管工事業が使える助成金・補助金|採用・技能講習・賃上げ・宿舎の地図

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住宅の外壁の給湯器を点検する男性

配管工や設備の技能者を採りたい、育てたい、賃金を上げたい。管工事業の経営者がこうした取組をするとき、使える国の助成金がいくつかあります。ただ、名前が似ていて、「どれが自社の取組に当たるのか」「何を先に出せばよいのか」が分かりにくいのも事実です。本記事では、厚生労働省が2026年度(令和8年度)に案内している雇用関係の助成金のうち、管工事業の会社が使えるものを取組ごとの地図として整理します。金額や要件は、厚生労働省の令和8年度のリーフレットとパンフレットで確かめた範囲だけを書いています。作業員宿舎の助成の詳しい中身は「人材確保等支援助成金の作業員宿舎等設置助成コース|新築は対象外と支給額」で解説しています。

目次

管工事業が使える助成金の全体の地図

管工事業は建設業の業種の一つなので、厚生労働省が「建設事業主向け」に用意している助成金の対象になります。このほか、業種を問わない賃上げの助成金も使えます。取組ごとに並べると次のとおりです。

やりたい取組助成金とコース先に出すもの
若手・女性の採用を試すトライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)一般トライアルコースなどの手続き
研修・見学会・体験会などの魅力づくり人材確保等支援助成金(若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース)計画届(原則2か月前まで)
技能講習・特別教育などを受けさせる人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)計画届(3か月前から原則1週間前まで)
CCUS のレベルに応じて賃金を上げる人材確保等支援助成金(建設キャリアアップシステム等活用促進コース)計画届(改定の6か月前から2か月前まで)
現場に女性用のトイレ・更衣室などを借りる人材確保等支援助成金(作業員宿舎等設置助成コース・女性専用作業員施設設置経費助成)計画届(原則2週間前まで)
パート・有期の人の基本給を上げるキャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)キャリアアップ計画(実施日の前日まで)
一番低い時給を上げて設備を入れる業務改善助成金交付申請(交付決定の前に設備を入れない)

どの助成金にも共通するのは、取組を始める前に計画や申請を出すことです。先に始めてしまうと対象にならないものが多いため、取組の日付から逆算して準備します。申請先は、事業所を管轄する都道府県労働局(一部はハローワークでも受け付け)です。

採用と育成に使える助成金

朝礼で並ぶ作業服の作業員たちの足元と後ろ姿
朝礼で並ぶ作業服の作業員たちの足元と後ろ姿(イメージ)

トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)

職業経験が少ないなどの理由で就職が難しい人を、一定期間試しに雇う「トライアル雇用」を行う中小建設事業主への上乗せの助成です。トライアル雇用の開始時点で35歳未満の人か女性で、主に建設工事現場での現場作業か施工管理に就く人が対象です。支給額は、1人につき1か月あたり最大4万円で、最長3か月です。設計・測量・経理・営業が主な仕事の人は対象になりません。

このコースは、トライアル雇用助成金の一般トライアルコースか障害者トライアルコースの支給決定を受けることが前提です。配管工の見習いを未経験から採るときに、まず一般トライアルコースの手続きから確かめます。

人材確保等支援助成金(若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース)

若年者や女性の入職・定着のために建設業の魅力を高める取組をした建設事業主に、経費の一部を助成します。「建設の事業」の雇用保険料率が適用されている事業主が対象です。対象になる取組は幅広く、リーフレットには次のような例が挙がっています。

  • 講習会、加工技術などの体験会、現場見学会、インターンシップ
  • 新規入職者への研修会、公的資格の取得に関する講習会
  • 安全衛生管理計画の作成、工事現場の巡回
  • 優良な技能者の表彰制度、雇用管理研修や職長研修
  • 女性向けのキャリアパスの作成、男性の育児休業の取得を進める取組

支給額は、中小建設事業主なら対象経費の60%、中小でない建設事業主なら45%です。雇用管理研修などを受けさせた場合は、労働者1人につき研修の日数×9,500円です。事業を始める日の原則2か月前までに「計画届」を出し、事業の計画期間は最大1年間です。配管の加工の体験会や、学校と組んだ現場見学会を考えている会社は、このコースが候補になります。

人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)

建設労働者の技能を上げるための訓練(技能実習)を行う建設事業主への助成で、経費助成と賃金助成があります。対象になる技能実習には、労働安全衛生法にもとづく特別教育や技能講習、技能検定の事前講習、登録基幹技能者講習などが含まれます(どの講習が当たるかは支給要領の別表で確かめます)。

  • 経費助成:技能実習にかかった費用の一定の割合。一つの技能実習について建設労働者1人あたり10万円が上限です。
  • 賃金助成(中小建設事業主):受講した日数×9,500円(雇用保険の被保険者が20人以下の企業)、受講した日数×8,550円(21人以上の企業)。受講の日も通常どおり賃金を払うことが条件です。

技能実習を行う日の3か月前から原則1週間前までに「計画届」を出し、終わった日の翌日から2か月以内に支給申請をします。登録教習機関などが行う技能実習を受けさせる場合は、計画届は要りません。配管技能士の技能検定の前に講習を受けさせる、といった使い方を考える前に、対象の講習かどうかを労働局で確かめてください。

自社で講習会を開いて資格の取得を支える方法は「管工事業の若手技術者を育てる方法|自社講習会で資格取得を支える」で紹介しています。

賃上げに使える助成金

人材確保等支援助成金(建設キャリアアップシステム等活用促進コース)

建設キャリアアップシステム(CCUS)を使って技能者の処遇を良くした中小建設事業主への助成です。次の2つの取組が両方とも必要です。

  • 雇用するすべての建設技能者について、CCUS の技能者登録(詳細型登録)を行うこと
  • 能力評価制度のレベル判定でレベルが上がった技能者の賃金を、5%以上増やすこと(増額の前後12か月の賃金の総額で比べます)

支給額は、レベルが上がって賃金が5%以上増えた技能者1人あたり16万円で、一事業年度あたり160万円(16万円×10人)が上限です。賃金を上げる月の6か月前から2か月前までに「計画届」を出し、増額後の賃金を12か月払い終えてから2か月以内に支給申請をします。技能者登録とレベル判定は、計画届より前に済んでいても対象になります。

キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)

パートや有期契約など、正社員でない人(有期雇用労働者等)の基本給の賃金規定などを3%以上増やして実際に適用した事業主への助成です。業種を問わず使えます。令和8年度のパンフレットでは、中小企業の1人あたりの助成額は、引き上げ率が3%以上4%未満で4万円、4%以上5%未満で5万円、5%以上6%未満で6.5万円、6%以上で7万円です。職務評価を使って改定した場合や、昇給の制度を新しく決めた場合は、20万円(大企業は15万円)の加算があります。

大事なのは、取組の実施日の前日までに「キャリアアップ計画」を出しておくことです。改定した後6か月分の賃金を払った日の翌日から2か月以内に支給申請をします。現場の補助や事務のパートの時給を上げるときに候補になります。

業務改善助成金

事業場で一番低い時給(事業場内最低賃金)を50円以上引き上げ、生産性を高める設備投資などをした中小企業・小規模事業者に、その費用の一部を助成します。令和8年度は、事業場内最低賃金が1,050円未満なら助成率は4/5、1,050円以上なら3/4で、上限は引き上げ額と人数に応じて最大600万円です。

申請は事業所ごとで、交付決定の前に設備を入れると対象になりません。令和8年度の申請期間は令和8年9月1日からで、締切は事業所のある都道府県の新しい地域別最低賃金が効力を持つ日の前日か、11月30日のどちらか早い日です。都道府県ごとに締切が違い、新しい最低賃金が10月に効力を持つ都道府県では、令和8年度の受付がすでに終わっていることがあります。申請を考えるときは、まず管轄の労働局で今の受付の状況を確かめてください。

作業員宿舎・現場の施設の助成

書類に印鑑を押す人と説明する人の手元
書類に印鑑を押す人と説明する人の手元(イメージ)

作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)は、令和8年度の建設事業主向けの一覧では、次の2つが並んでいます。

  • 作業員宿舎等経費助成(石川県):能登半島地震からの復旧・復興のため、石川県にある工事現場(令和6年1月1日以降に始まったもの)で作業員宿舎・賃貸住宅・作業員施設を借りる中小建設事業主が対象です。一事業年度あたり200万円が上限です。
  • 女性専用作業員施設設置経費助成:元方の中小建設事業主が施工管理をする現場で、女性建設労働者のためのトイレ・更衣室・シャワー室・浴室を借りる場合に、賃借料などの60%を助成します。一事業年度あたり90万円が上限です。

どちらも「借りる」費用が対象で、借り始める日の原則2週間前までに「計画届」を出します。石川県以外の現場で宿舎を借りる場合は、いまの一覧では対象のコースが見当たらないため、使えるかどうかは管轄の労働局で確かめてください。宿舎の助成の条件や支給額の詳しい中身は「人材確保等支援助成金の作業員宿舎等設置助成コース|新築は対象外と支給額」をご覧ください。

申請の前に確かめる3つのこと

机の上の緑の砂時計とクリップボード
机の上の緑の砂時計とクリップボード(イメージ)

1. 取組の日付から逆算して計画を出す

計画届やキャリアアップ計画の期限はコースごとに違い、2か月前・6か月前から2か月前・前日まで、とばらばらです。賃上げの月や講習の日が決まったら、その日から逆算して出す日を社内の予定に入れます。

2. 同じ取組で二重に受けない

同じ経費や同じ賃上げを、別の助成金で重ねて受けることはできません。たとえば同じ人の同じ賃上げを、CCUS のコースとキャリアアップ助成金の両方に出す前に、労働局で組み合わせてよいかを確かめます。

3. 最新の支給要領で確かめる

助成金の要件と金額は、年度の途中でも改正されることがあります。本記事の数字は2026年10月8日に厚生労働省の令和8年度の資料で確かめたものです。申請の前に、厚生労働省のサイトの最新の支給要領と、管轄の都道府県労働局の案内を必ず確かめてください。

よくある質問

Q1. 管工事業の会社は「建設事業主向け」の助成金の対象になりますか?

管工事業は建設業の業種の一つなので、建設事業主向けの助成金の対象になりえます。ただし、コースによって「中小建設事業主」に限る、「建設の事業」の雇用保険料率が適用されていることが条件、など要件が違います。自社が当たるかは、管轄の都道府県労働局で確かめてください。

Q2. 配管工の賃金を上げたとき、使える助成金はどれですか?

CCUS の能力評価でレベルが上がった技能者の賃金を5%以上上げるなら建設キャリアアップシステム等活用促進コース、パートや有期契約の人の基本給の規定を3%以上上げるならキャリアアップ助成金の賃金規定等改定コース、事業場で一番低い時給を上げて設備を入れるなら業務改善助成金が候補です。どれも取組の前に計画や申請を出す必要があります。

Q3. 申請の受付はいつですか?

多くのコースは決まった受付の時期ではなく、取組ごとに「何日前までに計画届」「終わってから何か月以内に支給申請」と期限が決まっています。業務改善助成金は申請期間が決まっていて、令和8年度は令和8年9月1日から、地域別最低賃金の発効日の前日か11月30日の早い方までです。

Q4. 作業員宿舎を新しく建てる費用は対象になりますか?

令和8年度の作業員宿舎等設置助成コースのリーフレットで対象になっているのは、宿舎や施設を「借りる」費用です。建てる費用が対象になるかは、宿舎の助成の記事と、管轄の労働局で確かめてください。

Q5. 申請は誰に相談すればよいですか?

事業所を管轄する都道府県労働局が窓口です。書類の作成を社会保険労務士に頼む方法もあります。どのコースが自社の取組に当たるかを、取組を始める前に相談するのが確実です。

まとめ

管工事業の会社が使える国の助成金は、採用(トライアル雇用)・魅力づくりと研修(職場づくり事業コース)・技能の向上(技能実習コース)・賃上げ(CCUS のコース、キャリアアップ助成金、業務改善助成金)・現場の施設(作業員宿舎等設置助成コース)に分かれます。どれも取組の前に計画や申請を出すことが共通の条件です。まず自社がこれからやりたい取組を一つ決め、表から当てはまるコースを選び、管轄の都道府県労働局で要件と期限を確かめるところから始めてください。

出典:厚生労働省「建設事業主等に対する助成金」(各コースの令和8年度のリーフレット)・厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)」・厚生労働省「令和8年度 業務改善助成金のご案内」(確認日 2026-10-08)

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この記事を書いた人

建設業許可(一般・特定)の新規取得・更新・業種追加から変更届・廃業届まで幅広い申請実務に精通した許可申請の専門家。国土交通省の法改正情報を継続的に追跡し、都道府県ごとの審査基準の違いや落とし穴を解説。経営事項審査(経審)・入札参加資格・財産的基礎要件の確認方法など、中小建設会社が直面する許可維持の課題に対応した情報を提供している。

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