電気工事の資格は種類が多く、「誰にどの資格を取らせるか」を決めるときに、試験の難しさだけで順番を決めてしまいがちです。しかし経営の目線で見ると、資格ごとに役に立つ場面がまったく違います。現場で配線作業をするための資格、工事現場に置く技術者の資格、建設業許可や電気工事業の登録の要件になる資格、そして経営事項審査(経審)の点数になる資格です。
本記事では、2026年時点の法令と国土交通省・経済産業省などの公表資料をもとに、電気工事の主な資格を「何ができるか」「会社のどの要件を満たすか」で整理し、会社の状況に合わせた取得の順番を考える材料をまとめました。
電気工事の資格は4つの役割に分かれる|2026年時点の整理

作業の資格:電気工事士・認定電気工事従事者・特種電気工事資格者
電気工事士法第3条は、電気工事の作業に従事できる人を資格ごとに定めています。経済産業省の資料にもとづく作業範囲は次のとおりです。
- 第二種電気工事士:一般用電気工作物等(一般家庭や商店などの屋内配線、住宅用の小出力の太陽電池発電設備など)の電気工事
- 第一種電気工事士:上記に加え、最大電力500kW未満の需要設備(中小ビル・工場など)の電気工事。ただしネオン用の設備と非常用予備発電装置の工事は除く
- 認定電気工事従事者:最大電力500kW未満の需要設備のうち、600V以下で使う部分(高圧で受電して低圧にしたあとの100V・200Vの配線など)の電気工事
- 特種電気工事資格者:最大電力500kW未満の需要設備のうち、ネオン用の設備または非常用予備発電装置の電気工事
つまり、住宅の電気工事が中心なら第二種電気工事士、ビルや工場の受変電設備の二次側まで扱うなら第一種電気工事士が作業の前提になります。これらは「その人が作業してよいか」を決める資格で、会社の許可とは別に必要です。
現場の技術者の資格:1級・2級電気工事施工管理技士
電気工事施工管理技士は、建設業法にもとづく技術検定の資格です。建設業法では、工事現場ごとに主任技術者を置く必要があり、特定建設業者が元請として一定額以上を下請に出す工事では監理技術者を置く必要があります。1級電気工事施工管理技士は監理技術者と主任技術者に、2級は主任技術者になれる資格です。第一次検定に合格すると、1級は「1級電気工事施工管理技士補」、2級は「2級電気工事施工管理技士補」と名乗れます。
保安の資格:電気主任技術者
電気主任技術者は、電気事業法にもとづき、事業用電気工作物の工事・維持・運用の保安を監督する資格です。電気技術者試験センターによると、第三種は電圧5万ボルト未満(出力5千キロワット以上の発電所を除く)、第二種は電圧17万ボルト未満、第一種はすべての事業用電気工作物を扱えます。主にビルや工場などの設備の設置者側で選任される資格で、工事を請け負う会社にとっては、後で述べる営業所技術者や経審の要件に使える資格として意味があります。
建設業許可と電気工事業の登録で必要になる資格

電気工事業の許可の営業所技術者
電気工事業の建設業許可では、営業所ごとに専任の営業所技術者(2024年12月13日から「専任技術者」の呼び方が変わりました)を置く必要があります。国土交通省の資格一覧では、一般建設業の許可で営業所技術者になれる主な資格は次のとおりです。
- 1級・2級電気工事施工管理技士
- 第一種電気工事士
- 第二種電気工事士+免状交付後の実務経験3年以上
- 電気主任技術者(第一種〜第三種)+免状交付後の実務経験5年以上
資格がなくても、電気工事に関する10年以上の実務経験などで要件を満たせます。ただし電気工事業は指定建設業のため、特定建設業の許可では1級電気工事施工管理技士などの国家資格者が必要で、実務経験だけでは要件を満たせません。
電気工事業の登録・届出の主任電気工事士
電気工事業法では、電気工事業を営む会社(建設業許可業者の場合は「みなし登録電気工事業者」)は、一般用電気工作物等の工事を行う営業所ごとに主任電気工事士を置く必要があります(第19条)。なれるのは、第一種電気工事士か、免状交付後に電気工事の実務経験が3年以上ある第二種電気工事士です。欠けた場合は、知った日から2週間以内に選任しなければなりません。
許可・登録・届出の手続きの流れは、太陽光・蓄電池工事を請け負う中小建設会社へ|必要な許可・登録・資格の確認手順で詳しく整理しています。
経営事項審査で資格は何点になるか

技術職員数(Z1)の点数の区分
公共工事の入札に参加する会社が受ける経営事項審査では、技術職員の資格が点数になります。国土交通省の「経営事項審査の主な改正事項(令和3年4月1日改正)」では、技術職員1人あたりの点数が次のように区分されています。
- 6点:1級の国家資格を持ち、監理技術者資格者証の交付を受けている人(1級監理受講者)
- 5点:1級の国家資格を持つ人(1級電気工事施工管理技士など)
- 4点:監理技術者補佐(主任技術者の資格を持つ1級技士補)
- 3点:登録基幹技能者講習の修了者など(登録電気工事基幹技能者など)
- 2点:2級の国家資格を持つ人など(2級電気工事施工管理技士・第一種電気工事士など)
- 1点:その他の技術者(第二種電気工事士+実務3年、電気主任技術者+実務5年、実務経験10年の主任技術者など)
同じ第二種電気工事士でも、実務経験3年を満たしているかで点数に入るかどうかが変わります。技術職員名簿を作る前に、資格の取得日と実務経験の期間を社内の台帳で確認しておくと、申請の直前に慌てずに済みます。
取得の順番を決めるための受験条件と優先順位
電気工事施工管理技士は令和6年度から受検資格が変わった
国土交通省の案内によると、令和6年度から施工管理技術検定の受検資格が変わりました。1級の第一次検定は19歳以上(受検年度末時点)であれば受検でき、2級の第一次検定は従前どおり17歳以上です。第二次検定は、たとえば2級なら2級第一次検定合格後の実務経験3年以上、1級なら1級第一次検定合格後の実務経験5年以上などで受検できます(令和10年度までは旧受検資格での第二次検定の受検も可能)。
学歴による実務経験年数の区別がなくなり、若手でも先に第一次検定を受けて技士補になれるようになりました。入社後の早い段階で第一次検定を受けさせ、実務経験を積みながら第二次検定を目指す計画が立てやすくなっています。
第一種電気工事士の免状には実務経験3年以上が必要
第一種電気工事士は、試験に合格しただけでは免状が交付されません。電気技術者試験センターの案内では、免状の取得に電気工事の実務経験3年以上が必要で、試験合格前の実務経験も含められます。第二種電気工事士として実務経験を積んだ職人は、第一種の試験に合格すればすぐに免状を申請できる場合があります。
会社の状況別の優先順位
ここまでの整理をもとに、会社の状況ごとに優先して確保したい資格をまとめます。どの資格を誰に取らせるかは、今いる有資格者の人数と、退職などで欠けたときに要件を満たせなくなる資格はどれかを先に確認して決めてください。
| 会社の状況 | 優先して確保したい資格 | 理由 |
|---|---|---|
| 住宅の電気工事が中心 | 第二種電気工事士→第一種電気工事士 | 作業の前提。第一種は主任電気工事士・営業所技術者にもなれる |
| 電気工事業の許可を維持したい | 営業所技術者になれる資格者を2人以上 | 1人だけだと退職で許可の要件を失う |
| ビル・工場の電気工事を受ける | 第一種電気工事士・認定電気工事従事者 | 最大電力500kW未満の需要設備の作業範囲 |
| 公共工事の入札に参加する | 1級電気工事施工管理技士・1級技士補 | 経審で5点(資格者証と講習で6点)・技士補は4点の対象になり得る |
| 元請で大きな工事を受ける | 1級電気工事施工管理技士 | 特定建設業の営業所技術者と監理技術者の要件 |
よくある質問
Q1. 第二種電気工事士だけで電気工事業の許可は取れますか?
第二種電気工事士は、免状交付後に電気工事の実務経験が3年以上あれば、一般建設業の電気工事業の許可で営業所技術者になれます。実務経験が3年未満の場合は要件を満たせません。特定建設業の許可には1級電気工事施工管理技士などの国家資格者が必要です。
Q2. 電気主任技術者を持っていれば第一種電気工事士の作業もできますか?
電気主任技術者の免状だけでは、電気工事士法の作業はできません。ただし電気技術者試験センターの案内では、電気主任技術者は実務経験などによって第一種電気工事士や認定電気工事従事者の資格を取得できるとされています。手続きは都道府県や産業保安監督部に確認してください。
まとめ
電気工事の資格を取らせる順番は、次の3点を確認してから決めてください。
- 作業に必要な資格:受ける工事が一般用電気工作物か、500kW未満の需要設備かで、第二種・第一種電気工事士や認定電気工事従事者の必要性が決まる
- 会社の要件になる資格:営業所技術者と主任電気工事士になれる人が、退職に備えて複数いるか
- 経審と元請の工事で使う資格:公共工事や元請の大きな工事を狙うなら、1級電気工事施工管理技士と1級技士補を計画的に増やす
協力会社の電気工事業者を選ぶときも、建設業許可の業種と有効期限をあわせて確認しておくと安心です。
参考資料
- 経済産業省「電気工事士等の従事範囲」
- 電気技術者試験センター「電気主任技術者の資格概要」
- 電気技術者試験センター「電気工事士の免状交付」
- 国土交通省「営業所技術者等となり得る国家資格」
- 国土交通省「許可の要件」
- 国土交通省「経営事項審査の主な改正事項(令和3年4月1日改正)」
- 国土交通省「令和6年度より施工管理技術検定の受検資格が変わります」
- 経済産業省「電気工事業の業務の適正化に関する法律の逐条解説」
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。
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