめる
  4. 確かめた書類の写しを保管し、許可を出す都道府県の手引きにある常勤の確認書類と照らし合わせてから申請する

名前だけを借りる申請は、建設業法の罰則の対象になり、許可の取消しにもつながります。

よくある質問

Q1. 建設業許可申請で虚偽書類を提出するとどんな罰則が受けますか?

拘禁刑(2025年6月より前は懲役)や罰金、建設業許可の取り消しという行政処分を受ける可能性があります。特に資格や経験を偽って申請した場合、刑事罰の対象になりやすいです。許可取り消し後は5年間、新規申請ができなくなるリスクもあります。

Q2. 経営管理責任者の要件を満たしていない場合の対応方法は?

要件を満たす人材を採用するか、既存スタッフのキャリア構築により要件達成を目指すべきです。虚偽申請は絶対避けてください。都道府県の建設業許可部門に事前相談することで、正規ルートの手続きをアドバイスしてもらえます。

Q3. 許可更新時に過去の申請内容を修正することはできますか?

軽微な誤りは更新申請時に訂正可能ですが、意図的な虚偽は許可取り消しの対象です。発見された場合、行政指導から最悪は懲役判決までの処分があります。不安な点は事前に許可部門に相談してください。

Q4. 技術者資格を持たずに許可申請する場合どうすればよいですか?

実務経験を積んで資格試験受験、または有資格者を雇用することで対応できます。経過措置期間がある資格もあるので、許可部門に現状を相談してください。虚偽申請は絶対に避け、正規プロセスで進めることが重要です。

Q5. 許可取り消しになった場合、事業継続はできますか?

許可なしで建設工事を請け負うことはできません。許可取り消し後、5年経過後に新規申請は可能ですが、その間の営業は大幅に制限されます。初期段階で適正な申請手続きを踏むことが経営リスク回避の最善策です。

まとめ

建設業許可申請における虚偽書類提出は、許可取り消し、刑事責任、指名停止、経営事項審査のスコア低下という複合的で取り返しのつかない被害をもたらします。福岡県の事件で示された懲役判決は、この違反がいかに重大かを象徴しています。

最も重要な対策は、申請前の行政庁への事前相談を通じて、常勤要件の定義を正確に理解することです。「常勤」という用語は曖昧に見えますが、建設業法では給与形式、勤務日数、勤務時間についての考え方が定められているため、事前相談で確認しておくことが確実です。

工事を頼む先や協力会社を探すときは、福岡県の建設業許可業者を業種別に調べられる福岡県の建設会社一覧もお使いください。

出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」(確認日 2026-09-28)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。

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この記事を書いた人

建設業許可(一般・特定)の新規取得・更新・業種追加から変更届・廃業届まで幅広い申請実務に精通した許可申請の専門家。国土交通省の法改正情報を継続的に追跡し、都道府県ごとの審査基準の違いや落とし穴を解説。経営事項審査(経審)・入札参加資格・財産的基礎要件の確認方法など、中小建設会社が直面する許可維持の課題に対応した情報を提供している。

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