解体工事業の許可を持つ会社にとって、産業廃棄物の適正な処理は事業を続けるための土台です。2026年8月には、岡山市が市内の土木・解体工事の会社に、解体の現場から出た木くずやがれき類を上限の10倍を超えて保管していたとして、廃棄物処理法の改善命令を出したと報じられました(KSB瀬戸内海放送)。保管の基準や委託のルールを一つ見落とすだけで、行政の指導や命令につながります。本記事では、解体工事で起きやすい産業廃棄物の管理のミスと、廃棄物処理法・建設リサイクル法で守るべき要点、現場で使えるチェックリストをまとめます。
産業廃棄物の管理で起きやすいミス
岡山市の改善命令の件
報道によると、岡山市は2026年8月6日、岡山市中区の土木・解体工事の会社に廃棄物処理法の改善命令を出しました。解体の現場から出た木くずやがれき類を、積替えのための保管の上限である45立方メートルを超えて、518.1立方メートル保管していた(6月19日時点)ことなどが理由です。保管場所の囲いの一部が無いこと、積替え保管場所の掲示が無いことも指摘され、2027年2月2日までの改善を命じられました。
この件から、次のような点を自社でも確かめておくことが大切です。
- 保管の量の上限:許可や基準で決まった量を超えていないか
- 囲いと掲示:保管場所に囲いがあり、決められた掲示板があるか
- 「後で運ぶ」の積み残し:搬出が遅れて、現場や置き場に廃棄物がたまっていないか
経営への影響
廃棄物処理法の違反は、改善命令や措置命令、罰則の対象になります。建設業法の監督処分(指示や営業停止)を受けた場合は、経営事項審査(経審)の W(社会性等)の法令遵守の項目で減点になります。また、一定の刑罰を受けると、建設業許可の欠格要件に当たることもあります。取引先や発注者からの信用も失うため、日ごろの管理が欠かせません。
解体工事業で守るべき産業廃棄物の処理の要件

排出事業者は元請業者
建設工事から出る廃棄物は、元請業者が排出事業者として処理の責任を負います(廃棄物処理法第21条の3)。下請の解体業者に運搬や処分を任せる場合も、下請が収集運搬業や処分業の許可を持っていなければ委託はできません。
分別解体(建設リサイクル法)
- 床面積の合計が80平方メートル以上の建築物の解体工事などは、コンクリート、アスファルト・コンクリート、木材などの特定建設資材を分別しながら解体し、再資源化する義務があります
- 工事に着手する7日前までに、発注者が都道府県知事などへ届け出ます(建設リサイクル法第10条)。元請業者は、発注者に分別解体の計画などを書面で説明します
委託とマニフェスト
- 処理を委託するときは、許可を持つ業者と、書面で契約を結ぶ
- 廃棄物を引き渡すときに産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付し、返ってくる票で処理の完了を確かめる
- マニフェストは5年間保存する
保管の基準
- 保管場所の周りに囲いを設ける
- 見やすい場所に、決められた事項を書いた掲示板を置く
- 飛散・流出・地下への浸透・悪臭を防ぐ措置をとる
- 屋外で容器を使わずに保管するときは、積み上げの高さの基準を守る
実務では、マニフェストの記入漏れや、返ってくる票を確かめないまま処理済みとしてしまうといった小さなミスが、指導につながることがあります。
電子マニフェストの活用
電子マニフェスト(JWNET)を使うと、交付や処理の終了の報告が電子で記録され、記入漏れや票の紛失を防げます。前々年度に特別管理産業廃棄物(PCB 廃棄物を除く)を50トン以上出した事業場は、電子マニフェストの使用が義務です。それ以外の会社も、管理の手間を減らす方法として検討する価値があります。
法令遵守チェックリスト(現場用)
工事の前に確かめること
許可・届出
- [ ] 自社が解体工事業の許可(500万円未満だけなら解体工事業の登録)を受けているか
- [ ] 建設リサイクル法の届出の対象か、発注者が届け出たか
- [ ] 石綿(アスベスト)の事前調査を、資格者が行ったか(大気汚染防止法)
- [ ] 委託する収集運搬業者・処分業者の許可の品目と期限を確かめたか
廃棄物の処理の計画
- [ ] 出る廃棄物の種類と量の見込みを出したか
- [ ] 分別の方法と場所を現場の図面に書いたか
- [ ] 置き場の量が、搬出の予定に合っているか
- [ ] 委託の契約書に、廃棄物の種類と量が書かれているか
現場の体制
- [ ] 廃棄物の管理の担当(現場代理人など)を決めたか
- [ ] 作業員に、分別と処理のルールを教えたか
- [ ] マニフェストの運用の手順を現場に置いたか
工事の途中で確かめること
保管の状況(毎週)
- [ ] 積み上げの高さは基準の内か
- [ ] シートは破れていないか
- [ ] 囲いと掲示板はそろっているか
- [ ] 雨水が流れ出していないか
マニフェスト(搬出のたび)
- [ ] 現場名・担当者名を書いたか
- [ ] 廃棄物の種類と量を正しく書いたか
- [ ] 収集運搬業者の許可番号を確かめたか
- [ ] 処分先が、契約した処分業者と同じか
記録の保存
- [ ] マニフェストの写しを工事の記録にとじたか
- [ ] 返ってきた票の日付を記録したか
- [ ] 5年間の保存の期限を管理しているか
記録を残して管理を見える化する
現場管理の道具を使う
産業廃棄物の管理を担当者の記憶に頼らず、記録で回すには、クラウドの現場管理の道具が役に立ちます。
- 搬出量の記録:毎日の搬出量をスマートフォンやタブレットで記録する
- マニフェストの管理:搬出日と票が返った日を一覧で追う
- 保管場所の写真:毎週の写真を日付つきで残し、行政の立入りなどで説明に使う
費用の管理にもつながる
工事ごとの処理費を集計しておくと、次の見積もりの精度が上がり、採算の合わない工事を前もって見つけやすくなります。搬出が遅れて置き場があふれる前に手を打てることも、記録を残す利点です。
経営事項審査と許可で気をつけること
経審の W(社会性等)では、ISO 14001 やエコアクション21 の認証が加点の項目です。一方、建設業法の営業停止や指示の処分を受けると、法令遵守の項目で減点になります。廃棄物の管理の記録は、経審の点に直接入るものではありませんが、処分を受けないための日ごろの備えになります。
建設業許可の更新では、決算変更届を出していることや、許可の要件を満たしていることが確かめられます。廃棄物の処理の資料を出す決まりはありませんが、委託の契約書やマニフェストは法律で保存が求められる書類なので、いつでも出せるように整理しておきましょう。
よくある質問

Q1. 産業廃棄物の処理を誤ると、どんな罰則がありますか?
廃棄物処理法の違反は、内容によって拘禁刑や罰金の対象です(例えば委託の基準の違反は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金。2025年6月から懲役は拘禁刑)。改善命令や措置命令を受けることもあり、原状回復の費用や信用の低下も招きます。
Q2. マニフェストの記入でよくある失敗は何ですか?
廃棄物の種類の書き違い、量の書き漏れ、業者の許可番号の書き違いがよくある例です。マニフェストは処理の流れを確かめる書類なので、交付の前に複数の人で確かめ、5年間保存しましょう。
Q3. 混合廃棄物が出た場合はどうしますか?
できるだけ現場で分別し、分けられない分は、混合廃棄物を扱える許可を持つ処分業者に委託します。委託の前に処分業者と相談し、契約書とマニフェストに廃棄物の種類を正しく書いてください。
Q4. 石綿(アスベスト)を含む建材が見つかった場合は?
解体や改修の前には、大気汚染防止法と石綿障害予防規則にもとづく事前調査が必要で、建築物は2023年10月から資格者による調査が義務です。工事の途中で調査になかった建材が見つかったときは、作業を止めて調査し直し、法令の作業基準に沿って対応します。
Q5. 処理業者を選ぶときに確かめる書類は?
産業廃棄物の収集運搬業・処分業の許可証で、許可の品目が工事で出る廃棄物と合っているか、許可の期限が切れていないかを確かめます。優良産廃処理業者の認定も目安になります。契約の前に処分の施設を見ておくと安心です。
まとめ
解体工事業の産業廃棄物の管理は、会社の経営の土台を守るための大切な仕事です。岡山市の件のように、保管の量や囲い・掲示といった基準の見落としが命令につながります。1. 法令の要件を正しく知る:排出事業者は元請・分別解体・委託とマニフェスト・保管の基準を押さえ、チェックリストで現場に落とし込むこと。2. 記録で管理する:電子マニフェストや現場管理の道具で記録を残し、事務の手間とリスクを減らすことが大切です。
出典:建設リサイクル法(e-Gov 法令検索)・廃棄物処理法(e-Gov 法令検索)(確認日 2026-10-06)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。
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