令和6年の​建設業法改正で​変わった点|​一般・特定の​許可要件と実務

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ヘルメットを抱えた作業服の男性とタブレットを持つ男性

「うちの会社は一般建設業許可でいいのか、それとも特定建設業許可が必要なのか」——この判断に迷っている建設会社の経営者や事務担当者は少なくありません。2024年6月に公布された建設業法改正(令和6年法律第49号、いわゆる第三次・担い手3法)は、2024年9月・12月の二段階にわたって主要部分が施行されました。その後、令和7年12月12日に全面施行され、すべての改正項目が「施行済み」になっています。

いま実務で問われているのは「知っているか」ではなく「対応済みか」です。特に資材高騰時の契約書変更条項は2024年12月に施行済み。まだ既存の請負契約書ひな形を更新していない会社は、今すぐ対応が必要です。また、著しく低い労務費等による見積りや契約を禁止する規定も、令和7年12月12日に施行されました。本記事では一般建設業・特定建設業の許可要件の基本を整理したうえで、改正の施行状況と、施行済みの各項目への実務対応を解説します。

目次

一般建設業と特定建設業の基本的な違い

許可区分を分ける決定的な判断基準

一般建設業と特定建設業の最大の違いは、発注者から直接請け負った1件の建設工事について、下請け契約の合計金額が5,000万円以上(建築一式工事の場合は8,000万円以上)になるかどうかです。この金額は、令和6年の建設業法改正とは別に、建設業法施行令の改正で2025年2月1日から引き上げられました(改正前は4,500万円・建築一式工事7,000万円)。

注意すべきは、この判断が「1件の工事ごと」に行われる点です。年間の下請け発注総額ではなく、個別の工事案件ごとに判定します。例えば、1億円の建築一式工事を受注し、そのうち8,500万円を下請けに発注する場合、特定建設業許可がなければ法令違反となります。

一方、下請け工事金額がこの基準未満であれば、一般建設業許可で対応できます。多くの地域工務店や中小規模のリフォーム会社は、一般建設業許可で事業を展開しています。

許可要件の違いが実務に与える影響

一般建設業と特定建設業では、許可を取得するための要件が大きく異なります。特に財産的基礎要件と専任技術者(2024年12月から営業所技術者)の資格要件に差があります。

一般と特定の違いの全体(4つの違いと全国の許可のデータ)は「一般建設業と特定建設業の違いを徹底解説」で整理しています。

財産的基礎要件については、一般建設業が「自己資本500万円以上」「500万円以上の資金調達能力」「許可申請の直前5年間、許可を受けて続けて営業した実績」のいずれかであるのに対し、特定建設業は「欠損の額が資本金の20%以下」「流動比率75%以上」「資本金2,000万円以上」「自己資本4,000万円以上」という4要件をすべて満たす必要があります。

営業所技術者(2024年12月13日までの呼び名は専任技術者)の要件も異なります。一般建設業では実務経験10年、指定学科を卒業した後の実務経験(高校卒5年・大学卒3年)、または国家資格者で対応できますが、特定建設業では1級施工管理技士や技術士などの上位資格保有者、または元請として4,500万円以上の工事で2年以上の指導監督的実務経験を持つ者が必要です(土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の7業種は、指導監督的実務経験の道を使えません)。

令和6年建設業法改正の施行状況

作業服の男性が向かいの人と書類を読む
作業服の男性が向かいの人と書類を読む(イメージ)

令和6年6月14日公布、令和6年法律第49号(第三次・担い手3法)の施行は3段階に分かれています。出典:国土交通省「建設業法・入契法改正(令和6年法律第49号)について」(最終更新2025年6月17日)。全面施行日と労務費に関する基準の勧告日は、建設物価調査会「改正建設業法に基づく「労務費に関する基準」について」(建設物価2026年1月号)によります。

施行時期 主な内容 状況
令和6年9月1日(施行①) 国による取組状況の調査・公表、労務費の基準の作成・勧告の仕組み ✅ 施行済み
令和6年12月13日(施行②) 処遇確保の努力義務化(建設業法25条の27)、資材高騰時の請負代金等の変更方法(額の算定方法)を契約書の法定記載事項に追加(建設業法19条改正) ✅ 施行済み
令和7年12月12日(施行③・全面施行) 著しく低い労務費等による見積り・契約の禁止、著しく短い工期による契約の禁止など ✅ 施行済み

実務担当者が最初に確認すべきは「施行②(2024年12月)に対応した請負契約書への更新が完了しているか」。次いで「施行③(令和7年12月12日)で禁止された、著しく低い労務費等による見積りや契約になっていないか」です。

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令和6年建設業法改正の3本柱——実施状況

ポイント1:処遇改善——施行①〜③とも施行済み

施行②(令和6年12月13日)により、建設業者に処遇確保が努力義務として課されました(施行①の令和6年9月1日には、国が取り組みの状況を調べて公表する仕組みが動き始めました)。国土交通省が各社の取り組み状況を調査・公表する仕組みが動いており、「対外的に説明できる処遇改善の取り組み」が求められる段階にあります。

核心部分——中央建設業審議会による「労務費に関する基準」

これまで技能者への労務費の相場観が不明確だったために、下請け工事での労務費削減が常態化してきました。今回の改正で、中央建設業審議会が「労務費に関する基準」を作成・勧告する仕組みが設けられました。基準は令和7年12月2日に勧告され、同12日の全面施行により、基準を著しく下回る労務費等による見積りや契約は禁止されています(出典:国土交通省、建設物価調査会)。

違反のおそれがある場合は、許可行政庁による指導・監督の対象になります。労務費を内訳として示した見積書は、一定期間の保存も求められます。

経営者として今すぐ取り組むべきこと(施行③対応):

  • 自社が下請けに支払っている労務費単価の棚卸しを今から始める
  • 元請けからの発注単価が労務費に関する基準を大幅に下回っていないか確認する
  • 処遇改善の取り組みを記録・文書化しておく(施行②対応の継続)

ポイント2:資材高騰による労務費へのしわ寄せ防止——施行②は済んでいます。契約書は更新済みですか?

施行②は2024年12月13日に施行されています。この改正では資材高騰に伴う請負代金等の変更方法を契約書の法定記載事項に追加しました(建設業法19条改正)。

施行②対応のチェックポイント:

  • 2024年12月13日以降に締結・更新した請負契約書に「資材価格高騰時の代金の変更方法(額の算定方法)」まで定められているか
  • 社内のひな形・書式を更新していない場合は、現在進行中の工事契約にも法令違反のリスクがある
  • 国土交通省が公表している「建設工事標準請負契約約款」の最新版を確認し、自社書式に反映すること

元請け・下請けどちらの立場でも、この条項のない契約は両者に不利です。資材価格が再び高騰した場合の代金交渉根拠が契約書にないと、受注者側が全リスクを被ることになります。

ポイント3:働き方改革——上限規制適用から2年。実態を把握できていますか?

2024年4月1日から建設業にも時間外労働の上限規制(年720時間・月100時間未満等)が適用されました。2026年4月でちょうど適用2年が経過した節目です。

令和6年建設業法改正(施行②・③)では、工期の変更の協議の仕組みや、著しく短い工期での契約の禁止が盛り込まれました。国が、建設業者の処遇の確保や働き方改革の取り組みの状況を調べて公表する仕組みが設けられました。

適用2年経過後の実務確認リスト:

  • 2024年4月以降の現場別残業時間の記録が取れているか
  • 年720時間の上限を超えている社員・職人がいないか
  • 工期設定の段階で週休2日を前提とした人員計画が組めているか
  • 「工期が短すぎる」「無理な受注をせざるを得ない」状況が続いている場合は、受注段階での価格・工期交渉力の強化が急務

自社に必要な許可区分を判断する実践的チェックポイント

作業服の2人がクリップボードとタブレットで打ち合わせ
作業服の2人がクリップボードとタブレットで打ち合わせ(イメージ)

下請け工事金額の判断基準を具体例で理解する

自社が特定建設業許可を必要とするかどうかは、実際の受注工事の内容から判断します。

ケース1:マンション大規模修繕工事 受注金額1億2,000万円の建築一式工事を元請けとして受注し、塗装工事に3,500万円、防水工事に2,000万円を下請け発注する場合、下請け合計額は5,500万円です。建築一式工事の基準は8,000万円なので、この場合は一般建設業許可で問題ありません。

ケース2:商業ビル新築工事 受注金額1億5,000万円の建築一式工事で、電気工事に4,500万円、設備工事に4,000万円を下請け発注する場合、下請け合計額は8,500万円となり8,000万円を超えます。この場合は特定建設業許可が必要です。

ケース3:専門工事の元請け 塗装工事を5,000万円で元請け受注し、足場工事に1,500万円、下地処理に1,000万円を下請け発注する場合、下請け合計額は2,500万円です。建築一式以外の工事の基準は5,000万円なので、一般建設業許可で問題ありません。

成長段階に応じた許可戦略の考え方

建設会社の成長段階によって、必要な許可区分は変化します。創業期の工務店や専門工事会社は、まず一般建設業許可を取得し、実績を積むのが一般的です。

事業拡大に伴い大型案件を受注するようになり、下請け発注額が基準を超える見込みが出てきたタイミングで、特定建設業許可への変更を検討します。また、業種ごとに許可を取得できるため、主力業種は特定建設業、その他の業種は一般建設業という組み合わせも可能です。

許可申請・更新で見落としやすい注意点

更新申請のタイミングと必要書類

建設業許可の有効期間は5年間です。更新申請は有効期間満了日の30日前までに行う必要があります(受付の開始時期は許可行政庁の手引で確かめてください)。満了日までに申請していれば、審査の途中で満了日を迎えても前の許可が有効です(建設業法第3条第4項)。満了日までに申請しないと許可は失効し、新規の申請が必要になります。

更新申請時には、財務諸表、納税証明書、社会保険加入証明書類、営業所技術者の資格証明書類などの提出が求められます。特に社会保険関連書類の確認が求められているため、保険料の滞納がないことを事前に確認してください。

決算変更届(事業年度終了報告)を毎年提出していない場合、更新申請が受理されない可能性があります。日頃から適切な届出を行うことが重要です。

変更事項が発生した場合の届出義務

許可取得後に、商号、所在地、代表者、役員、資本金、営業所技術者などに変更があった場合は、変更届の提出が義務付けられています。

  • 2週間以内の届出が必要:経営業務管理責任者や営業所技術者の変更
  • 30日以内の届出が必要:商号、所在地、資本金、役員などの変更

特に営業所技術者の退職は許可要件に直結するため、後任者の配置と速やかな変更届が必要です。届出を怠ると、許可取消しの対象となる可能性があるため、人事異動の際は建設業許可への影響を必ず確認しましょう。

また、M&Aや合併により建設会社を買収・統合する場合、許可の承継手続きが必要になります。建設業法では、一定の要件を満たせば許可を引き継げる制度がありますが、手続きが複雑なため、専門家への相談をおすすめします。

まとめ

  • 令和6年建設業法改正の3本柱「処遇改善」「資材高騰対策」「働き方改革」のうち、施行①②はすでに施行済み(2024年9月・12月)
  • 一般建設業と特定建設業の判断基準は、2025年2月1日の政令改正で5,000万円(建築一式工事8,000万円)に引き上げ済み
  • 施行③(令和7年12月12日)で労務費に関する規制が施行済み——見積りと契約の点検が必要

実務対応チェックリスト(今すぐ確認)

優先度 対応項目 期限
🔴 緊急 2024年12月以降の請負契約書に資材高騰時の代金の変更方法(額の算定方法)まで定めているか確認 即時対応
🔴 緊急 現在有効な全ての請負契約書ひな形の更新(国土交通省「建設工事標準請負契約約款」最新版を参照) 即時対応
🟡 準備 自社の労務費単価の棚卸し(施行③で禁止された著しく低い労務費になっていないか) 即時対応
🟡 準備 処遇改善の取り組みを記録・文書化(施行②の努力義務に対応) 継続実施
🟢 確認 2024年4月以降の残業時間記録・年720時間上限の遵守確認 定期確認

次にとるべきアクション

  1. 自社の請負契約書ひな形を今すぐ確認し、建設業法19条(資材高騰対策)への対応が漏れていれば法律事務所または行政書士に相談する
  2. 中央建設業審議会の労務費に関する基準の改定や運用の情報を、国土交通省サイトで定期的にチェックする

業種別の詳細対応

管工事業への具体的な影響と対応チェックリストについては、以下の記事も参照してください。

→ 2025年施行の建設業法改正で管工事業は何が変わったか――令和6年改正の要点と2026年版対応確認チェックリスト

よくある質問

Q: 一般建設業と特定建設業はどこで分かれますか?

発注者から直接請け負った1件の工事で、下請に出す金額の合計が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)になるかどうかで分かれます。年間の合計ではなく工事ごとに判定します。金額は2025年2月1日の政令改正で、4,500万円・7,000万円から引き上げられました。

Q: 令和6年の建設業法改正は、もう施行されていますか?

3段階ですべて施行済みです。令和6年9月1日に国による取組状況の調査・公表の仕組みなど、令和6年12月13日に処遇確保の努力義務と、資材高騰時の請負代金の変更方法の定めを契約書の記載事項に追加、令和7年12月12日の全面施行で、著しく低い労務費等による見積りや契約、著しく短い工期での契約が禁止されました。

Q: 改正に合わせて、会社が最初に確かめることは何ですか?

まず、2024年12月13日以降に結んだ請負契約書に、資材価格が上がったときの代金の変更方法(額の算定方法)まで定めているかを確かめます。次に、自社が下請に払う労務費や元請から示される単価が、中央建設業審議会の労務費に関する基準を大きく下回っていないかを点検します。

自社や取引先の許可が一般か特定か、許可の業種と有効期限は、会社名や許可番号から調べられる建設業許可業者の検索でも確かめられます。

自社の許可が当サイトの会社ページにどう載っているか(業種・一般/特定・有効期限)は、都道府県別・業種別の建設会社の一覧から確かめられます。

出典:建設業法(e-Gov 法令検索)・国土交通省「建設業の許可とは」(確認日 2026-09-28)
この記事は一般的な情報をまとめたものです。法令や制度は変わることがあるため、最新の内容は公表元で確認し、個別の判断は窓口の役所や専門家(行政書士・社会保険労務士・税理士など)に相談してください。

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この記事を書いた人

建設業界の申請実務・業界動向・サービス比較を専門とするリサーチャー兼ライター。行政書士選びのポイント・申請代行サービスの費用比較・都道府県別の審査傾向など、実際に情報収集して検証した内容を記事化。建設業の許可・経審・入札に関する公的資料を基に、現場で役立つ実践的な情報を正確に届けることを方針としている。

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