耐震等級を契約書に書く工務店へ|評価書の効力と説明トラブルを防ぐ確認項目

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作業着の男性と契約書を確かめる夫婦

「耐震等級3」は住宅の営業でよく使われる言葉ですが、根拠となる制度や書類の扱いを取り違えると、引き渡し後に「説明と違う」という争いの原因になります。とくに、住宅性能評価書を契約書に添付したときは、書かれた性能がそのまま請負契約の内容になるという法律の定めがあります。

本記事では、住宅の建設工事を請け負う工務店・建設会社の経営者向けに、耐震等級の制度上の位置づけ、熊本地震の調査で分かったこと、評価書と契約の関係、2025年4月の建築基準法の見直しを、国土交通省などの公式資料で確認できる範囲で整理しました(2026年時点)。

目次

耐震等級は住宅性能表示制度の等級|建築基準法の等級ではない

耐震等級は、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)にもとづく住宅性能表示制度の評価項目の一つです。住宅性能表示制度は平成12年度から運用されている任意の制度で、国が定めた基準にもとづき、登録住宅性能評価機関が設計図書の審査や施工現場の検査を経て、等級などで評価します。

「構造躯体の倒壊等防止」の耐震等級は、次の3段階です。

等級想定する地震の力位置づけ
1極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力に対して倒壊・崩壊等しない建築基準法が求める水準に相当(最低の等級)
2等級1の1.25倍の力に対して倒壊・崩壊等しない—
3等級1の1.5倍の力に対して倒壊・崩壊等しないこの項目の最高の等級

つまり、建築基準法を満たしただけの住宅は「等級1相当」であり、等級2・3は建築基準法より高い水準を任意に選んだものです。「建築基準法で定める最高等級」という説明は誤りなので、営業資料に残っていないか確認してください。

評価書は「設計」と「建設」の2種類

  • 設計住宅性能評価書:設計図書の段階で評価したもの
  • 建設住宅性能評価書:施工段階と完成段階の検査を経て、できあがった住宅を評価したもの

評価を受けずに社内の計算だけで「等級3相当」と表示することもありますが、第三者の評価書にもとづく等級とは意味が違います。どちらなのかを営業資料と見積書の段階で明記し、社内の計算であれば根拠となる構造の検討書を示せるようにしておくことが、後の説明の食い違いを防ぎます。

熊本地震の調査で分かったこと|等級3の住宅は大部分が無被害

平成28年(2016年)熊本地震では、4月14日の前震と4月16日の本震でいずれも最大震度7を観測しました。国土交通省の国土技術政策総合研究所と建築研究所が合同で開いた「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」は、同年9月30日に報告書をまとめています。木造住宅についての主な内容は次のとおりです。

  • 旧耐震基準(新耐震基準の導入前)の木造建築物は、新耐震基準の導入後のものと比べて倒壊率が顕著に高かった
  • 新耐震基準の導入後でも、接合部の仕様などが明確化された2000年以降の木造住宅は、それ以前のものより被害率が小さかった
  • 日本建築学会の悉皆調査の範囲で倒壊が確認された2000年以降の木造住宅7棟のうち3棟は、接合部の仕様が不十分だった
  • 同じ調査範囲で住宅性能表示制度を使った木造住宅のうち、耐震等級3の16棟は14棟が無被害、2棟が軽微または小破だった

報告書は、耐震等級3の住宅には大きな損傷が見られず大部分が無被害だったとして、より高い耐震性能の選択肢を示す際に住宅性能表示制度の活用が有効としています。「等級3でも倒壊する家が多い」といった説明は、この調査結果とは合いません。一方で、評価の対象は計算上の地震の力であり、どんな揺れでも無被害を約束するものではありません。「絶対に壊れない」とは言わず、調査結果の数字をそのまま伝えるのが、誇張も過小評価もしない説明です。

評価書を契約書に付けると、その性能が契約内容になる|品確法第6条

図面に書き込みをして設計内容を確認する技術者

品確法第6条第1項は、住宅の建設工事の請負人が設計住宅性能評価書(またはその写し)を請負契約書に添付するか、注文者に交付した場合、その評価書に表示された性能を持つ住宅の建設工事を行うことを契約したものとみなす、と定めています。

営業の場面で評価書を渡しただけでも、契約内容とみなされる点に注意が必要です。同条第4項により、請負人が請負契約書で反対の意思を表示しているときは適用されませんが、評価書を示して受注しながら契約書でその効力を否定すると、説明の食い違いとして争いになりやすくなります。評価書を渡す以上は、その性能を守る前提で工事と変更の管理を組み立てるほうが現実的です。

関係するほかの定め

  • 紛争処理(品確法第67条):建設住宅性能評価書が交付された住宅(評価住宅)の請負契約・売買契約の紛争は、指定住宅紛争処理機関によるあっせん・調停・仲裁を申請できる。国土交通省の制度概要では、対象は性能評価に関する紛争に限らないとされている
  • 10年の担保責任(品確法第94条):住宅を新築する請負契約では、注文者に引き渡した時から10年間、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の瑕疵について担保責任を負う。これより注文者に不利な特約は無効
  • 契約書面(建設業法第19条):工事内容・請負代金の額・工期などを書面に記載して相互に交付する。記載事項を変更するときも、変更の内容を書面にして交付する(同条第2項)

2025年4月の建築基準法の見直し|等級の説明の前提が変わった

2025年4月1日から、建築確認の審査を省略できる範囲(いわゆる4号特例)が縮小され、平家かつ延べ面積200㎡以下の建築物以外は、構造によらず構造規定等の審査が必要になりました。あわせて、省エネ化などで建物が重くなっていることに対応するため、木造建築物の必要な壁量や柱の小径の基準が見直され、住宅性能表示制度の基準も同じ時期に見直されています。

見直し前の壁量基準を使える経過措置は、令和8年(2026年)3月で終了しました。過去の自社の標準仕様で「等級3」と説明してきた場合は、現行の基準で同じ等級になるかを設計担当と確認してから、営業資料を使い続けてください。

説明と書面で揉めないための確認項目

完成した建物の外壁を確認する建設会社の担当者
段階確認すること理由
営業資料・見積書等級の根拠が「設計評価」「建設評価」「社内の計算(相当)」のどれかを明記する評価書の有無で、契約上の扱いと紛争処理の使い方が変わる
契約書評価書を添付・交付するなら、その性能を契約内容として工事内容に書く品確法第6条で、評価書の性能が契約内容とみなされる
設計の変更間取りや開口部の変更で等級が変わらないかを確認し、変更の内容を書面で取り交わす壁の量や配置の変更は耐震性能に直結する。建設業法第19条第2項の変更の書面
施工中接合部の金物・耐力壁・基礎の施工状況を写真と記録で残す2000年以降の倒壊事例には接合部の仕様不足があった。建設評価の検査にも使う
引き渡し評価書の交付と、10年の担保責任の対象部分を説明した記録を残す品確法第94条の担保責任と、評価住宅の紛争処理の前提

よくある質問

Q1. 耐震等級3は建築基準法で決められた等級ですか?

いいえ。耐震等級は品確法にもとづく住宅性能表示制度の等級で、制度の利用は任意です。建築基準法が求める水準は等級1に相当し、等級2は等級1の1.25倍、等級3は1.5倍の地震の力に対して倒壊・崩壊等しない程度とされています。

Q2. 評価書を施主に渡しただけで、契約内容になりますか?

品確法第6条第1項では、設計住宅性能評価書またはその写しを請負契約書に添付した場合だけでなく、注文者に交付した場合も、表示された性能の住宅を建設することを契約したものとみなされます。請負契約書で反対の意思を表示しているときは適用されません。

Q3. 熊本地震では耐震等級3の住宅も倒壊したのですか?

国の委員会の報告書(2016年9月)では、益城町中心部の調査範囲で住宅性能表示制度を使った耐震等級3の木造住宅16棟のうち、14棟が無被害、2棟が軽微または小破でした。報告書は、等級3の住宅には大きな損傷が見られなかったとしています。

まとめ

耐震等級を営業や契約で使うときは、次の3点を確認してください。

  1. 根拠を分けて書く:住宅性能表示制度の評価書(設計・建設)にもとづく等級か、社内の計算による「相当」かを、営業資料の段階で明記する
  2. 評価書は契約内容になる:設計住宅性能評価書を添付・交付すると、その性能で建設することを契約したものとみなされる。設計の変更は書面で取り交わす
  3. 現行の基準で確認し直す:2025年4月の壁量基準などの見直しと、2026年3月の経過措置の終了を踏まえ、過去の標準仕様で同じ等級になるかを確かめる

熊本地震の調査結果は、耐震等級3の住宅の被害が小さかったことを示しています。数字を正確に伝え、書面で根拠を残すことが、施主の信頼と自社のリスク管理の両方につながります。

参考資料

出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」(確認日 2026-10-02)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。

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この記事を書いた人

建設業許可(一般・特定)の新規取得・更新・業種追加から変更届・廃業届まで幅広い申請実務に精通した許可申請の専門家。国土交通省の法改正情報を継続的に追跡し、都道府県ごとの審査基準の違いや落とし穴を解説。経営事項審査(経審)・入札参加資格・財産的基礎要件の確認方法など、中小建設会社が直面する許可維持の課題に対応した情報を提供している。

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